トルコ: 軍事クーデターの瀬戸際か?
Peter KORZUN
2016年5月19日
Strategic Culture Foundation
トルコの状況は悪化し続けている。民間債務は手に負えない状態で、観光部門は急降下しており、通貨下落があらゆる国民の購買力に悪影響を与えている。益々増大する中央銀行への圧力と、政治的激動のために、トルコの年間成長率は既に減速した。
2013年のゲジ公園抗議行動、政府に対する賄賂の訴え、2014年の大統領選挙と、2015年の二回の国政選挙が、トルコ経済を圧迫した。50年間、平均4.5%だったトルコの年間成長率が、過去4年間、平均3%のままだ。エコノミストたちは、構造改革の遅れと、エルドアンの経済思考が、成長率を更に押し下げ、危機を誘発しかねないと警告している。
コチ大学の経済学教授、カミル・ユルマズはこう語る。“構造改革を実施できなかったためにトルコ経済は減速したのです。過去三年間の政治的展開のおかげで、投資は止まってしまいました。この状態のもとでは、経済の更なる減速は不可避です。”
レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は手がつけられない状態のようだ。政敵を投獄し、マスコミを差し押さえて反対派を厳重に取り締まっている。トルコ指導者は、憲法裁判所を解体すると一度ならず脅した。寄せるテロの波のさなか、治安問題が悪化している時期に、そういうことが起きている。
こうした出来事が、エルドアン“皇帝”による支配中、長年隅に追いやられていたトルコ軍を、再び政治的風景中に登場させた。トルコ軍とエルドアンとの間の溝には長い歴史があるが、現在、トルコ国内と国外で激動する出来事によって、それは更に大きくなっている。例えば、北シリアに緩衝地帯を作り、トルコ軍をシリアとイラクに送る計画は、軍幹部に反対された。
そこで、アメリカのオバマ大統領が、ムスリム同胞団によるエジプト乗っ取りを支援した際、エジプトを支配することにしたエジプト軍の決断が頭に浮かぶ。軍はアメリカ州国に挑戦して、権力を奪取して、最悪のことが起きるのを防いだ。1990年代、軍はアルジェリアを崩壊から救った。
現トルコ大統領は、飽くなき帝国の野望に対して挑戦するものと見なして、決して軍を信じていない。それにもかかわらず、シリアでの戦争勃発と、トルコ南東部での、クルディスタン労働者党(PKK)に対して継続中の作戦ゆえに、影響力のある勢力として軍の役割が復活することに大統領は甘んじさせられている。
アメリカン・エンタープライズ研究所の研究者で、元ペンタゴン職員のマイケル・ルービンは、トルコにおける差し迫った軍事クーデターを予言している。この専門家によれば、“トルコ人も - トルコ軍も - エルドアンが、トルコを崖っぷちに追いやっていると益々考えるようになっている”。“彼[エルドアン]は、トルコを勝利の可能性皆無で、事実上の分離の可能性が高い道へと導いている”とルービンは考えている。彼によれば、“もしトルコ軍がエルドアン打倒に動き、彼の取り巻きを投獄した場合、軍はおとがめなしにすむだろうか? 主張ではなく、分析として、答えはイエスだ”。特に、もし彼らが、民主主義回復にむけた明らかな道筋をすぐさま提示すれば、オバマ政権が、クーデター指導者を非難する以上のことをするとは思われないと、ルービンは書いている。トルコもギリシャも、クーデター後も、NATO加盟国資格を失わなかった。
現代トルコ共和国の創設者、ムスタファ・ケマル・アタチュルクが作り出した、断固とした非宗教国家“トルコ民主主義の守護者”だとトルコ軍は長年自らをと見なしてきた。軍は三度、トルコ政治に直接介入した(1960年、1971年と、1980年)。1997年、軍は一部の学者が“ポストモダン・クーデター”と表現するものを実行した。当時、軍は一連の“勧告”を出したが、政府はそれを飲まざるをえなかった。
2008年-2011年に起きたエルゲネコン裁判で、一連の法廷審問が注目をあびた。275人の軍当局者やジャーナリストや野党議員を含む全員非宗教主義秘密組織とされるエルゲネコンのメンバーが、トルコ政府に対して陰謀をたくらんだかどで訴えられた。裁判では、告訴された大半の人々が長期間の懲役判決を受けた。2010年、トルコ警察は、エルドアン政権打倒を画策したかどで、何百人もの現役と、退役軍幹部を逮捕した。何百人もが監獄に送られたが、裁判は最終的に消滅した。
“宮廷クーデター - 2016年”がわずか数日前に起きた。5月22日の臨時党会合で、エルドアンとの権力闘争に敗れた後、アフメト・ダウトオール首相は辞職し、再出馬しないことに決めた。エルドアンを批判する人々は、これを大統領が権力を強固にできる“宮廷クーデター”と呼んでいる。
“トルコ軍の影響力の回復は、大統領官邸にまでいたるあらゆる場所で、この件に詳しい人々によれば国内の反対派に対する大規模取り締まりが、欧米資本家の警戒心をひき起こした、世論を二分している人物、エルドアンを将軍たちが打倒しようとするかもしれないという懸念を復活させた、”と、ウオール・ストリート・ジャーナルが掲載した記事でワシントンを本拠とするアメリカの国家安全保障専門家ディオン・ニッセンバウムは書いている。
アメリカ軍と外交幹部は、軍の影響力を強化したのは、フルシ・アカール参謀総長の功績だとしている。エルドアンとの権力闘争後、辞任の決断を発表した元首相アフメト・ダウトオールは、アカール参謀総長とトルコ軍司令部で会談した。“周辺の多くの地域が危機的状態であるにもかかわらず、将来のトルコにおける民主制度を確信をもって見ていられるの主な理由の一つは、トルコ参謀本部のおかげです”とダウトオールは述べた。“国境内のテロ問題であれ、国外でのシリアやイラクで起きている不安定であれ、トルコ国軍はわが国の力です。”
退任する首相が軍を称賛し、民主主義を褒めたたえたのは偶然だったのだろうか?
トルコは岐路に立っている。変化のための機は熟している。何らかの形で、危険な坂道を滑り落ちる動きは止めなければならない。トルコ国民には、実に簡単な選択肢がある。狂気を、平和と繁栄への道へ向かう知性と智恵と置き換えるか、内戦と破壊のくすぶる灰のもと、現在の下降の道を進み続けるかだ。エルドアンが権力の座にあっては、トルコに未来はないように思える。
記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2016/05/19/turkey-brink-military-coup.html
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都知事問題には、いい加減あきたが、タレントやら、評論家やら、実態たいこもち、平然とたわごとを述べている。その次は、サミット、そしてタレント・ストーカー問題。沖縄レイプ・殺人の報道は極小。同じことを書いているので、お読みになる方々も、あきておられるだろう。
御用済みになると、宗主国によって、政権の座から追われるのが、属国トップの運命。
この列島では、しっかり宗主国のため、TPP批准、憲法破壊に邁進しているので、今は安泰。
沖縄基地問題、辺野古問題に正面から取り組んだ鳩山政権とは雲泥の差。そして、宗主国いいなりの状況が、今暴露されている。広島・長崎の戦争犯罪をわびず、TPPを押しつけての日本永久属国化を自分の遺産にしようと、飛んで火にいる初夏の虫。
孫崎享氏のメルマガ、「日本とイタリアの地位協定の違い」を指摘しておられる。そこで、二年前に訳した記事を思い出した。こちらも、ご一読いただければ幸い。
『日本はなぜ「戦争ができる国」になったのか』購入。間違えではないかと思った値段!
拝読前に、IWJの岩上氏による著者矢部宏治氏インタビューを見ておこう。
岩上安身による『日本はなぜ、「戦争ができる国」になったのか』著者・矢部宏治氏インタビュー 2016.5.20
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