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2016年11月15日 (火)

アメリカからの離脱というアジアの構造的転換を引き起こしているフィリピン

F. William Engdahl
2016年11月9日

選挙は何とも大きな変化をもたらすものだ。今年6月、ワシントンの傀儡ベニグノ・アキノ3世を継いで、彼がフィリピン大統領として宣誓して以来、あけすけで、率直な物言いをするロドリゴ・ドゥテルテは、戦略的に極めて重要なアジアの国を、アメリカの地政学的軌道から離脱させる方向で動いている。ドゥテルテ大統領はアジア歴訪を行い、まず中国、そして日本を訪問した。彼は間もなくロシアのプーチンとも会談する予定を示した。中国を軍事的に包囲することを狙ったペンタゴンのアジア基軸に、彼は巨大な穴を開け始めたように見える。しかも、フィリピンの転換は、ベトナムから、ミャンマー、更に、その先へと、アジア中で構造的転換を引き起こしつつある。

変化の兆しは、就任直後、フィリピンの重大な増大しつつある麻薬問題を解決するという彼の非常に人気のある公約に関して現れ始めた。賞金稼ぎの連中が、裁判無しに現場で麻薬密売人を射殺しているという報道がなされた際、アメリカ大使フィリップ・ゴールドバーグとオバマ政権は、ドゥテルテを批判したが、ドゥテルテは、批判をきっぱり拒否し、関係を冷却させた。ドゥテルテは、ゴールドバーグは“ゲイのろくでなし”で、オバマは“売女の息子”だと反撃した。ドゥテルテ発言の正確さ問題はさておき、彼は決定的に国際政治に新たな調子をもたらし、巨大な政治力を持ったひと握りの連中、前任者アキノのように、ワシントンのポチになるつもりはないことを示したのだ。彼のあからさまな反抗に、世界中の発展途上国が気づかないはずがない。

だが、かつてアメリカが占領していた共和国が同盟政策を構造的転換する明らかな兆しは、ドゥテルテ大統領による最近の北京訪問の際に現れた。10月20日、彼は天安門広場にある人民大会堂で、中国の習近平主席に迎えられた。

オバマ政権にとっては、明らかな驚きだが、ドゥテルテは北京で、中国と世界に、アメリカ合州国からの“離脱”を宣言した。北京では、中国とフィリピン沿岸の間の“九段線”として知られるものの内側にある、様々な島嶼あるいは岩礁に対する中国のあらゆる主張を否定した、7月12日のハーグ常設仲裁裁判所(PCA)裁定を巡る対決をするのではなく、ドゥテルテは商取引と平和的共存の話をして、中国で四日間過ごした。

北京でのその後のフィリピンと中国財界首脳会合でドゥテルテは述べた。“軍事的にも、経済的にも、アメリカ合州国からの別離を宣言します。アメリカはフィリピンを失ったのです”中国側主催者に対して、ドゥテルテはこう続けた。“皆様のイデオロギーの方向に私は路線を変え、プーチンと話すためにロシアに行き、世界に逆らっている我々三カ国があると言うつもりです。中国とフィリピンとロシア。” 文化的にも、彼は中国に近い。彼の母方の祖父は福建省厦門からの中国人移民だった。アジアにようこそ。

ルビコン川を渡る決定的行動

ドゥテルテの声明は、欧米マスコミとホワイト・ハウスが描き出そうとしているような思いつきではない。北京訪問の一カ月前、9月のASEANサミット時、ロシアのドミトリー・メドベージェフ首相との非公式会談で、ドゥテルテは、フィリピンとアメリカ合州国との関係で、後戻りできない状況になるところだとロシアに言い、この動きに対するロシアの支援を求めていることを明かしたと報じられている。“私は今、私とアメリカ合州国の間のルビコン川を渡る決定的行動をするところだ。少なくとも、今後六年間、私はあなた方の助けが必要だ”と彼はロシア首相に言っていた。

ホワイト・ハウスと欧米マスコミは、この並外れて、あけすけなフィリピン新大統領の発言を、フィリピンにとって最高の取り引きを実現するための姿勢として描こうとしたが、背景と、それ以後の進展が、逆に北京との交渉は、より深遠なフィリピン地政学戦略の一環であることを示唆している。

北京に向けて立つ数日前、ドゥテルテは、フィリピン・マスコミに 南シナ海を巡る中国との紛争に関し“戦争は選択肢にないと語った。その逆は何だろう? 平和的な交渉だ。”彼は更に、ちょっとした事実ではとどまらない巧みな現実主義の調子で“お金を持っているのは、アメリカではなく中国だ”と述べた。

週末までに、ドゥテルテのフィリピン企業と政府代表団は、135億ドルもの額の様々な契約に調印した。ドゥテルテは、フィリピンは、習の中国による壮大な一帯一路インフラ・プロジェクトに参加したいとも述べた。習主席は中国とフィリピンに触れ、両国のことを“敵意や対決の理由がない海を隔てた隣国”と呼んだ。

欧米マスコミは、ドゥテルテがマニラに帰還した翌日10月25日、中国軍艦船が紛争対象の南シナ海の黄岩島(スカボロー礁)から静かに去った事実をほとんど報じない。フィリピンのデルフィン・ロレンザーナ国防相は退去を発表し、こう付け加えた。“もし中国艦船が去ったのであれば、それはわが国の漁師が地域で漁業を再開できることを意味している。”

全てペンタゴンのアジア基軸という、アジア隣国諸国による対中国軍事包囲の一環としてハーグ裁判所を、事実上、違法に操作することにより、アメリカ政府が解き放つことを期待していた対立を、この中国の動きが劇的に和らげた。中国-フィリピンの素晴らしい動きに激怒して、ワシントンのネオコンは臍を噛んでいるに違いない。

ラモスの静かな外交

裏舞台で、習-ドゥテルテ会談のお膳立てをした人物は、より興味深い。大統領としての最初の行動の一つとして、今年7月、ドゥテルテは、元フィリピン大統領フィデル・V・ラモスを中国特使に任命すると発表した。当時、ハーグ裁判所裁定を巡る両国間の緊張overは極めて高かった。ラモスは、ドゥテルテに、南シナ海裁定で最近発表された判断は棚上げにして、北京との二国間会談を再開するよう公式に提案していた。

1980年年代に、アメリカ政府とともに、独裁者フェルディナンド・マルコスを退陣させる上で主要な役割を演じたラモスは、アジアの主要政治家の一人だ。米国陸軍士官学校卒の勲章を授与された英雄軍人は、一時期、極悪非道なG.H.W. ブッシュとつながりのあるワシントンのカーライル・グループの国際諮問委員会でも働いたことがあり、88歳のラモスは、近年北京とマニラ間のきずなを強化するために働いている。

1992年から、1998年まで、大統領をつとめたラモスは、あらゆる分野におけるフィリピンと中国との関係改善に成功した。ドゥテルテの北京訪問成功の三カ月前、ドゥテルテが彼を中国特使に任命した際、ラモスは中国ボアオ・アジア・フォーラムの高位の人々に対する諮問委員会議長だった。

中国に対して、益々攻撃的になっているアメリカの好戦的な同盟者、安倍晋三首相と会談する訪問では、欧米の一部の連中や、フィリピン外務大臣さえもが、明らかに望んでいたように、親中国発言を否定するのではなく、ドゥテルテは全ての外国(つまりアメリカ)軍部隊に、二年以内に、フィリピンから撤退して欲しいと彼は発言した。彼の前任者、親アメリカ政府のベニグノ・アキノは、フィリピン議会が1991年にアメリカ空軍への貸与更新を拒否した後、クラーク空軍基地の使用を再び許して、アメリカ空軍を呼び戻している。

地殻変動的効果がおきつつある

かつて恐れられていた超大国アメリカに対するフィリピン新大統領の反抗としか呼びようのないものが、既にアジア地域において、地殻変動的地政学的転換を始動させ始めている。

地殻変動的な地政学的変化の兆しを示している次のアジアの国はベトナムだ。ベトナム は最近まで、アメリカのアジア基軸の一環として、アメリカ政府の反中国キャンペーンに支配されているかのように見えていた。

香港嶺南大学の政治学教授張泊匯はこう述べている。“アメリカには、中国を侵略者として描き出す言説が必要なのです。より重要なのは、地域諸国に、国防の強化と、アメリカ合州国との密接なつながりを求める必要性を強調するため、言説には中国の修正主義者による‘犠牲者’が必要なのです。”

“ドゥテルテの‘中国基軸’は、この言説を根本的に弱体化させます”張泊匯は更にこう述べている。“もしフィリピンと中国が協力的な、両者が恩恵を得られるやり方で緊張を解決することができれば、同じ立場にあるベトナムなどの国々も、バランス戦略を放棄し、中国との和解を選ぶ気持ちになる可能性があります。”

実際、冷戦時代から歴史的なロシア同盟国であるベトナムも、北京への接近を既に開始している。8月30日、ベトナムのゴー・スアン・リック国防大臣は実にまれな北京毛沢東廟参拝をし、花輪を捧げた。ベトナム独立戦争に対して尽くしてくれた中国の“無私無欲な”貢献をベトナム人は決して忘れないと彼は述べた。更に、9月12日、ベトナム首相グエン・スアン・フック、北京で中国の李克強首相と会談し、ベトナムは中国-ベトナム関係を、ベトナム外交政策の最優先事項と見なしていると述べた。

これに加え、最近まで、アメリカが支援するタクシン・シナワット・オリガーキーに支配されていたタイが、2014年5月に、軍が国家平和秩序評議会という形で実権を掌握して以来、経済的、軍事的に中国との結びつきを強化する方向に動いている最新事実がある。

バンコクを本拠とする地政学的専門家トニー・カタルッチが、最近、NEOジャーナルに書いている通り、アメリカ政府長年の同盟タイは、最近“アメリカの影響力を徐々に取り除き”今やタイ貿易の中心はアジアで、輸入と輸出の大半を“中国、日本や、ASEAN諸国の間で、均等に分けている”。おそらく、より重要なのは“これまではアメリカ・ハードウエアと軍事演習が圧倒的だった軍隊が、中国の戦車、ヨーロッパの戦闘機、中東の突撃銃、ロシアのヘリコプターと、タイ製装甲車を購入し - 初めての中国を含む、様々な国々と合同演習をし、変身していることだ”

ドゥテルテが最近のアジア歴訪の際に表明した通り、紛争解決には、戦争より、外交の方が優れている。しかも、近年のアメリカ政府による破綻した代替案、戦争し、破壊することより、中国が巨大な一帯一路によって行っているように、国や全ての大陸を構築することの方が遥かに楽しい。現代世界で我々が目にする誰もが、益々多くの世界で、戦争や国家に対する暴行には、うんざりしつつある。人々は成長を願い、安全で、繁栄する未来を築き、平和に暮らしたいのだ。わずか数年前までは唯一の超大国アメリカは、現在、私の新刊書の題名にあるように“失われた覇権国”なのだ。

F. William Engdahlは戦略リスク・コンサルタント、講師で、プリンストン大学の政治学学位を持っており、石油と地政学に関するベストセラー本の著書で、これはオンライン誌“New Eastern Outlook”への独占寄稿。

記事原文のurl:http://www.williamengdahl.com/englishNEO9Nov2016.php
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韓国では100万人デモ。中国との関係修復を推進するフィリピン新大統領。
一方、自分の首をしめる御仁を55%も支持するユデガエルの楽園もあるという。
本当に55%もいるのであれば、十分滅亡に値する集団。

中入り後の相撲を見ようとしたが、TPP審議。賛成売国政治家質問は音声を消し、山本太郎氏の質問だけ聞いた。Profiting from Injusticeによる、ISDSのインチキ裁定構造を鋭く指摘していた。政府の答えは「日本人は4人いる」。「裁定経験者は皆無。」
ごく少数の連中が大多数の裁定を担当しているのだ。上訴はない。
始めから負ける構造。アメリカに負けると分かっていて始めた戦争と全く同じ構造。

不当な行為で金儲け Profiting from Injustice ごく一部を翻訳してある。

TPP関連主要記事リスト に列記した翻訳記事も是非お読み頂きたい。

念のため夜「呆導」番組を見たが、山本太郎氏質問報道はなかったようだ。
「モデルにならないか?といって誘う詐欺」の「呆導」にはあきれた。
経済が良くなるといって、大多数の政治家が売国している最悪の詐欺は報じないのに。

植草一秀の『知られざる真実』
TPPを成仏させるまで絶対気を緩めない

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コメント

トランプアメリカによるロシアとの蜜月が始まるか。平和は世界にとっても大いに結構。

■さて日本は米ロの変化に伴ってどのような立場に立たされるのでしょうか。
露国閣僚の更迭
http://blog.livedoor.jp/analyst_zaiya777/

■米国に膨大なスパイ活動機関が存在する中国は動いています。
習近平・トランプ電話会談――陰には膨大なチャイナ・ロビー
www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/11/post-6326_1.php

■スノーデンの警告
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-snowden-idJPKBN13A0NK?il=0

日本は政府も国民も軸をしっかり持って、各国と良い関係を保ち、利用されたり足元をすくわれないよう、見極めながら進んでいきましょう。

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ところで一体アメリカってなんだろう。 もちろん アメリカ自体がフェイクであってアメリカインディアンしかネイティヴはいないのだからいわゆる「国」ではないと言えなくもない。 ...... [続きを読む]

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