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2017年1月11日 (水)

『アイ・イン・ザ・スカイ』: リベラル対テロ戦争

Joanne Laurier
2016年3月31日

ギャヴィン・フッド監督; ガイ・ヒバート脚本

『アイ・イン・ザ・スカイ』は、イギリスとアメリカの高官連中がケニヤ、ナイロビでの無人機攻撃の結果を比較考量する政治・軍事スリラーだ。南アフリカ生まれの映画制作者ギャヴィン・フッド(『ツォツィ』、2005年、『レンディション』、2007年)が監督した、残念ながら、甚だしく、でっちあげられた、ありそうもない一連の環境に基づくテンポの速い映画だ。

映画の主人公は、いずれもソマリアの聖戦士集団アル・シャバーブの主要メンバーである過激派イギリス人女性と、その夫を追跡するイギリス軍の厳格な諜報将校キャサリン・パウエル大佐(ヘレン・ミレン)だ。南イングランドの軍事基地で、パウエルは、アメリカ無人機のカメラ映像を通して、この二人のイスラム主義の人物がナイロビに到着し、武装反政府派がパトロールしている貧しい人口の多い地域にある家に移送される途中であるのを把握する。


『アイ・イン・ザ・スカイ』のヘレン・ミレン

ケニア諜報機関が操縦するサイボーグ昆虫-小型監視装置が、自爆攻撃任務に備えるテロリストの画像を送ってくると、パウエルは、命令を“捕獲”から“殺害”に格上げしたいと思うようになる。

ミサイル攻撃を是非とも要求したいとは思うものの、ロンドンで、様々な政府閣僚や法律顧問と一緒の部屋で観察している上司のフランク・ベンソン中将(アラン・リックマン最後の映画出演)の承認を得なければならない。イギリス外務大臣(イアン・グレン)は、シンガポールで開催されている武器見本市に参加している。

一方、ネヴァダ州のアメリカ空軍基地では、攻撃による巻き添え被害を懸念する二人の若いアメリカ人の無人機パイロットが、パウエルの決断を恐る恐る待っている。北京で中国高官と卓球をしているアメリカ国務長官も、アメリカ政府法律顧問も、アメリカ国民一人とイギリス国民二人がいるにもかかわらず、(少なくとも)“標的”破壊を受け入れるのに協力的だ。

主な障害は、標的の家の近くで、パンを売っている可愛いケニアの少女アリア(アイシャ・タコウ)だ。シンガポールで、外務大臣は、自爆犯が多数の人々を殺害するのを放置されれば、イギリスにとって、広報活動上有利になるが、もし軍が、住宅を殲滅して、子供を負傷させたり、殺害したりし、特に、もし作戦映像が、ウイキリークスの類のメディアで公表されるようなことになれば-広報活動上の大惨事になると考える。

それにもかかわらず、より冷酷な発想がまさる …

『アイ・イン・ザ・スカイ』では、才能ある俳優たち(やコリン・ファースなどのプロデューサーたち)が説得力を与えており、その条件を基盤にしたそれなりに良く構成された映画だ。とはいえ、問題は、まさにこの“条件”つまり、何よりも“対テロ戦争”の正当性だ。そこで、そのような演技力も、ほとんどデマ宣伝の見かけを良くするの役立っているだけだ。


アラン・リックマン

現実の偽りの表現には、重要な筋書きの仕掛けが必要になる。映画制作者たちは、自爆犯を逮捕する可能性を早々に排除している。一体なぜだろう? 連中の人数はごくわずかで、彼らはビデオ制作や、ベストに爆発物を付けるのに時間をかけている。これがケニア警察の問題以上のものになるべき理由はないのだ。

ところが、過去15年間ほど“対テロ戦争”の提唱者が活用してきた脅し作戦シナリオに沿って、ヒステリーの雰囲気がでっちあげられる。2005年に、例えば、極右コラムニストのチャールズ・クラウトハマーが、ウイークリー・スタンダードに、拷問を正当化するため、以下の状況を設定して書いている。“あるテロリストが、ニューヨーク市に核爆弾を仕掛けた。それは一時間で、爆発する。百万人が死ぬことになる。あなたは、テロリストを逮捕する。彼は核爆弾をしかけた場所を知っている。彼は口を割ろうとしない。 … この男の親指を縛って、つり下げれば、百万人を救う情報が得られるという考えが少しでもあった場合、そうすることは許されるだろうか? … この悪漢の親指を縛ってつり下げるのは許されるだけではない。それは道徳上の義務なのだ。”

これは全て空想だ。そのような状況には決してなったことはないし、そうなることもない。これは、政敵連中を最も残虐な手段で処分するための独裁的支配と権限が欲しくてうずうずしている連中の主張だ。

『アイ・イン・ザ・スカイ』は、もちろん、そのように見なしているわけではない。とは言え、主題はほとんどイカサマに近い。このように強調された劇的状況は、思考を停止させ、パブロフの条件反射にそって、神経系を活動させる。しかも、可愛い無辜のケニア少女が時折登場して、緊張を高める。あらゆる点について、情報操作の匂いがする。(アンドリュー・ニコルの『ドローン・オブ・ウォー』のほうが、欠点はあるにせよ、無人機戦争に関しては、遙かに批判的な映画だ。)

映画制作者たちが決して切り出したり、たぶん考えたりしたこともない重要な問題がある。こうしたテロリスト連中は一体何者で、一体どこから来たのか? ケニヤや、東アフリカ全体の社会状態は一体どうなっているのか? 地域の歴史は一体どうなのだ? イギリスとアメリカの軍や諜報機関はそこで一体何をしているのか? 『アイ・イン・ザ・スカイ』には、歴史もなければ説明もない。

そもそも、これまでのあらゆる大規模テロ攻撃において、聖戦主義分子連中は、何らかの時点で、欧米列強や、その治安部隊とつながっていたり、あるいは、そうした治安部隊によって、あやつられていたり、極めて厳重に監視されていたりすることが明らかになっていることに留意すべきなのだ。

アル・シャバーブは、2006年に、ソマリアで出現し、2012年以来、アルカイダと正式に提携している。この組織の兵卒は、困窮した若者で満ちており、アメリカが支援するアラブ諸国政権とつながった工作員連中に率いられている。

しかも、ケニヤ政府は、アフリカの角支配を維持するというアメリカ政府の動因にとって、忠実なパートナーなあることは証明済みだ。この地域は、アフリカの新たな植民地化争奪戦の中心で、犯罪人連中が犯行現場に戻りつつあるのだ。しかも、東アフリカにおける19世紀末からの、かつての植民地宗主国の中で、最も残虐だったのはイギリス支配階級で、彼らによる、1950年代のマウマウ団の乱弾圧は、ベトナムやアルジェリアにおける残酷な戦争と同等の、帝国主義者による暴動鎮圧活動の最も悪名高いモデルの一つだ。

キャロライン・エルキンズの『イギリス強制収容所: ケニヤにおける帝国の残虐な終焉』によれば、イギリス植民地政府は、膨大な人数の人々を、収容所に拘留したり、鉄条網で包囲した村々に閉じ込めたりした。“1952年から、1960年の終戦までに、十万人あるいは、それ以上の拘留者が、疲労、病気、飢餓や、組織的な、肉体への残虐行為などの組み合わさった効果で亡くなった。”

南アフリカ出身の監督が一体どうして、まさに元植民地だった国における重大な政治的危機を、この最近の歴史にふれずに、本気で扱うことが可能なのだろう? 一体なぜ、フッドは、多数のイギリス高官が、ケニア国民に対して、実に繊細な、公平な態度で振る舞っているように、さりげない顔で描き出すことが可能なのだろう?


『アイ・イン・ザ・スカイ』

ほぼ必然的に、この知的屈伏度合いからして、映画制作者たちは、権力者、アメリカとイギリスの政治支配層、グローバル・テロの主要源の視点を採用する結果になっている。

映画制作者たちは、一定の反対の姿勢を示してはいる。それは偽善的な意思表示ではないかも知れないが、弱々しい。『アイ・イン・ザ・スカイ』には、アリアを殺害したり、四肢を損なったりする善悪についての長い議論場面がある。(これは、中東、中央アジアやアフリカにおいて、欧米列強が行っている破壊の程度からして、空想的なものに見える。) 更に、アメリカやイギリスの様々な政府高官も、魅力的には描かれていないが、新米無人機パイロットたちは良心があるように描かれている。(本当らかく思えるのは、意志決定者が、連中の戦争犯罪が暴露される可能性について感じることへの理解だが、フッドは、どちらかと言えば、人道主義へと転換している。) 最後の映像は、、パウエル大佐の冷酷さ同様、たぶん心をかき乱すことを狙っているのだろう。だが、これは、さほどのものではない。

あるインタビューで、監督はこう主張している。“ガイ[ガイ・ヒバート]の脚本が巧みに取り上げた疑問は事実に裏付けられており、彼は政策立案者、弁護士、軍、人権団体の中で行われている議論は追っていません。 … この映画が、謎めいた主題に見えるものを一般人に伝え、それを解明するよう願っています。”

これは全く真実ではない。問題は、映画制作者たちが、グローバル・ブルジョア連中のリベラル世論に余りに一体化しており、『アイ・イン・ザ・スカイ』を最初から最後まで、形成し、暖かく包み込む一連の悪質な想定を、彼らの出発点として受け入れていることなのだ。

記事原文のurl:https://www.wsws.org/en/articles/2016/03/31/eyei-m31.html
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小生、この映画見ていない。見る予定もない。見たいと思っているのは『この世界の片隅に』。

無人機に関連する記事をいくつか訳したことがある。下記はその一例。

こうした映画、決まって大きな構図、背景を無視する。他の映画の例はたとえば下記。

人ごとではない。千里の道も一歩から。

沖縄の基地問題をとりあげたがゆえに、官僚に騙され、ひきずりおろされた元首相の最新インタビュー。

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