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2016年12月 8日 (木)

アメリカ政府の公式‘情報戦争’

2016年12月1日
William Blum
Consortium News Com

国務省やワシントン・ポストなどの公式アメリカ政府機関は、国民が信じるべき言説に対する連中の支配力の弱体化を巡って動揺していると、ウィリアム・ブルムは解説している。

11月16日、国務省記者会見で、ジョン・カービー国務省報道官が、RT(ロシア・トゥディ)のガイーヌ・チチャキャン記者と、彼の良くある感情的やり合いをした。今回はシリアにおけるロシアによる病院爆撃と、ロシアが国連が閉じこめられた人々に救援物資を送り届けるのを阻止しているという、アメリカの非難に関するものだった。

チチャキャンが、こうした非難について、詳細を尋ねると、カービーは“お国の国防省に質問されてはいかがでしょう?”と答えたのだ。

チチャキャン: ロシア、あるいはシリア政府が、国連が支援物資を送付するのを、いつ妨害したのかに関して何か具体的な情報を頂けますか? 具体的なものなら何でも結構です。

2014年4月24日の発言で、ジョン・ケリー国務長官は、ロシアのRT局を“プロパガンダ拡声器”と非難した。

カービー: 先月は救援物資が全く送られていません。

チチャキャン: それで、あなた方は、それがもっぱら、ロシアとシリアの政府によって阻止されたとお考えなのですか?

カービー: 我々にとって、妨害がシリア政権とロシアによるものであることに疑問はありません。まったく疑問の余地はありません。

マシュー・リー(AP通信): ちょっと待って、一言言わせてください。“お国の国防省”というような発言には気をつけてください。彼女は、我々と同じジャーナリストですから、彼女は鋭い質問をしているのですが、彼らは -

カービー: 国営企業の -- 国営企業の -

リー: 彼らは違います -

カービー: 国営企業メディアですよ、マット。

リー: いや、彼らは違います。

カービー: 国営の、自立していないメディアです。

リー: 彼女がしている質問は不適切ではありません。

カービー: 質問が不適切だとは言っていません...

カービー: 申し訳ないが、ロシア・トゥデイを、自立したマスコミを代表する、ここにいる他の皆さんと同じレベルに置くつもりはありません。

カービー国務省報道官は2011年に国務長官ヒラリー・クリントンが、RTについて語り、“ロシアが英語放送局を開局した。私はいくつかの国で見たが、非常にためになる。”と言ったのを知らないのではないかと疑わざるを得ない。

カービー報道官、イギリスの国営テレビ・ラジオ局で、アメリカ国内や、世界中で放送しているBBCの記者には一体どう対処するのかも疑問だ。

あるいは、国営のオーストラリア放送、ウィキリークスで以下のように書かれている。“オーストラリア首都圏、地方、海外でもテレビ、ラジオ、オンラインや、携帯電話サービス提供し… 品質と信頼性と、商業放送では、提供される可能性がない教育・文化番組の提供で大いに高く評価されている企業。”

ラジオ・フリー・ヨーロッパ、ラジオ・フリー・アジア、ラジオ・リバティー(中欧/東欧)とラジオ・マルティ(キューバ)もある。全て(アメリカ)国営で“自立している”ものは一つもないが、全てアメリカ合州国によって、世界を解放するため、十分に価値あるものと見なされている。

アメリカ国内にあるものも忘れてはいけない。大規模な政府助成なしには、ほとんど存続不可能なPBS (パブリック・ブロードキャスティング・サービス)と、NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)だ。こうした局が、一体どう自立しているのだろう? これまで、いずれかの局が、現代のアメリカ戦争にはっきり反対したことがあっただろうか? NPRが長らく、ナショナル・ペンタゴン・ラジオとして知られてきたのも無理はない。だが、いかなるイデオロギーを持ち合わせていない振りをするのが、アメリカ・マスコミのイデオロギーの一部なのだ。

2003年3月19日に、ジョージ・W・ブッシュ大統領はイラク侵略開始を発表した。

国営でないアメリカ・メディアは … アメリカ合州国には約1,400の日刊新聞がある。リビア、イラク、アフガニスタン、ユーゴスラビア、パナマ、グレナダや、ベトナムに対して行われたアメリカの戦争に対して、戦争中、あるいは、戦争直後に、はっきりと反対した新聞一紙、あるいはTV局一局を読者は挙げられるだろうか? あるいは、この七つの戦争どれか二つに反対したものは? 一つの戦争ならどうだろう?

ベトナム戦争開始六年後の1968年、ボストン・グローブが(1968年2月18日)39の主要アメリカ新聞社説のベトナム戦争に対する姿勢を調べ、“撤退を主張したのは一紙”もなかったことを見いだした。“ベトナム侵略”という言葉が、アメリカの主要マスコミに現れたことがあるだろうか?

2003年、主要ケーブル・テレビMSNBCが、大いに尊敬されていたフィル・ドナヒューをイラクでの戦争への呼びかけに反対したかどで降板させた。カービー報道官がMSNBCを“自立している”と言うだろうことは確実だ。

もし、アメリカ主要マスコミが、公式に国家に支配されていたら、アメリカ外交政策に関して、今の状態と大きく違っていただろうか?

新冷戦プロパガンダ

11月25日、ワシントン・ポストは“調査により‘偽ニュース’とロシアのつながり判明”と題する記事を載せた。ロシア国内の情報源が、アメリカ・マスコミとインターネットを、“アメリカ民主主義と、その指導者たちに対する不信の種を蒔くという広範な効果的な戦略の一環”として作られたまやかしの話題で、いかにして溢れさせているかについての話だ。

ワシントンD.C.中心部のワシントン・ポスト・ビル(写真出典: ワシントン・ポスト)

記事は言う。“ロシア戦術の高度さ”“が‘偽ニュース’を取り締まるフェースブックやグーグルの取り組みを煩雑にしかねない。”

ロシアの戦術には、“いくつかの州における選挙幹部コンピューターへの侵入や、選挙運動最後の数ヶ月間、クリントンを困らせた、ハッキングされた大量の電子メール公開”などがある、とポスト紙は言う (これまで通り、これは、ウィキリークスの功績とされている。)

記事は、ひたすら反ロシア言辞であふれている。

    • -オンライン誌の見出し - “トランプのための記事書き込み: ロシアが、いかにしてわが国の民主主義を破壊しようとしているか.”
    • -“ロシア・プロパガンダ・キャンペーンの驚くべき広がりと効果”
    • -“選挙期間中、始終ロシア・プロパガンダを売り込む200以上のウェブサイト”
    • -“虚報キャンペーンで流されたり、売り込まれたりした話題は、2億1300万回以上読まれた。”
    • -“今回の選挙シーズン中のロシア・キャンペーンは … オンライン世界が驚くべき、経済的に影響力のある‘愉快で刺激的な’内容に惹かれ、秘密の勢力が、いかに世界の出来事を支配しているかに関する人気のある陰謀論を追うのにつけこんで機能した。”
    •   -“聴衆に対し、ロシアが支援するまやかしのニュースが、伝統的報道機関を打ち負かしている”
    •   -“彼らは我々の技術と価値観を利用して、我々に対する疑問の種を蒔いている。我が国の民主的制度を損ない始めている。”
    •   -“ロシア・プロパガンダ作戦は、イギリスの欧州連合からの離脱‘Brexit’推進のためにも活動した。”
    •   -“こうした話題の一部は、自立した報道機関のスタイルと調子を真似ているが、時折偽のまぎらわしい話を、報道の中に織り込む国が資金提供するロシアの情報サービスである、RTとスプートニクが情報源だ。”
  •   -“様々な他の偽記事 - トルコのインジルリク空軍基地で、クーデターが始められたという偽報道や、アメリカ合州国がいかにして軍事攻撃を行い、それをロシアになすりつけているかという話”

元アメリカ駐ロシア大使マイケル・マクフォールの発言が紹介されている。彼は“候補者が推した#CrookedHillaryハッシュタグまで使って、選挙運動中に表明したスプートニクの極端なトランプ支持には驚かされた”と言う。マクフォールは、一般的に、ロシア・プロパガンダは、反対派や批判者を弱体化させることを狙っていると述べた。

“彼らは議論に勝とうとしてはいない。何事も相対的に見えるようにしようとしている。ある種、冷笑主義の訴えだ。” [冷笑主義? うわー! モスクワ・ファシスト/共産主義者連中は、次は一体何を考えだすだろう?]

とは言え、ポストはこう書いている。“金曜日、RTは、研究者たちの所見に電子メールで反論し、アメリカ選挙に関連するいかなる偽ニュース記事を制作したり、誇張したりする上で、どのような役割も演じたことがないとした。”RTの言い分がこう引用されている。“‘偽ニュース’に関する記事が、裏付ける証拠がない偽の主張で構成されているのは皮肉の極みだ。 RTは、アメリカ選挙に関する‘偽記事’一本たりとも作っておらず、そうしたあらゆる主張や当てこすりを断固拒否する。”

逆の政治的メッセージをもったニュースをでっちあげるため、ロシアの通信社により、いかに、書き換えられたり、歪曲されたりしたかという、具体的なニュースの実例一つたりとも、ワシントン・ポスト記事が提示し損ねていることに留意すべきだ。

このようにあからさまな反ロシア・プロパガンダの背後にあるウソは一体何なのだろう? 新冷戦において、そのような疑問に答えは不要だ。そもそも、新冷戦の存在理由は、単に、アメリカの世界支配の邪魔をしているがゆえに、ロシアの信用を損ねるのが目的だからだ。新冷戦は、あらゆる政治傾向の主要マスコミにわたっておこなわれている。

ウィリアム・ブルムは、作家、歴史家で、アメリカ外交政策の著名な批判者。彼の著書には、Killing Hope: U.S. Military and CIA Interventions Since World War II(Killing Hope: 第二次世界大戦以来のアメリカ軍とCIAの介入)や、Rogue State: A Guide to the World’s Only Superpowerなどがある。

記事原文のurl:https://consortiumnews.com/2016/12/01/official-washingtons-info-wars/
---------

シリアで、アメリカ側は、ロシアが展開している医療施設を攻撃している。自分がしていることを、相手もしていると主張するのが宗主国のいつもの流儀。

2010年4月にも、ウィリアム・ブルム氏の記事を訳した。

アメリカにおけるマスコミの偽情報作戦

ウィリアム・ブルム氏の『アメリカの国家犯罪全書』は読んだことがある。

日本政府の公式‘情報戦争’で、大本営広報部、カジノ法案を素晴らしいとヨイショするのはさすが少ないようだ。TPPでも同じ態度を示すなら立派だが、それはありえない。TPP虚報宣伝こそ公式‘情報戦争’業務。TPPで医療を売り払い、日本語を売り払い、戦争法案で命を売り払うのを推進するのが大本営広報部本業。

IWJ、カジノの話題も扱っていた。

※2014/01/30 【東京都知事選】「国家戦略特区」とカジノ構想で悪化する東京都の格差と貧困 ~岩上安身による新里宏二弁護士インタビュー
http://iwj.co.jp/wj/fellow/archives/6078

植草一秀の『知られざる真実』
2016年12月7日 安倍政権が亡国のTPP批准に執着する黒い理由

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コメント

カジノ法案・・はぁ力が抜ける。・・ギャンブルを国策みたいに扱うなんてのは、先進国のする事ではないですね。
恥という概念を持たない幼稚な政権ならではの発想と言えましょう。

カジノはマフィアの隠れ蓑になり易いですから、性犯罪や人身売買などの人権に係る犯罪の温床になる危険性がありますから嫌ですね。
ま、安倍政権自体がマフィア政権ですから、今更驚きもしませんが・・。

そのカジノの要素をも含む最大の事案であるTPPが明日、ついに最終可決、成立との事。
あぁ、見たくない。可決されるシーンなんて見たくない。
議長の、あの「賛成多数と認めます、よって翻案は可決、成立致しました」というセリフを聴く度に腹立たしくて血圧が上がって・・もう、気が狂いそうになりますわい。

TPP自体は発効しないでしょうけれど、RSEPや、直近で言うと日欧EPAなどがあって、こうした自由貿易協定にはTPP関連法案の内容が反映されてしまうのではないかと、気がかりです。
更に気になるのは日米FTA。
それでなくても特区やその他規制緩和で、それらが複合的に国民生活を圧迫し、数年後にはかなり多くの人が悲惨な目に遭っている事でしょう。

そこへいくと自民、公明、維新、こころ、無所属クラブの売国議員の面々は自分の頭では何一つ考える必要もなく、悲惨な未来を想像する能力も無く、幼稚なだけに能天気で居られて、よい身分ですなぁ。
あのB層議員たちの無能ぶりを見る度に、ノストラダムスの予言詩の中にある、「無知なるが故に幸福」という言葉が脳裏に浮かびます。

民進党もトップが二人揃って自民党寄りの人物ですから、可決は予定調和なのでしょう。
期待する方が無理というものです。
(民進党は解体、もしくは国民が議員を精査して選ぶ必要あり)

もはや国民が目覚めるのが先か、グローバリズムに飲み込まれるのが先か?という時間との戦いです。
次の選挙までに、あと一割の国民が目を醒まさなければ破滅が待っているでございましょう。

たかが外国の偽ニュースごときで脅かされているのなら、そんな民主主義はいっそのこと滅びてしまった方がいいのでは?

「情報戦争」のひとつとして、今年かなり強烈だったのは「ロシアのドーピング問題」があったと思います。今週ロシア第1チャンネルで、面白い番組があったのでご報告します。
https://www.1tv.ru/doc/pro-sport/bolezni-vysshih-dostizheniy-dokumentalnyy-film-o-prieme-dopinga-zarubezhnymi-sportsmenami

ハッカーがWADA(世界アンチ・ドーピング機関)に侵入し判明した事として、西側、特にアメリカの選手の間では「病気」と称して「治療薬」を処方され服用がWADAにより認められている。その例として今夏のオリンピック女子体操の優勝者バイルスは、幼い頃から「注意欠陥障害」でアンフェタミンを常用してきた、と本人の言。WADAの用語では「治療用例外」とされているそうです。さらに番組ではノルウェーの元距離スキー選手がインタビューに応じ、一度も患ったことはないけども喘息の薬を処方され試合の時、使っていたと証言しています。吸引型のステロイドで肺機能が飛躍的に向上すると、記者自らが実験していました。確か僕の記憶では、ハッカーからのリストに女子平泳ぎで優勝した日本人の名前もありました。彼女も喘息持ちらしいです。後、鬱病と称してテストステロンを使用している例等々。メルドニウム(シャラポワが使用)は、ロシア系が使っているから。ドーピング、西側選手には「例外」が自由に認められるということで、WADAとは一体何なのか、ドーピングビジネス機関かと言っていました。

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