寝ぼけ状態のヨーロッパ、ロシアと中国
Paul Craig Roberts
2016年5月5日
16年前、2000年9月19日、ロンドン・テレグラフのアンブローズ・エヴァンズ・プリチャードがこう報じた。
“機密解除されたアメリカ政府文書は、50年代と、60年代、アメリカ諜報界が、統一ヨーロッパを目指す運動に弾みをつけるための作戦を推進していたことを示している。諜報組織が、ヨーロッパ連邦主義運動連合に資金を供給し、指揮をしていた。
“文書で、イギリスをヨーロッパ国に押し込もうと、アメリカが舞台裏で積極的に動いていた当時、言われていたのではないかという疑惑が確認された。1950年7月26日付けの、あるメモは、本格的な欧州議会を推進する作戦を指示している。CIAの前身である、戦時アメリカの戦略諜報局OSS長官、ウィリアム・J・ドノヴァン少将が署名している。”
文書は、欧州連合が、CIAの産物だったことを示している。http://www.telegraph.co.uk/news/worldnews/europe/1356047/Euro-federalists-financed-by-US-spy-chiefs.html
以前私か書いたように、アメリカ政府は、多数の個別のヨーロッパ政府を支配するよりも、単一のEU政府を支配するほうがずっと容易だと考えている。アメリカ政府は、欧州連合の画策に、長期間投資してきたので、いかなる国がこの枠組みから離脱することに、アメリカ政府は全く反対だ。オバマ大統領のロンドン訪問は、ポチのイギリス首相に、イギリス離脱などありえないぞと言うためだというのが理由だ。
他のヨーロッパ諸国民と同様、イギリス国民は、自分たちの国の存在をやめて、ヨーロッパ人になるのを支持するかどうかに関し、投票することを決して許されなかった。イギリス史は、ローマ人や、バビロニア人などの過去の国民の歴史になるだろう。
わけのわからない抑圧的なEU法や規制や、膨大な人数の第三世界からの移民を受け入れろというEUの要求が、イギリスで、主権国家であり続けるのか、それとも、溶解して、ブリュッセルと、その独裁的命令に服従するのか国民投票をするという要求を生み出したのだ。投票は、6月23日に予定されている。
アメリカ政府の立場は、そのような判断は、アメリカ政府の利益にならないので、イギリス国民には、EU反対を決めることが許されないというものだ。
首相の仕事は“孤立した場合”の悲惨な結果とされるもので、イギリス国民を脅すことだ。主張は“ちっぽけなイギリス”は単独では生きられないというものだ。イギリス国民は孤立は、自分たちの終わりを意味し、イギリスは進歩に取り残された片田舎になると吹き込まれている。あらゆる偉大なことは、皆どこか他で起きて、彼らは取り残されると。
もし恐怖作戦が成功せず、イギリスがEU離脱賛成投票すれば、そこで起きる疑問は、アメリカ政府は、イギリス政府が民主的な結論を受け入れるのを許すのだろうかということだ。
あるいは、イギリス政府が、いつもしてきたように、イギリス国民を騙し、交渉で、イギリスが、イギリス国民が懸念する問題を解決するブリュッセルの譲歩を引き出した。
アメリカ政府の姿勢は、アメリカ政府が、アメリカ政府の権益だけが重要であるという固い信念をもっていることを示している。もし他国の国民が国家主権を保持したいと願えば、そういう連中はただ利己的だとされるのだ。しかも、彼らはアメリカ政府に従わないので、彼らは“アメリカ国家安全保障に対する脅威”だと宣言されてしまう。イギリス国民が、アメリカ政府の利益に合致しない決断をすることは許されないのだ。イギリス国民は、騙されるか、押し切られるというのが、私の予想だ。
仕組まれている“ロシアの脅威”の原因は、アメリカ政府の自己中心、自己陶酔、途方もない傲慢さと尊大さだ。ロシアは、欧米に対する軍事的脅威になろうしてはいない。それなのに、アメリカ政府は、黒海における、アメリカ/NATOの海軍力増強を増強して、ロシアと対決している(http://www.strategic-culture.org/news/2016/05/04/nato-form-allied-fleet-black-sea-plans-fraught-with-great-risks.html )、バルト三国とポーランドにおける海軍、兵員と戦車の増強(http://www.theguardian.com/politics/2016/feb/10/uk-to-contribute-five-extra-ships-to-baltic-as-nato-boosts-presence )、ロシア国境へのミサイル基地配備と、元ロシアの一部だったジョージアとウクライナを対ロシア・アメリカ防衛協定に組み込む計画だ。
アメリカ政府、将軍連中と、ヨーロッパ傀儡諸国が、ロシアは脅威だと宣言したのは、ロシアには独自の外交政策があり、アメリカ政府の利益の為ではなく、自国の利益のために、独自に行動することを意味している。ロシアが脅威なのは、アメリカ政府が狙ったシリア侵略や、イラン爆撃を阻止する能力を、ロシアが実証したからだ。ロシア黒海海軍基地があり、数世紀間、ロシアの州だった場所クリミアを、平和的かつ、民主的に併合することで、ロシアは、ウクライナにおける、アメリカ政府によるクーデターの一つの目的を弱めてしまった。
超大国アメリカにとって、イラク、リビア、シリア、イエメンや、ベネズエラのように小さな国が、一体なぜ脅威になりうるのか、皆様不思議に思われたことだろう。一見しただけで、アメリカ政府の主張はばかばかしい。アメリカ大統領、ペンタゴン幹部、国家安全保障顧問や、統合参謀本部議長連中は、これほど能力がわずかな国々を、アメリカ合州国や、NATO加盟諸国に対する軍事的脅威だと本気で見なしているのだろうか?
いや、見なしてはいないのだ。諸国が脅威だと宣言したのは、そうした国々が、独自の外交・経済政策を持っているか、破壊される前に、持っていたためだ。そうした国々の独自政策は、アメリカ覇権を受け入れない、あるいは、受け入れなかったことを意味する。そうした国々が攻撃されたのは、そうした国々を、アメリカ覇権下に組み込むためだ。
アメリカ政府の考えでは、独自の政策を持ったいかなる国も、アメリカ政府の傘の外にあり、それゆえ、脅威なのだ。
ベネズエラ政府が、ベネズエラ国民の権益を、アメリカ大企業の権益より優先すると、オバマ大統領によれば、ベネズエラは“アメリカ合州国の国家安全保障と外交政策に対する並はずれた、途方もない脅威”となったので“ベネズエラ脅威”を封じ込めるため“国家非常事態”が必要だ。
ロシア政府が、シリアと、イランへのアメリカ政府が意図した軍事攻撃を阻止する能力を実証し、ウクライナにおける、アメリカ政府のクーデタが、ロシア黒海海軍基地を、アメリカ政府に引き渡し損ねて、ロシアは、脅威になった。
ベネズエラが、アメリカに対する軍事的脅威とはなりえないのは明らかなので、ベネズエラは“アメリカ合州国の国家安全保障と外交政策に対する並はずれた、途方もない脅威”とはなり得ない。ベネズエラが“脅威”なのは、ベネズエラ政府がアメリカ政府の命令に従わないからだ。
ロシアが、バルト三国やポーランドやルーマニアやヨーロッパや、アメリカ合州国に対して、いかなる脅威でも全くないことは確実だ。ロシアがウクライナを侵略していないのは全く確実だ。どうして、それが分かるのか? もしロシアが、ウクライナを侵略していれば、ウクライナは今頃存在していないはずなのだ。ウクライナは、アメリカの歴史よりも長い期間、何世紀もそうであった通り、約20年前まで、ウクライナはロシアの一部だった。実際、ウクライナは、ハワイや、人種的特質を奪われ征服された南部諸州が、アメリカの一部だという以上に、ロシアの一部なのだ。
ところが、こうした現実離れしたウソを アメリカ政府最高幹部が、NATOが、アメリカ政府の従僕イギリスが、買収されお手当てを頂いている欧米マスコミが、買収されお手当てを頂いていEUが、まるで神が示した真理であるかのように果てし無く繰り返すのだ。
シリアがいまだ存続しているのはロシア保護下にあるからだ。それがシリアが以前存続している唯一の理由で、アメリカ政府がロシアを排除したい一つの理由でもある。
ロシアと中国は、自分たちの並ならぬ危機を自覚しているのだろうか? イランでさえも、進行中の危機一髪の事態を自覚していないと私は思う。
もしロシアと中国が危険を認識していれば、ロシア政府は、マスコミの五分の一のが、外国に所有されていることを認めるだろうか? ロシアは“外国所有”というのは、CIA所有だというのを理解しているのだろうか? もし理解していないのであれば、一体なぜだろう? もし、そうなら、一体なぜロシア政府は、外国所有のマスコミを通して活動するアメリカ政府諜報機関の手による、ロシア不安定化を許しているのだろう?
中国は更に無頓着だ。アメリカが資金提供する7,000ものNGO(非政府組織)が中国で活動している( http://www.globalresearch.ca/china-preserving-sovereignty-or-sliding-into-western-sponsored-color-revolutions/5523019 )。実に遅ればせながら、先月になって、中国政府は、ようやく動き出し、中国を不安定化するために活動しているこれらの外国代理人に一定の制限を課する。これらの反逆罪的組織のメンバーは逮捕されずにいる。連中は、単に警察の監視下におかれるだけで、アメリカ政府は、中国警官を買収するための無限の資金を提供できるのだから、ほとんど無意味な制限だ。
ロシアと中国は、一体なぜ、自国の警官が、メキシコやアメリカの警官より、賄賂がききにくいと考えているのだろう? 何十年もの“麻薬戦争”にもかかわらず、メキシコからアメリカへの麻薬の流れは妨げられていない。実際、戦争は連中に、賄賂という形で富をもたらすので、両国の警察部隊は“麻薬戦争”に莫大な利益を有している。事実、サンノゼ・マーキュリー新聞の殺害された記者が、何年も前に証明した通り、CIA自身が麻薬密売事業をしているのだ。
アメリカ合州国では、真実を語る人々は迫害されるか、投獄されるか、または“陰謀論者”“反ユダヤ主義者”やら“国内過激派”として片づけられる。欧米世界丸ごと、ジョージ・オーウェルが有名な作品『1984年』で描いたものより遥かに酷い暗黒郷と化している。
自国のマスコミや、大学や、金融制度や、両国社会のあらゆる部分に潜入している“おせっかいな”NGOの中で、アメリカ政府が活動するのを、ロシアと中国が認めているのは、両国政府が、独立国家としての自らの生存に全く関心がないことを示している。両国とも、自らの独立を守ることで、欧米売女マスコミに“権威主義的”と言われるのを非常に恐れている。
ロシアと中国は間もなく、アメリカ覇権を受け入れるか、戦争をするかという、いやな決断に直面することになるだろうと私は予想している。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2016/05/05/somnolent-europe-russia-and-china-paul-craig-roberts/
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ロシア監督が暴く「劇場国家、北朝鮮の実情」なる報道を見ながら
ロシアの報道機関が暴く「劇場国家、日本の実情」を思った。
連中が北朝鮮を馬鹿にすればするほど、この属国の悲惨な状況を実感するはかり。
何度でも言う。自分の頭の蠅を追え。
日本の庶民を地獄に追い込む策略を推進しているのは、北朝鮮ではない。
宗主国多国籍企業と呼応する属国多国籍企業だという事実、大本営広報部絶対報じない。
呆導機関なるもの、実態は、国民を騙す犯罪組織。
出演している連中、実態は、国民を騙す詐欺師。
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