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2017年1月 4日 (水)

トランプ時代、我々はお互い助け合うしかない

Chris Hedges
2016年12月26日
"Truth Dig"

今年のクリスマス、ドナルド・トランプの政治支配をもたらした、アメリカ民主主義の長く緩慢な死を私は悼んだ。彼が掻き立てた暴力と頑迷さに対する原始的熱望を人々が奉じる高揚感を私は恐れている。こうした排外主義勢力は、アメリカ史上終始、有色人種の人々や、本質的に意見を異にする人々に対して向けられてきた、白人自警団による一連の暴力の一環が、またもや、大衆を脅し、恐怖させる手段として仕立てあげられているのだ。新自由主義に毒され、大企業国家にとらわれている我が国の文化的、政治的機構は、我々を守る意志も能力も持ち合わせていないのを私は知っている。我々は自力で行くしかないのだ。これは楽しいことではない。

一週間前、ニューヨークで、マッカーシズムに関してアメリカ最高の歴史家で“多くは犯罪だ: アメリカにおけるマッカーシズム”、“象牙の塔ではない: マッカーシズムと大学”や“高等教育の失われた魂: 民営化、学問の自由に対する攻撃とアメリカ大学の終焉”の著者であるエレン・シュレッカーと話をした

“私は一体何を目にしているのでしょう?”アメリカの政治的、文化的状況について彼女は質問した。“マッカーシー時代の再演を目にしているのでしょうか? かなりの程度、いくつかの類似には驚くべきものがあります。遙かに広範な弾圧的運動を象徴していた[ジョセフ]マッカーシー上院議員のような人物を検討することが可能です。トランプは、現在、実際には、アメリカ政府を乗っ取った右翼反動運動のために、同じ役割を演じているのだと言えるでしょう。”

“様々な、かなり表面的な比較が可能です”シュレッカーは続けた。“マッカーシーもトランプも、いささか忌まわしい人物で、たぶん、社会病質も多少からんでいると思います。マッカーシーはマスコミ対応の天才でした。彼はどうすれば一面に載れるかを知っていました。彼は個々の記者たちの締め切り時間を知っていました。彼は、記者たちに、どうやって話題を提供すれば良いかを知っていました。類似は実に明らかだと思います。トランプは、マスコミ対応の天才です。”

ウィスコンシン州上院議員はそうだったが、今のトランプも、非常に楽観的だと彼女は言った。共和党員になる前は、民主党員だったマッカーシーは、1950年に飛びついた彼は、赤の恐怖を利用する上で、“いささか出遅れ気味”だったとシュレッカーは言う。“その頃には、非米活動委員会が、ハリウッドしつこく追いかけていました。”

トランプと、彼のキリスト教ファシスト下役連中は、我々の多くが予想するよりも早く、自由な表現に残されたわずかな余地を潰そうとするだろう。異議申し立ては困難な、時には危険なことになる。非登録労働者、イスラム教徒、アフリカ系アメリカ人や異議を唱える人々を含む一連の国内の敵に対して向けられる公然の差別や、ヘイト・クライム活動が行われることになるだろう。キリスト教右派は、女性の権利を後退させ、学校のカリキュラムに、連中の呪術思考を押し込み、イスラム教徒やGBLT集団をテロで弾圧する免許を与えられるだろう。トランプ政権は、わが国のキリスト教聖戦士連中に、キリスト教信仰の象徴と言辞を、アメリカ資本主義、帝国主義と白人優越主義と融合させた、ひどい宗教的排外主義を主張する演壇を与えるだろう。

弾圧措置は素早く実施されるだろうと私は予想している。速度のせいで、魂を抜かれた国民には、起きている事態を見えないままになるだろう。弱々しい司法制度、二大政党やマスコミを含む民主的伝統や機構は、攻撃によって崩壊するだろう。トランプは、専制主義国家を可能にする、おなじみの手段を活用するだろう。大量投獄、軍隊化した警察、司法制度の衰退化、現実的、および想像上の敵の悪魔化や、プライバシーと市民的自由の破壊、こうした全てが、政治エリート連中によって、大企業権力のために、愚かにも推進される。

シュレッカーは、トランプの興隆は、四十年かけて作り上げられたものだと言う。1960年代に作り上げられた文化的、社会的、政治的空間、とりわけ、大学、マスコミ、労働運動や芸術を閉鎖すべく、大企業が諸々の組織に資金投入し、設立したのだ。これら大企業の勢力が、政府を破壊力へと変えた。アメリカは、利益のために、略奪され、共食いされた。今や産業が空洞化した荒れ地に、我々は暮らしている。この焦土作戦攻撃が、扇動政治家にとって、肥沃な土壌を産み出した。

1971年に、アメリカ商工会議所の弁護士で、後に最高裁判事になった故ルイス・バウエルが、文書題名“アメリカの自由企業体制に対する攻撃”と称するものに反撃するための運動概略をまとめた8ページのメモを書いた。このメモのおかげで、企業円卓会議が設置され、それが政府政策を決定し、世論を形成する、膨大な資金と政治的影響力を生み出した。パウエル・メモは大企業が“大学のキャンバス、説教壇、マスコミ、知識人や文芸雑誌”にいる大企業権益に敵対的な連中を沈黙させるのに使える手法を列記していた。

バウエルは、ふんだんに資金提供されたシンクタンクや保守派組織の設立を呼びかけた。政府による規制や環境保護に対するイデオロギー攻撃を、一般大衆に向けるよう、彼は提案した。大企業に好意的な学者やネオリベラル・エコノミストを大学に配置し、自由奔放な大企業権力に異議を申し立てる人々-特にラルフ・ネーダーを個人名をあげ、公的場面から追放することを彼は主張した。マスコミが、大企業権益の増大に有利なように物事を報じるよう監視し、圧力をかける諸機関を設立する必要があった。企業寄りの裁判官が裁判官席につけられた。

学者は右翼の監視リストによる圧力で支配され、大学経営者や裕福な寄贈者は取り込まれた。長期間にわたる攻撃で、マスコミ同様、大学はついに従順、凡庸、単色化した。

“学問的知識に対する代替物の必要性を彼は明確にしたのです”とシュレッカーは、パウエルについて述べた。“彼は、学界が左翼によって浸食されていると考えていました。彼は、これに取って代わる専門知識の情報源を設立することを望んでいました。それで1970年代に実現したのが、アメリカン・エンタープライズ研究所[1938年から存在している]や、ヘリテージ財団などの、マスコミの人々が専門知識を得られる一連の右翼シンクタンクの発展です。しかし、それには政治的動機があったのです。”

“信じられないことですが、これは成功しました”と、このキャンペーンについて、彼女は言った。“非常にまずいことです。我々が現在目にしているのは、知識に対する攻撃です。これで実現したのが、脱構築主義者なる一連の型にはまった教授連中、男性を憎悪する怒れるフェミニスト、異性の服装をする人々、もっと酷い現実離れしている連中を産み出した、1980年代末と1990年代の文化戦争です。”

イデオロギー攻撃には、公立学校や大学、公共放送や芸術への出資をやめるという大企業キャンペーンが並行した。人文科学は骨抜きにされた。大学における金融や経済学研究の拡大を含む職業訓練が、学生が自身の殻から抜け出して、他者への共感を抱き、表現するのを可能にする文化的、歴史的読解力を学生に会得させていた学科に置き換わった。学生は、もはや、どのように考えるべきか教えられず、何を考えるべきかを教えられる。市民教育は死滅した。トランプが典型である異様な無学が慶賀される。膨大な富だけが成功の目安だ。大企業支配の精髄である個人主義カルトこそが最高のものと化した。

マッカーシー時代、大半の赤狩り、ブラックリスト作成や検閲は、政府、特にJ. エドガー・フーバーの連邦捜査局FBIが行っていたとシュレッカーは言う。フーバーとマッカーシー、リチャード・ニクソンやロイ・コーンらは、連中の卑劣な審問の結果、人生と評判の破滅を残した。彼らは、事実上、言論の自由と思想の自由を破壊したのだ。ジュリアス・ローゼンバーグとエセル・ローゼンバーグ夫妻を電気椅子に送ったスパイ事件の検事だったコーンは、後にトランプの弁護士となり、13年間、親しい友人だった。コーンは、死の直前、1986年に、裁判所が、道義に反する、職業倫理に反する“特に不届きな”行為と呼ぶもののかどで、法曹資格を剥奪された。

現在の反民主的キャンペーンに関与している“遥かに多くの私的団体があります”とシュレッカーは言った。“色々なものが含まれます。だから非常に危険なのです。トランプだけではないのです。トランプが極めて強力になるのは明らかです。しかも、こうした勢力、地球温暖化否定論者、石油業界の連中がいます。今のこの時点で、彼ら全員が一致協力しているのです。”

我々は再度始めなければならない。市民社会復元の希望は、小規模な地方集団や共同体組織にある。それは、チャーター・スクール拡張を阻止し、環境規制を実施し、農家市場を構築し、最低賃金のために戦い、不法就労者を庇護し、憎悪犯罪に抗議し、国家の行き過ぎを軽減しようとする人々を地方の役所に選出するなどの日常的な課題から始まるのだ。

“我々は市民社会を再構成しなければなりません”シュレッカーは言う。“学界やマスコミのような仲介組織は空洞化しています。確かに、ジャーナリズムは生命維持装置につながれています。萎縮した組織を復活させなければなりません。”

“アメリカ人の心が攻撃されているのです”と彼女は言う。“トランプと共に我々が目にしている多くのものは、40年間にわたる知的水準低下の産物です。”

国家を封じ込めるため、独裁主義的、全体主義政権は、伝統的に危機を利用してきた。経済メルトダウン、大規模な国内テロ攻撃、気候変動による広範な荒廃や、おそらくイランか中国という他国に対する巧妙に仕組まれた敵意で、トランプと彼のならず者将官、億万長者や陰謀論者が、アメリカ合州国を暗黒郷に陥れることになるだろう。

戦争は、国内の弾圧を正当化し、確固たる権力をふるうため、扇動政治家連中が利用するおなじみの手段だ。もし連邦政府が、新たな敵を生み出すために、アメリカの戦争を拡大すれば、局所的抵抗さえも許されなくなるだろう。異議を唱える人々全員、罪をおわされることになる。怯えた脆弱な組織は、堂々と意見を主張する少数の人々の粛清を実行するだろう。社会の大半は、戦争精神病で萎縮し、標的にされるのを避けるため従順になる。抵抗は自殺に等しいものとなろう。

ダニエル・ベリガン神父は、2008年に、私との会話で、アメリカ帝国は、変更不可能な衰退状態にあると断言した。この崩壊を目の前にして、我々は、同情、質朴、愛と正義という非歴史的価値観を堅持しなければならないと彼は言った。文明の盛衰は、循環的な自然の歴史の一環なのだと彼は言っていた。

“世界中での悲劇は、我々が余りに多くの他者を引きずり下ろしていることです”彼は言った。“我々は潔く倒れることはありません。実に多くの人びとがこのために、自らの命を失っています。”

我々は、抵抗の短期的効果に夢中になってはならない。我々の多くにとって、失敗は不可避だ。過去、暴君連中は、良心の声を沈黙させてきた。彼らは再びそうするだろう。我々の品位を固守し、残骸の真ん中に、共同体を構築し、新たな組織を産み出して、我々は持ちこたえるのだ。お互いに支え合うのだ。おそらく、十分な人数の人々が持ちこたえて、再び始めることができるだろう。

クリス・ヘッジズは、かつて、ほぼ二十年間、中米、中東、アフリカや、バルカンで海外特派員をつとめた。彼は、50ヶ国以上の国々から報道し、15年間、海外特派員として、クリスチャン・サイエンス・モニター、ナショナル・パブリック・ラジオ、ダラス・モーニング・ニューズや、ニューヨーク・タイムズで働いた。

記事原文のurl:http://www.truthdig.com/report/item/in_the_time_of_trump_all_we_have_is_each_other_20161225
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賀状のなかに、「松陰神社の近くに暮らしているので、生地を訪問したくなった」というものがあって驚いた。もう十年以上会っていないので、そういう考えかたとは知らなかった。

この記事、人ごととは思われない。下記はそのままではないだろうか?

人文科学は骨抜きにされた。大学における金融や経済学研究の拡大を含む職業訓練が、学生が自身の殻から抜け出して、他者への共感を抱き、表現するのを可能にする文化的、歴史的読解力を学生に会得させていた学科に置き換わった。学生は、もはや、どのように考えるべきか教えられず、何を考えるべきかを教えられる。

『国家神道と日本人』島薗進著を読み始めた。IWJによる著者インタビューがある。

「改憲」の先にあるもの――日本会議と神社本庁は何を目指しているのか!? 安倍政権下で進む右傾化の真実に迫る!岩上安身による上智大学教授・島薗進氏インタビュー 2016.10.3


「第53回 69の忘年会」 2016.12.21

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