ためらうものは負けるというが、ロシアはためらった
2016年9月24日
Paul Craig Roberts
ISISとの戦いで、ロシアとアメリカの政府には、共通の大義があるという夢想的な考えで、ロシア政府は自らを欺いたのだ。ロシア政府は、一連の勝利を目前にしながら アメリカ政府が、ISISに再補給し、アメリカとNATOの軍を紛争に参戦させる準備をすることを可能にする停戦に合意して、様々な筆名で活動している、様々なISIS集団が、過激派と区別することが可能な“穏健反政府派”だというふりにまでつきあいさえした。ロシア政府は、アメリカが関与していると言われている対エルドアン・クーデターの結果、トルコは、ISISへの支持を止め、ロシアと協力するとも思っていたようだ。
残念ながら、ロシアは実に熱烈に、というより、たぶん、あわてふためいてというべきか、アメリカとの合意を請い願って、彼ら自身をあざむいたのだ。もし下記にあげたフィニアン・カニンガム記事が正しければ、アメリカ政府は、アメリカとトルコがISIS攻撃に参加するようにというロシアの要請に付け込み、“ISISと戦う”ふりをして、北シリアを侵略したのだ。
シリアは今や分割されてしまい、シリア内のアメリカ/トルコが占領した地域で、エセ“穏健反政府派”は増強でき、対シリア戦争は、アメリカ政府が望むだけ、いつまでも続けられる。欧米売女マスコミは、シリア内トルコ/アメリカ軍がシリア内の地域占領を、侵略とはいわず、ISIS攻撃と報じるのだ。
アメリカ、トルコ、そして確実に、間もなく、他のNATO軍隊もシリアで活動するようになり、ネオコンは、ロシアが屈伏するか、武力で応えざるをえなくなる紛争を起こす多くの機会を得るようになる。トランプが勝利して大統領となった場合、ネオコンは、トランプが戦争に巻き込み、ロシアと合意できなくさせてしまおうとするに違いない。
シリア停戦をまとめるケリー国務長官の取り組みが誠実なもので、彼がペンタゴンと、CIAに不意打ちをくらったのかどうか不明だ。もしケリーが誠実だったのであれば、彼は明らかに、国務省で、神の祝福を受けている、ビクトリア・ヌーランドや他の多くの戦争屋、ネオコンに抵抗することができなかったのだ。
オバマも同様に軟弱で、それゆえにこそ、巨大な政治力をもったひと握りの連中によって、彼は大統領に選ばれたのだ。経験も知識もない人間は、巨大な政治力をもったひと握りの連中にとって、素晴らしい駒だ。アメリカの黒人や白人のリベラル派は、突然頭角をあらわした、自分自身の組織もない未熟な候補者が、良い変化をもたらしてくれると、実際に信じていたのだ。どうやら大多数のアメリカ人のだまされやすさは果てしがないようだ。このアメリカ人のだまされやすさという顕著な特徴こそが、ごく少数のネオコンが、従順で自分の意見をもたない国民を、易々と果てしのない戦争に導ける理由だ。
愚かなアメリカ人は、15年間も戦争を続けているのに、低能連中は一体何が達成されたのかまるで分からずにいる。阿呆連中は、何十年も弱さを貯め込んだアメリカが、今や二つの核大国、ロシアと中国と対決していることに気づかずにいる。
アメリカ人は、軍安保複合体に仕える売女マスコミによって、核戦争は通常の戦争と全く変わらないと教え込まれている。アメリカ原子爆弾の二つの標的、広島と長崎を見よ。70年後の現在、二つの都市は繁栄しているではないか。核兵器の何が問題なのだ?
日本政府が降伏しようとしていた際に、アメリカ政府が無力な民間都市に投下した原子爆弾は、現代の熱核兵器にくらべれば、豆鉄砲のようなものだった。一発のロシアのSS-18が、ニューヨーク州の四分の三を何千年も消し去るのだ。アメリカ軍が“サタン”と呼んでいるこうしたものの5発か6発で、アメリカ合州国東海岸は消滅する。
ロシアは、シリアの勝利と民主主義を手にいれられたはずだったが、プーチンには、ナポレオンや、スターリンの果断さにかけており、アメリカ政府は信用できるという誤った願望の結果、勝利の機会を逸したのだ。今では、ロシア/シリアが勝利するには、トルコ軍とアメリカ軍を、シリアから追い出さなければならない。
もし、ロシアが断固攻撃していれば、アメリカ政府のウソを利用し、アメリカ政府が意図的に、既知のシリア軍陣地を攻撃した際のアメリカ政府の主張のように、ロシアは、アメリカとトルコ軍を、ISISだと思ったと主張して、ロシアは成功できていただろう。
もしロシアが、たやすくできていたはずの、トルコとアメリカの軍隊を実際に絶滅していれば、第三次世界大戦で破壊されたいヨーロッパの国はないので、NATOは崩壊していただろう。だが、ロシアは断固たる行動で、NATOを崩壊させることはあるまい。戦争が絶対に、完全に、強制されるまで、ロシアは戦うまい。しかし、そうなれば、ロシアとアメリカ政府には、共通点があるという彼らの愚かな考えに基づく優柔不断に対し、ロシアは膨大な犠牲を強いられる。ロシアがアメリカ政府と共有する唯一の共通点は、ロシアの降伏が必要だ。もしロシアが降伏すれば、ロシアは欧米に受け入れてもらえるという願いが達成でき、アメリカ政府の手先であるロシア人汎大西洋統合主義者たちが、アメリカ政府のために、ロシアを支配することが可能になるのだ。
フィニアン・カニンガムの記事
http://www.strategic-culture.org/news/2016/09/24/us-turkey-lurch-world-war-syria.html 日本語訳 シリアでよろよろと世界大戦に向かうアメリカとトルコ
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
寄付のページはこちら。
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Paul Craig Roberts氏ご本人のサイトには、ご本人の考えで、コメント欄はない。
コメント欄に関する彼の考え方は、下記記事に書かれている。
四半期の寄付のお願い、主権諸国を絶滅させるネオコンの覇権目標は、地球の絶滅をもたらす
アメリカ政府は、インターネットのあらし連中がそのような疑問や、筆者たちを愚弄するよう金を出している。金のために人間性を売り渡した連中を見るには、当コラムをコピーしている無数のウェブサイトのコメントをお読みになるだけで十分だ。
本記事を転載したInformation Clearinghouseでは、記事に対し、既に52のコメントが書かれている。
とうとう売国TPP国会。情報を全く遮断し、虚報だけを流して、審議もなにもないだろう。国家おれおれ詐欺、ふりこめ詐欺のきわみ。大本営広報部、別名「マスコミ」は凶悪な共謀犯人。売国奴。
現都知事、選挙公報には、「国家戦略特区推進」とあった。国家戦略特区というのは、実質TPPの先駆だ。
ということで、今の市場地下の汚染問題過熱呆導、小スキャンダルで、大スキャンダルを隠す策略、TPPから衆目を逸らせるための高等手段、常套手段なのではと疑っている。
TPPで破壊されるのは、築地の魚だけではない。日本という国の主権が、超巨大企業に引き渡され、消滅するのだ。
TPPは偉大な成功と称賛され、そのような協定に自分たちが既得権を有している大半のマスコミに支持されて、世界的貿易協定として、日本国民に売り込まれるだろう。
大本営広報部洗脳・白痴製造番組ではなく、覚醒できる番組をご覧頂きたい。
植草一秀の『知られざる真実』
TPPの真実知って安倍暴政TPP強行批准を阻止
TPP交渉差止・違憲訴訟の会の山田正彦氏の新刊
ついに完成『アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!』
アメリカも批准できないTPP協定の内容は、こうだった!hontoでも購入可能。
このブログの、TPP関連翻訳記事リストは下記。
TPPで、多国籍企業に国家を丸ごとさしあげながら、宗主国が推進する侵略戦争に派兵し、侵略戦争用の武器でも儲けようという日本の死の商人連中と傀儡政治家、官僚、学者。
今、科学の世界のスポンサーは「防衛省」!? 安倍政権のもとで進む「研究者版・経済的徴兵制」に警鐘を鳴らす! ~岩上安身が池内了名古屋大学名誉教授に「軍学共同」問題を訊く!(前編) 2016.9.20
「科学者は『科学の限界』を語るべき」2度の大戦、福島原発事故を振り返り、科学者の「社会的責任」を考える~岩上安身が池内了名古屋大学名誉教授に「軍学共同」問題を訊く!(後編) 2016.9.21
【Ch1】13:30~「岩上安身による『武器輸出と日本企業』著者・東京新聞記者 望月衣塑子氏インタビュー」
UST視聴URL: http://iwj.co.jp/channels/main/channel.php?CN=1
ツイキャス視聴URL: http://twitcasting.tv/iwakamiyasumi
※岩上安身が、『武器輸出と日本企業』著者であり、東京新聞記者の望月衣塑子氏へインタビューします。
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メタボ•カモさま
情報を頂きありがとうございます。9月にたまたま帰国していたので、IWJの契約、下斗米氏の書籍購入などさせて頂きました。次回帰国するときには大阪の図書館でご紹介の書籍を借りたいと考えております。大阪は問題の多い自治体なのですが、なぜか(?)大阪府立図書館(東大阪市)、大阪市立図書館(大阪市西区)、国会図書館関西館(京阪奈丘陵)は蔵書数も多く、使い勝手がよく重宝しております。
投稿: コメット | 2016年10月 2日 (日) 13時28分
コメット様
『宗教・地政学から読むロシア』ようやく読み終えました。小生の紹介で、読み始められたとのこと嬉しく思います。同じ著者による『ロシアとソ連 歴史に消された者たち ─ 古儀式派が変えた超大国の歴史』も直接つながる興味深い本です。『宗教・地政学から読むロシア』の中でも紹介されているビリントンの『聖像画と手斧』は大著で、非常に高価ですが、図書館で借りられるなどして、ご一読されるようお勧めします。目からうろこ。また塩原俊彦著『ウクライナ・ゲート』を読まれると、ウクライナのクーデター、いわゆるマスコミ報道と、実態が、どれほど離れているかに驚かれると思います。
投稿: メタボ・カモ | 2016年10月 2日 (日) 10時26分
ロシアもやはり、ソ連崩壊以来の自分たちも西側先進諸国の一員になることが出来て、そのためならアメリカに屈服することもやむを得ないと考える「ウクライナ病」を克服出来なかったのではないでしょうか。日本の悲惨な現状も根は同根です。我が国の特権階級は「名誉白人」とチヤホヤされて日本をアジアではなくアメリカやヨーロッパ諸国の一員とでも思っているのでしょう。実際はいい様に搾取される対象にされているだけなのに…。
投稿: 一読者 | 2016年9月26日 (月) 20時45分
昨日のコラムで訳者さまが紹介なさった、下斗米伸夫著「宗教•地政学から読むロシア」を読み始めました。
•ウクライナの東半分はロシア語と正教の世界、西半分はハプスブルグ帝国内のウクライナ語とカトリックの世界
•2016年2月のローマ教皇とロシア正教会総主教との歴史的会見は宗教的和解の試み
•ローマ帝国の東西分裂後はコンスタンチノープルが「第二のローマ」、東ローマ帝国滅亡後はモスクワが「第3のローマ」
•東方世界の総主教座は古くから、トルコ(コンスタンチノープル)、エジプト(アレクサンドリア)、シリア(アンンティオキア)、イスラエル(エルサレム)の4カ所に置かれていた。シリアはロシアにとって特別な場所。
まだこの辺までしか読んでいません。高校時代にもう少し世界史を勉強しておけばよかった。徳川家康方が東日本、豊臣秀吉側が西日本、、、、あるいは巨人ファンは東日本、阪神ファンは西日本、、、といった世俗的理解しか出来ない私にはウクライナ問題、シリア問題は難解。高校時代に「カラマーゾフの兄弟」を読んで「正教」関連の知識の無さを痛感したが、この本を読了後、再びチャレンジしてみよう。
投稿: コメット | 2016年9月26日 (月) 16時26分