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2015年12月31日 (木)

加熱するエネルギー戦争: イスラエル-トルコ関係正常化と、カタール国内トルコ基地

Mahdi Darius NAZEMROAYA
2015年12月30日 | 00:00
Strategic Culture Foundation

2015年12月始めに、シリア領空で活動していたロシアのスホイSu-24M戦略爆撃機を撃墜して間もなく、トルコ政府は、重武装した大隊を、イラク、バシカのジルカン基地軍事基地に派兵した。この動きが、アンカラとイラク政府間の緊張を引き起こし、イラク政府は、トルコによる侵略行為だと非難した。資源・エネルギー戦争という枠組みの中で、トルコ軍派兵は、いわゆる「イスラム国」(ISIL/ISIS/IS/ダーイシュ)との違法な石油貿易を確保するためのトルコ政府による動きだ。

ペルシャ湾のトルコ軍事基地

トルコ軍がバシカのジルカン基地に派兵されてから数週間後、ロシア軍参謀本部は、2015年12月25日、イラク-トルコ国境近くの町ザフー周辺で、11,755台の石油タンクローリーや、トラックを撮影したと報じた。石油タンクローリーや、トラックは、アンカラによる、南東トルコでのクルド人に対する軍事作戦のせいで、イラク-トルコ国境が閉鎖されてできた長い行列だというクルディスタン地域政府の説明にもかかわらず、石油タンクローリーやトラックは、ISILが盗んだシリア石油の新密輸経路の一部だと理解されている。

トルコ政府は、エネルギー源をロシアとイランから他に変えるための手をいくつか打ってきた。まさに、エネルギー源を確保するという文脈から、2015年12月16日、アフメト・デミロク駐カタール・トルコ大使が、カタールのペルシャ湾地域に、軍事基地を開設するというアンカラの計画を発表した。ロイターとのインタビューで、デミロク大使toldトルコ基地は、2014年に、アンカラとドーハが調印した安全保障条約にのっとって開設されるもので、軍事基地は、トルコとカタールが共同で、デミロク大使が具体的な名前を上げるのをさけた一部の国々による“共通の脅威に立ち向かう”のに役立つだろう。

デミロク大使が名前をあげなかった国々とは、イランとロシア以外の何者でもなかった可能性が高い。しかも、カタールにおけるトルコ軍事基地開設に関するトルコ発表は、翌12月17日の、サリム・ムバラク・アル-シャフィ駐トルコ・カタール大使による、ドーハは、トルコに、必要なだけの量の液化天然ガス(LNG)を提供する用意があるという発表と重なっている。

イスラエルとトルコが団結: 東地中海天然ガス

駐トルコ・カタール大使サリム・ムバラク・アル-シャフィが、ドーハは、トルコに必要なだけの量のLNGを提供するつもりだと発表した翌日、12月18日、イスラエルとトルコは、イスラエル天然ガスをトルコに輸出する包括協定に調印したと発表した。トルコと、ロシア、イランやイラクとの緊張が、アンカラとテルアビブとの間の、天然ガス契約を促進させた可能性はあるが、イスラエル-トルコエネルギー貿易包括協定が、イスラエルと、トルコ政府によって、数カ月間、静かに交渉されていたのだ。

専門家やジャーナリスト連中は、イスラエルとトルコ間の天然ガス協定を、ロシア、イラン、イラク、シリアや、彼等の地域パートナーを埋め合わせるための手段として外交、軍事関係を正常化させ、イスラエルと緊密になろうというトルコの動きの一環だと説明している。ところが、こうした見解や主張は、イスラエルとトルコが、緊密な同盟としての関係ではないにせよ、経済と軍事部門で協力を維持してきたという明らかな兆しがあった事実を見過ごしている。トルコとイスラエルの軍隊は、シリア国境で、同期した動きと作戦まで展開していたのだ。

イスラエルは、トルコが、シリアとイラクから輸出してきた密輸された石油を再輸出してきたが、テルアビブは、ガザ沿岸沖のパレスチナ天然ガス埋蔵の採掘を正当化しようとしてきた。並行して、テルアビブは、ナイル・デルタ北のエジプト天然ガス埋蔵を支配するためあらゆる影響力を行使した。この間、イスラエルは、天然ガスを膨大に埋蔵しているレバノンの海域は自国のものだと主張し、またキプロスには、地中海天然ガス埋蔵の支配で訴訟を起こしている。

より広範なエネルギー戦争の輪郭が出現

イスラエルとカタールの協定は、最近のロシア-トルコ緊張より前からあった、エネルギー戦争という枠組みの、より広範なエネルギー貿易ネットワークの一環だ。実際、アル-シャフィ大使も、デミロク大使も、ISILの石油密輸にエルドアンが関与していることを発表するロシア軍の記者会見時期のエルドアン・カタール訪問中に、エルドアンとカタール首長タミーム・ビン・ハマド・アール=サーニー との間で合意された協定に関する情報を繰り返していたに過ぎない。更に、イスラエル、トルコとカタールという空間配置は、中東で起きているエネルギー戦争の構図を反映している。

トルコは、トルコを迂回するイラン-イラク-シリア・エネルギー回廊が作り出されるのを阻止するためにできるほとんどあらゆることをやって来た。イラクのモスル地方へのトルコ軍派兵と、カタールへのトルコ軍事基地開設は、ペルシャ湾とイラクから、トルコをへて、ヨーロッパに到るライバルのエネルギー回廊を作り出すという、トルコとカタールの共通の目標と結びついている。イスラエルが、トルコにガザに対する“無制限の”アクセスを認めるようにという要求は、ガザ沿岸沖のパレスチナ天然ガス埋蔵とつながっている可能性もある。

更に、イスラエルもトルコも、東地中海天然ガスを、主に北方向、トルコと欧州連合に輸出し、石油を主に南方向、イスラエルに輸出するレヴァント・エネルギー回廊の建設すべく、長年活動してきた。この回廊の実現は、主としてシリアによって阻まれてきた。これが、トルコ政府が、ダマスカス政権転覆を推進している理由の一つだ。

トルコは、アメリカ政府とは独自に動いているという主張もあるが、アメリカ・トルコのダマスカス政権転覆という共通目的に関して、何ら調整が行われていないということなど、ほとんどありえない。トルコのエネルギー貿易相手の変更は、ロシア連邦と他の国々との間のエネルギー貿易を阻むことによって、ロシアのエネルギー部門をまひさせるというアメリカの狙いと合致する。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/12/30/energy-war-heats-up-israeli-turkish-normalization-turkish-base-qatar.html

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