アメリカ: デッド・ネーション・ウォーキング
Paul Craig Roberts
2016年8月26日
ドミトリー・オルロフの有益な記事がここにある。http://www.cluborlov.com
私自身の結論を確認するため、オルロフとThe Sakerの文章を利用させて頂こう。
彼の記事で、オルロフは、アメリカ合州国は、まだ歩いてはいるが、死に体で、もはや唯一の覇権国ではないと結論付けている。オルロフは、アメリカの兵器体系は、効果よりも、利益に重点をおいており、ロシア兵器の方が優れており、支配ではなく、自衛に基づくロシア大義の方に理もあるという意見に私は賛成する。しかしながら、核戦争の可能性の評価については、オルロフは、ワシントン・ネオコンのアメリカの世界覇権に対する入れ込み方と、ネオコンとヒラリー・クリントンの無謀さを過小評価していると思う。ロシア(と中国)が、あえて、アメリカ政府に反対して立ち上がっているがゆえに、アメリカ政府は激怒しており、この怒りのせいで判断ができなくなっているのだ。
オルロフも、“大西洋統合主義者”がもたらしているロシア政府内の弱みを過小評価しているように思える。彼等は、欧米に統合されてこそ、ロシアに未来があると考える派のロシア・エリート連中だ。この統合を実現するためなら、彼らはかなりのロシア主権を進んで犠牲にする用意があるのだ。
アメリカ政府は、欧米に受け入れられたいという願望がロシア政府にもたらしている制約を知っていて、それが、アメリカ政府が、ロシアに対する直接攻撃として、選挙で選ばれたウクライナ政権を打倒したクーデターを平然と画策できた理由だというのが私の結論だ。ドネツクとルハンスクの両共和国による、両国がかつて所属していたロシアの一部として再編入するようにという要求を拒否し、シリアからの早過ぎる撤退して、アメリカ政府が、聖戦士に再補給し、アメリカ軍を紛争に押し入れるのを可能にし、ロシアとシリアにとって、状況をややこしくしている、ロシア政府が冒した失敗も、この制約で説明できると私は考えている。
オルロフは、キエフとの継続中の紛争で、分離した共和国の紛争が、キエフのアメリカ傀儡政権崩壊をもたらす可能性が、ロシアにとっての利点だと考えている。とはいえ、継続中の紛争が、ロシアのせいにされて、欧米の反ロシア・プロパガンダに油をそそぐという不利益もある。まるで、ロシアによるクリミア再編入という欧米の批判が、的を得ていて、ロシアは、分離した共和国の嘆願を受け入れて、それを繰り返すのを恐れているかのように、ロシアを、弱く自信がないように見せてもいる。
もしロシア政府が、そこから人為的に分離されてしまったロシアに復帰するという、ドネツクとルハンスクの要求を受け入れていれば、紛争は終わっていたのみならず、ウクライナ国民も、自国政府に対する、アメリカ政府のクーデターによって、引き起こされた大惨事に気がついこはずで、ロシアの断固とした行動で、ヨーロッパは、アメリカ政府のために、ロシアを挑発しても、ヨーロッパの利益にはならないことを悟っていたはずなのだ。正しいロシアによる対応が、アメリカ政府をなだめたいという大西洋統合主義者の願望によってはばまれたのだ。
オルロフとは対照的に、The Sakerは、ロシアの軍事力を過小評価しているが、彼は、中央銀行などの組織内や、おそらく首相本人を含み、経済支配層にいると見られる大西洋統合主義者連中が、ロシアの毅然たる態度を制約していることを理解している。プーチン自身が、欧米との合意実現に、かなりかけているので、私にはアメリカ政府工作員の第五列に見えるものを、プーチンが大いに懸念しているようには見えない。ただし、プーチンは、ロシアを不安定化しようとする、アメリカから資金提供を受けているNGOを規制した。
欧米マスコミ、シンクタンクや大学のロシアに関する報告は、プロパガンダで、状況を理解するには役に立たない。例えば「The National Interest」誌の今号で、ジョージ・W・ブッシュ政権で、国家安全保障会議のロシア担当だったトーマス・グレアムが“東ウクライナの不安定化”を“ロシアのクリミア併合”のせいにしている。アメリカが画策した、選挙で選ばれたウクライナ政権打倒や、アメリカ政府がキエフに据えたロシア嫌いの政府に直面して、クリミア住民の圧倒的多数が(97パーセント)ロシア編入を選んだことには触れるのを彼は避けている。
http://nationalinterest.org/feature/the-sources-russian-conduct-17462
グレアムによれば、民主的な結果を受け入れることに対するロシアの背信行為が、ロシアに対して、非常に友好的で、協力的で、期待していたワシントンの姿勢をことごとく破壊した。アメリカ政府の“アメリカの対ロシア政策を進めてきたあらゆる前提”が取り返しがつかないまで粉砕され、ロシアが“世界の諸問題に対処するのに相応しいパートナーだと主張することはもはや不可能だ”。グレアムは、ロシアが、アメリカ政府が支配する単極世界でなく、多極世界を好んでいるがゆえに、ロシアは問題なのだとも言っている。
グレアムによるプロパガンダ文句の繰り返しを、穏やかに、控えめな形で、ロシアに対する彼らの覇権的な姿勢を攻撃する前に、グレアムが、まずネオコンの前で、ひざまずくものと読み取ることもできる。結論の段落で、アメリカ政府は、ロシアに対する新たな手法、“現代兵器の破壊力を考えれば、致命的であろう武力行使”は認めないバランスのとれた手法を見出す必要があると、グレアムは述べている。
全体として、危険な状況に対するアメリカ政府による挑発へのロシアの対応批判から始め、アメリカ政府は、ロシアによる自らの国益の防衛にあわせなければならないという主張を結論にする巧妙な議論だ。
ロシアに対するアメリカ政府の態度に、現実主義が多少戻ってきたのを見るのは心強いことだ。とは言え、現実主義は、依然、少数派の意見で、ヒラリー政権の見解となる可能性は極めて少ない。
ネオコンの意図、誤算や、間違った発射警報による核戦争の可能性は、高いままだと私は思う。アメリカ/NATO軍の挑発や、ロシア国境のミサイル基地は、核大国間の緊張を高めるだけの無謀なことだ。間違った警告が、本物と思われて、誤算が起きるのは、緊張している時期だ。地球上の生命のために、アメリカ政府は、ロシアとの緊張を、高めるのではなしに、緩和すべきなのだ。今のところ、ネオコンが、地球上の生命のために、連中の覇権の狙いを進んで放棄するという兆しは皆無だ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Order.が購入可能。
記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/08/26/the-us-a-dead-nation-walking-paul-craig-roberts/
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デッドマン・ウォーキングという映画題名のもじり?
処刑に向かう死刑囚のことを「デッドマン・ウォーキング」と言うのだという。
宗主国の腰巾着、第一の属国も、必然的に、デッド・ネーション・ウォーキング。
アフリカに大盤振る舞いしたのは、国連の理事国に選ばれるための選挙運動だろう。
宗主国としては、かならずオウム返しに同じ意見の投票をする傀儡が理事国になるのは有利だから、勧めはしても、文句は言うまい。しかも日本の国民の税金による買収工作。宗主国の懐は全く痛まない。
戦争への道を着実に進む一方、国民の福祉は壊滅方向にある。同じ物事の裏と表。
「津久井やまゆり園」事件、同じ立場にある人の意見は重い。最首氏ご自身が、介護施設に関与されているとは知らなかった。
「津久井やまゆり園」での事件に関して最首悟・和光大学名誉教授へインタビュー(聞き手 IWJ・佐々木隼也記者) 2016.8.26
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