更にBrexitについて
Paul Craig Roberts
2016年6月24日
Brexit投票にまつわる情報が入り続けている。イギリス軍のある軍人は、彼の部隊では、若者の90%が、離脱に投票したと語った。アメリカ政府の戦争に関与すべきではないと思うがゆえに、離脱に投票したのだ。彼の部隊は、戦争は、イギリス国民によってではなく、ブリュッセル経由で、アメリカ政府によって決められるということに合意していると彼は言った。“投票所では、鉛筆だけ使うが、鉛筆では消され、変えられてしまう可能性がある”ので、兵士たちは“自らのペンを取って”投票箱へ向かったとも彼は言った。
マンチェスターのラジオ・レポーターで、ロンドンにいたリチー・アレンは、アイルランド人として、国民がリスボン条約を否決したのに、イギリスは既に、“EUが、より良い条件を出してくる可能性について語り始めていて”アイルランドの反EU投票が破棄されたのを覚えていると言う。言い換えれば、離脱投票は、意味のあるものとして、扱われなかったのだ。彼のゲスト・コラムは、ここで読める。http://www.paulcraigroberts.org/2016/06/24/the-campaign-to-undermind-the-vote-guest-column-by-richie-allen/
スティーブン・レンドマンが報じている通り、デービッド・キャメロンが、投票がプーチンと、ISISを幸せにしたのは確実だと強調して基調を打ち出して (この宿敵同士が、どういうわけか、同じことで、幸せになるのだ!)プロパガンダは既に本格的に稼働中だ。自己嫌悪のロシア人、ゲーリー・カスパロフは、イギリスEU離脱は“プーチンのヨーロッパ国境攻撃と対決するための機関を弱体化する”ので、Brexitは“ウラジーミル・プーチンにとって完璧な贈り物”だ と語った。ゲリーよ、一体どういう攻撃だ?
元アメリカ駐ロシア大使、マイケル・マクフォールは“衝撃だ、衝撃だ!”アメリカとEUが敗北して、プーチンが勝った。
もちろん、投票はプーチンとも、ロシアとも無関係だ。だが、ウソつきどもは、イギリス人に、自分たちは、イギリスを売り、ロシアにヨーロッパに対する権力を与えたと思いこませようとしている。ロシア大統領広報官ドミトリー・ペスコフは、このたわごとに答えた。宇宙のあらゆる出来事の説明に“ロシア要素”が引き合いにだされるのに我々は慣れている。
イギリス国民は、EUから離脱したと思うかも知れないが、そうではない。これから、長く困難な闘いが待っている。アメリカ政府と、アメリカ政府に仕えるイギリスの政治、マスコミ支配体制が、彼らの離脱をはばもうとするだろう。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/
記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/06/24/more-on-brexit-paul-craig-roberts/
----------
Brexitや、元俳優の覚醒剤でめくらましをされている時期ではない。
イギリス軍の若者の懸念は、日本の若者の、国民の懸念と、そのままつながっている。
【特別掲載!】「国防軍」の実態は「米防軍」!? 安保法制を強行採決した安倍総理の真の狙いとは?~『前夜・増補改訂版』より抜粋第3弾!「第二章 戦争の放棄」をアップ! 2016.6.25
« Brexit投票 | トップページ | 投票結果にもかかわらず、イギリスがEUを離脱する可能性は少ない »
「アメリカ」カテゴリの記事
- トランプ大統領の対中国「貿易戦争2.0」は過酷なものになるだろう(2024.12.06)
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
- 熟練専門家を前線に派兵して、戦争遂行努力の失敗を示しているウクライナ(2024.11.26)
「マスコミ」カテゴリの記事
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
- なぜワシントン・ポストは存在しないトランプ・プーチン電話会話を報道するのか?(2024.11.18)
- NYタイムズ、ウクライナに関する報道の変更を発表(2024.11.07)
- ジャーナリズムに対する戦争を続けるイスラエル(2024.10.27)
- イスラエル国防軍兵士が殺害された時とガザで病院患者が生きたまま焼かれた時のメディア報道(2024.10.18)
「NATO」カテゴリの記事
- ガザについて連中は嘘をつき、シリアについても嘘をついている(2024.12.03)
- 対シリア戦争を再燃させるアメリカと同盟諸国(2024.12.02)
- ロシアとの戦争でアメリカが負ける理由(2024.12.04)
- ロシア新形ミサイルが、いかにゲームを変えつつあるのか(2024.11.29)
- 欧米帝国主義は常に嘘の溜まり場だったが、今やメディア・トイレは詰まっている(2024.11.30)
「ポール・クレイグ・ロバーツ」カテゴリの記事
- 腐敗したアメリカ支配層に宣戦布告したかどでトランプは暗殺されるのだろうか?(2023.06.26)
- ポール・クレイグ・ロバーツは大量虐殺が好きなのか?(2022.05.01)
- ロシアの安全保障提案をワシントンが拒絶したのはまずい判断(2022.01.31)
- 欧米で、ジャーナリズムは宣伝省にとって替わられた(2021.11.23)
EU離脱派への嫌がらせ-潔くないゲス根性-
朝のヤフ-・ニュ-ズでは Brexit の再投票を求めるツイッタ-上の署名が200万集まったという。半日たった日経夕刊ではそれが250万に達し,その後AFP=時事通信では270万に達したというのだから,結果的に70万増えたことになる。
またEU離脱の国民投票の意味が分からずに「離脱」に投票した人もいるので,再投票を示唆するマス・メディア記事が現れた。しかし逆に,国民投票の意味が分からずに「残留」に投票した人もいるのではないだろうか(キャメロンはさすがに首相だけあって敗北を素直に認めた。潔い辞任である。パナマ文書でも甘い汁を吸っていたことを睡眠障害に陥らず潔く認めた)。
まさにP.C.ロバ-ツが指摘するように「イギリス国民は、EUから離脱したと思うかも知れないが、そうではない。これから、長く困難な闘いが待っている。アメリカ政府と、アメリカ政府に仕えるイギリスの政治、マスコミ支配体制が、彼らの離脱をはばもうとするだろう」。
さわさりとて,イギリス軍の若手兵士の投票行動には感心する。「鉛筆では消され,変えられてしまう可能があるので鉛筆は使わない」そうだ。日本の若者にこれだけの配慮があるのだろうか。また「彼の部隊では、若者の90%が、離脱に投票し・・・アメリカ政府の戦争に関与すべきではないと思うがゆえに、離脱に投票した」し,「戦争は、イギリス国民によってではなく、ブリュッセル経由で、アメリカ政府によって決められる」ことまでお見通しであるという。
スコットランド分離独立の時の不正集票作業がTV・ビデオに流れた記憶が新しいが,日本では「ムサシ」を思い出すとしても,イギリス軍の若い兵士たちが自分の投票が最終的に投票結果に表れることに細心の注意を払っているように窺える。日本の自衛隊が2.11の建国記念の日を「建国記念日」と若い兵士に指導している世界とは別の世界がある事を知った。おそらくこのイギリス軍とは海軍-コントラクト・ブリッジの海軍-を指すのであろう。
また約4600万票を手作業で仕分けしたイギリスの選管及び開票者に感動した。新自由主義社会ならば,使い捨て的に民間人を雇い,民間傭兵を派遣する。袖の下で小判を握らせれば,開票結果をどうにでも左右できる日本社会とはまるっきり反対の開票作業であった。
思えば,アメリカのオバマが,毒ガスを使ったとしてシリア政府を攻撃すべしと言ったとき,イギリス議会はキャメロン首相の提案を拒否した。十分な証拠なしにシリア紛争介入はできない。日本国憲法の言う「諸国民の公正と信義に信頼して・・・」というのは,イギリスの若い兵士や国民投票開票者や議会人の一部を指すのであろう。
分割して統治せよ,二枚舌のイギリスには賛成できないが,未だこの国には人の意見を良く聞き,議論し,公正に物事を進める精神が残っていることを認めざるを得ない。
追記: 日米に先駆けて中国を承認したイギリス。AIIB銀行に参加したイギリスのことは前回書いた。
追記2: 今でもトランプと言えばコントラクト・ブリッジを指すのであろう。戦前,日本の海軍の中で,戦争反対であったのは,①イギリスで教育を受け,コ②ントラクト・ブリッジをした経験がある将校であったという(加藤周一,日本の内と外,文藝春秋)。
若い兵士もコントラクト・ブリッジを愉しんでいるにちがいないが,このゲ-ムの特徴はおそらく,事実を事実として尊重し,客観的に自分のおかれた立場を自覚し,そこから判断を下す思考法を養うのに都合がいいのかもしれない。
追記3: ものの整理が悪いので,パソコンが変わると,住所録が消えてしまう。その一人がジャックである。『ジャックと豆の木』のジャックの子孫だという(?)。1988年,ハンガリ-のブタ・ペシュトで朝の散歩中に知り合った。若いのに禿げていたが,商談がない日に彼は昼間からビ-ルを浴びて上機嫌であった。
ハンガリ-には貴腐ワインというのがあるが,イギリス式パブはなかった。その後十年,彼は日本を訪れ,京都を見て帰った。今年はハンブルグで見本市があるが,小生と同様,彼はもう隠退しているだろう。Brexit 離脱に賛成なのか,どうか,一度は聞いてみたい。
投稿: 箒川 兵庫助(16-よ) | 2016年6月26日 (日) 20時12分