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2016年1月 6日 (水)

地域における大虐殺挑発を狙った、サウジアラビアの処刑

Finian Cunningham

公開日時: 2016年1月3日 14:19
"RT"

2016年1月2日 イギリス、ロンドンのサウジアラビア大使館前で、著名なシーア派宗教指導者ニムル・アル-ニムルの処刑に反対する抗議行動で、プラカードを掲げる抗議行動参加者  Neil Hall / Reuters

著名なシーア派宗教指導者のサウジアラビアによる処刑に対する中東全体での激しい反応が、処刑は、支配者サウド王家による意図的な挑発であったことを強く示唆している。
この挑発は、サウジアラビアの地政学的権益を推進するために - 既に引火点に近い -地域の様々な国々で、宗派間緊張をあおり、紛争を助長することを狙ったものであるように見える。こうした権益の中心にあるのは、いつも通り、激しいライバル関係にある、地域におけるシーア派大国イランだ。

週末、シーア派宗教指導者ニムル・アル・ニムルが、46人の他の囚人と共に処刑されたというサウジアラビア内務省による発表の後、地域全体、特に、イラン、イラク、レバノンやバーレーンなど多数のシーア派信者がいる国々で、予測通りの憤激がおきた。イランは、過激なスンナ派サウジアラビア支配者を“犯罪人”と非難し、“軽率と無責任の極み”の行為を実行したと糾弾した

イランの最高指導者、アヤトラ・ハメネイは、サウド王家を、過激テロ集団ダーイシュ、(「イスラム国」、また以前はISIS/ISILとして知られる)になぞらえた。注目すべきは、王国が敵対者を断首刑で処刑するやり方が、サウジアラビア政権とダーイシュ幹部が共有している、ワッハーブ主義として知られるイスラム教のシャリーア法の厳格な解釈によって同様に - 。

元イラク首相ヌリ・アル-マリキは、死刑発動は、サウジアラビア支配者の崩壊をもたらすだろうと述べ、他のイラク政治家連中も、不安定で、宗教的に緊張した地域全体で“地獄への門を開ける”だろうと語っている。

アメリカ合州国も欧州連合も、アル・ニムル処刑には懸念を持って対応し、両国とも、サウジアラビアによる死刑で、宗派間緊張が激化すると警告した。

アル・ニムルは、土曜日に、サウジアラビアにおけるここ三十年で最大の大量処刑とされるもので、46人の他の囚人とともに処刑された。報道によれば、死刑は、12箇所の刑務所で、報斬首または、銃殺隊で行われた。死刑判決を受けていた人々の大半は、2003年から、2006年の間、サウジアラビアにおける、欧米の権益に対する破壊的な攻撃を行ったかどで告訴されていたアルカイダ・テロ集団のメンバーだとされている。

ニムル・アル・ニムルは、週末に処刑された4人のシーア派活動家の一人だった。彼らは政府転覆とテロなど、いくつかの罪で告訴されていたが、この裁判を国際人権団体は、裁判手続きの茶番だとかたづけていた。アル・ニムルは、2012年に逮捕され、暴力的な抗議行動をあおったかどで告訴されたが、支持者は、尊敬されている宗教指導者は公には常に平和的な抗議行動を支持していたと指摘している。彼の発言で、最も良く知られているものは、“言葉の力は、弾丸の轟音より強い”だった。

10月、アル・ニムルは、彼の死刑に対する上訴で敗訴した。その後更にいくつか国際的な寛大な処置への訴えがなされていた。特に、イラン政府は、宗教指導者の命を救うよう呼びかけるいくつかの声明を出していた。

アル・ニムルに対する司法の誤りと、寛大な処置への訴えにもかかわらず、処刑を実施するという恐ろしい判断が、事件を大いに衝撃的なものにしている。

レバノンのシーア派レジスタンス運動ヒズボラは、サウジアラビアの行動を“暗殺”だと非難し、イラン革命防衛隊は、サウジアラビア支配者は“厳しい復讐”に会うだろうと断言した。

2016年1月2日 バーレーン、マナマ西部のサナビス村で、サウジアラビア当局による、サウジアラビアのシーア派宗教指導者ニムル・アル-ニムルの処刑に反対する抗議行動で、 "死は我々にとって当然のことで、神があたえたもうた尊厳は殉教だ" という垂れ幕を掲げる参加者、Hamad I Mohammed / Reuters

サウジアラビアと他のスンナ派アラブ諸国連合軍が、過去9か月、空爆を行っているイエメンでは、主として、シーア派フーシ派反政府派も、アル・ニムル処刑を非難し、彼の死に対して報復すると約束した。週末に、サウジアラビア国境のジザン州へのフーシ派によるロケット弾攻撃で24人のサウジアラビア軍兵士が死亡したことが報じられていた。この攻撃が、アル・ニムル処刑発表の前だったのかどうかは明らかではない。

サウジアラビア政権は、かつてイランとヒズボラを、イエメンにおけるフーシ派にる反乱をあおっていると非難した。テヘランは、武装反抗勢力を軍事的に支援しているという主張を否定した。しかし、サウジアラビアに反撃する方法として、イランとヒズボラが、今後イエメンでの軍事介入を強化するだろうというのは適切な仮説だろう。

サウジアラビアが様々な反政府派民兵、主としてワッハーブ派原理主義イデオロギーを共有する、いわゆる過激イスラム主義集団に資金を提供し、武器を与えてきた、シリアにおける、イランとヒズボラの関与についても同じ反応が予想される。これら集団には、12月25日、指導者ザフラン・アローシュが、ダマスカス近くで、シリア空爆で殺害されたジャイシ・アル・イスラム(イスラム軍)も含まれる。サウジアラビア政権は、やがて行われるジュネーブでの国連が後援する、シリアに関する和平交渉を危うくするとのべて、アローシュ殺害を公式に非難した。

サルマーン王率いるサウド王家は、ワシントンも、モスクワも支持しているジュネーブ交渉に賛成ではないことが知られている。シリアの政治的未来は、選挙で、シリア国民によって決定されるべきだというロシアの姿勢に対し、ワシントンが妥協したように見えることにサウジアラビアは動揺している。和平交渉の前提条件としてシリア大統領バッシャール・アサドは辞任すべきだ、というワシントンによる長年の主張が放棄されたのだ - その結果、サウジアラビア、トルコとシリアの過激派戦闘集団が、アサドは退陣すべきだと要求し続けている唯一の当事者となってしまった。

トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンが、ニムル・アル・ニムル処刑のわずか数日前にリヤドで、サウジアラビアのサルマーン王と“戦略的サミット”を行ったことには、おそらく大きな意味があるだろう。

9月末以来の、ロシアのシリア軍事介入は、バッシャール・アサドのシリア政府を安定化させる上で大成功だ。オバマ政権でさえ、最近、シリアにおけるロシアのウラジーミル・プーチン大統領の戦略的成功を認めた。

この軍事的成功は、現地のシリア・アラブ軍の勝利に貢献した、イランとヒズボラと、イラクの功績だ。

シリアにおける秘密の政権転覆で、最大の敗者は、サウジアラビア、カタールとトルコという地域の同盟諸国とともに、ワシントン、ロンドンとパリが率いる枢軸だ。ワシントンや、他の欧米列強には、シリアでの最終的な政権転覆のため、秘密の反政府活動支援から、遅ればせながら政治的手段へと、戦術を切り替える抜け目のなさがあるが、サウジアラビアとトルコは、依然、秘密の戦争計画に固執しているように見える。

この意味で、ロシアが支援するシリア軍事同盟は、サウジアラビアとトルコにとって、特に不利な一斉攻撃だ。

サウジアラビアの観点からすれば、連中のシリアでの敗北と、イエメンで継続中の挫折を救済するための一つの方法は、地域を、宗派紛争の爆発で吹き飛ばすことだろう。もちろん、多くの人々にとって、そのような賭けは、常軌を逸している。だが、もしサウド王家が、スンナ派とシーア派の間の騒動を挑発できれば、それは、ワシントンとモスクワとを対立させることになり、地域全体で、より広汎な戦争をもたらすことになろう。

シリア政権転覆の権謀術数でわけがわからなくなった、サウド王家が、他国の領土に、混乱と流血の蔓延を引き起こしたがっているように見える。

著名なシーア派宗教指導者ニムル・アル・ニムルの処刑は、全く根拠のない野蛮な殺人なので、結論は一つしかない。死刑という全くの狂気は、地域で騒乱を引き起こすことを狙った病的な計算を徹底的に裏切ることになるだろう。

サウジアラビアは、シリア、イエメン、イラク、レバノンや他の国々で大連敗しているため、独裁者連中はおそらく、いちかばちかやってみても、自分たちにはほとんど失うものがないと判断し、地域における大虐殺を挑発したのだ。

Finian Cunningham(1963年生まれ)は、国際問題について多く書いており、彼の記事は複数言語で刊行されている。アイルランドのベルファスト生まれの農芸化学修士で、ジャーナリズムに進むまで、イギリス、ケンブリッジの英国王立化学協会の科学編集者として勤務した。20年以上、ミラーや、アイリッシュ・タイムズや、インデペンデント等の大手マスコミ企業で、彼は編集者、著者として働いた。現在は、東アフリカを本拠とするフリーランス・ジャーナリストで、RT、Sputnik、Strategic Culture Foundationや、Press TVにコラム記事を書いている。

本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない。

記事原文のurl:https://www.rt.com/op-edge/327796-saudi-arabia-nimr-cleric-executed/

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2016年1月4日付け記事「権謀術数を巡らしたトルコ、サウジアラビアの自業自得」で、

石油豊富な湾岸諸国に典型的な不労所得生活というサウジアラビア経済の特徴

と翻訳した部分、原文、実は下記の通り。

the rentier nature of the Saudi economy, typical of the oil-rich Gulf states

「不労所得生活」という部分は、rentier ランティエ フランス語。英語でレンテイア。リーダーズ英和辞典3版には、不労所得生活者とある。rent家賃、地代、金利などで暮らす人。プログレッシプ仏和辞典第2版では、「金利生活者」。これは、この場合には、あたらないだろう。

サウジアラビアの対イラン制裁発表後、すぐに湾岸産油国のカタールやクエートなどが続いた。湾岸レンティア国家に関する入手しやすい本、素人は下記しか思いつかない。

湾岸産油国 レンティア国家のゆくえ』松尾昌樹著 講談社選書メチエ

66ページに、こうある。

レント収入は、厳密には石油輸出収入に限定されるものではないが、湾岸産油国に限っては事実上、「歳入の大半をしめるレント収入=石油輸出収入」だ。

192ページ

湾岸産油国の場合、国によっては、自国労働者が全体の10%をわりこむ場合もある

およそ現代の日本にはほど遠い世界と思うが、

194ページには、

経済産業省が2005年に作成した予測によれば、1995年の時点での日本の生産年齢人口を将来的に維持しようとすると、日本の人口増加率を補うために、2030年までに1800万人の外国人を受け入れる必要があるとされている。・・・外国人労働者の割合は60%を越えると推計され、日本人労働者よりも、外国人労働者の数が多い社会が到来する可能性が示唆されている。

とある。

そのころには、地殻変動のおかげで、日本も産油国になっているのだろうか?TPPで丸裸になっている可能性の方が遥かに高いだろう。

妄想はともあれ、近づく選挙、辺野古基地問題の方が切実。

【スピーチ全文掲載】「野党は四の五の言わずまとまるべき!」~「市民連合」大規模街宣で小林節・慶應義塾大学名誉教授が野党共闘の必要性を訴え 「参院選で勝てば暴走は止まる!」

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