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2017年1月22日 (日)

トランプは、ヘンリー・A・キッシンジャー & Coのための裏口男?

2017年1月9日
F. William Engdahl
New Eastern Outlook

「Back Door Man 裏口男」という言葉には、いくつか意味がある。ウィリー・ディクスンが書いた大本のブルースの歌詞では、人妻と不倫をしている男が、夫が帰宅する前に裏口を使って消えるという意味だった。ジェラルド・フォード大統領時代、フォード・ホワイト・ハウスで大統領首席補佐官をつとめ、不透明な手法で、自分が望んでいることを実現するディック・チェイニーの“手管”に「裏口男」という表現が使われた。閣僚指名が明らかになればなるほど、トランプ大統領プロジェクト丸ごとが、チェイニーを指して使われた意味で、ヘンリー・A・キッシンジャーの“裏口男”として出現しているように見えてくる。

「Drain the Swamp 汚れを押し流す」というトランプ選挙運動の言辞がすっかり忘れられている。選挙運動中の10月、トランプ候補は、こういう報道発表をした。“何十年もの既得権益の取り引きは、終わらせる必要がある。我々は腐敗の循環を打ち破らねばならない…ワシントンD.C.の汚れを押し流する頃合いだ…それが、私が、わが政府を再び誠実なものにするために倫理改革政策を提案している理由だ。”

これまでに、次期大統領は、史上どの大統領より多くの億万長者を、閣僚や他のトップの職位に指名した。AmWayの大富豪、ベッツィ・デヴォスが教育長官、ウィルバー・ロスが商務長官、リンダ・マクマホンが中小企業庁長官で、ヴィンセント・ビオラが陸軍長官だ。これも、億万長者と噂されるトランプ自身は含まずにだ。

ウオール街の既得特権ということで言えば、ゴールドマン・サックスは、新政権内で大変な権力を持っている。ゴールドマン・サックス・パートナーのスティーヴン・マヌーチンが、トランプの財務長官被指名者だ。ゴールドマン・サックス社長ゲイリー・コーンは、ホワイト・ハウス首席経済顧問となる。大統領移行チーム実行委員会メンバーのアンソニー・スカラムッチは、トランプの首席戦略官兼上級顧問スティーブン・バノン同様、元ゴールドマン・サックス銀行家だった。

この顔ぶれに、世界史上最も腐敗した軍産複合体を代表するアメリカ軍の将官四人が加わる。退役以来、大手軍需企業ゼネラル・ダイナミクスの取締役をしているジェームズ“狂犬”マティス元大将が国防長官だ。彼自身のコンサルティング会社を持つマイケル・フリン退役中将を国家安全保障顧問とし、ジョン・F・ケリー元大将は、国土安全保障省長官だ。

このコレクションに加え、アメリカ合州国最大の多国籍石油企業エクソン・モービルCEOのレックス・ティラーソンを国務長官に指名した。アメリカ最大の石油産出州、テキサス州元知事リック・ペリーをエネルギー長官に、シェールエネルギー支持派のオクラホマ州司法長官、スコット・プルイットを環境保護庁長官にしたので、前の不運な大統領と比較して、何らかの劇的な経済政策の急展開が現れ始めるだろう。

キッシンジャー地政学用の裏口

出現したものは快いものではなく、残念ながら、トランプの欺瞞に関する私が先に書いた記事の裏付を越える。

だが、一つ極めて重要な要素、つまり非公式ながら、トランプ政権の主要外交政策顧問として出現している、ヘンリー・A・キッシンジャー元国務長官の得体の知れない役割が全く漏れているように見える。ここ数カ月のキッシンジャーの足跡を追うと、一連の極めて興味深い会談をしていることがわかる。

2016年12月26日、ドイツ日刊紙ビルト・ツァィトゥンクは、同紙によれば、大統領として、トランプが、オバマの対決と経済制裁という政策とは劇的対比の、クレムリンとの“建設的協力”を追求するつもりであることを明らかにするトランプ移行チーム・メンバーによる分析の写しを掲載した。新聞は更に、非公式にせよ、トランプの首席外交政策顧問としての 93歳の元国務長官ヘンリー・A・キッシンジャーの役割を論じている。対策の一つとして、クリミアをロシアの一部だと、アメリカが公式に認め、2014年のクリミア併合への報復として、オバマが課したアメリカによる経済制裁を解除することも含め、プーチンのロシアと、トランプのアメリカ政府をより“調和した”関係にする計画をキッシンジャー起草していると記事は報じている。

一見、合理的に見える、このアメリカ政策変更にある落とし穴は、故テキサス大統領リンドン・ベインズ・ジョンソンだったら、“プーチンを(NATO)陣営に取り戻す”と上品に言ったかも知れない、キッシンジャーの狡猾な地政学的狙いだ。

キッシンジャーの狙いは何だろう? 彼が主張する、国家主権を尊重するような、いかなる“多極世界”の類でもないのは確実だ。キッシンジャーの狙いは、アメリカ世界覇権を脅かす、中国・ロシア間の深化しつつある二国枢軸を陰険に弱体化することだ。

2014年始めの、ウクライナにおける、オバマによる失敗したクーデター以来、過去数年間の傾向が、キッシンジャー一生のプロジェクト、別名“1991年、ソ連崩壊時、彼お好みの集団に語ったロックフェラーの言葉を使えば、過去何世紀も行われてきた国家自決より、確実に好ましい、知的エリートと世界的銀行家の超国家主権”を危うくしている。デイヴィッド・ロックフェラーの“世界政府に向かう行進”を危うくするのだ。ビルト・ツァィトゥンクのトランプ-キッシンジャー・メモには、ロシアと仲良くするというアイデアは、中国の軍事増強を相殺することを狙ったものだとある。言い換えれば、オバマとは違うゲームながらも、結局は、パワー・ゲームだ。

本当の「力の均衡」

キッシンジャーは、歴史的なイギリスの「力の均衡」地政学のごく少数の生き残っている実践者の一人だ。1386年のイギリスとポルトガル間のウィンザー条約以来、イギリスの軍と外交の歴史で行われて来た本当のイギリスの「力の均衡」というのは、二つのライバル国家のうち、より強い国を打ち破るため、イギリスが常に弱い方と連合し、後には、その過程で、疲弊した弱い方の国も略奪するものだ。これが、第二次世界大戦まで、イギリス帝国構築の上で、素晴らしく成功していた。

イギリスの「力の均衡」というのは常に、大国、この場合は、キッシンジャーが舵取りをしているアメリカ合州国が“均衡をとるのに”何をするかというものだ。1814年、ウィーン和平会議におけるナポレオン・フランスの敗北後、イギリス外相カスルリー子爵が、ヨーロッパ大陸のどの列強も、他の国々を支配できないようにする協定を起草し、この戦略は、1914年、第一次世界大戦まで続いた。多くの政治史家が無視しているのは、一世紀の間、主導的海軍大国として、世界を支配したイギリス帝国を産み出す上で、ヨーロッパ大陸の力の均衡は欠くことができないものだった。

1950年のハーバード大学博士学位論文として、キッシンジャーは、後に『回復された世界平和: メッテルニヒ、カスルリー、および平和の諸問題、1812年-1822年』と題する本になったものを書いた。このイギリスの「力の均衡」研究は、1960年代にロックフェラー家の仕事を最初に引き受けて以来、キッシンジャーのマキアベリ風策謀の中核だ。『回復された世界平和』の中で、キッシンジャーはこう述べている。“外交は勢力や大国の現実から離れることはできない。しかし外交は、他国の内政に対する道徳的で、おせっかいな配慮からは決別すべきだ。”更に彼はこう述べている。“政治家にとっての究極的な試験は、諸勢力の本当の関係を認識し、この知識を自分の目的に役立つように利用する能力だ。”

1950年代に、ネルソン・ロックフェラーや、ロックフェラー兄弟-ローランス、デイヴィッド、ウィンスロップとの関係が始まって以来、ヘンリー・キッシンジャーは、ロックフェラー家のグローバル化、つまり、デイヴィッドが、1991年に表現した国民国家を超越する世界政府の中核的な戦略家であり続けている。その中に、ビルダーバーグ会議や、デイヴィッドの三極委員会での、そして現在に至るまでの、キッシンジャーの役割がある。1971年に、ニクソンによる対欧米“中国開放”を促進してほしいと、良き友人デイヴィッド・ロックフェラーに頼んだのはキッシンジャー国務長官だった。当時のキッシンジャーによるリバランスの地政学的狙いは、当時、アメリカ政府の二大敵国のうちの弱い方中国を、少なくとも軍事的・地政学的な意味で当時はより強力な敵国だったソ連に対する、欧米同盟に引き込むことだった。

2017年が始まっている現在、敵国の役割は代わり、明らかに、中国が、三十年以上のunbridled産業・経済拡大の後、デイヴィッド・ロックフェラーのいわゆる世界政府に対する、より強力な挑戦者として登場した。1991年後、エリツィン時代の経済的蛮行と、産業空洞化の後のロシアは、キッシンジャーの考えでは、彼にとっての二敵国のうち、より弱体なのは明らかだ。習近平とプーチン指揮下の中国もロシアも、イランとともに、最も手ごわい国家主権の擁護者で、デイヴィッド・ロックフェラーの(私は彼を、ひな型として利用している)世界(ファシスト)政府の前にはだかる主要障害物なのだ。

キッシンジャーの奇妙な外交

キッシンジャーの最近の行動を、欧米が支配するワン・ワールド・オーダーに対し、出現しつつあるユーラシアの脅威を、いかにして潰すかという視点から見ると、おおいに辻褄があうように見える。彼は最近、政治初心者であるカジノの大物、トランプを、衝撃的なほどべたぼめに称賛している。12月始めのCBS TVインタビューで、トランプは“歴史上、極めて重要な大統領として残る可能性がある”とキッシンジャーは述べた。オバマが外国に対するアメリカの影響力を弱体化させたという見方からして、トランプ政権で“何か著しい、新たなものが出現することが期待できそうだ”とも彼は述べた。“これは並外れた機会だと申しあげる。”

初心者トランプの主要な外交政策の選択を、より子細に調べると、ヘンリー・A・キッシンジャーの足跡が見えてくる。国防長官として、ジェームズ“狂犬”マティス大将を選んだことは、キッシンジャーとつながる。風変わりで、大いに論議の的となっているカリフォルニア州の医療テクノロジーの公開会社でない株式会社Theranosで(最近まで)、ジョージ・シュルツ元国務長官、ウィリアム・ペリー元国防長官、ゲイリー・ラフヘッド元海軍大将、リチャード・ コヴァセヴィチ元ウェルズ・ファーゴ銀行会長らと共に、マティスも、キッシンジャーも、2016年初めまで取締役をつとめていた。

トランプがパットン将軍になぞらえたマティスは、2016年8月、オバマ、ブッシュと、ビル・クリントンという、過去の三政権を政権の海外軍事政策を、ロシアや中国や世界中のテロ集団による脅威を無視するという国家安全保障構想の欠如と認識されている点で、激しく非難して攻撃する報告書を書いた。

狡猾なキッシンジャーの足跡は、エクソン・モービルの会長、レックス・ティラーソンの国務長官という驚きの指名にも見える。エクソン・モービルは、もちろんロックフェラー家資産の根源だ。ティラーソンが、ロシアのプーチン大統領とロシア国営石油会社ロスネフチと深い個人的関係にあるからといって、ティラーソンを不適格とする理由にはならないと述べて、キッシンジャーは、決定的に、強くティラーソンを推奨した。“彼が余りにもロシアと親しすぎるという議論への関心は皆無だ。エクソンのトップとして、ロシアとうまくやるのが彼の仕事だ。ロシアと良い仕事上の関係が無ければ、エクソンのトップとして彼は役に立つまい”。キッシンジャーはマティス同様、キッシンジャーも、ティラーソンとともに評議員会のメンバーだ。ティラーソンもキッシンジャーも、ズビグニュー・ブレジンスキーや、元国防長官レオン・パネッタらとともに、極めて影響力のあるワシントンの戦略国際問題研究所 (CSIS)の評議員だ。

キッシンジャー持ち前の秘密外交スタイルで、1973年10月、ヨム・キプル中東戦争を引き起こす上で、実に巧みに役割を演じたキッシンジャーは“世界に通用する政治家”として、ウラジーミル・プーチンの尊敬を勝ち取ったもののようだ。2016年2月、キッシンジャーはモスクワを訪問し、プーチンと非公式に会談した。クレムリンのドミトリー・ペスコフ広報官は、この会談を“長年の関係で結ばれているプーチン大統領とヘンリー・キッシンジャーの友好的対話”の継続と表現した。

また12月2日、キッシンジャーは中国にとってのトランプ大統領の見通しを北京で会って話し合うため、習近平中国主席に個人的に招待された。キッシンジャーは、1971年以来、アメリカ政策の意図の仲介役として見なされ、中国でもかけがいのない信頼を受けている。

今やキッシンジャーは、次期大統領トランプと陰の外交政策顧問として特別な関係を持ち、キッシンジャー同盟者のティラーソンが国務長官、マティスが国防長官となり、キッシンジャーの強権で、欧米ワン・ワールド妄想の拮抗力となりうる可能性を破壊するため、中国とイランを標的にして、中国とロシアとイランの間に不信と不和を醸成することで、プーチンとロシアを利用しようという彼独自の「イギリスの勢力均衡」政治操作が姿を現し始めているのだ。

実際には、そもそもの始めから、ドナルド・トランプは、世界的地政学を、世界に対する支配的国家としてのアメリカの主導的役割へと引き戻すために、ヘンリー・A・キッシンジャーの「裏口男」となるべく企画されていたと考えずにいるには、世界的平和の政治家、キッシンジャーの最近の登場ぶりには、余りにも偶然の一致が多過ぎる。

F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。

記事原文のurl:http://journal-neo.org/2017/01/09/is-trump-the-back-door-man-for-henry-a-kissinger-co/

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大本営広報部大政翼賛会、芸能ニュースや、事故や、都議選挙茶番ばかり。
TPPの本質、日米FTAの展望や共謀罪や、沖縄基地の話は報じない。
外国の学者が、これほど詳細に分析してくださっているのに。

The Japanese State versus the People of Okinawa: Rolling Arrests and Prolonged and Punitive Detention
Gavan McCormack and Sandi Aritza
January 15, 2017

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コメント

「どなたか」とは、ひょっとして私めでございましょうか。
メタボ・カモ様を前にして「翻訳」など恥ずかしくてできません。kin117樣、どうかご自身で翻訳なさってくださいませ。

KIN117様 どなたかに訳していただけるといいですね。

この記事翻訳して頂けると助かります。
こういうまとまった記事日本語でないので^^;

Is Your Bank Owned By The Rothschilds? Here Is The Complete List | Neon Nettle
http://www.neonnettle.com/features/550-is-your-bank-owned-by-the-rothschilds-here-is-the-complete-list

   トランプ氏が大統領選に勝利して間もない2016年11月17日に、pressTVのホームページに興味深い記事が載った。
    http://www.presstv.ir/Detail/2016/11/19/494332/Trump-wants-to-remake-Europe-his-own-image
トランプ大統領とチーフ•ストラテジストのスティーブ•バノン氏が組んで欧州を作り替え、ユダヤーキリスト教的伝統を重視した欧米世界を構築すること、そのためにロシア、イスラエルとも協調するという内容。
  CIA工作を伴った米国の戦争経済の実態と比べるとあまりにも「青臭い説」であり、William Engdahl氏のロシアー中国分断工作説の方が説得力があるのは百も承知だが、私は敢えてこの「青臭い説」を支持したい。「政治の素人」トランプならひょっとして、、、と考えている。ただ、中国とイランの大好きな私にとって、両国が可哀想な気もするが、、、、

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トランプが本当に大統領に就任した。 とはいえ、お金かけて反トランプ派を仕込んでいる動きが丸見えなので、いずれかの時に弾劾しようという傾向は今後も継続するのでしょう。 さらに、基本的には、トランプの外交方針というのは非常に危ういことをざらざら言っているし、わけても、中露結託にくさびをという傾向が顕著になっていくのだろうとは前から書いている通り。 今日、「メディアに載らない海外記事」さんが、エングダールの最新の記事を訳されていたけど、おおむねこの見取りに私も賛成。 トランプは、ヘンリー・A・キッ... [続きを読む]

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