TTIPとTPP 対 ユーラシア統合
Boris VOLKHONSKY
2016年5月2日
Strategic Culture Foundation
もし公式報告が信じるに値するものであれば、アメリカ大統領バラク・オバマの最近のヨーロッパ訪問は、実際には、議論の核心だったはずのもの、つまり環大西洋貿易投資連携協定 (TTIP)を除いた、あらゆることを扱ったことになる。
前任者ジョージ・W・ブッシュのそれと比較してさえ、外交政策の成功がおそまつに見えるオバマにとって、特に、本人が認めている通り、ホワイト・ハウスの主が変わってしまえば、TTIPの未来の見通しは極めて不確実なのだから、華々しい成功をして、大統領の座を去ることが極めて重要だ。
それは、現在のアメリカ支配層による世界に対する野望に、あからさまに批判的なドナルド・トランプさえもが、大統領になる可能性があるからではない。オバマ同様、多国籍企業の権益を代表していてアメリカの世界支配を強く信じている、ヒラリー・クリントンが、大統領になった場合でさえ、問題があるのだ。現在、アメリカでは選挙戦が行われており、既に有権者は、国民国家としてのアメリカの利益を、エリートや大企業の帝国主義的野望よりも優先したがっていることが明らかになっている。こうした傾向を表しているのはトランプだけではなく、バーニー・サンダースもそうだし、共和党で第二位のテッド・クルスさえも、ある程度そうなのだ。たとえ彼女が勝利しても、特に、時間がたつにつれ、それで支持者が増えるだろうから、ヒラリー・クリントンは、こうした見方に配慮するよう強いられるだろう。
ヨーロッパの指導者連中は(多分、ドイツのアンゲラ・メルケル首相と、イギリスのデービッド・キャメロン首相を除いては)自分の国が、アメリカによる独占の植民地的付属物になってしまうという見通しには熱心ではないように見える。特にヨーロッパの多くの国では、今後選挙が予定されているので。だから、もしオバマが、TTIPをまとめるのに本当に成功すれば、勝利者の気分を味わえるだろう。2015年10月に、アメリカと、11のアジア-太平洋地域の国々の間で合意した環太平洋連携協定(TPP)とともに、全ユーラシアを、欧米と東洋で包み込み、TTIPとTPPの仲間外れにされた国々 - 主に、中国、ロシア、インドといくつかの国々を絞め殺す、あるいは、後から服従させる目的で、多数の先進国や、開発途上国や、上手くいっている国家経済を、アメリカ(というか、むしろ多国籍)資本に従属させる、アメリカを中心とする極めて強力な制度を作り出したことを、退任するアメリカ大統領は自分の手柄にできるだろう。
しかも、ユーラシアにおける権益のバランスを完璧に破壊するべく設計されたTPPとTTIPを実現するというアメリカの企ては、ユーラシア内での統合プロセスが強化する中で行われている。2015年5月、第二次世界大戦勝利70周年記念式典の際、ウラジーミル・プーチンロシア大統領と、習近平中国国家主席による、ユーラシア経済連合(EEU)と、シルク・ロード経済圏の統合に関する共同声明発表で、大ユーラシアのあらゆる国々の経済を一体化する巨大な可能性が開けた。同じ年の7月に始まった、インドとパキスタンが、上海協力機構(SCO)に、本格的な加盟国として参加するプロセスが(イランも近い将来、SCOに参加する可能性がある)こうした統合プロセスを完成させることになる。
更に、ユーラシアにおける統合構想は、EEU、シルク・ロード経済圏と、SCOに限られない。この文脈で、韓国の朴槿惠大統領によるユーラシア・イニシアチブ、カザフスタンの‘ヌリ・ジョル’計画や、モンゴルのステップ・ロード・プロジェクトも言及に値する。こうした全てのプロジェクトと、アメリカが推進しているTTPやTTIPプロジェクトの基本的な違いは以下の通りだ。TPPとTTIPの主要目的(加盟諸国の経済を従属させるのに加え) 主導的なユーラシア諸国、主に中国とロシアの経済成長を邪魔し、両国のアジア太平洋地域とユーラシアへの統合を防ぐことだ。だから、TPPとTTIP構想は排他的で、アメリカの主要な経済的・政治的ライバル諸国を意図的に排除している。対照的に、先に挙げたEEU、シルク・ロード経済圏や、SCOや他の全てのプロジェクトや構想は、そもそもあらゆる国に開かれている。こうしたものは、地域のあらゆる国の参加に向けて開かれているのみならず、主要インフラ プロジェクトが実施される地域にある国の一つでも、何らかの理由で、参加できなければ、実現不能になってしまう。
そして、こういう構図が見えてくる。ある種の完全なアメリカ支配のもとの枠組みを作り出すことに加えて(それで、単極世界秩序を維持するという、全く見込みのない狙いのために動き)、ユーラシアにおいて全ての国に開放された統合プロセスの実現には全く関心がない勢力は、こうした構想を直接粉砕しようとしているのだ。例えば、ユーラシアの紛争地帯地図と、シルクロードで提案されている経路の地図を比較してみれば、大半の紛争地域や、交差点や、最も重要な地点が、こうした経路に沿って存在していることがわかる(他の統合プロジェクト開発を目指す経路沿い)。
こうしたものには、領土紛争(例えば、中国と東アジアや東南アジアの隣国諸国間、あるいはインドとパキスタン間)、民族紛争(ミャンマー、ネパールやパキスタンのバロチスタン州)、内戦(シリアや、ウクライナ)や、直接の外国軍事介入(アフガニスタンとイラク)で、これらの国々が、崩壊寸前となっていることや、マラッカ海峡とアフリカの角での海賊、等々がある。イラン(最近まで、ユーラシア統合の主な障害の一つだった)を巡る状況が多かれ少なかれ、正常に戻り始めた頃合いに、ナゴルノ・カラバフでの紛争(確実に、国外勢力によって画策されている)が、急激に再燃したのは、到底偶然とは思えない。中央アジアの膨大な数の紛争や、潜在的な紛争が、休眠状態か、くすぶっている地域での、外国(主としてアメリカ)NGOの膨大な活動も、ここで指摘しておくべきだろう。それによって、自らのプロジェクトでユーラシアを包み込むのに加え、アメリカが‘分割して、統治という’古い原理を選んで、いかにして大陸の団結を弱めようとしているかということを、我々は完全に理解することができる。
記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2016/05/02/ttip-and-tpp-vs-eurasian-integration.html
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大企業による国家主権乗っ取り策謀のヨーロッパ版TTIPの交渉文書を、オランダのグリーンピースが漏洩して、問題になっている。オランド大統領は、「現時点では、フランスは、ノーだ」という趣旨の発言をしているという。
この島国の大本営広報部は、売国傀儡幹部の外遊(文字通りお遊びだろう)をそのまま棒読みするか、天災の九州地震の報告ばかり。あるいは、円高、株安。帽子をかぶった男がえらそうに円高対策についてもぞもぞ言っても、宗主国に、為替操作の監視対象にされて、手も脚もでるまい。そもそも、この為替操作の監視を、TPPに盛り込め、というのが、宗主国有力議員の主張。
売国奴連中が寄ってたかって、この島国の資産、市場、国民を、多国籍企業に売り渡す策謀の人災TPPを、大本営広報部は決して報じない。天災は防げない。せめて、被害を少なくする程度。しかし、人災は、本気になれば、本気の人々が動けば、防げる。それをふせがせず、特攻攻撃をあおる愚。
大本営広報部、別名、マスコミ、第二次世界大戦の間、日本優勢のような真っ赤なウソをいいつづけた。TTPについては基本的に報道さえしない。報道する場合は、エセ情報のみ。詐欺集団は、70年たっても、詐欺集団。
TPPは、憲法さえ越えることを、大本営広報部は、決して報じない。
細な知らなくてもよいこと(たとえば野球賭博やら麻薬)は詳細に、しつこく報じるのに
重要な知らなくてはならない売国TPPの恐ろしさは一言も報じない。
大本営広報部以外の情報をお読みいただくしかない。
TPP交渉差止・違憲訴訟の会
【決定版TPP】 “貧困・格差・TPP” 「月刊日本」5月増刊号
【IWJブログ】「TPPに署名しないか批准しないことが、民主的に選ばれた議会の責務」!!国連人権理事会の専門家アルフレッド・デ・サヤス氏が国際法および国際規約違反を示唆して警告!!
【IWJブログ・特別寄稿】「いのちの市場化」にNO!~TPPと国家戦略特区は「新自由主義」を実現する双子である (アジア太平洋資料センター〈PARC〉事務局長 内田聖子)
植草一秀の『知られざる真実』
安倍政権が全面推進する米国による日本収奪 2016年4月27日 (水)
TPPに関する、小生による多数の海外記事翻訳リストは下記。
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