オバマはウソをついているとトルコ - クーデター未遂の背後にアメリカ
Eric ZUESSE
2016年8月2日
7月29日、金曜、ロイターは、トルコ国内の主要なCIAの手先が、現在、トルコの刑務所に投獄され、クーデターの企てに関与していたかどで起訴されていることをアメリカ政府が認めたことに応えたトルコ首相の発言を引用した。“トルコのビナリ・ユルドゥルム首相は、エルドアン[大統領]の戦闘的発言‘これは自白だ’に同調した。”
このユルドゥルム発言は下記に対するものだ。
“木曜日、ジェームズ・クラッパー国家情報長官は、アメリカ合州国と緊密に協力していたトルコ軍将校を一掃して、粛清はシリアとイラク国内の「イスラム国」に対する戦いを損ねていると述べた。アメリカ中央軍司令官ジョセフ・ヴォーテル陸軍大将は、アメリカ合州国が協力していた軍人の一部が投獄されている”と考えていると述べた。
ロイター記事もこう報じている。“ユルドゥルムは、トルコは、クーデター策謀者連中の中枢に使われたアンカラ近くの空軍基地と、彼らが使用した軍の兵舎を閉鎖するとも述べた”。この空軍基地が、アメリカのインジルリク空軍基地であることは言及していないが、記事後半にはこうある。“トルコは、インジルリク空軍基地で、アメリカの軍隊と戦闘機を受け入れており、そこからアメリカ合州国は、イラクとシリア国内の「イスラム国」戦士に対する作戦出撃を行っている”。 これと、“クーデター策謀者連中の中枢に使われたアンカラ近くの空軍基地と、彼らが使用した軍の兵舎”のつながりが明記されてはいないが、アメリカ-トルコ-サウジアラビア-カタール-UAE-クウェート シリアのバッシャール・アル・アサド大統領打倒の取り組みに対する、このつながりの含意は極めて大きい。アメリカとサウジアラビアが率いるシリア侵略は、今や終わらざるを得なくなる。今や、シリアの聖戦士につながる欧米同盟の経路が終わってしまうのみならず、アメリカのこのNATO空軍基地の支配も終わることになる - トルコ首相によるトルコ政府政策発言が逆転されない限りは。これを逆転できる唯一の人物は、クーデターが特に、逮捕し、おそらくは殺害する標的としていた、タイイップ・エルドアン大統領だ。
シリアの世俗的で親ロシアのバッシャール・アル・アサドを、ロシアの石油とガスを、サウジアラビアの石油とカタールのガスで置き換えるべく、シリア経由、欧州連合へのパイプライン建設を認める聖戦主義スンナ派の反ロシア指導者に置き換えるというアメリカ-サウジアラビア-カタール-クウェートの作戦上、トルコは極めて重要な同盟国だ。シリアで戦っている何万人もの聖戦士のほぼ全員が、トルコを経由して、シリアに入っている。しかも、これら聖戦士に対するアメリカや他の欧米の兵器や医療品を補給する重要な補給線も、トルコ経由だ。結果として、もしアメリカと同盟諸国、サウジアラビア、カタール、UAEと、クウェートが、この作戦の同盟としてのトルコを失うようなことになれば、欧米のアサド排除の取り組み丸ごとだめになる。シリアで行われたあらゆる世論調査は、欧米の世論調査会社によるものでさえ、アサドに対する国民の支持は、50%を遥かに上回り、どのような自由で公正な選挙においても、どのような競争相手も、彼のこの支持率には到底及ばないことが分かっている。(実際、世論調査では、圧倒的多数のシリア国民は聖戦士を嫌っており - 連中を支援するアメリカを嫌っている。) この理由から、潘基文国連事務総長も、基本的に、シリアで何らかの民主的プロセスが確立される前に、アサドを権力の座から排除し、他に置き換えるというアメリカ政府の要求を非難している。シリアで‘民主主義’を確立する前提条件として、アメリカの気に入る独裁制を押しつけるというアメリカの要求を、国連事務総長は、再三拒否してきた。
2016年2月25日、“シリア: もう一つのパイプライン戦争”という題の記事で、ロバート・F・ケネディJr. が、ケネディ家史料から、アメリカCIAが、1949年以来、世俗的なシリア政権を打倒し、欧米原理主義者-スンナ派同盟諸国が、ソ連、後にはロシアの石油とガスを、こうした原理主義-スンナ派のアメリカ同盟諸国の石油とガスに置き換え、欧米の巨大石油会社が利益の一部を受け取るのを可能にするはずのスンナ派政権に置き換えようとし続けてきたことを彼は実証した。
2015年11月10日、“対アサド蜂起はアメリカ政府が画策した”という記事を私は書き、バラク・オバマが、2009年1月20日に初めてホワイト・ハウスに入って以来ずっと、アサドを追い出せるのではないかと、彼は密かに希望を抱いていたことを報じた。これは‘アラブの春’が始まる以前のことだ。私は後に“オバマのシリア侵略計画は、キム・ルーズベルトが1957年に立案したもの”という記事を書いたが、その時には、その計画が、1954年に、イランで、民主主義を打倒し、独裁制に置き換えるのを画策した同じCIA工作員が書いたもので、シリアでのそうしたCIAによる企みの最初のものではなく - 最初のものは、実際は1949年だということは知らなかった。
だから、トルコにおけるオバマ・クーデター策謀失敗で、サウジアラビアの石油と、カタールのガスを、シリア経由でEUに送るアメリカ大統領になるという彼の野望は実現不能となったように見える。
“一度でうまくいかなければ何度でもやれ”という古い格言がある。オバマのもとで、連中は再度こころみたのだ。そして、またしても、それは(どうやら)失敗したようだ。
8月9日、サンクト・ペテルブルグで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と、トルコのタイイップ・エルドアン大統領との私的会談が行われる予定だ。
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大橋巨泉と、永六輔が亡くなった。大橋巨泉経営のオーストラリアのお土産店には入ったことがある。買い物をしたかどうか覚えていない。
永六輔は、深夜ラジオ番組からのファンで、著書もかなり拝読している。今のタレントには、大橋巨泉や永六輔や、野坂昭如のような硬派は皆無。稀にいても、石田のように袋叩きされる。北朝鮮以下の社会。
渥美清が亡くなったのは、1996年8月4日。有楽町の映画館に入る時、目の前に、渥美清がすっと入っていったのをみて驚いたことがある。
『男はつらいよ』、売国傀儡が懸命に破壊しつつある古き良き、美しき日本の夢を描いたものだったのだろう。
今回の都知事選挙、実際は、TPPの先駆である特区を、東京でどんどん進めるために仕組んだ宗主国・属国共同の茶番シナリオ。こういう見方、大本営広報部は絶対に報じない。ネットでもほとんどみかけないことを不思議に思う。見落とししている可能性も大きいので、そういう視点を解説した記事をご存じであれば、ご教示願いたい。
都知事選の惨憺たる結果は、想定範囲だったろう。植草一秀氏が根本的な対策を書いておられる。大賛成だ。自民党分派と、反自民党議員が同居している政党など、政党として無意味だろう。植草一秀氏の説は、小生の「民進党、民社党説」とも一致する。民社党、つくづくどうしようもない自民党別動隊だった。
植草一秀氏の記事 民進党は「隠れ自公」と「反自公」に分離すべし
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» すでに決まっている東京都知事「次はユリコね」米国情報関係者 [逝きし世の面影]
孫崎 享 @magosaki_ukeru · 7月28日
極秘情報、都知事選。(6月15日午前、舛添氏辞職願を都議会議長に提出、小池百合子氏6月29日に記者会見で知事選立候補の意向を表明した経緯の中)6月17日の段階ですでに、米国情報関係者周辺では「次はユリコね」という会話がされていました。
孫崎 享 @magosaki_ukeru · 7月28日
[この情報、是非詳しく解説していただきたいです。] 本来話すべきでない発言を誰かした時ニュース源を明確にできないものがあります。残念なが... [続きを読む]
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そもそも、アメリカの自動車業界は最初からTPP反対の立場ですよ。只でさえ、鈴木自動車が燃費改ざんしたりと、日本の自動車産業のブランド力が下がり、マイナスイメージが加速されました。マスコミは意味不明な意見や根拠でしかTPP問題を論じてません。国民が被害者です。
投稿: 黒ずんだもち | 2016年8月30日 (火) 21時17分
国家戦略特区に関しての見解で第一人者といえば、大田区議会議員の奈須りえさんではないでしょうか。
彼女は3年前から国家戦略特区の危険性について警鐘を鳴らしており、現在も活動を続けておられますから、彼女のブログには関連記事があると思います。
ついでに少々私的見解を。。
国家戦略特区で最も危険なのは、何といっても公共サービスの民営化、中でも水道事業の民営化でしょう。
その他にも、地下鉄、空港、有料道路、公共施設、公立病院、公立学校などが挙がっており、触れらてはいませんが、恐らく都市ガスや流通市場なども含まれているものと思われます。
多くの国民、都民の方々は、民営化と聞いても殆ど無反応、無関心で、近い将来、公共料金が何倍にも跳ね上がるなどとは全く気づいていないという現状が、何とも恐ろしい限りです。
民営化というとソフトなイメージで、しかも日本国民の多くは"規制緩和=景気対策"という観念が定着してしまっている為、民営化も規制緩和の一つと捉え、良い事だと思っている人が多い訳です。
とんでもない。民営化とは、外資化なのであり、営利事業化であり、それはつまり住民からの搾取であり、住民の社会負担が増える売国政策です。
しかし悲しいかな、大半の国民は経済に疎く(経済を難しい学問と捉えている)、数字に弱く「よく解らないからお任せする」というところまでで思考停止してしまい、それ以上の説明は聞く耳を持たないのが現状です。
はてさて、これはTPPの国有企業章ともリンクする訳ですが、こうした公共サービスが全て民営化されてしまったら10年後には一体幾らの住民負担増になっていることでしょうか。
水道料金だけでも5倍になると予想され、その他もそれなりに倍化しているとすれば、その膨れ上がった料金を払い続けられる人がどれ程居るでしょうか。
特に水道料金などは、民間会社(ヴォリア社、ベクテル社、モンサント社などの多国籍企業)の運営となれば、料金滞納で即座に供給停止ですから、命に関る問題です。
にも拘わらず、大半の国民はその危険性に気づく事もなく、「自分には関係ない」と言って見過ごしているのですから、もう目眩がする程の愚民ぶりです。
水道に次いで恐ろしいのは公立病院が営利企業化され、外資に乗っ取られる事です。
外資系企業化されるという事は、外国人株主に対して最大限の還元を強いられ、その為には医療費を吊り上げる他ない訳で、患者の負担が増大する事を意味します。(保険料を含めて)
通常で考えるならば、医療費が高騰すれば安い医療機関へと患者は移動するだけで済む訳です。
ところが特区では外資優遇策で外資系企業の参入には税金を0にするなどの措置が採られる為、外資を受け入れない病院は患者を失い経営が成り立たなくなる様に誘導される訳です。
これが国家戦略特区の恐ろしいところなのです。
他にも外国人労働者の受け入れ優遇で日本人労働者の締め出し。
建築物の容積率緩和で資産の活用促進(一見良い事の様に見えるが、資産家に土地を手放させる策。結果、日本的情緒消滅で実質民族意識完全剥奪)。
その他、外国企業の進出に際して税金等優遇など、簡単に言えば日本をシンガポールの様な国にしようとするものです。(カジノはその象徴?)
一方、地方では農業特区で農業の企業化等、外資化され、農協は経営を圧迫され解体。外資による流通体系が作られ、食料の調達は不安定になり、農薬漬けの食料ですら手に入らなくなる恐れあり。
つまり国家戦略特区というのは、TPP先取りであり、且つTPPの下準備という役割も併せ持っている訳です。
これ程恐ろしい内容で、しかも複雑で一般大衆には理解し難いものである為、マスコミなどは一切報道していないのは言うまでもありません。
その他の場合でも、私もそうですが、TPP阻止の方が優先課題である為に、特区だけでも危険なのは分っていても課題を絞る必要性からTPPについてを優先して啓発しているのが現状です。
本当はRSEPだって気になっていますし、TiSAなんてのは更に恐ろしいものですから、声を上げたいところですが、あまり多くを語ったところで理解されなければ無意味と思い、控えております。
もう残された時間は無く、参院選、都知事選と総敗北の現状にあって、同時多発的に発生する事案を消化しきれず、更に追い討ちを掛ける様に民進党の代表選が最悪の模様。
私はもはや死刑判決(TPP批准&憲法改悪)を待つのみという遣る瀬無い心境に陥ってます。
投稿: びいとるさいとう | 2016年8月 4日 (木) 20時25分
例えば、東京の台場エリアで複合リゾート施設を作るという構想があります。
ネオコンのスポンサーとして知られているシェルドン・アデルソンは2013年11月、自民党幹事長代行だった細田博之に対し、この構想の模型を披露しながらスライドを使って説明、14年2月には日本へ100億ドルを投資したいと語ったそうです。その後、5月に来日したイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は日本政府の高官に対し、アデルソンへカジノのライセンスを速やかに出すよう求めたとイスラエルのハーレツ紙が2015年2月5日付け紙面で伝えました。(この記事をハーレツ紙はすぐに削除しました。)
http://www.richardsilverstein.com/2015/02/05/haaretz-removes-report-that-netanyahu-pressured-japanese-regulators-to-approve-adelson-casino-bid/
次のような記事もあります。
「自民党などは、カジノ解禁を含めた特定複合観光施設(IR)を整備するための法案を国会に提出した。日本維新の会、生活の党の議員などとの共同提出で、公明党は加わらなかった。超党派の「国際観光産業振興議員連盟」(IR議連、通称:カジノ議連)の会長、細田博之自民党幹事長代行が5日、党本部で記者団に明らかにした。」(「カジノ法案:自民党など国会提出-1兆円市場実現に向け前進」、Bloomberg、2013年12月6日)
「日本のカジノ構想は過去10年以上の間、浮き沈みを繰り返してきたが、その機運はいま、これまでにないほど現実味を帯びている。自民党などは昨年(2013年=引用者注)末、カジノ解禁を含めた特定複合観光施設(IR)の整備を推進するための法案を国会に提出、今年(2014年=引用者注)5月の大型連休明けに審議入りする見通し。同法案が予定通り国会を通過すれば、「IR実施法」の法制化に向けた作業が始まる。順調に手続きが進めば、カジノ第1号は2020年の東京オリンピックに間に合うタイミングで実現する可能性がある。」(「焦点:日本カジノに米サンズが100億ドルの賭け、巨大市場にらみ先陣争い」、ロイター、2014年2月28日)
日本にカジノを作らせろと要求してきた2013年にアデルソンはイランを核攻撃で脅すべきだと主張していました。
なお、アデルソンが日本でカジノを作りたがっているという話は「櫻井ジャーナル」で何度か書いたことがあります。例えば:http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201502080001/
投稿: 櫻井春彦 | 2016年8月 4日 (木) 02時19分