欧米パートナー皆無のロシア
Paul Craig Roberts
2016年9月17日
ロシア政府は、同じことを何度も何度繰り返して、違う結果を期待している。ロシア政府は、アメリカ政府と協定を結び続け、アメリカ政府は協定を破り続けている。
まさにアインシュタインが狂気と定義したものの最新行動が、最新のシリア停戦協定だ。アメリカ政府は協定を破り アメリカ空軍をシリア軍陣地爆撃のために送り出し、62人のシリア軍兵士を殺害し、100人を負傷させて、ISISが攻撃を再開する道を開いた。
2015年9月ロシアは、ロシア空軍をシリア国内のISIS拠点爆撃に配備して、アメリカ政府の不意をつき、シリア軍が主導権を握るのを可能にした。ロシアは対ISIS戦争に勝てたはずなのに、作業を完了する前に、突然撤退した。これが、アメリカなり、代理人なりがISISに再補給するのを可能にしてしまい、ISISは攻撃を再開した。
そこで、ロシアはシリアに戻らざるを得なかった。その間、アメリカが自ら入り込んだ。今や、NロシアによるISIS空爆は、シリア領空同様、より複雑になった。ロシアが、アメリカ政府に、ISIS攻撃計画を通知すると、アメリカ政府は,ISISと、おそらくロシア戦闘機を撃墜したトルコに警告する。それにもかかわらず、シリア軍が優勢だ。
だが、毎回、勝利は“和平交渉”あるいは“停戦”によって妨げられた。その間に、アメリカが支援する勢力が体勢を立て直すのだ。結果的に、ロシアとシリアがとっくに勝てていたはずの戦争が、新たな要素まで加わり、いまだに続いている。今やアメリカ政府は直接シリア軍を攻撃している。
アメリカ軍は、ISISを攻撃していると思っていたと主張している。わずかでも考えて頂きたい。アメリカは、軍事超大国を自称している。ヨーロッパ傀儡諸国の個人電子メールや携帯電話通話まで含め、アメリカは全世界をスパイしている。ところが、なぜかこうしたあらゆるスパイ能力をもってしても、既知のシリア軍陣地とISIS拠点とを識別しそこねたというのだ。もし、これを信じるなら、アメリカは軍事的に無能だと結論せざるを得ない。
起きているのはこういうことだ。今回の“停戦”以前、ロシアはアメリカが支援する聖戦士を攻撃できたが、アメリカは、シリア軍を直接攻撃できず、代理の聖戦戦士に頼るしかなかった。アメリカ軍の対シリア軍直接攻撃の前例を作り出すのに、アメリカは“停戦”を利用しているのだ。
ほとんど戦争に勝つところだったロシアは、アメリカが紛争に直接参加するのに利用している“和平交渉”と“停戦”へと、注力先を変えた。
ワシントンとモスクワが、シリア紛争の結果について、何らかの共通の関心を持っていると、ロシア政府が思い込んでいるのは謎だ。アメリカ政府の関心は、アサドを排除し、シリアを、現在リビアとイラクを支配している混乱に陥れることだ。ロシアの関心は、聖戦主義の蔓延に対する防波堤としての、シリアの安定化だ。テロは、中東を不安定化するためのワシントンの武器なのに、テロとの戦いにおいて、モスクワとワシントンは、共通の関心を持っていると思い込むほどロシア政府が誤解しているのは驚くべきことだ。
ロシアは、どうしてこれほどすぐ過去の記憶を忘れてしまうのだろう。アメリカ政府は、ゴルバチョフに、もしドイツ再統一を認めれば、NATOは東方には、一インチたりとも進まないと約束した。ところが、クリントン政権は、NATOをロシア国境に配備したのだ。
ジョージ・W・ブッシュ政権は、一方的に脱退して、ABM条約に違反し、オバマ政権は、ロシア国境にミサイル基地を設置している.
ネオコンは、アメリカの戦争教義上、核兵器を先制使用しないというのをお払い箱にし、核兵器を先制攻撃で使用可能なものへと格上げした。
オバマ政権はウクライナ政府を打倒し、かつてロシアの一部だった場所に、アメリカ傀儡政権を据えた。傀儡政権はウクライナのロシア人住民に対し、戦争を始め、アメリカ政府が“ロシアによる侵略併合”だと歪曲して表現している分離独立運動を引き起こした。
ところがロシア政府は、アメリカ政府は共通の利益を有する“パートナー”だと思っている。
実に不思議だ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニュー ズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
寄付のページはこちら。
記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/09/17/russia-has-no-partners-in-the-west-paul-craig-roberts/
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ネットでは「狂気とは即ち、同じことを繰り返し行い、違う結果を期待すること」だとアインシュタインが言ったことになっている。小生には真偽の確かめようがない。
同じことを繰り返し行い、違う結果を期待しているのは、宗主国のいうがまま、憲法解釈を変え、TPPを推進し、 南スーダン派兵を続けている某国(亡国)。
南スーダン、担当者が、体調不良となり、視察中止となった、という「公式説明」。現地の状況、はるかに深刻なようだ。
孫崎享氏のメルマガの一部を貼り付けさせていただこう。
3:自衛隊がイラク戦争時派遣された時には、自衛隊に死傷者を出さないことを最大要件として考えた。
現在の安倍政権にはそれはない。
それは考えてみると不思議ではない。米国側が日本に要請してきたことは次第にエスカレートしてきた。
まず最初は「旗を立てろ( show the flag)」
次いで「軍靴を戦場に(boots on the ground)」
そして今。「血を流せ(shed the blood)」
安倍政権はこの「血を流せ」を容認している。
多分日本国民も「応分の国際貢献」とやらで容認するのでないか。
自分の身に危険が及ばなければ、負担をする人々がいても構わない。沖縄の辺野古移転のメンタリティが自衛隊にも適用されるのではないか。
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旧ユーゴでも中国大使館が米軍機に「誤爆」されるなんて事件がありましたね。もちろんセルビア側とコンタクトを取っていた中国への見せしめのための攻撃だったのですが。何度も言いますが、アメリカのやり方は昔から変わりません。
投稿: 一読者 | 2016年9月21日 (水) 02時41分
今となっては人に言うのも恥ずかしいのだが、私は理学部物理学科卒なので、アインシュタインの著作はかなり読んだ。でも「狂気とは同じ事を何度も何度も繰り返して違う結果を期待すること」という発言は聞いた事が無い。下の記事でも、アインシュタインはそんな事を言ってない、と否定している。http://www.gizmodo.jp/2014/03/9_13.html
でも出典の是非はともかく、ロシアはウクライナ問題からシリア問題まで、紛争に関して驚くほど忍耐強く、イスラエル、トルコにさえ開かれた対話姿勢を崩さない。気の短い私は少々もどかしく感じるのだが、この開かれた対話姿勢が国際的にロシアの信用を高めているように思える。たとえ欧米の大手マスコミがロシアに対する悪質なプロパガンダを繰り返しても、、、
投稿: コメット | 2016年9月20日 (火) 10時26分