キューバのオバマ … 歴史の捏造
Finian CUNNINGHAM
2016年3月23日
Strategic Culture Foundation
三日間のキューバ公式訪問は“二国が関係を構築する歴史的好機だ”とオバマ大統領は述べた。
家族とともにエア・フォース・ワンに搭乗して到着したオバマはこう宣言した。“キューバ国民と直接会って、話を聞くのを楽しみにしている”。
何という傲慢。もしキューバのラウル・カストロ大統領が、支配者を無視して、アメリカ国民に似たような見下した呼びかけをした場合、ワシントンでの騒動は想像がつく。
ニューヨーク・タイムズの見出しは“オバマは、キューバ国民に耳を傾けると誓って、キューバに上陸”だ。
全て重要で和解的に響く。悲しいことに、そうではないのだ。アメリカ・マスコミの誇大宣伝は、キューバに対するワシントンの見方が、一方的で、グロテスクなまでに歪曲されているという事実と矛盾している。
ワシントンが、貧窮化した人口1100万人の島国に対し、残酷な禁輸を課し続けているのが事実だ。多くの人々が思い出すことさえできない理由とされるものにもかかわらず、これはまさに経済戦争に他ならない。本当の理由は単にこういうことでから、禁輸の公式な正当化は、当然の如く忘れられがちになる。ワシントンの裏庭と見なしている国で、あらゆる類の政治反対派を粉砕する、勝てば官軍だ。
アメリカはグアンタナモ湾の軍事基地-拷問センターというキューバ領占領も続ける。
両方の点での、キューバ主権のこうした基本的な侵害は、横柄なワシントンによれば、議題にならない。
しかし、キューバは、民主的権利と言論の自由を妨げているというアメリカの主張に譲歩することが期待されている。いずれにせよ、こうしたキューバの違反は、諸外国の容赦ない転覆から、本格的な侵略戦争に至るまで、ワシントンが行っている世界的犯罪の規模と比べれば僅かなものだ。
この現実の不一致が、問題の核心を捕らえている。勝手に自分に資格を付与し、後悔の片鱗もなしに、より弱い国々を踏みにじるアメリカ支配層の傲慢さ。
アメリカ権力者の傲慢さが横行す余り、オバマ・キューバ訪問が、キューバの歴史と、国際関係における、彼らの重要な役割を、アメリカが本気で、再評価する機会ではなく、ワシントンが変化と希望をもたらすという馬鹿げた言辞に変わっている。
オバマ訪問に関するこびへつらうマスコミ報道は、90年ほど昔、現役アメリカ大統領がカリブの島国を訪問して以来、初めてのことだと語る。カルビン・クーリッジが、アメリカ戦艦に乗って上陸したのは、1928年のことだった。この些細な情報は見過ごされがちだが、これは、邪悪な背景をほのめかしている。
アメリカ-キューバ関係は実際に歴史的重要性に満ちている。1898年、米西戦争後に、アメリカがキューバを手にいれて、西半球におけるヤンキー帝国主義が出現し、そのもとで、中南米諸国は、しばしば分割され、ウオール街資本主義に隷属することとなる。独裁者と暗殺部隊が溢れ、何百万人もの人々が恐ろしい暴力と略奪にさらされた。
1959年、フィデル・カストロ、チェ・ゲバラと、フィデルの弟ラウルが、キューバ革命を率いた際 彼らはキューバをアメリカが支援する独裁者から解放するのに成功した。アメリカが支援する実に多くの独裁者政権同様、キューバは、貧困と大衆への残虐さの代名詞だった。
キューバ革命はこの運命に逆らい、社会発展のモデル、飢餓と病気を廃絶し、無料教育と無料医療をしっかり守る国となった。現在、50年以上の悪質な経済封鎖にもかかわらず、キューバ人の平均余命は、大半のアメリカ国民より長い。
島国が 1961年に、ピッグス湾侵略で、アメリカによって攻撃された後初めて、社会主義キューバはソ連を奉じるようになった。この侵略未遂は、中央情報局(CIA)にとってきまり悪い失態だった。それでも、南の隣国に対するアメリカによる戦争行為だった。
以後、何十年にもわたり、何十回ものフィデル・カストロ大統領暗殺未遂、テロ行為や破壊活動、1976年のキューバ民間航空機爆破、農作物や家畜の大規模汚染などを含むアメリカがキューバに対して無数の戦争行為が行われることとなった。
マスコミが都合良く隠しているもう一つの歴史的つながりは、現代アメリカ“陰の政府”台頭の上で、キューバが極めて重要なことだ。キューバ革命を粉砕するという強迫観念から、軍産複合体、ウオール街銀行と大企業権力が支配する本当の陰のアメリカ政府が生まれたのだ。
アレン・ダレス長官指揮下のCIAも、アメリカ支配集団も、ジョン・F・ケネディ大統領が、ピッグス湾の大失敗を救済するための大規模軍事侵略部隊の派兵を拒否したことを決して許さなかった。それ以後の、JFKによる、カストロや、当時の他の第三世界革命政府との関係改善政策は、CIAや銀行家や実業家によって、アメリカ資本主義への裏切りと見なされた。1963年11月、ダラスで、CIA狙撃者が彼の頭を吹き飛ばして、ケネディは命を失うことになった。
過去50年間、アメリカ民主主義が存在していないことは論証可能だ。大統領は傀儡として次々入れ代わるが、選挙で選ばれていない、責任をとらない陰の政府が本当の権力を行使している。アメリカの社会条件が、年々悪化し続け、貧困と不平等は天井知らずの歴史的水準に達しているのも不思議ではない。1963年のCIAクーデター以来、アメリカ民主主義は、国民の利益に反する大企業権力の行使を隠すためのうわべだけの茶番なのだから。
アメリカ民主主義消滅の隠された歴史で、キューバは中心的役割を果たしている。だが今週のオバマの“歴史的”キューバ訪問に関する主流マスコミ報道を読んでも決して知ることはできない。
対キューバ・アメリカ禁輸停止と、グアンタナモ湾返還を拒否していることが、ワシントンが悔悟することのない犯罪者政権のままであることの主要指標だ。
記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2016/03/23/obama-in-cuba-history-in-the-faking.html
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おりしも、伊東光晴著『ガルブレイス─アメリカ資本主義との格闘』を拝読中。
はしがき ivの一部を転載させていただこう。
ジョン・ケネス・ガルブレイスはこの1930年代を、実り多き20代で過ごし、経済学への道を歩み、一生を通じて、この30年代のリベラルで革新的な思想を持ち続けた経済学者であった。
1930年代の経験は、良き政治によって社会は変わるという確信をかれに与えた。それゆえに、ハーバードの講師時代、学生であったジョン・F・ケネディには大きな期待をよせ、友人であり、隣人であり、思想を同じくした歴史学者シュレジンガー・ジュニア・ハーバード大学教授とともに、その政策立案に関与した。
ケネディの突然の死は、ガルブレイスの理論を実現させる政治を奪ったが、屈することなく、その後もアメリカの政治が再生することに期待し、努力し続けるのである。
170ページでは、TPPに触れられている。
戦後の国際経済学者を代表する故ハロッド オックスフォード大学名誉教授は、あらゆる国際交渉は経済理論と公正を全面に出し、その実、利害と力の対抗の場だと言ったが、GATTからWTOへの流れ、そしてTPPを含め、地域協定はこのことを示している。
伊東光晴京都大学名誉教授、『アベノミクス批判 四本の矢を折る』で、彼の経済政策のデタラメさを完膚無きまでに粉砕し、更には右翼的政治の方向性までも的確に予言・批判しておられる。
中学生向けの素晴らしい経済学入門『君たちの生きる社会』で、既に原子力発電の非合理性を指摘しておられた。
事故を受けた大人向けの詳細な現代版が『原子力発電の政治経済学』
政治経済学や歴史に限定されない広汎な学識でしかかけない評論が『日本の伏流 時評に歴史と文化を刻む』
『経済学入門―激動する現代資本主義の核はなにか』をこの後再読しようと思っている。
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