皆が思っているよりもありそうなアンカラ政権転覆
Mike Whitney
CounterPunch
2016年2月24日
金曜日、アメリカ合州国はトルコのシリア侵略を防ぐことを狙ったロシア決議案を拒否した。モスクワは、トルコが支援している戦士を保護し、クルド民兵のYPGが、北シリアに、連続した国家を設立するのを阻止すべく、南部国境に集結させた数千人の地上部隊と装甲車のシリア国内への配備を計画しているトルコに対する懸念の増大に対処すべく、国連全保障理事会緊急会議を呼びかけた。モスクワによる一枚の決議案は、既に250,000人の命を奪い、シリアを荒廃させた紛争の大規模エスカレーションを防ぐことを狙った徹頭徹尾明確な文書だった。
ロシアのウラジーミル・サフローノフ次席国連大使によれば、“このロシア決議草案の主な要素は、全ての関係者に対する、シリア内政への干渉を慎み、シリアの主権と独立を全面的に尊重し、侵略を止め、地上作戦計画を放棄するという要求だ。”
決議は、モスクワの“外国のシリア・アラブ共和国の領土への地上介入開始を狙った軍事増強と準備活動の報告に対する重大な懸念”も表していた。
決議には何ら物議を醸すようなものはなく、小細工も、隠された意味もない。代表団は単に、シリアの主権を支持し、武力侵略に反対するよう求められただけだ。これらは国連かそれに依拠して作られた原則そのものだ。こうした原則が、シリアにおけるワシントンの地政学的野望と合致していないため、アメリカと、その同盟諸国は拒否したのだ。
決議を潰したことで、ワシントンがシリアの平和を望んではいないことが明白になっている。また、アメリカが依然勝利すると決めている紛争の結果を決める上で、トルコ地上部隊が重要な役割を演じ得ると、オバマ政権が考えていることも示唆している。もし決議が成立していれば、トルコ侵略の脅威は即座に消滅していただろうことに留意願いたい。
なぜか?
トルコ“軍は、国連安全保障理事会の承認無しに、国境を越えて派兵したくはないと公に述べているためだ。”(ワシントン・ポスト)
欧米の多くの人々は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領は独裁的な権力を持っていて、いつでも好きな時に、軍隊に戦争しろと命じることができると思い違いをしている。だがそれは事実ではない。エルドアンは軍部内の多くのライバルを排除したが、軍幹部はいまでも文民統制から一定の独立を維持している。トルコの将軍たちは自分たちが、将来、戦争犯罪で訴追されない保証を欲しがっている。それをするための最善の方法は、あらゆる侵略が、アメリカか、NATOか国連のいずれかの許可を必ず得るようにすることだ。
オバマ政権が、この力学を理解していることこそ、彼らが決議を潰した理由だ。ワシントンが継続中の代理戦争で、最終的に、トルコ軍が、ロシアが率いる連合軍と紛争する可能性を、オバマは残しておきたかったのだ。そこで私は、シリアにおける、ワシントンの主な狙いは、もはやシリアのバッシャール・アル・アサド大統領排除ではなく、ロシアを終わりなき紛争に陥らせることのように思えてきた。
国連で、アメリカがモスクワの決議案を潰してからわずか数時間後、非公開会談がジュネーブで開催され、アメリカとロシアの軍高官が会い、停戦の見込みについて話し合った。
通常“敵対行為の停止”と表現される停戦は、打ちのめされた聖戦士やアメリカが支援する反政府派連中が再編成し、後日、戦争に参戦することができるようにすべく、一時的に戦闘を停止することを狙ったものだ。将来の政府におけるアサドの役割を巡っては、双方がひどくかけ離れているものの、モスクワもワシントンも、シリア中の戦火で荒廃した都市への人道的支援を行い、“政治的移行”に進みたいと考えている。ワシントン・ポストによればこうだ。
克服すべき多くの問題の一つは、テロ集団とは一体何かという定義の違いだ。「イスラム国」と、シリア国内のアルカイダ支部であるヌスラ戦線に加え、ロシアとシリアは、全ての反政府派に、テロリストというレッテルを貼っている。
その部隊がトルコ国境近くの北西部で、穏健な反政府派集団と混じり合っているヌスラ戦線が特に問題だ。ロシアは、集団の分類が終わるまで、停戦の一環として、少なくとも一時的に、ヌスラ戦線(アルカイダ)を、爆撃禁止の対象にしておくというアメリカ提案を拒否したと言われている。 (“行動なしに期限が過ぎる中、アメリカ、ロシア、シリア停戦交渉を行う“、ワシントン・ポスト)
繰り返す: “ロシアは、集団の分類が終わるまで、停戦の一環として、少なくとも一時的に、ヌスラ戦線(アルカイダ)を、爆撃禁止の対象にしておくというアメリカ提案を拒否したと言われている。”言い換えれば、オバマ政権は、9-11テロ攻撃で、3,000人のアメリカ人を殺害し、唯一の過ちと言えば、これらワッハーブ派傭兵がイスラム・カリフ国へと変えたがっている国にたまたま暮らしていただけの何万人もの無辜のシリア民間人の死に関与した集団の分派を保護したがっているのだ。当然モスクワは、この茶番に協力するのを拒否した。
たとえそうであれ、日曜日、ジョン・F・ケリー国務長官は、彼とロシア側の相手役セルゲイ・ラブロフが、 “停戦が一体どのように施行されるのか、違反がどのようにして解決されるのかは誰にも分からないものの”、シリア内戦の“一時休戦で‘原則的に暫定的合意’に達し、数日中に開始し得る”と発表した。
オバマが国連でロシア決議案を拒否し、わずか数字間後に、アメリカ-ロシアが調停した停戦で、アルカイダを庇護しようとしていることが一体どれほど偽善的かお考え願いたい。アメリカのいわゆる“対テロ戦争”に関し、これは一体何を意味しているだろう?
一方、トルコでは、先週の28人が死亡し、61人が負傷したアンカラでの自動車爆発以降、シリアを侵略するというエルドアンの脅しが激しくなった。トルコ政府は、シリア国内のトルコ民兵(YPG)とつながっている若い活動家、サリフ・ネッジャルが実行犯だとした。爆発から24時間もしないうちに、政府版説明は崩壊し始めた。欧米マスコミが滅多に報じない話で、ウェブサイトでの声明によれば、クルド自由の鷹(TAK)が爆撃を行ったと声明をだしている。(クルド自由の鷹は非合法化されているクルド労働者党、PKKとつながっている) 更に月曜日、エルドアン政権は一層不利なニュースに見舞われた。DNAサンプルが、実行犯はネッジャルではなく、当初から自らの関与を主張していた、このグループ(TAK)メンバーのアブドゥルバキ・セメルであることを決定的に実証したのだ。この文章を書いている時点で、政府は、戦争を推進するための主張を強化すべく、国民にウソをついたことを認めていない。エルドアンと彼の過激派仲間は、徹底的に信ぴょう性を失った情報を、シリアを侵略すると脅すために使い続けている。土曜日、ガジアンテプでのUNESCO会議で彼はこう述べた。
トルコは、トルコが直面するものとの戦いに関して、シリアや、テロ組織が巣くう場所で作戦を行うあらゆる権利を有している…トルコを標的にするテロ行為に直面したトルコの自衛権は何人たりとも制限できない。
これが、一体なぜトルコが、先週シリア領土に砲撃したのかの理由説明だ。一体なぜエルドアンが、スンナ派聖戦士が、トルコを自由に横断し、シリア軍に対する勝利の可能性を向上させる地域の交戦地帯に再入国するのを認めているのかという理由説明でもある。ニューヨーク・タイムズの下記記事をお読み願いたい。
先週、シリア反政府派は、アレッポの北で、クルドが率いる民兵に対する戦闘にてこ入れすべく、トルコ経由で、少なくとも2,000人の増援部隊を送ったと、木曜日、反政府派筋は述べた。
トルコ軍は、数日にわたり、ある戦線から別の戦線への移動を手助けし、シリアのイドリブ州を、反政府派が出るのを密かに護衛し、四時間トルコ内を移動し、包囲されたアザズの反政府派拠点を支援すべくシリアに再入国したと情報筋は述べた。
“軽火器から重火器、迫撃砲やミサイルや戦車に至るあらゆるものの移動を我々は認められている”バブ・アル-サラム国境検問所を支配している反政府集団、レバント戦線の司令官、アブ・イッサは、偽名で匿名を条件にロイターに語った。 (“増援部隊はトルコ国内の自由通行を認められているとシリア反政府派は語る“ニューヨーク・タイムズ)
エルドアンが紛争を煽っているのを、オバマ政権は知っているが、見て見ぬふりをすることを選んだのだ。そして、オバマはシリア領土への砲撃に対してはトルコを(弱々しく)戒め、同時に、イスラエルがヨルダン川西岸やガザで残虐な大暴れをした際、アメリカがイスラエルに対して使った表現であるトルコの“自衛権”を認めている。今や、オバマはエルドアンにも同じ名誉を与えたのだ。これだけでも、ワシントンのやり口の二枚舌を十分に物語っている。
シリアでのワシントンの戦略は一体何だろう? 政権はISISを本気で打ち破り、紛争を終わらせようとしているのだろうか、それともオバマは何かたくらんでいるのだろうか?
そもそも、ワシントンは、ISISについては全く何の懸念もしていない。この集団は、アメリカの国益にとって極めて重要な地域で、アメリカが軍事作戦を遂行することを可能にするための単なる案山子に過ぎない。もし子どもだましのISISが明日消滅すれば、連中の略奪行為が途切れることなく続けられるように、麻薬戦争のような何か他のお化けか、何か同じくらいとんでもないものを、ホワイト・ハウスはひねり出すだろう。ワシントンにとって重要なのは、アメリカ-イスラエルの野望にとって長期的脅威となる強力で非宗教的なアラブ政府を崩壊させることだ。それが一番肝心なのだ。他の明白な目標は、決定的に重要な資源と、EUへのパイプライン回廊を支配し、これらの資源が米ドル建てで取り引きされ続けるようにすることだ。
アメリカ-クルド (YPG)同盟は、実際、シリアにおけるアメリカの戦略的権益には裨益しないと我々は考え続けている。アメリカは、クルド人国家には興味皆無で、聖戦戦士が、シリア国境地域の北部分を支配してもかまわないのだ。アメリカ-YPG同盟の本当の狙いは、トルコを怒らせ、国境を越えた、ロシア率いる連合との紛争をするよう挑発することだ。もしトルコが地上部隊をシリアに配備すれば、モスクワは、何とかして避けようとしている泥沼と直面させられかねない。トルコ軍は、過去五年間戦争を遂行してきたが、今や総退却しつつあるように見える、アメリカが支援する聖戦士や他の代理部隊の代替軍として機能しよう。
より重要なのは、トルコによる侵略がトルコ国内の分裂を悪化させ、エルドアンの権力掌握を酷く損ない、アメリカがトルコ軍と諜報機関(MIT)内のアメリカ工作員と協力して、つけこむことができるような脆弱性を作り出すことだ。究極的な狙いは、十分な社会不安を醸成し、カラー革命を誘発し、CIAがキエフで実行したものとよく似たワシントンが画策するクーデターで、もめ事を起こしてばかりいるエルドアンを打倒することだろう。
オバマが、エルドアンに密かに許可を与えておいて、彼の軍隊がシリアに進入するやいなや、突然足をすくったと想像するのは困難ではない。1990年に、アメリカ駐イラク大使、エイプリル・グラスピーが、サダム・フセインに、クウェート侵略を認め、似たような詐欺が行われた。イラク軍がようやく目的地にたどり着こうというところで、アメリカは大規模軍事作戦(砂漠の嵐作戦)をしかけ、サダムに、悪名高い死のハイウェイ沿いに素早い撤退を強い、アメリカの火力による悪意ある見せしめ殺人の格好の標的として、10,000人以上のイラク正規軍兵士が全滅させられた。あれは、サダムを打倒し、彼を従順なアラブ人傀儡と置き換えるワシントン計画の第一段階だった。
同じ政権転覆の罠が、今エルドアンにしかけられているのだろうか?
確かに、そのように見える。
Mike Whitneyは、ワシントン州在住。彼は Hopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion(『絶望: バラク・オバマと、幻想の政治』)(AK Press刊)にも寄稿している。同書は、Kindle版も入手可能。fergiewhitney@msn.comで連絡ができる。
記事原文のurl:http://www.counterpunch.org/2016/02/24/regime-change-in-ankara-more-likely-than-you-think/
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バラエティー茶番洗脳番組、面白おかしくアメリカ大統領選を語っている。あるいは北朝鮮批判。この国の「マスコミ」、傀儡氏の言う通り決して体制批判で萎縮などしていない。立派なものだ。宗主国と自国の敵の批判である限り。
この記事、決して人ごとではない。おかしな権力者が権力を失うのは、その国の国民の力で、非暴力で行われてこそ意味がある。ならず者国家が自由裁量で武力介入してろくな結果が出たためしがない。
我々が暮らす放射能汚染不沈空母警察国家についても連想する。東と西の鉄砲玉国家。
つまり記事を読んで思い出したのは元沖縄県宜野湾市長伊波洋一氏のお話。
2015/12/21 「中国のミサイル1400発で日本は一度壊滅させられ、中国に花を持たせて戦争を集結させる。それが米国の戦略」〜岩上安身による伊波洋一・元沖縄県宜野湾市長インタビュー
それとぴったり辻褄が合う最近の纐纈厚教授講演もある。
2016/02/28 【京都】AWC第四回国際総会講演「日米軍事同盟の新段階、変貌する日本」 ―講師 纐纈厚・山口大学副学長(動画)
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沖縄周辺限定戦争=舞台戦争 Theatre War
英国はロンドンのトラファルガ-広場を中心に先月27日,潜水艦発射型戦略核ミサイル「トライデント」の更新に反対するデモ行進があり,一万人以上が集まった。労働党のコ-ビン党首やスコットランド民族党のスタ-ジョン党首らも参加した,という。
そこで思い出したのが,1981年の西ヨ-ロッパ(加藤周一,「核の傘」の神話,『山中人閒話』)である。そこでは当時,核兵器反対の大衆運動が盛んになり,アメリカの新型核兵器のヨ-ロッパ配備に反対して,「デモ」をした。デモの数少なく見積もっても百万人以上,多く見積もれば,百五十万人以上に及び,その大衆運動に対応する動きが,ヨ-ロッパの政府や議会や政党にも出はじめている。例えば,英国労働党,西ドイツの地方議会,オランダ議会,ギリシャ政府などである。
加藤は自問自答する:西ヨ-ロッパの大衆が核兵器にこれほど強い関心を示しはじめたのは,なぜだろうか。その答えは,以下の二つである:
第一 アメリカに勇み肌の政権が成立して,超大国間の軍拡競争が激しくなろうとしている
第二 アメリカ政府が,ヨーロッパを舞台としての限定核戦争に勝つことができる(勝つことができるようにしたい)といいだした(ことが直接の理由)―――アメリカ語でいえば,「舞台戦争 Theatre War 」の説。
舞台にされるヨ-ロッパの住民からすれば,ヨ-ロッパ全体がヒロシマにされるようなものだから,その結果として超大国のいずれが勝とうと意味がない。別の言葉で言えば,西ヨ-ロッパの安全のためにアメリカの「核の傘」に頼るという考え方は,もはや成り立たなくなったと,加藤は付け加える。
星霜35年。トラファルガ-広場に集まったデモ隊やコルビ-党首らは1980年初頭の「舞台戦争」を思い出しているにちがいない。トライデント型ミサイル防衛システム更新が5億ポンドもするという値段の問題もさることがなら,米国・NATOの軍事基地を国内に置き,核ミサイルによる攻撃力を強化するという政策は,ロシアにさらに軍拡の道を開かせることになる。その結果,英国がさらに安全になるという保証はない。あるとすれば,「舞台戦争」である。
2016年の今日,シリア紛争もリビア政権転覆もみな「舞台戦争」であり,あったような気がしてならない。そしてその特徴はアメリカ合衆国本土が決して戦渦に巻き込まれないことである。
思えば,英仏の植民地支配とそれに関する独立運動から,アメリカ合衆国によるチリのアジェンデ政権転覆もグアテマラ政変を通って,ウクライナ合法政権転覆,昨年2月のベネスエラ・ク-デタ未遂まで「舞台戦争」であった。決してアメリカ本土は紛争の対象とならない。
ここまで書いたとき,本ブログの紹介で沖縄の伊波洋一・元宜野湾市長のインタビュ-を拝読した。IWJ岩上安見氏によるインタビュ-から引用させていただく:
-米国は、空軍と海軍を統合した「エア・シー・バトル戦略」で、日本を戦場にして中国軍と全面戦争をするはずだったが、中国周辺諸国に軍事的対応をさせて、米国が漁父の利を狙うオフショア・コントロール戦略に変わった-
米国は、中国との正面衝突は避ける。しかし、周辺諸国、とりわけ日本に対してはこっそり背中から押して中国との対決を後押しする-
その場合、限定戦争の主たる舞台になるのは沖縄周辺だ。伊波氏は、米国は南西諸島を舞台に自衛隊と中国軍とを戦わせて、日本が敗退するシナリオを描いている-
日本の敗退,主たる舞台になる沖縄周辺の限定戦争は,80年代のまさに西ヨ-ロッパの「舞台戦争」であり,今日の英国の問題である。ナイ・アミテ-ジ報告書が企んだ一つの狙いが,自民党・公明党政権に戦争法=安保法制を強行採決させ,南西諸島を巻き込んだ「舞台戦争」を日本と中国にさせることにあった,と考えざるを得ない。
投稿: 箒川 兵庫助(1-ゑ) | 2016年3月 1日 (火) 13時05分