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2017年1月30日 (月)

ロシアにとって高いものにつきかねない経済制裁解除

2017年1月27日
Paul Craig Roberts

トランプがオバマ政権がロシアに課した経済制裁を解除しようとしているというソーシャル・メディアのつぶやきがある。演出巧者のトランプは、政権外部の誰かが彼のためにするのでなく、彼本人が発表したがっているはずだ。とはいえ、ソーシャル・メディアのつぶやきは良い読みだ。

トランプとプーチンは明日会談すると報じられている。会話では経済制裁問題は避けられまい。

トランプは就任一週目に彼の方針で素早く動いた。経済制裁解除を遅らせる可能性は低い。しかも経済制裁を解除しても、トランプには何の不利なこともない。アメリカと欧米の実業界は経済制裁を全く支持していない。経済制裁を唯一支持しているのは、トランプ政権にはとりこまれていないネオコンだ。ビクトリア・ヌーランド、スーザン・ライス、サマンサ・パワーは、他の国務省連中とともに去った。だからトランプを邪魔するものは皆無だ。

経済制裁は、ロシアを経済的により自立するようにし、ロシアがアジアとの経済関係を発展させるようにして、ロシアに役立ったというプーチン大統領は正しい。経済制裁解除は、実際、ロシアを欧米に取り込んで、ロシアを傷つけかねない。欧米における唯一の主権国家はアメリカ合州国で、それ以外は全てアメリカの属国だという点に、ロシア政府は留意すべきだ。ロシアは同じ運命から逃れられるのだろうか? 欧米に組み込まれたあらゆる国は、ワシントンの圧力にさらされるのだ。

経済制裁の問題は、それがロシアに対する侮辱だという点だ。経済制裁は、オバマ政権が言ったウソに基づいている。経済制裁の本当の目的は経済的なものではない。無法者国家として、ロシアを困らせ、無法者を孤立させるのが目的だ。トランプは、この侮辱をそのままにしておいては、ロシアとの関係を正常化できない。

だから、トランプが経済制裁を解除しようとしているというソーシャル・メディアのつぶやきは正しい可能性が高い。これはアメリカ-ロシア関係には良いだろうが、ロシア経済とロシアの主権にとっては、おそらくそれほど良くはなかろう。欧米の資本家連中は、ロシアの産業と原料を買い占めるために、よろこんでロシアに大きな負債を負わせるだろう。経済制裁は、外国の影響力に対するロシア経済の部分的防御でもあったので、経済制裁解除は、侮辱されなくなるのと同時に、防御を外すようなものでもある。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2017/01/27/lifting-sanctions-costly-russia/
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この記事と直接つながる内容の記事をいくつか以前翻訳した。

政治と経済という話題で新書『漱石のこころ ─ その哲学と文学』を思い出した。つくづく漱石は偉いと思う。

高校時代に読んで驚いたのは、『三四郎』で、軍国主義日本の崩壊を予言していたことだった。

この新書では、33ページにある。

 「あなたは東京がはじめてなら、まだ富士山を見たことがないでしょう。今に見えるから御覧なさい。あれが日本一の名物だ。あれよりほかに自慢するものは何もない。ところがその富士山は天然自然に昔からあったものなんだからしかたがない。我々がこしらえたものじゃない」と言ってまたにやにや笑っている。三四郎は日露戦争以後こんな人間に出会うとは思いもよらなかった。どうも日本人じゃないような気がする。
 「しかしこれからは日本もだんだん発展するでしょう」と弁護した。すると、かの男は、すましたもので、
 「滅びるね」と言った。――熊本でこんなことを口に出せば、すぐなぐられる。悪くすると国賊取り扱いにされる。

78ページに、滞英中の研究ノートの一部が引用されている。

余云ウ封建ヲ倒シテ立憲政治トセルハ兵力ヲ倒シテ金力ヲ移植セルニ過ギズ。剣戟ヲ廃シテ資本ヲ以テスルニ過ギズ大名ノ権力ガ資本家ニ移リタルニ過ギズ武士道ガ廃レテ拝金道トナレルニ過ギズ何ノ開化カ之アラン

彼は明治維新など評価していなかったのだ。そして『坊ちゃん』でみるように、有力政治家たちを徹底的に批判していた。

98ページに、明治三十五年(1902)三月十五日に書いた手紙の文章がある。

「欧州今日の文明の失敗は明かに貧富の懸隔甚だしきに基因致候」

168ページ、169ページには『私の個人主義』からの引用がある。

今の共謀罪の予言に思えてくる。

個人の自由は先刻お話した個性の発展上極めて必要なものであって、その個性の発展がまたあなたがたの幸福に非常な関係を及ぼすのだから、どうしても他に影響のない限り、僕は左を向く、君は右を向いても差支ないくらいの自由は、自分でも把持し、他人にも附与しなくてはなるまいかと考えられます。それがとりも直さず私のいう個人主義なのです。金力権力の点においてもその通りで、俺の好かないやつだから畳んでしまえとか、気に喰わない者だからやっつけてしまえとか、悪い事もないのに、ただそれらを濫用したらどうでしょう。人間の個性はそれで全く破壊されると同時に、人間の不幸もそこから起らなければなりません。たとえば私が何も不都合を働らかないのに、単に政府に気に入らないからと云って、警視総監が巡査に私の家を取り巻かせたらどんなものでしょう。警視総監にそれだけの権力はあるかも知れないが、徳義はそういう権力の使用を彼に許さないのであります。または三井とか岩崎とかいう豪商が、私を嫌うというだけの意味で、私の家の召使を買収して事ごとに私に反抗させたなら、これまたどんなものでしょう。もし彼らの金力の背後に人格というものが多少でもあるならば、彼らはけっしてそんな無法を働らく気にはなれないのであります。
 こうした弊害はみな道義上の個人主義を理解し得ないから起るので、自分だけを、権力なり金力なりで、一般に推し広めようとするわがままにほかならんのであります。だから個人主義、私のここに述べる個人主義というものは、けっして俗人の考えているように国家に危険を及ぼすものでも何でもないので、他の存在を尊敬すると同時に自分の存在を尊敬するというのが私の解釈なのですから、立派な主義だろうと私は考えているのです。
 もっと解りやすく云えば、党派心がなくって理非がある主義なのです。朋党を結び団隊を作って、権力や金力のために盲動しないという事なのです。

195ページには、大逆事件に関する森鴎外の関与について、こういう文章がある。

鴎外の暗躍は二重スパイも同然で、にわかに信じられないほど卑劣きわまりない。

高校生時代以来ずっと抱いていた鴎外への言い難い嫌悪感、この文章で納得した。この新書、改めて読み返している。

本日の日刊IWJガイド、大本営広報部全員が懸命にもりあげている噴飯もの茶番を鋭く批判している。茶番を指摘する「マスコミ」他にあるのだろうか?

【3】東京・千代田区長選が告示――ワイドショーは「小池知事VSドン内田」の構図で盛り上がるが・・・

 昨日1月29日、東京都の千代田区長選が告示されました。5選を目指す現職の石川雅己氏に加え、新顔の五十嵐朝青氏と、与謝野馨元財務相のおいである与謝野信氏の3人が立候補。投開票は2月5日に行われます。

 東京都の小池百合子知事と政治団体「都民ファーストの会」が石川氏を支援する一方、自民党東京都連は与謝野氏を支援。千代田区は「都議会のドン」と言われる内田茂都議の地元であるだけに、テレビのワイドショーなどでは「改革派の小池知事VS守旧派のドン内田」という構図で大きく報じられています。

 しかし忘れてはならないのは、小池知事はいまだに自民党を離党していないという厳然たる事実です。小池知事は、自民党東京都連の守旧派と対峙する改革派のポーズを取りつつも、結局は自民党と安倍政権の補完勢力なのではないか――。小池知事に関しては、こうした視点を忘れるべきではないのではないでしょうか。

 IWJでは、築地市場の豊洲への移転問題を中心に、「小池劇場」をしっかりとウォッチし、取材・中継を重ねています。その成果は、特集ページに一挙集約していますので、ぜひ、下記URLよりご覧ください。

※【特集】「小池劇場」はいつまで続くのか!? マスコミを熱狂させる小池百合子都知事の素顔に迫る!
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/feature/related_article-koike_yuriko

■<本日の岩上さんによるインタビュー>「未必の故意による黙示的共謀」って何!?共謀罪成立前にしてこの法の濫用!共謀罪後はどうなる!?~元法務大臣・平岡秀夫弁護士、斎藤まさし氏インタビュー

 おはようございます、IWJ記者の城石エマと申します。

 「あの上司、腹立つから今度一発食らわせてやろうぜ」「そうだね」

 たったそれだけで処罰の対象となってしまうかもしれない「共謀罪」が、今国会に提出されようとしています。実際に殴ったわけでも、殴るための鈍器を購入したりしたわけでもなく、話し合い、同意しただけで「共謀した」ことにされ、逮捕されるかもしれない共謀罪の危険性について、IWJはこれまでに特集ページを組んで繰り返しお伝えしてきました。

※【特集】マジありえない共謀罪・盗聴法・マイナンバー~超監視社会が到来する!?
http://iwj.co.jp/wj/open/%E5%85%B1%E8%AC%80%E7%BD%AA

 人は心の中で、常に善行だけを思い浮かべる存在ではありません。理性とは別に、よからぬ妄想や欲望や悪感情だって自然に湧いてくるものです。しかし、仮に誰かを殴ってやりたいという感情にとらわれても、実際に行為におよばない限り、処罰されることはありません。これは近代法の「内面の自由」の原則です。

 しかし、犯罪の実行行為がなくても、心の中で考えたことをうっかり話し、同意を得ただけで、実行の準備行為(凶器の購入など)に着手しなくても、その共謀事態が罪だとされて、処罰の対象にされてしまう――それが共謀罪です。
「内面の自由」に踏み込むだけでなく、親しい人との会話の内実にも踏み入るのです。「通信の秘密」という憲法上の大原則も、侵害される恐れがあります。

 人々のコミュニケーションの自由を侵害する許しがたい法案ですが、なんと、「共謀罪」を待たずして、すでに法が濫用され、「頭の中で考えたこと」「親しい人と話し合ったこと」が処罰の対象にされるどころか、故意に法を犯そうとしたかどうかも曖昧で、互いにはっきりと話し合ってはいない(明示的な共謀がない)にもかかわらず、「未必の故意による黙示的共謀」が有罪とされる裁判結果が出てしまったというのです。

 ちょっと信じがたい事実を岩上さんに教えてくださったのは、民主党政権時代に法務大臣を務めた、平岡秀夫弁護士です。信じがたい判決は、平岡弁護士が担当している事件で下されたものだといいます。

 事件は、2015年4月に行われた静岡市長選挙で、落選した高田都子(ともこ)氏陣営が、告示前に広告業者に投票を呼び掛けるビラ配りを依頼し、見返りに現金約540万円を支払う約束をしたなどとして、公職選挙法違反(利害誘導・事前運動など)の疑いが浮上したもの。この件に関係した、「市民の党」代表の斎藤まさし氏らが逮捕されました。

 「違法なビラ配りの指示などしていない」という斎藤氏側の言い分にも関わらず、昨年6月3日、静岡地裁は「未必の故意による黙示的な共謀が認められる」として、斎藤氏に懲役2年、執行猶予5年の判決を言い渡しました。

 故意ではないものを薄々わかっていたであろうととみなし(未必の故意)、共謀しあっていないのに、以心伝心で心が通じ合っていたなどと推量して、(黙示的共謀)、斎藤氏らが公職選挙法違反をはたらいたと判断してしまったという、前代未聞の判決だったのです。

 こんなめちゃくちゃが通ってしまうなら、共謀罪が成立してしまった後はいったいどうなってしまうのでしょうか!? 岩上さんは、共謀罪が「自首による減刑・免除」を規定していることから、「スターリン時代のソ連並みの密告社会が訪れる」と危惧しています。

 本日14時30分より、岩上さんは平岡弁護士と斎藤氏にインタビューをして、あまりマスコミが報道していないこの問題について詳しくお聞きします。ぜひ、ご視聴ください!

★「未必の故意による黙示的共謀」って何!? 共謀罪成立前にしてこの法の濫用! 共謀罪後はどうなる!? ~元法務大臣・平岡秀夫弁護士、斎藤まさし氏インタビュー
[日時] 2017年1月30日(月)14:30~
[YouTube Live]
https://www.youtube.com/user/IWJMovie/videos?shelf_id=4&view=2&sort=dd&live_view=501
[CAS] http://twitcasting.tv/iwakamiyasumi

 IWJは平岡弁護士の講演も取材しています。ぜひ、予習・復習にご視聴ください。

※「内面を言葉にしただけで取り締まられるとすれば想像するだけで息苦しい」――櫻井よしこ氏が共謀罪を的確に批判していた過去!なぜ「表現の自由」を抑圧する自民党改憲案を支持!? 2016.12.6
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/349873

※「共謀罪は治安維持法よりも恐い」――拡大解釈の余地が大きい共謀罪を元法相・平岡秀夫氏、海渡雄一弁護士らが徹底批判 通常国会召集日に300人以上の市民らが院内集会に参加 2017.1.20
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/357872

 また、岩上さんは共謀罪について、1月24日、元東京地検検事の落合洋司弁護士にもインタビューをしています。こちらもあわせてご視聴ください。

※「市民運動、労働組合…いくらでも対象は広がる」~元東京地検公安部の落合洋司弁護士が岩上安身のインタビューで「共謀罪」に警鐘!「組織犯罪には現行法で対処可能」と断言! 2017.1.24
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/358757

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コメント

なるほど・・。

「トランプは言うまでもなく、ビジネスマンなので、投資家とのつながりが深い。特に、今まで、私がブログで言ってきたように、ロシアとのつながりも否定できない。もし、パナマ文書にあるように、大投資家の隠し金庫がロシアにあるとすれば、その大投資家とも、繋がらないわけがない。」

http://ameblo.jp/rosyyellow/entry-12239157527.html

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