投げ捨てられるブラジル民主主義
Pepe ESCOBAR
2016年3月31日
Strategic Culture Foundation
有能な政権というより汚職で秀でていることで知られる卑しいいかさま師連中が、若いながらも活力あるブラジル民主主義を(文字通り)投げ捨てるには、たったか3分しかかからない。
評決をすることもなく、従って売国奴が公に誰か特定されないまま、中道派ブラジル民主運動党(Partido do Movimento Democratico Brasileiro or PMDB)が、ジルマ・ルセフ大統領がブラジリアで権力の座に留まるのを支持する連合から離脱して、カフカ風なルセフに対する弾劾の動きが4月に承認される可能性を増した。
PMDBはブラジル最大の政党で - 513人の議員のうちの69人を占めている。短期的には、党は、党議員の一人で、さほど素晴らしい憲法主義弁護士とは言えぬ、75歳の現副大統領ミシェル・テメルを、2018年の次回選挙まで大統領の座につけて、ブラジルにおけるハイブリッド戦争主唱者と、連中の卑しい臣下どもが夢見た白色クーデター/政権転覆シナリオを実現させることに貢献することとなる。
ブラジル憲法は弾劾を認めている。しかし、ルセフの場合、いかなる疑う余地のない“刑事責任”は証明されていない。国債横領や財政の不適切な管理を巡る告訴理由とされるものは、本質的に、でっちあげだ。
事態は悪化している。このあからさまな白色クーデター/政権転覆過程は、ブラジリアの下院議長、悪名高いいかさま師エドゥアルド・クーニャが、汚職のかどで下院議長の座から追われるのを防ぐ、汚い作戦と平行して行われている。テメル新政権が議会で新たな多数派を宣言する必要があるという建前でクーニャはただ“辞任”してすませるのだ。
いかさま師連中による陪審団
今やブラジルで進行中の大規模な政治-経済危機のこの新段階は、議会でルセフ告発を実現するために必要な、三分の二の多数(342票)を奪い取るべく全員が体制を整えている PMDBの悪漢連中によって支援されて、右翼反政府派に恩恵をもたらしている。
悪辣な政治家/主流マスコミ/お馴染みの買弁エリートの組み合わせが、大多数の国民に、万事休すだと思い込ませる壮大な心理作戦が今後数週間続くに違いない。ところが、白色クーデター/政権転覆シナリオに不可欠なこの342票は、決して確定したどころでないのだから、万事休すではない。
PMDB議員の一部は、立派なことに、いまでもルセフを支持している。ブラジル。連邦警察は、洗車作戦捜査の核心である巨大なペトロブラス・スキャンダルに、テメル本人を含め、かなりの人数のPMDB議員が直接関与していることを示している。芯まで腐ったクーニャ下院議長は、とうに監獄にぶち込まれているべきなのだ。このソフト・ハイブリッド戦争の画期的訴訟において、事の核心は、私が以前に主張したように、いかさま師の集団によって“審査”されつつも、いかなる悪事によっても有罪とされていない女性大統領だ。
白色クーデター/政権転覆から生まれたテメル政権が実現するとすれば、政治方針は、ブラジリアのインサイダー連中によれば、これまでの四度の大統領選挙で、こっぴどく敗北した現在の右翼野党によってでっちあげられたものとなるはずだ。
テメルなど、せいぜい止血タンポンにすぎまい。彼は2018年の大統領選挙出馬を許されるまい。右翼名士による閣僚チームを編成するよう彼は穏やかに“説得される”。また、そもそもの意図が、そうした名士連中は決して捜査せず、労働者党だけ捜査するもので、硝酸を満たした浴槽中で溶解されるはずの洗車作戦捜査に口をだすことはあるまい。
ごみ箱に注目
洗車作戦はその正体が暴露されることになろう。この1990年代、イタリアでのマーニ・プリーテ(清廉な手)作戦の熱帯版リミックスは、決してブラジル政治体制から汚職を追放するための本物の動きではない。絶対に全員が、芯まで腐敗しているこの体制で儲けているのだ。
そうではなく、洗車作戦は、今やルセフ弾劾を慶賀しているお馴染みの買弁エリート連中の利益になるように、更にはルーラのオーラを破壊し、彼が2018年、大統領選挙再出馬するのを合法的に阻止できる可能性に向けて機能する、容赦ない新たな宗教裁判装置として考え出されたものだ。
ルセフ弾劾の動きについて言えば、これは - だれあろう - 自分自身が汚職で捜査されつつある元野党議員による怪しげな訴訟手続きに依存したものだ。
軍事クーデターは、ピノチェト時代のものだ。ブラジルで起きていることが高度なハイブリッド戦争で、ブラジル連邦検察庁、商業マスコミ(四家族が支配している)と、議会のかなりの部分が画策している白色クーデター/政権転覆作戦であることは、いくら強調してもし過ぎることはいな。
だが、全て白紙状態だ。ブラジル国内の極端に流動的な状況が、完全に麻痺し、両極化するなか、のっぴきならぬ新情報が確実に明らかになってしまうので、政権転覆工作者連中は急いでいる。ネズミどもは、フルタイムで卑劣な活動を続けているが、政権転覆工作者の多くが路上轢死者に成り下がるはずだ。
そして、もし更に運命の意外な展開で、- 結局、彼女が犯罪をおかした証拠が無いのだから - ルセフには“刑事責任”がないとブラジル議会が審議すれば、大統領は権力の座に返り咲くだろう。そして、政権転覆暫定“政府”は、もともとそれが属している場所に投げ捨てられるだろう。悪臭に充ちた歴史のごみ箱に。
記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2016/03/31/brazilian-democracy-thrown-to-the-dogs.html
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この劣等いや列島も、うり二つの状況。日本で起きているのも白色クーデター。売国奴隷の道をまっしぐら。大本営広報部大政翼賛会、別名マスコミが強力に幇助している。
辺野古で、とうとう目取真俊氏が逮捕された。始めから狙っていたのだろう。傀儡植民地では、独立志向のまっとうな発言・行動は犯罪になる。捕らえた側こそ売国犯罪人。
あの理不尽な警備体制を体験願いたい。それは無理でも、静止画なり、動画をご覧いただければご理解願えるだろう。目取真俊氏ご自身のブログを拝読すればわかる。
海鳴りの島から 沖縄・ヤンバルより…目取真俊
売国本土マスコミではわからない現地の状況を、自ら参加しながら真摯に報じておられる貴重な記録だ。
沖縄の報道、住民を覚醒させる内容であるのに対し、本土の報道は逆だ。今は亡き品川正治氏が言っておられる。TPPは典型例。「売国奴の一味」という表現しか思いつかない。
2016/03/30 「雲隠れ」を続ける甘利明氏を刑事告発! 岩上安身による宮里邦雄弁護士インタビュー(動画)
中学生誘拐より、こちらの方が全国民にとって、未来世代の全国民にとって死活問題。
品川正治氏が『激突の時代 「人間の眼」vs.「国家の眼」』や、『遺言』で指摘しておられる通り、沖縄と本土におけるマスコミの質の根本的違いが原因だろう。
『激突の時代』の連続講座・第4回 第11章 日本のマスコミ から、ごく一部を引用させていただこう。225ページから226ページ。太字は小生が加工したもの。
国民に怒りを持たせない
マスコミの現在の姿勢を言で言ってしまえば、とにかく国民に怒りを持たせない、あるいは怒りの的を外してゆこうというものです。そういう役割をご本人たちが意識しておられるかどうかは別として、私はその点を非常に問題視しています。
私は沖縄で発行されている「琉球新報」と「沖縄タイムス」の二紙をとっていますが、この二紙は、国民の不満を「怒りにまではしない」という報道姿勢は持っていません。そこが日本のマスコミ全体と大きく違うところです。
もちろん沖縄の問題では、事実関係を報じるものとしては、大手全国紙でもしばしば一面をにぎわせています。非常に大きな紙面形成になってもいます。けれども、沖縄の二紙と本土のマスコミとでは、どこが違うかというと、「怒りを起こさせない」という本土と、「そうではない。本当の事実を知らせないといかん」という沖縄─この違いが大きいでしょう。
沖縄の新聞を読み始めた頃、本土とどこか違うと感じたのですが、そのことはすぐに分かりました。それ以来、この点を非常に強く意識しています。占領支配と日本マスコミ
それではなぜ、日本のマスコミは全体として「怒りを起こさせない」となってしまったのか。その本を正せば、第二次大戦での日本の敗戦と、その後の米軍を中心とする連合国の占領支配に遡ります。
以下略
54-55ページにでは、大略下記のような発言をしておられる。
政府の理不尽な行動に反対の声をあげる官邸前の原発再稼働反対や、オスプレイ配備に反対する沖縄県民大会があっても、マスコミは触れたがらない。取り上げるにしても、むしろニュースとして、なにか珍奇なものを見るような形でしか報道しない。
そして、56ページで、こう言われている。
いまの日本の政治の現状を見ると、政治的にはもうある意味で限界に来ているけれども、多くの人は、どの政党に託していいかと思い悩んでいる。そして、選挙を冷めた目でしか見られなくなっています。政党を選択しようと思っても、これからの日本の進むべき方向が自分の考えている方向にはなりっこないと感じ、しかも、どっちもどっちで、「コレラを選ぶかチフスを選ぶか」という程度のものだと捉える人が多くなっています。
しかし、もう一度言いますが、政治は政局だけ問題ではありません。選挙は大事です。しかし、それだけではない。先ほど述べた様々な運動を含め、それぞれが複合して方向を創り出すのです。
議会で憲法を破壊し、緊急事態条項を実現するために必要な、三分の二の多数を奪い取るべく、大本営広報部大政翼賛商業マスコミ洗脳を推進して、全員が体制を整えている自民・公明右翼傀儡政権が、野党を装う別動隊によって支援され、恩恵を得ている。
『アトミック・ハーベスト ブルトニウム汚染の脅威を追求する』を再読している。今は購入不可能かもしれない。ファシスト体制では、庶民に必要な本ほど、市場から消える。
冒頭にスチュアート・ユーダル元米国内務省長官による「推薦のことば」がある。
5ページで、あの有名な「たわごと」そっくりな言葉にびっくり。予言のよう。原書は1993年。翻訳は1995年。
誰も被害を受けることはない、すべてはきちんとコントロールされている、と研究者と政治家たちは断言した。だが、ネバダの核実験場、ロス・アラモス、サバンナ・リバー、ハンフォードといった地域で、実際にどんなことが行われていたのか、それが明らかになった今日、われわれの指導者と専門家たちがわれわれに嘘をついていたことが暴露されている。爆弾製造者がつくりだした汚染という遺産にいやでも対処しなければならないのは、私たちではなく、未来の世代なのだ。しかし、せめて私たちは、民主主義の対話の精神を汚した彼らの欺瞞をしっかりと理解しなければならないだろう。それが私たちに課せられた使命である。
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