二重基準と露骨な偽善 - アメリカの対トルコ政策
Brian CLOUGHLEY
2016年4月8日
Strategic Culture Foundation
3月26日、イスタンブールで、二人のジャーナリストの裁判を、外国の外交官が傍聴していたことについて、トルコのエルドアン大統領が“厳しく批判した”。財界人の会議で、彼は怒りを爆発させて、こういさめた“イスタンブール駐在の総領事たちが裁判を傍聴した。一体何様だ? そこで一体どういう仕事をしているんだ? 外交には一定の礼儀やマナーがあるだろう。ここはあなた方の国ではない。ここはトルコだ。”
エルドアン大統領は、裁判前なのに、トルコ国家情報機構(MIT)が、シリアの反政府集団に武器を密輸していたのを報じたかどで、告訴されているジャーナリストは“大きな代償を支払う”ことになるだろうと宣言し、“ここはトルコ”であることを明らかにした。当然、そのような訴訟には、国際的関心があり、外国外交官が自国政府に裁判所で行われている裁判の事実を報告するため、裁判を傍聴するのは世界でよくあることだ。
ところが、トルコ大統領は、トルコに派遣された外交官は、訴訟手続きを傍聴するため、トルコの裁判所に入ることが想定されていないことを世界に知らせたのだ。彼は更に、イスタンブールの外国外交官に、彼等は“領事館建屋と、領事館の敷地内を移動することはできる。しかし他のどこも許可がいる”とまで言ったのだ。
エルドアン氏は、世界に向かって、彼にとって国際法は無意味だと語っているのだ。あらゆる国において、外国外交官は、当然“国家安全保障上の理由から、進入が禁じられていたり、規制されたりしている区域に関する法律と規制に従い”“移動と旅行の自由”が認められると定める、外交関係に関するウィーン条約を彼は侮辱して否定したのだ。
禁止区域には、裁判所は含まれない。90日の拘留期間の半分を独房で過ごしたジャーナリストの裁判は、国家安全保障とは無関係で - 国家的不誠実に過ぎない。
エルドアン氏による国際ルールや価値観の侵害に関する欧米マスコミ報道は、実に地味で、自ら招いた雲散霧消状態で、外交行動の基本原則に対する、彼のあからさまな軽蔑への非難はほとんど皆無だ - 駐イスタンブール・アメリカ合州国総領事、チャールズ・F・ハンターからは皆無で、エルドアン氏が口汚くぶち切れた日、彼のウェブの主要見出しは“ウクライナ人パイロットに対するロシアの不当な刑を巡り世界中が怒っている”だ。
ハンター総領事は“ウクライナ人パイロットで国会議員ナディア・サフチェンコに対する、ロシア裁判所の22年間の刑を、国際社会はすぐさま非難した”と書いているが、欧米マスコミは、裁判をさほど報道していなかったのだから、まったくのたわごとだ。そればかりでなく、ハンター総領事は、サフチェンコの“国会議員”の身分が、裁判が始まってから、ウクライナ政府が与えたものであることに触れなかった。サフチェンコがウクライナ議会に足を踏み入れたことは皆無だが、簡単にあやつれるオンライン情報サイトのウイキペディアは、彼女のことを“ウクライナ政治家で、元ウクライナ地上軍陸軍の航空パイロット”と書いている。
反ロシア・プロパガンダ・キャンペーンの一環として、サフチェンコについて、アメリカ国務省のジョン・カービー報道官が、ロシアは“正義の原則をあからさまに無視した”と述べたが、キューバ内の植民地飛び地で、哀れな捕虜の誰一人、国際法プロセスの適用が許されない捕虜収容所を15年間運営している国のものとして、馬鹿げた声明だ。兵士による拷問の何千枚もの写真の公表を拒否している国の言いぐさとしても度が過ぎる。
一部の写真はメディアで公表されたが、秘密厳守を誓った、ごく一部の上院議員と下院議員以外には、本当にすさまじいものは決して公表されなかった。
イラクにあるアメリカ捕虜収容所で微笑む女性拷問者
“問題となっている写真の公開は、イラクやアフガニスタンにいるアメリカ合州国や同盟諸国の軍人や民間人の、生命や肉体的安全にとって著しく高い危険をもたらすという大統領と最高位の軍当局者の判断”に、アメリカ最高裁は同意している。
汚らわしく厄介な事実の可能性があるものを隠す重要性に関する、アメリカ支配体制 - 大統領、議会と最高裁 - の政策を考えれば、シリアを本拠とするテロ集団に、兵器を提供している、彼の違法行為に関する厄介な事実を暴露したジャーナリストに対する彼の迫害や、アメリカ外交官が、彼等の裁判を傍聴していたことについての侮辱的罵倒に対するエルドアン大統領への批判が、ワシントンでは皆無なのも驚くべきことではない。
3月18日、イギリスのインデペンデント紙は“トルコ大統領は、ジャーナリスト、弁護士と政治家たちは、テロリストとして告訴されるべきだと要求した後、トルコでは、民主主義と自由には‘絶対に何の価値もない’と述べた”と報じた。しかしこれは、いずれも、つべこべいわずにエルドアン大統領を支持しているアメリカとイギリスの政府にとっては、何の意味もないのだ。両国を侮辱してから五日後の3月31日、ワシントンでの(全く無意味な)核セキュリティー・サミットで、エルドアンは、アメリカ大統領と副大統領と会談した。
会談後、ボイス・オブ・アメリカは、オバマ大統領は“トルコ安全保障に対するアメリカの確約をトルコ大統領に保障し”“クルド人が多い南東の都市ディヤルバクルでの、当日早い時間のテロ攻撃に対し、エルドアン大統領に哀悼の言葉)を述べた”と報じた。そして、バイデン副大統領は“アメリカ合州国とトルコの緊密な同盟を再確認した ... [そして]両国の軍事協力を深化させる方法について話し合った。”だから、エルドアン大統領は、反民主的罵倒を、帰国後も自由に続けてよいと思ったのだ。
ささやかな能力を、要求が遥かに超える地位にのぼりつめるのに成功した多くの国家指導者同様、エルドアン大統領は“民主主義と人権について教訓を垂れようとする連中”を罵って、自分の常軌を逸した振る舞いの正当化を続けている。4月4日、トルコでは報道は自由だと彼は言い、彼に“盗人”で“人殺し”とレッテルを貼った刊行物があるが閉鎖もさせられずにおり“そのような侮辱や脅しは、欧米では認められない”と主張した。
更に、先に述べた通り、彼の諜報工作員連中が、シリア反政府集団に兵器を密輸していたことを報じたかどで“高い代償を払う”ことになる、と彼が宣言した二人のジャーナリストを、公判前拘留から解放するよう命じたトルコ憲法裁判所は“自らの存在を裏切った”と彼は述べた。
トルコは混乱状態にある。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこう報じている。支配者の“政治的反対派、大衆抗議行動や、批判的なマスコミに対する不寛容が益々激しくなっている。裁判所や検察官に対する政府介入が司法の独立性や法の支配を損なっている”。
エルドアン大統領と会談した際、オバマ大統領もバイデン副大統領も、民主主義や国際法を否定する彼の感情的爆発に関して、なんら穏やかな批判もしなかった。
多分彼らの顧問が、二人に、エルドアン大統領にも“民主主義と人権について、教えを垂れようという連中はまず自らの恥を考えるべきだ”という点で一理あると指摘したのだ
記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2016/04/08/double-standards-downright-hypocrisy-us-policy-turkey.html
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腹がたつだけなので、ほとんど見たことがない「日曜討論」TPPがテーマなので、やむなく見た。
冷静にきいていれば、民進、共産、社民が言っていることがまともで、自民、公明、おおさか維新の言いぐさ、お馴染みプロパガンダ念仏だということがわかるだろう。と思うのだが。
輸入が増えて、国内生産も減らない。日本人は突然大食漢になるのですか?という小池氏の指摘はうまい。
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