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2016年11月18日 (金)

事態は考えている以上に酷い

2016年11月11日
Chris Hedges
Truthdig


次期大統領ドナルド・トランプのマンハッタンの住まい、トランプ・タワーを警備するニューヨーク市警察官。(Richard Drew / AP)

ドナルド・トランプ支持者たちが、裏切られたことを自覚した時、広範な社会不安に火が点く。これが一体いつ起きるのかは私にはわからない。だが、それが起きるのは確実だ。トランプが大統領の座を勝ち取って以来、戦争産業、国内治安・刑務所産業複合体株への投資は急増した。軍隊化した警察国家は、膨大な儲けの種なのだ。

読む: ‘惨めな人々’の復讐

この国の資本主義的民主主義は、二十年以上前に機能を停止した。民主党と共和党が実行した大企業クーデターに見舞われたのだ。本当に民主的と呼べる組織はもはや残されていない。機能している民主主義であったら、トランプもヒラリー・クリントンも決して大統領指名候補になどなっていなかったはずなのだ。労働者階級、司法制度、選挙政治、マスコミ、社会福祉、生態系、教育や、市民的自由に対する大企業による長期にわたる冷酷な攻撃、新自由主義という名目のもとで、国家の内臓を摘出したのだ。おかげで、国は朽ち果てた廃墟になってしまった。我々は無知をほめたたえている。我々は、政治論議、ニュース、文化や、知的探求を、有名人崇拝と見せ物に置き換えてしまった。

歴史学者のガエタノ・サルヴェミニが指摘した通り、ファシズムとは“自由な体制を放棄する”ことだ。ファシズムは機能停止した民主主義の産物なのだ。ローマ帝国後期の独裁制時代のように、民主的な形は残るが、現実は専制政治で、我々の場合は、大企業専制政治だ。市民は、権力構造の中に、本当に参加しているわけではない。

“ワイマール・ドイツと非常に良く似ています”六年前に彼と話した際、ノーム・チョムスキーは並外れた洞察力で言った。“類似は衝撃的です。議会制度に対する大変な幻滅もありました。ワイマールで、最も衝撃的な事実は、ナチスが社会民主主義者や共産主義者をうまく破壊できたことではなく、伝統的政党、保守党や自由党が憎悪され、消滅したことです。そこに真空が生まれ、ナチスは極めて賢明かつ聡明に、まんまと乗っ取ったのです。

“アメリカ合州国に、正直で、カリスマ的な人物が登場していないのは実に幸いなことです”とチョムスキーは続けた。“あらゆるカリスマ的人物は、[ジョセフ]マッカーシーや[リチャード] ニクソンや、福音伝道者連中のような、自滅する、あからさまないかさま師です。もし誰か、カリスマ的で正直な人物が登場すれば、欲求不満、幻滅、大義名分をもった怒りがあって、首尾一貫した対応が欠如しているこの国は、大変なことになります。もし誰かが‘我々の答えが見つかった。我々には敵がいる、と言ったら、人々は一体何を考えるでしょう? ドイツでは、ユダヤ人でした。アメリカでは、違法移民と黒人でしょう。白人男性は、迫害されている少数派なのだと言われるでしょう。我々と国の名誉を守らなければならないと言われるでしょう。軍事力が称賛されるでしょう。人々は打擲されます。これは大変な勢力になりかねません。もしそういうことになれば、ドイツより遥かに危険になるでしょう。アメリカ合州国は世界大国です。ドイツは強力でしたが、より強力な相手の国々がありました。こうしたことがずっと先のことだとは思えないのです。もし世論調査が正確であれば、次回選挙で圧勝するのは、共和党ではなく、右翼共和党、狂った共和党です。”

反対派に対する弾圧は、間もなく、過去の全体主義政権下の弾圧と似たものになるだろう。国家安全保障は、浸潤的な、感じられる存在となる。最も穏和な形の反政府派が、国家安全保障にとっての脅威であるかのように扱われるようになるだろう。多くの人々は、国家の憤怒を避けようと願って、従順で受け身になるだろう。それでも、我々は反撃しなければならない。我々は持続的な市民的不服従を推進しなければならない。選挙以来、多くの人々が街頭でしているように。しかし、あべこべの全体主義体制において我々に与えられる民主的空間は遥かに狭いものになることを認識しなければならない。

彼を拘束する民主的機構など、もはや存在していないので、トランプは、社会保障の民営化から、軍隊化した警察部隊による非武装国民無差別殺人での責任免除、はては地球上の生命を減少させ、絶滅させる可能性が極めて高い化石燃料産業と戦争産業の解放に至るまで、大企業による攻撃を加速するだろう。彼の政権では、共和党の狂った過激派、酷い知的、道徳的貧寒さと、現実を無視する驚くべき能力が特徴の男女が跋扈するだろう。こうしたイデオローグ連中は、もっぱら威嚇と暴力の言葉で語る。

国民の半数は貧困生活をしている。わが国の、かつての製造業の中心は、荒れはてた廃墟だ。法の適正手続きや、人身保護令状を含む我々の憲法上の権利は、司法の命令で、我々から取り上げられた。大企業と億万長者階級は、合法的な税金不払いを行っている。警官は、街頭で、非武装市民を射殺している。軍隊は、国防権限法第1021条の下で、アメリカ国民の特例引き渡しを行う権限を与えられており、アメリカ合州国内で、法の適正手続きを無視して、アメリカの闇の収容所で、彼等を無期限に拘留している。アメリカ国民は、人類史上で、最もスパイされ、監視され、盗聴され、写真撮影され、モニターされている国民だ。政府が、一日24時間監視していれば、人は“自由”という言葉を使えなくなる。これは、主人と奴隷の関係だ。この種の監視権限を行使する政府は、素早く全体主義と化する。アメリカを瞬時にして残虐な警察国家に変身させる、法的、物理的仕組みを、トランプと彼のお仲間は、破綻したエリートから受け継いだのだ。

ルディー・ジュリアーニ、ニュート・ギングリッチは、テロリストと見なされたアメリカ国民の市民権剥奪を主張している。マイケル・フリン退役中将やジョン・ボルトンなどの連中は、法的、道徳的抑制など持ち合わせているまい。連中は、善悪、白黒、愛国者か売国奴、というマニ教的二元論のレンズで世界を見ているのだ。哲学者のウォルター・ベンヤミンが、ファシズムについて書いている通り、政治は美学に転換されてしまう。しかも、ベンジャミンは警告していたが、ファシストにとって究極的に魅力的な経験は戦争だ。

貧しい人々や有色人種にお馴染みの、我が国内植民地各地における国家テロと国家による暴力は、国民全員にお馴染みのものとなるだろう。人種差別、民族主義、女嫌い、イスラム嫌悪、 反ユダヤ主義、不寛容、白人優越主義、宗教的頑迷さ、ヘイトクライムや、軍事文化という超マッチョ価値観崇拝が、政治的、文化的論調を規定してしまうだろう。支配層エリートは、増大する欲求不満や憤怒を、無防備な不法入国労働者や、イスラム教徒、アフリカ系アメリカ人、ラテンアメリカ系人、同性愛者、フェミニストなどなどに逸らせようとするだろう。白人自警団の暴力は、国家が悪魔化する、法律上の面倒な問題が少ないか皆無の人々に向けられるだろう。国内と海外で新たな敵が作り出されよう。おそらく、ロシアとの対立を含め、中東での果てしない戦争は拡大されるだろう。

ラルフ・ネーダーのように、この暗黒郷の到来を予見していた人々もいた。存続可能な第三政党を立ち上げ、疎外された労働者階級に未来図と希望を与える市民運動に力をつけようと彼らは必死に頑張った。より長期間、大企業権力が経済・政治体制を締めつければ締めつけるほど、アメリカに一層ファシズムの種が播かれることになるの彼らは知っていたのだ。

支配者連中は、ネーダーや、後にはジル・スタインを議論に入るのを排除し、投票対象になるのを困難あるいは不可能にすべく、無数の障害を設置し、選挙運動を、長期間、何十億ドルもかかる金を喰う見せ物に変え、有権者を脅すための恐怖政治を巧妙に活用した。だが、エリートは、破綻したリベラル層に支援されていたのだ。次から次の大統領選挙、特にネーダーが、2000年に成功した後、いわゆる進歩派は、阿呆らしい「よりまし」の呪文に屈したのだ。諸々の第三政党や反体制運動の当然の同盟者であるはずの連中が、共和党同様、帝国主義という怪物に仕えて、貧しい人々、労働者階級や中流階級に対して戦いをしている民主党に、みじめにも身を任せたのだ。クリントン選挙運動に魂を売った際、バーニー・サンダースがしたと同様、リベラル層は臆病さゆえに、あらゆる信頼性を失ったのだ。リベラル層は、決して、立ち上がって、戦おうとはしなかった。本気では信じていない言葉や思想を口にしたのだ。彼らは、トランプを産み出した現象に重大な責任を負っている。ビル・クリントン大統領が1994年に北米自由貿易協定を成立させて以来、彼らは、民主党を放棄して、労働者階級の利益を擁護する諸政党や組織する先見を持っているべきだったのだ。もし彼らが男女労働者たちのために立ち上がっていれば、彼らは労働者たちが、原初ファシストに誘惑されるのを防げていたはずなのだ。

失敗したアメリカ民主主義の腐敗が、マスコミの産物として、ペテン師を吐き出した-最初は、リアリティー・テレビ番組で、虚構の万物の支配者を、後には寄席芸人として、政治家を演じる人物を。トランプは、広告費と視聴率を稼いでくれるのだ。真実や現実は無関係だった。彼が大統領候補指名を勝ち取って、ようやく初めて、マスコミは、自分たちが作り出したフランケンシュタインが、脅威であることに気がついたのだが、遅かりしだった。リベラル層以上に嫌われている活気のない集団があるとすれば、商業マスコミだ。マスコミが、トランプを攻撃すればするほど、トランプは、よりまっとうに見えるのだった。

トランプは、人類学者が“危機カルト”と呼ぶものの表象だ。末期的衰退状態にある社会は、えてして呪術思考に引きこもりがちだ。現実は余りにひどくて耐えられないのだ。そうした社会は、失われた黄金時代の復帰を約束する。良い雇用が復活する煽動政治家、あるいは食わせものによる、現実離れした、不可能な約束を信じるしかない。国は再び繁栄する。荒廃した都市は回復する。アメリカは再び偉大になる。こうした実現不可能な約束は、1880年に、自称宗教予言者ウォヴォカが、アメリカ先住民に言いふらしたものと大差ない。彼は信奉者たちに、ゴースト・ダンスと呼ばれる五日間の踊りの儀式を行うよう呼びかけた。アメリカ先住民は、銃弾から守ってくれるというシャツを身につけた。彼等は、バッファローの群れは帰ってくるし、死んだ戦士や酋長たちは地中からよみがえり、白人は消える、と力づけられた。こうした約束の一つたりとも実現しなかった。彼の信奉者の多くは、アメリカ陸軍によって、羊のように撃ち殺された。

我々は、人類史上、最も深刻な危機に直面している。我々の対応は、気候変動を信じない人物を大統領に選ぶことだった。社会が現実から絶たれてしまえば、真実を語る人々は、社会ののけもの、国家の敵となる。彼等は国家による過酷な弾圧を受けることとなる。危機カルトの白日夢にふける人々は、カッサンドラのように凶事を予言するこうした人々の根絶に喝采するのだ。魅力ある魔術思考神話は快いアヘンだ。だが、この麻薬は、あらゆる麻薬同様、みすぼらしさと死へとつながっている。

記事原文のurl:http://www.truthdig.com/report/item/its_worse_than_you_think_20161111

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「週刊金曜日」11月18日号に「敗れたのは軍産複合体とウォールストリートだ」というポール・クレーグ・ロバーツ氏記事翻訳が掲載されている。
どうやら、「労働者階級が選挙に勝った」と同じ原文の翻訳のように思える。
比較されたいのであれば、立ち読みではなく、「購入して」お読み頂きたい。

衆参憲法審査会再開。
「現行憲法は、GHQ支配下で作られたから、自主憲法を作る。」というたわごと。
「現行憲法は、GHQ支配下で作られたが、宗主国に不都合な点が目立つので、属国傀儡が自主憲法とされるものに変える。」のにすぎない。憲法を破壊するまえに、まず日本が自立するのが先だろう。都心上空を宗主国軍隊に支配されながら、独立国面をするのは、70年早い。

世界に先駆けて、参勤交代ご挨拶に飛んで行ったことを自慢する大本営広報部。

TPPが流れては困るという、夜の呆導番組をみるにつけ、属国であることを再確認。

事態は考えている以上に酷い

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