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2016年9月18日 (日)

付けが払えないのに、イエメン戦争には資金供給するサウジアラビア

2016年9月12日
Robert Fisk
counterpunch.org

二つの聖なるモスクの守護者で、サウド家首長であるサルマーン・ビン・アブドゥルアズィーズ・アール=サウード・サウジアラビア王が、1,000人の召し使いを引き連れ、モロッコでバケーションを続けるべく、カンヌにほど近い大富豪マンションをあたふたと去ってからほぼ一年後、何万人もの亜大陸からの外国人労働者が彼の偉大な建設現場で汗を流す中、王国の資金繰りは、さほど円滑とは言えない。

王国外ではほとんど報道されないが、ビン・ラディン・グループを含むサウジアラビアの巨大建設企業は、サウジアラビア政府から、主要な建設プロジェクトに対して支払われておらず、インド、パキスタン、スリランカの兵士や、他の労働者の一部は給料を受け取っておらず、7カ月も支払われていない人々もいる。

インドとパキスタン大使館が、サウジアラビア政府に、両国の労働者に給料を払うよう訴えている。サウジアラビア君主制に対し、イギリス政府と同じ腰巾着姿勢をとっているエコノミスト連中は、サウジアラビア当局が石油価格崩壊に圧倒されていることを常時指摘している。いつもは連中は、世界の他の国々が肝を潰すようなことは、言いたがらない。副皇太子で防衛大臣のムハンマド・ビン・サルマンの無駄で絶望的なイエメンでの戦争だ。王お気に入りの息子が、昨年、シーア派イスラム教徒反政府派に反対して、国際的に認められているイエメン大統領を支持しているフーシ派に対する、このばかげた作戦を開始して以来、サウジアラビアと首長国のパイロット(地上のイギリスの技術“専門家”に支援されて)が操縦する航空機が、1999年以来、アメリカが、セルビアとアフガニスタン両国内で破壊したものの合計より多くの病院や診療所や医療用倉庫を爆撃した。

結果は? 世界の確認石油埋蔵量の16パーセントを有し、一日に10億ドル以上稼ぐ国営アラムコ石油会社を持つ国が、今や1000億ドルという記録的財政赤字で、つけが払えないのだ。当初、イエメンでの大失態は、“決定的な嵐作戦”と呼ばれたが、最近の中東史で最長ながら、とうてい決定的ではないことが判明したアラブの“嵐”は、“希望回復作戦”に改名された。そして“希望”と“嵐”の前にそうしていた通り、イギリス人“専門家”の支援を得て爆撃は続いている。今年、まさに同じムハンマド副皇太子が、サウジアラビアの給与向け国家支出を引き下げるが、個人の収入は増えると発表したのも驚くべきことではない。

パキスタン人兵士が“サウジアラビア”国軍のかなりの部分を占めるパキスタンは、憤激しており、サウジアラビア企業三社が、8カ月給料を従業員に支払っておらず、食事の提供まで拒否しているのは、一体なぜかと議員たちが質問している。場合によっては、パキスタン国家が、パキスタン人への食料代を支払っている。

サウジアラビアでは、政府自体が危機に対応できていないように見える。アラブ、ニュースは、31,000人のサウジアラビア人や、他の外国人労働者が、給与未払いを巡って、労働省に苦情を申し立てている。インド領事館と現地のインド人が、労働者が飢えないよう、食べ物を持ち込んだ例もある。政府の建設会社に対する未払い金額総額は何十億ドルにのぼる可能性がある。

明白な外国人嫌いの意見が、サウジアラビア・マスコミに現れた。サウジアラビア・ガゼットで、アブドゥルラーマン・サード・アル-アラビはこう述べている。“我々が豊かな国なので多くの外国人が我々を憎み、怒っているのです。我々、サウジアラビア人は、我々が享受している恩恵やお金に値しないとまで言う連中もいます。これが、一部の連中が、規定の時期に給料を支払われないと暴力的になる理由です。”

そう、ヌスラ戦線(最近「レバント征服戦線」に改名した)やら、アルカイダやら、ISISなど、シリアの戦場にいる連中に、たっぷり現金を支払っているむきもあると思う。

フィリピンや、フランスや、多くの中東諸国の大使館員が、サウジアラビア政府に問題を提起している。“現在の状況から影響を受けており[原文通り]、従業員に対して責任を果たすことが多少遅れる結果になっている”という航空会社サウジ・オジェの回答が、彼らが受ける答えの典型だ。

サウジアラビア政府は、同社は従業員に給与を支払っていると主張している。従業員の多くは、伝統的にスンナ派指導者の息子サードに投票している、レバノン、スンナ派地域出身のスンナ派イスラム教徒レバノン人であることは明記に値する。

ある会社幹部は“遂行するはずの多くのプロジェクトが廃止されたため[原文通り]会社の状況は不安定だ”という驚くべき発言をした。一方、ユナイテッド・シーマク建設会社の労働者は、何カ月も給料が支払われていないと苦情を言っている - あるいは出国許可証を与えられたとまで言っているする。一年半以上も支払われていない人々もいる。ビン・ラディンやサウジ・オジェなどの大企業と違って、こうした人々は、彼らの大半は実際男性で、従業員の人数も少ない。“注意は皆、大企業に向けられます - 我々はさほど人数がいないので、無視されがちです。”

かくして、わがいとしき君主-独裁制のあやしげなシナリオでは、シーア派フーシ派や、シーア派ヒズボラ、ダマスカスとイランのシーア派/アラウィー派政権に対する戦争は終わらない。何年か前、同じぐらいにあやしげなサウジアラビアとイギリスのアル-ヤマー武器商談もあったではないか? 当時は資金繰り問題はなかった。ところで“ヤマー”とは、アラビア語で何を意味しているだろう? “鳩”だ。これ以上進んではいけない。

本コラムは、ロバート・フィスクが、Independentに書き、まずそこに掲載された。

記事原文のurl:http://www.counterpunch.org/2016/09/12/saudia-arabia-cant-pay-its-bills-yet-funds-war-on-yemen/

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サウジアラビアの窮状については、たとえば下記記事を翻訳してある。

素人は、サウジアラビアからほど遠からぬところにある南スーダン派兵が気がかり。

大本営広報部は決して実情を報じない。まさに大本営広報部大政翼賛会と化している。

※【IWJ追跡検証レポート・前編】兵士の性犯罪が相次ぐ南スーダンで自衛隊が「駆けつけ警護」!国連平和維持軍は助けないどころか自らレイプ…これが戦地の現実!稲田朋美防衛相には見えていない? 2016.9.16
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/332104

岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

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