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2017年2月22日 (水)

トランプ-トルドー会談は本当は一体何だったのか

Eric ZUESSE
2017年2月19日

アメリカ大統領ドナルド・トランプは、腐敗の“泥沼を干しあげ”、アメリカ国民による政府支配を取り戻すという公約で、大統領の座についたが、1月20日に、大統領職に就任して以来彼が実行しているのは、まさに逆のことだ。アメリカ政府の支配を、多国籍企業に、しかも実際には、大企業を支配し、至るところで、大衆を強奪するために大企業を駆使している億万長者に引き渡しているのだ(その一部をこの文章でご説明している手口で)。

2月13日、カナダ首相ジャスティン・トルドーと彼の会談をお考え願いたい。

NAFTA条約がアメリカ合州国内の雇用と賃金を減少させたがゆえに、ジョージ・ハーバート・ウォーカー・ブッシュが作り、ビル・クリントンが法律として成立させたカナダとメキシコとのNAFTA条約に反対して、トランプは大統領の座についたのだが、アメリカ国家主権の深刻な縮小、アメリカ主権である規制分野の一部、環境や製品の安全や、労働者の規制を強化するアメリカの主権的能力を、NAFTAによって、そうした新たな規制に反対し、しかもその権利が、NAFTAの下で、いかなる国の単なる国民(納税者などの)権利を超えて保護されている多国籍企業と、そうした多国籍企業の所有者に、アメリカの納税者が支払いを要求する何百万ドル、あるいは何十億ドルもの金額を決定する上訴不可能な裁定をする三人による仲裁委員会とにゆずり渡す、NAFTAの実に有害な譲渡について、彼は一言も触れなかった。

現在、カナダとアメリカ合州国との間の最大の問題は、NAFTAより更に始末に負えないものだ。賃金を押し下げるばかりでなく、環境、製品の安全や、労働者の権利を規制する既存の法律を施行したかどで、アメリカ企業も含め、多国籍企業がカナダとEU両方の納税者を訴えることまで可能にするカナダと欧州連合間の条約CETAだ。

それが一体どのように機能するかという説明はここにある。具体的には、カナダの国際的採掘企業が、ルーマニアの公害防止法を施行したかどで、ルーマニアを訴えている。“プロジェクトの過半数株式保有者、ガブリエル・リソーシズが、世界銀行に本拠を置く国際投資仲裁委員会にルーマニアを訴え、ルーマニアが必要な許可を発行しそこねた不履行とされるものに対し、補償として40億ドルを要求していると報じられている”。“鉱山は、その後に、フットボール競技場420個分の広さのシアン化物に汚染された排水湖を残すことになる”、ので、鉱山はルーマニアの環境法に大幅に違反する; ところが、いずれもCETA同様の(そしてオバマが提案したTPP、TTIP、& TISA条約同様の)にあるはずの仲裁条項がある1995年と、1997年にルーマニアが署名した協定の条件のもとで、ルーマニア政府は今や、プロジェクトを承認するか、あるいは、それを阻止したかどで、ガブリエル・リソーシズの株主たちに 40億ドル支払うかのいずれかを選ばなければならない。

EUで事業を行っているアメリカを本拠とする企業の五社中四社(41,811社)は、カナダ子会社経由で投資を仕組めば、EU、その加盟諸国を攻撃するのにCETAを利用できるのだから、CETAは、アメリカを本拠とする多国籍企業にとって、絶対間違いない儲けだ。アメリカはこの協定の調印国ではないので、CETAは、多国籍企業がアメリカ納税者を訴えることは認めていないが、それでもアメリカ多国籍企業にとっては依然として巨大な新利益センター(基本的に、オバマが提案した消滅寸前のTTIP協定を、裏口から起動するようなもの)だ。そして、もしトランプが、アメリカ国民を代表する以上に、アメリカを本拠とする多国籍企業の所有者を代表しているのであれば、彼は、同様に多国籍企業の所有者を代表し、それゆえCETAを支持しているカナダ首相を支持することになるだろう。

しかも、2012年のガブリエル・リソーシズ社の最初の公開財務報告は、それ以前の二年間、世界銀行のパートナー、IMFがルーマニアに“緊縮政策”を押しつけたと報じている。そして“こうした緊縮政策は、欧州連合内での広範な経済危機にも影響されて、次第に政府の行動に対する国民の支持を損ない、2012年1月、ルーマニアでの大規模抗議行動を引き起こした”と記述している。更に“2012年2月6日、国民による支持の欠如から、ボック首相は全閣僚と共に辞任を発表するに至った。それから間もなく、バセスク大統領が、外国諜報機関のトップで元外務大臣のミハイ・ラズヴァン・ウングレアーヌに、新政権を組閣するよう依頼したが”、“わずか11週間”しかもたなかった。

だから、ルーマニア国民、このプロジェクトを承認するよう追い詰めはれていたのだ。そして現在、反対する大規模抗議行動の後、そして政府がプロジェクトを拒否した後、ルーマニア国民は、認可を拒否したかとで、多国籍企業から訴えられている。経済緊縮策という親指絞めの拷問は機能しそこねたので、今やあらゆる国家の法律や裁判所が、そこから締め出されたし、締め出され、ルーマニア憲法や法律に何と書いてあろうとその裁定が最終である仲裁委員会が、(ルーマニア人はルーマニア法に違反すると主張している採掘事業だが、採掘企業はそんなものは無視すべきと主張している)大企業の株主に‘彼らの儲ける権利を侵害した’かどで、ルーマニア人納税者が一体いくら支払うべきかを決定するのだ。これが‘欧米民主主義’だ。その最初の記述は(我々は彼を打ち破ったことになっている)ムッソリーニが時に“ファシズム”と呼んだもので、時に“大企業支配”と呼ばれる。 (だがこれはより高度な国際版だ。出現しつつあるファシスト世界政府だ)。

仲裁委員会は、オバマが提案したTPP協定に関するこの記事の中で説明されているICSIDと呼ばれる規則を忠実に遵守することになる。

2016年7月27日、ジョージ・モンビオが、イギリスのガーディアンに“主権だと? この政府は、我々を最高入札者に売り飛ばすのだ”という見出しの記事を書き、イギリス人有権者が、腐敗した多国籍企業に支配された政府ゆえに、EU離脱の投票をしたにもかかわらず、イギリス人億万長者連中が、国家が消費者保護、環境保護や、労働者権利保護法案を施行した際には、納税者を訴えることができるこの新たな大儲け事業に一枚加わりたがっているので、イギリス自身の首相の政権が今やCETAを支持していると報じている。

2月13日、別のガーディアン記事はこう報じている。

CETAは最終的に、ヨーロッパの規制を、裏口から、壊滅したと思われているEU-アメリカ自由貿易協定TTIPの嫌われていた部分を導き入れるカナダの採掘企業や、アメリカ多国籍企業のカナダ子会社によるより多くの投資家訴訟にさらすだろう、… カナダの大企業は 既に、トルドー政府に、最も重要な市場での競争力を維持するため、アメリカ大統領の規制緩和の動きに対応するよう圧力をかけている。CETAの規制協力メカニズムは、北アメリカ・ロビイストにとって、EU規制に対し、緩和への圧力を静かにかける道を切り開くことになろう。これは特に、遺伝子組み換え生物や、内分泌かく乱化学物質などの微妙な分野にあてはまる。

国際支配階層は、世界中の大衆をだまし、政府規制は悪いものであり、規制がより少なく、より緩和されているほうが良いのだと信じこませている。ドナルド・トランプ自身もこのウソをまくしたてているが、アメリカ(あるいは他のどの国の)国民に対する彼の忠誠心とされるものと矛盾する。彼がホワイト・ハウス入りして以来の実際の行動は、彼が本気なのは、国家主権の強化ではなく、剥奪であることを示唆している。

もしそれが彼が実際に遂行するものなら、これこそ彼の最悪のペテンだ。彼が他の‘欧米民主主義’国の大半の指導者連中のように腐敗するのを避ける時間はまだある。だが間もなく、彼が本当はどちらの側なのかを我々は知ることになる。

アメリカと、その全ての同盟諸国の支配層は、あらゆる国の国民に害を与えるにもかかわらず、この種の世界政府を望んでいることは疑いようがない。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2017/02/19/what-trump-trudeau-meeting-was-really-about.html
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植草一秀の『知られざる真実』の2017年2月22日記事、この記事とつながる。
日米FTA・種子法廃止・水道法改定を許さない!

書店で『検証アベノメディア―安倍政権のマスコミ支配』臺宏士著 緑風出版を見かけた昨夜、民放と国営放送の「ニュース番組」を延々見比べた。
民放二局は、しっかり小学校土地疑惑に触れていた。
国営放送、9時の番組でも、その番組のキャスターになる予定の二人による深夜の番組でも、全く小学校土地疑惑に触れていない。トップが変わっても、アベノメディア。

紙媒体はどうなのだろう?

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