エルドアンは、いつ辞任するのか?
2016年6月20日
Martin Berger
New Eastern Outlook
トルコのタィップ・エルドアン大統領は、つい先頃まで、もしISIS (「イスラム国」)と彼とのつながりが証明されたら辞任すると大言壮語していた。以来、世界中の無数のメディアが、シリアをばらばらにしている悪名高いテロ組織支援で、エルドアンのズブズブの関係を示す膨大な量の証拠を公表した。ところが、エルドアンは辞任しなかった。それどころか、トルコ大統領は、全面的で絶対的な国家支配権限を確保することを狙った、様々な議会改革によって、トルコを議会による共和国から、一夜にして、大統領共和国へと変えて、権力の座に必死にしがみついている。近代的国民国家としてのトルコを支えてきた、あらゆる民主的原則を、彼は独力で包囲攻撃し、ベルリンから、テヘラン、さらにはリヤドに至るまでの、彼のかつての同盟諸国全てを、敵に回している。
影響力のあるサイト、Boulevard Voltaire記事によれば、2002年に権力の座についたAKP党指導者は、かつてトルコを統治してきた民主的原則の浸食を推進するまでは、強い立場を享受していたという。なにがあろうとも権力の座にしがみつきたいという権力欲に目がくらみ、政治家として、これまで、ずっと、そのために戦ってきた、ありとあらゆるものを、彼は破壊するに至っている。タクシム広場での抗議行動に対する残虐な弾圧、ジャーナリストや市民活動家投獄の継続、クルドPKKと、かつて和平協定をまとめたのが、エルドアンのAKPだったという事実にもかかわらずの、クルド住民の暴力的弾圧。
5月19日、トルコは、共和国の創設者で、初代大統領となった、ムスタファ・ケマル・アタチュルクの記念日を祝った。この日、ケマルが、トルコ北岸の都市サムスンに到着し、外国占領から、祖国を解放するための全国的闘争を開始し、これが現代トルコの形成をもたらした。この催しは、かつては国の大規模な祝日で、国民は盛大に祝ったものだが、もはや、そうではない。ケマル・アタチュルクは、世俗的トルコを創設したのだが、そのようなトルコは、今日どこにも見あたらない。
トルコにおける民主的価値観の発展を支援してきたヨーロッパは、苦い経験をしている。こうした民主的原理の支持者たちは、トルコ社会では、現在、数の上で圧倒されてしまったのみならず、激しく弾圧されているのだ。そして究極的に、最後の逆説だ。自分の様々な政治的決定を正当化するために、アタチュルクを、これまで、実に何度となく引用してきたエルドアンが、過去の智恵に対する“新たな解放の戦い”を始め、今や皆に、そうしたものを破棄するよう促しているのだ。今のエルドアンは、トルコを、政治的、宗教的混沌においやり、アタチュルクのトルコを、すんでのところで、粉砕しようとしている。
フランスの新聞、フィガロが指摘している通り、タィップ・エルドアンは、スンナ派世界における現代のトルコ皇帝として振る舞いながら、うぬぼれで目がくらんでいる。もっともなこととは言え、自分の評判を気にするあまり、彼がISISと共謀している事実を証明する多くの証拠があるなか、トルコにおける、言論の自由の原則を絶えず侵害している。それにもかかわらず、そうした背景の中で、彼はなんとか権力の座を保とうとしている。エルドアンは、たとえ彼が間違っているのが明らかでも、彼の考えを、疑問を抱いたり、議論したりすることなく支持してくれる、家族と親しい友人で、自らを囲むことに決めたのだ。ビナーリ・ユルドゥルム運輸・海事・通信大臣は、こうして与党トルコ公正発展党党首になった。
アラブの新聞、アル・アラブが、書いている通り、トルコ大統領は、人生の終わりまで、トルコを支配するというむなしい望みから、論議の中、自分のために建設したホワイト・パレスで、難を逃れることはできない。それでも彼は、似たような願望を抱いたかどで、最近中東いたるところで打倒された、アラブ指導者連中同様、絶対的権力を熱望している。自分の行動が、マスコミで、厳しい批判を引き起こしたり、あるいは権力の座にいる彼の疑わしい行動を巡り、議論になったりするという恐れを全く抱かずに、彼は宮殿を建設したのだ。
ところが、彼の行いに対する厳しい批判の波が、ついに現れ、全く彼が想像もしていなかった部分を攻撃した。トルコ・ジャーナリストたちが最近、彼の経歴の奇妙な事実を発見した - タィップ・エルドアンは、高等教育の卒業証書をもっていないのだ。
エルドアンとともに働いたことのある人の誰も、彼が高等教育を終了したことを示すいかなる文書を見たと証言できないと報じられている。これは特に、悪名高いアル・モニター、トルコ・サン、ヒュリエット・ディリー・ニューズや、他の多数の高く評価され、国際的に認められているメディアによって報じられている。トルコ憲法によれば、少なくとも四年間、高等教育機関で過ごして、卒業証書を得ていなければ、大統領になる資格がないので、間もなく、この問題は、裁判沙汰になるだろう。
疑問がひとつだけ残っている。エルドアンが、大統領の座を自ら進んで辞任するのか、それとも、世界が、憲法は、あらゆる国家の基本法と認識していて、その国の国民によっても、その国と関係のある国際社会によっても、無視されるべきではないのだから、国際社会が、彼が辞任するような対策を講じるよう強いられることになるのか、だ。
マーティン・バーガーは、フリーランス・ジャーナリストで、地政学専門家、本記事はオンライン誌“New Eastern Outlook”独占。
記事原文のurl:http://journal-neo.org/2016/06/20/when-will-erdogan-step-down/
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イギリスの知人から喜びのメール。小生も嬉しいというと、次は、首相もやめると。
家族で意見が割れて大変だったとも。他の国の人々と話しても、我々も投票したいと言っているそうだ。
イギリスでは、「ムサシ」は使っていないのだろう。うらやましいことだ。
「EU離脱」各地に拡大の恐れ という記事もあるが、小生のイギリスの友人にいわせれば、「EU離脱」各地に拡大の希望だろう。
大本営広報部の離脱報道、Paul Craig Roberts氏説と反対。株、経済の心配が主。当然ながら、安保の心配もしている。
植草一秀氏、この画期的な選択について、そして「マスコミ」による歪曲誘導報道についても、さすがに、しっかり指摘しておられる。
満州国を経営した人物の孫が、日本そのものを、永久満州国として、ついに完成しようとしている属国の人間から見ると、果敢なトルコ・マスコミがうらやましくなる。
昼の馬鹿エティ番組、今度は俳優覚醒剤問題だろうか。(見ていないのでわからない)お友達大統領の首が危ういことの方が、覚醒剤やバラバラ殺人より重要だろう。典型的白痴ガラバゴス現象。
小選挙区制導入がなければ、売国ファッショ体制、実現していなかったはず。
ありとあらゆるマスコミ、真っ赤なウソをいって、小選挙区制導入をあおった。
あの時、「マスコミ」の本質は、大本営広報部、大政翼賛会だと、強く確信したのだ。
小選挙区制導入が決定した時、日本は終わったと感じた。杞憂であってほしかった。
小選挙区制導入に反対した当時のジャーナリスト、石川真澄氏しか記憶にない。理科系出身のためか、数値を示す、実に論理的な反論だった。著書のうちの二冊の書名、今を予言しているように思え、胸が痛くなる。
堕ちてゆく政治(1999年)
戦争体験は無力なのか――ある政治記者の遺言(2005年)
「有力な情報サイト、Boulevard Voltaire」念のため、調べてみると「国境なき記者団」創設者が関係しているように読める。眉に唾をつけたくなってくる。
「国境なき記者団」については、下記記事を翻訳しているので、多くの方々が、彼らの発表をそのまま扱っておられるのを、毎回不思議に思う。
「国境なき記者団」のまやかし 2008年4月26日
残念ながら、リンク先の記事原文、もはや存在しないようだ。
しかし、筆者のSalim LAMRANI氏は、より新しい記事もかいておられる。
趣旨は変わらない。日本語に訳せば「国境なき記者団の25の真実」
25 vérités sur Reporters sans frontières 2014年5月6日
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