地域の大量虐殺
Paul Craig Roberts
2016年8月22日
無知が広まり、公開討論では真面目な論議が行われない暗黒の日々にあっても、いまだに、学者の中には、現在最も重要な問題に関する本格的な有益な本をものしている人がいる事実には希望がもてる。将来、政策立案者たちが、真実から指導を得ようとした場合、彼らは情報を手元においておけるのだから。そのような真実の書の一冊が、ジェレミー・R・ハモンドの新刊「Obstacle to Peace」(平和に対する障害)だ。これは、理路整然としていて、詳しい参照があり(脚注が、68ページある)、詳細索引もある、読みやすい本で、リチャード・フォークによる序文、ジーン・エプスタインによる序論と、ノーム・チョムスキーによる推薦の言葉がある。
平和に対する障害は、パレスチナと呼ばれる地域における、シオニストによる大量虐殺を止めようとする、何十年にもわたる世界中の取り組みに反対し続けてきたアメリカ合州国政府だ。
パレスチナは、盗まれ抑圧された地域だ。イスラエルの最も偉大な指導者自身がこの事実を認めている。トーマス・アーが、ダヴィド・ベン=グリオンの言葉を引用している。
“もし私がアラブの指導者だったなら、私は決して、イスラエルとは仲直りしない。それは当然だ。我々は彼らの国を奪ったのだから。たしかに、神がそれを我々に約束してくださったのだが、それが彼等にとって一体何の意味があるだろう? 我々の神は、彼らの神ではない。我々は、イスラエル出身だというのは本当だが、それは二千年前の話で、それが、彼らに一体何の意味があるだろう? 反ユダヤ主義、ナチス、アウシュビッツがあったが、それが彼らの罪だろうか? 彼らが目にしているのは、たった一つ。我々がやって来て、彼らの国を盗んだのだ。彼らがそれを受け入れるはずがあるだろうか?” http://thomas-l-are.blogspot.com
かつては国だったものが、現在は、ヨルダン川西岸のイスラエル入植地と、ガザという名で知られる開放型刑務所に囲まれた、少数の狭い孤立したパレスチナ人ゲットーだ。定期的に、イスラエルは、ガザの一般市民に対する軍事攻撃をしかけ、人々の生活や捕虜収容所インフラを破壊している。
イスラエルは、ガザで苦しんでいる人々に、補給品を送ろうとする外部からの取り組みを阻止している。ノーベル賞受賞者たちや、アメリカやヨーロッパの、元あるいは現職議員や、イスラエル国会議員すらもが乗り組んだ“自由船団”が、補給物資を積んで、ガザに向けて出向すると、公海でイスラエル海軍によって襲撃され、捕獲され、他への見せしめとして、代表団の何人かが、イスラエル軍の“自衛”のために殺害された。アメリカ合州国は、国連拒否権で、イスラエルの犯罪行為を擁護し、それ以外の諸国政府は、不承知ながら、アメリカ政府と対決して、変更を強いるのはいやなのだ。
中東における、アメリカ政府による、21世紀の戦争は、主要政策立案者たちがイスラエルとしっかり手を組んでいる、ネオコン政権によって始められた。戦争は、パレスチナ人に好意的な、アメリカ政府から独立した外交政策を行うアラブ諸国、イラク、リビアとシリアに集中した。アメリカ政府は、このうち二国の破壊に成功し、ロシアとの対決というリスクにもかかわらず、シリア破壊をあきらめていない。
中東におけるイスラエルの拡張を推進するため、アメリカ政府が、アメリカ人とヨーロッパ人に押しつけているリスクは恐ろしいものだ。シオニストは、ナイル川からユーフラテス川までの“大イスラエル”を主張している。中東におけるアメリカ政府の戦争は“大イスラエル”にとっての障害を排除することを狙ったものだ。例えば、過去数回、イスラエルは、水源を求めて、南レバノンを占領しようと企んだが、シリアとイランから補給を受けているヒズボラによって撃退された。これが、シリアとイランが、アメリカ政府の標的リストに載っている理由の一つだ。
自国の、あるいはイスラエルの狙いを実現するため、ワシントンは聖戦士を利用している。ロシアは、聖戦士を、ロシア連邦のイスラム教地域に広がりかねない脅威と見なしており、自らを守るために行動している。中国も、カザフスタンと国境を接する中国の州が、聖戦戦士による不安定化を受けやすいことを理解しているために、シリア政府を打倒し、代わりに、イラクとリビアでそうしたような混乱をもたらし、イスラエルの拡張に対するもう一つの制約と、聖戦士に対する、非宗教的シリア政府による抑制を排除するための、アメリカ政府の取り組みに対抗して、ロシア、イランとシリアと手を組んでいるように見える。
ハモンドの本から、この全てを理解するには、様々な異なる事実を結びつけ、結論を導き出す必要があるかも知れない。しかし本書には、パレスチナ人を追い払って、“パレスチナ問題”を片づけるための、イスラエルとアメリカとアメリカ売女マスコミとの間での陰謀を疑いの余地なく実証する、膨大な量の逐語的対話がある。
ハモンドの著書からくっきり浮かび上がってくるのは、正義は、イスラエル政府、アメリカ外交政策、あるいは、マスコミで、繁栄している特徴ではないということだ。国連は、パレスチナ人根絶を証拠立てる報告書を次から次と作成しているが、アメリカ政府による拒否権のせいで、行動するには無力だ。
パレスチナ人に対して起きていることは、北アメリカとオーストラリアの先住民に起きたことの再演だ。パレスチナ人は、財産や土地を奪われ、殺害されている。この犯罪で、アメリカ合州国は、責任をイスラエルと共有している。
まだ可能なうちに、情報を得ておかれるよう。プロパガンダが、真実を語る人々を“陰謀論者”や“国内過激派”に変えている。真実を語る人々が存在し続けて当然というわけではないのだ。そういう人が登場した場合は、是非ご支援願いたい。ハモンドの著書を、こちらでご注文願いたい。http://www.obstacletopeace.com
物事の本質を良く知ることで、後悔することは決してないのだから。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/08/22/the-genocide-of-a-land-paul-craig-roberts/
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16歳少年殺害事件は、たっぷり呆導するが、最近起きた「地域の大量虐殺」に関しては、すっかり忘れたふりをする大本営広報部。
知りたい高江や辺野古の状況についての報道は少ない。TPPの問題点になると報道皆無。万一報道があれば歪曲宣伝。大本営広報部でない組織から情報を得る以外、対策はない。
パレスチナ支援船団殺戮事件については、以前翻訳したことがある
パレスチナ支援船団殺戮事件:皆が海に 2010年6月4日
パレスチナ人に対して起きていることは、北アメリカとオーストラリアの先住民に起きたことの再演だ。パレスチナ人は、財産や土地を奪われ、殺害されている。この犯罪で、アメリカ合州国は、責任をイスラエルと共有している。
必読書、二冊。
『アメリカ・インディアン悲史』(絶版?新本入手は困難?)
『アメリカン・ドリームという悪夢 建国神話の偽善と二つの原罪』
人ごとではない。
いわゆる足尾銅山鉱毒事件で、異議を申し立てる谷中村住民を、谷中村を含め周辺を「遊水池」にして、村の存在そのものをなくして追い出し、鉱害反対運動を壊滅させた。
谷中村住民を追い払って、“足尾銅山鉱毒事件”を片づけた。
反原発テントの深夜撤去。
高江ヘリパッド反対運動に対する政府の攻撃。
谷中村住民や沖縄県民に対して起きていることは、北海道の先住民に起きたことの再演であるように思える。
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