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2016年10月 1日 (土)

ロシアは、ブラジルの運命から学ぶことができるだろうか?

ポール・クレイグ・ロバーツとマイケル・ハドソン
2016年9月28日

最近、ウィリアム・イングドールが、アメリカ政府が、その命令を素直に聞く、腐敗したブラジル支配層をどのように利用して、アメリカ政府の権益ではなく、ブラジル国民を代表していたかどで、正当に選挙で選ばれたジルマ・ルセフ大統領を排除したか説明している。立証されない告発プロパガンダを見抜けずに、ブラジル国民は自らの保護者の排除を黙認してしまい、またしても民主主義の無力さの好例を世界に示すこととなった。http://www.informationclearinghouse.info/article45561.htm

イングドール記事は必読だ。ルセフに対する攻撃の一部は、ブラジル債務を格下げするためのワシントンによる攻撃の一環として、アメリカの格付け機関がブラジル通貨クルゼイロ攻撃を始めた、意図的に作り出されたブラジルの経済問題に起因すると彼は報じている。

ブラジルの金融が開放されていることで、ブラジルは格好の攻撃標的になったのだ。ウラジーミル・プーチン大統領には、是非とも“経済開放”の代償に留意してほしいものだ。プーチンは慎重で思慮深いロシア指導者だが、エコノミストではない。ワシントンお気に入りのロシア中央銀行総裁、ネオリベラルのエルヴィラ・ナビウリナを、彼は信頼している。ナビウリナが現代の金融政策論に明るくなく、断固“経済開放”を支持していることで、ブラジル同様、ロシア経済はアメリカ政府による不安定化に曝されているのだ。ナビウリナは、ルーブル攻撃は、ワシントンの金融勢力によるものでなく、人の感情と無関係な“グローバルな市場の力”によるものだと思いこんでいる。

洗脳され宣教されたネオリベラルのナビウリナは、本質的にワシントンの召し使いだが、自分の役割が“役に立つ馬鹿”であることを自覚しているわけではない。ワシントンが操作できるよう、ロシア経済を開放したままにしておくことで、ワシントン・コンセンサスから得られる喝采を、彼女は喜んでいるのだ。ネオリベラルの彼女は、ロシア中央銀行が、ロシア国内の生産的プロジェクトに資金供給するためのお金を、費用ゼロで生み出せることが理解出来ないのだ。逆に、彼女は、中央銀行から経済にはいるお金はインフレを誘発するが、外国の源から経済に入るお金はそうではないと思いこんでいるのだ。

中央銀行によって生み出されたものであれ、外国債権者によるものであれ、お金はお金だ。お金である限りは、その源が何であれ、有効に利用でき、お金がインフレを誘発するわけではない。

中央銀行が生み出すお金と、外国債権者によって生み出されたお金には、大きな違いがある。米ドルやユーロの形で外国銀行から借りたお金は、利子をつけて、貸されたお金の外貨で返済しなければならない。公的インフラ・プロジェクトに資金提供するために中央銀行によって生み出されたお金は全く返済する必要がなく、利子や輸出で得た外貨は不要だ。

外国から借りることで得た資金は様々なリスクをもたらす。自由に取り引きされているルーブルを崩壊して、回収されかねない。支払うべき利子はロシア外貨保有高の流出だ。外国借款は、外国為替リスクをももたらし、それは経済制裁によって高まる。もしルーブル価値が下落したり、周到に計画された攻撃で押し下げられたりすれば、外国借款のルーブル・コストは劇的に増大しかねない。

中央銀行がお金の源であれば、こうしたリスクもコストも全く生じない。ロシア中央銀行の適切な用法は、公共プロジェクトに資金供給するためのお金を生み出させ、他からは資金を得られないロシア民間企業に対する最後の貸し手役をつとめさせることだ。このように中央銀行を活用すれば、周到に準備された不安定化からロシア経済を隔離できる。

ナビウリナやドミトリー・メドベージェフ首相が、敵対的外国人に融資されるロシアの債務のほうが、ロシア中央銀行によって生み出されたお金よりも好ましいと考えているのは、ロシアにとって不幸なことだ。プーチン顧問の中で、グラジエフだけが、これを理解している。汎大西洋主義統合主義者連中は、ロシアが負う代償の重さがどうあれ、ロシアを欧米に統合させたがっているので、グラジエフを攻撃対象にしているのではないかと我々は疑っている。こうしたロシア人“アメリカ崇拝者”はロシア最大の問題だ。

ワシントンにとって、ネオリベラル緊縮政策は、ワシントンが隷属的金融植民地に変えることを狙っている国々に対する“輸出専用”策だ。ワシントンの目標にあわせて、ナビウリナは、茶番を演じているのだ。外国から借りたドルとユーロは、ロシアの借り手に直接入るわけではない。借りた外貨は中央銀行が保有する。そこで、ナビウリナは、プロジェクトに資金供給するルーブルを作り出す。国内で生み出されるルーブルの裏付けとして、外貨を借り入れる意味は皆無だ。ロシアが外国から借りるかどうかとは無関係に、中央銀行は、プロジェクトに資金供給するルーブルを作り出すべきだ。だから対外借款は意味がないのだ。

これが理解できないロシア政府は厄介な状況にある。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World
Order.が購入可能。

寄付のページはこちら

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/09/28/can-russia-learn-from-brazils-fate-paul-craig-roberts-and-michael-hudson/

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2016年8月12日の同じ二人による記事「ロシアの弱点は経済政策」と

F. William Engdahl氏による記事「プーチン: ネオリベラルは、ニェット、国の発展は、ダー」 2016年8月2日

と、直接つながっている。

通貨発行権について詳しく書かれた『サヨナラ!操作されたお金と民主主義 なるほど!マネーの構造がよーくわかった』 天野統康著 成甲書房を思わず読み直し始めた。
第3章は、通貨発行権のない政「金」分離型民主主義
EUの大きな問題点も、各国に通貨発行権がないこと。

268ページには、何と「旧ソ連地域のカラー革命とアラブの春」という小見出し。

322ページには、「マスメディアの情報独占体制を廃止させる」

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