欧米の協力というロシアの希望を破壊したトルコ
Paul Craig Roberts
2015年11月24日
シリア上空でのトルコによる理不尽なロシア軍用機撃墜は、興味深い疑問を提起している。ワシントンが攻撃を承認しない限り、トルコ政府が、遥かに強力な隣国に対し、戦争行為をする可能性はほとんどないと思える。トルコ政府は大いに有能とは言えないが、無能者にさえ、単独でロシアと対決するような立場に陥らないようにする程度の分別はある。
攻撃がワシントンの承認を得たものであった場合、オバマは政権を支配しているネオコンに蚊帳の外におかれたのだろうか、それともオバマ本人が加担しているのだろうか? ISILに対して、ロシアと団結しようというフランス大統領の呼びかけを、ネオコンが不快に思い、あっさり、トルコとのコネを利用して、ワシントンがロシアとの協力を阻止するのに使える出来事をしかけたのは明白だ。
ワシントンが加担しているのは明白だが、ISILから石油を購入している高位のトルコ人が、連中の石油輸送車投資と儲かる事業を破壊したロシアに報復した可能性も、完全にないわけではない。しかし、もし攻撃が悪党と軍とのつながりという私的あるいは準私的な原因であれば、トルコ大統領が、そのようなウソの口実を“国防”だとして撃墜を擁護するだろうか? 一機のロシア爆撃機が、トルコの安全保障にとっての脅威だなどと信じるものはいない。
売女マスコミが、そうした疑問を調べるなど期待してはいけない。BBCモスクワ特派員サラ・レインスフォート等の売女マスコミ連中は、ロシア爆撃機と先の旅客機の墜落を、ロシア人がより安全でなくなり、プーチンの対iSIL空爆政策が裏目にでた証明だと歪曲報道している。
撃墜に対する反応も興味深い。オバマ記者会見を私が聞いた限りでは、オバマの“穏健派シリア反政府派”という定義は、ロシア攻撃の焦点であるアル・ヌスラやISIL等あらゆる過激派聖戦士集団を含んでいる。アサドだけが過激派なのだ。オバマは、ネオコンの主張に沿って、シリア大統領の座にい続けるのを許すには、アサドの両手は血にまみれすぎていると語っている。
オバマは“アサドの両手の血”に関して、具体的ではないが、我々なら具体的に言える。血はシリア軍と戦っているISIL勢力の血だ。オバマは、ISILの手の血については触れないが、売女マスコミですら、オバマが提携するISILの両手の血にまつわる悲惨な話題を報じている。
オバマ自身の両手の血は一体誰のものだろう?途方もない量の血だ。リビア、アフガニスタン、イエメン、シリアという国々丸ごとの血、そしてキエフのオバマ傀儡政権がウクライナのロシア系住民に流させた血、アメリカが提供した兵器を使って、イスラエルが流したパレスチナ人の血も忘れてはならない。
もし両手の血ゆえに、アサドは権力者失格だというなら、両手の遥かに大量の血で、オバマは失格だ。キャメロンも。オランドも。メルケルも。ネタニヤフも。
中東、アフリカ、ウクライナで、ワシントンが画策してきた全ての紛争で、多くの挑発に、ロシア政府は分別をわきまえた語り口で外交的に対応してきた。ヨーロッパ諸政府は、ワシントンが引き起こす紛争で、ヨーロッパが恩恵を受けることはないことに気がつき、彼らの利益に反する政策から離れるのを、ロシア政府は当てにしていたのだ。しかし、ヨーロッパは、独自の外交政策が行える独立国家ではなく、アメリカ属国の集団であることが証明された。
シリアでの対ISIL作戦で、ロシア政府は、NATO加盟諸国と結んだ、空中で交戦するのを避ける合意を信頼していた。今やトルコはこの合意に違反したのだ。
もしロシア政府が、欧米の約束をもはや全く信じず、欧米との外交に全く希望を抱かなくなっても私は驚かない。既に、ロシア政府も、ロシア国民も、ウォルフォウィッツ・ドクトリンが、文言通り、ロシアに対して実行されていることを学んだろう。
クリミアの電源供給に対するウクライナによる攻撃と停電がクリミアに影響しており、ロシア政府は、キエフにあるワシントン傀儡政権が、ロシアと更なる紛争を意図していることも学んでいる。
ワシントンは始めから、ワシントンの狙いが、ISILではなく、アサドの打倒であることを明らかにしている。ISILによるフランス攻撃とされるものにもかかわらず、アメリカ国務省報道官、元海軍少将ジョン・カービーは、ロシアがアサド支援を止めるまで、ロシアは対ISIL連合のメンバーにはなれないと語っている。
ロシア軍用機撃墜という不幸な出来事にも、ある程度は良い面もある。この出来事が、ロシアが、ISILに対する戦争を思い通りにできなくなり、アサド排除という敗北を受け入れるしかなくなっていただろう連合から、ロシア政府を救った可能性が高い。
これまでの様々な段階で、ロシア政府は外交を信じて、切り札をもちながらも使わずにいた。外交はもはや行き詰まったことが証明されたのだ。もしロシアが本当のゲームに加わって、切り札を使い始めなければ、ロシアは敗北するだろう。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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大本営広報部、電気洗脳箱、たまたまBSを見たところ、『遺伝子食物戦争』というようなフランス制作の良いドキュメンタリーを放映しているのにびっくり。まるで良い映画を上映する、町の映画館にいった気分。良いこともしますという、アリバイのようなものだろうか?
10億円の宝くじで発売思い出した。数年前に数千万円当選し、住宅ローンを完済したことを。残念なのは、私事ではなく、知人の体験という点。肉親にも当選者がいる。二万円。
最近、チェルノブイリ事故後の作業員組織代表をしておられる方の話を伺った中に、興味深い日本経験談があった。広島で開催された国際会議に参加されていたのだ。事故後処理活動、三カ月で体調不良になり、正式に作業による放射能障害者として認められている方。もともと化学者。後に、チェルノブイリ法制定のために、法律も学び、現在は、法律家として活動している方。
被災地訪問時、ある女性に「娘と孫が昔は良く遊びにきたのですが、今遊びにきても、安全でしょうか?」と質問されました。
「娘さんやお孫さんの安全を心配するより、まずあなたがお逃げなさい」と答えました。日本では、危険性をきちんと客観的に把握されている方は少ないようです。
また、原発重大事故発生時の緊急時作業被ばく限度を、日本の当局者たちが、現行の100ミリシーベルトから、250ミリシーベルトに引き上げることを目指している事実があるが、どう思うかという質問への彼の回答も秀逸だ。そもそも質問時「100ミリシーベルト」という数値を聞くなり「余りに大きい」と目を丸くされた。彼の答えは
「その決定をした委員の人々には「100ミリシーベルト」なり「250ミリシーベルト」の環境で議論してもらいましょう。」
地域の線量で判断するのはやめ、あくまでも個人の総被曝線量をもとに判断すべきです。というのが彼の基本だった。
今回の記事に関連する翻訳記事は、「トルコ」のジャンルをご覧いただければ検索できるが、その一部をここにリストしておこう。こうした記事を読んでいた素人は、今回の出来事、時間の問題だろうと想像していた。
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個人の被ばくを調べるという点は正しい。ただし福島県周辺と青森県周辺の住民は内部被ばく用の検査を病院がしておらず、どのくらい被ばくしているのかわからない。
福島県には福島原発があり、そして青森県には6か所村がある。
6か所村における放射性物質拡散は福島原発以上である。
ロシアがトルコに対して措置だが、今回は正攻法で行くみたいだ。ロシアはハーグに提訴するそうだ。またトルコ市民などに武力行使など行わないことをプーチン大統領が発言した。
投稿: すずか | 2015年11月26日 (木) 20時08分