« アメリカは、シリアに侵略の損害賠償をするべきではないだろうか? | トップページ | ヨーロッパはなぜロシアのシリア政策を支持する必要があるのか »

2015年11月 3日 (火)

シリア内のテロ要員を救出するための‘人間の盾’として派兵されるアメリカ特殊部隊

Finian Cunningham
Russia Today
公開日時: 2015年11月1日 04:23
編集日時: 2015年11月1日 04:32


George © Ourfalian / ロイター

シリアへの特殊部隊派兵というオバマの決定は、シリアにおけるアメリカ軍のエスカレーションとして広く見なされている。兵士派兵も、アメリカがロシアがシリア国内のワシントン政権転覆要員殲滅に成功するのを阻止しようとしている兆しなのだ。

要するに、アメリカ特殊部隊は、その多くがワシントンのシリアにおける政権転覆という目的に貢献している反政府傭兵に対するロシア空爆を阻止する“人間の楯”として利用されているのだ。

まず第一に、形勢を一変させるロシアによる軍事介入へのアメリカと同盟諸国による対応として慌ただしく招集されたウィーンでの“和平交渉”を含め、一連の進展を見る必要がある。9月30日に始まったロシア介入は過激派に対する大打撃を与えたのみならず、勢力バランスを完全に変え、外国が支援する過激派に対する戦いで、アサド政権を優位にした。これは更にダマスカスを打倒しようとしているアメリカが率いる勢力を混乱させた。

更に読む
マリオ・アンズオーニ‘アメリカ軍を危険にするよう計算されたもの’: 一体なぜアメリカはシリアでのエスカレーションを望むのか

ワシントンと、イギリス、フランス、トルコ、サウジアラビアとカタールを含む同盟諸国のばらばらな対応を想起しよう。最初ワシントンは、同盟国シリアを空爆で支援するウラジーミル・プーチンの命令を“失敗する運命にある”と、けなそうとした。

次に、ロシア攻撃による一般市民死傷者という誇張された、確認できない主張、更には、ロシア巡航ミサイルがコースから大きく外れ、イランに命中したというアメリカの主張がなされた。ロシアが「イスラム国」 テロ・ネットワークではなく“穏健派反政府勢力”を攻撃しているという多くの懸念もあった。こうした非難の全てが、欧米マスコミの増幅によってあおられ、ロシアの軍事作戦を損なうべく仕組まれていた。

更には、サウジアラビアとカタールが、アサドとプーチンの統合火力から住民を“保護する”ためシリアで直接軍事行動を開始するという脅しもあった。そのアイデアは即座に棚上げになった(一体誰によってだろう?)。

もう一つの反射的反応らしきものは、一般市民の難民を保護するという名目ながら、暗黙かつより重要なのは、ロシア空爆とシリア政権の地上軍から“反政府”集団を保護することを狙う、“安全な避難場所”の北シリアへの設置に関する話題を、トルコやアメリカの右翼政治家や評論家連中が蒸し返したことだ。

こうした対応のいずれも、欧米マスコミの大宣伝にもかかわらず信頼を獲得することはできなかった。それどころかロシアのシリア軍事介入がプーチンによる見事な手腕で、反政府傭兵の広大な領域を一掃し、アサド政権を安定化し、シリア国内、中東全体、更に実際に世界中でも、大衆の多くの支持を勝ち取っていることが間もなく明らかになった。

先週、アメリカ軍の最高幹部、統合参謀本部議長のジョセフ・F・ダンフォード海兵隊大将が、上院委員会で、ロシアの上空援護があらゆるものを変えたと証言した。“現在の力の均衡はアサドが有利だ”と彼は述べた。

これが、特殊部隊をシリアに派兵するというオバマによる予想外の最新の動きを解釈するための文脈だ。主張通り“「イスラム国」に対する戦いを支援すること”や、大規模アメリカ侵略の懸念が狙いというよりも、ロシアが現地の様々な反政府勢力を壊滅するのに成功するのを阻止するのは本当の狙いだ。

更に読む
サダム風鉱脈: 年間5億ドルにのぼるISISの石油輸出は 'トルコ経由で行われている'

オバマが命じた分遣隊は、50人の特殊部隊要員だ。たとえ派兵の公式説明を信じたにせよ、これでは到底「イスラム国」戦士に対する決定的な打撃になり得ない。

ホワイト・ハウスは、発表時、兵士たちは戦闘の役割ではなく、クルド戦士や、ほとんど無名のシリア・アラブ同盟に所属する他の連中への“助言と訓練”活動のみの予定であることを強調するのに苦心していた。

しかしこれが話の中で恐らく重要部分だ。“この動きで、アメリカ軍兵士に、ロシアの照準を定められる可能性がある”ニューヨーク・タイムズは報じている。また、重要なことに、ペンタゴンは、ロシア軍には地上要員の正確な居場所を伝えない予定だ。

これはつまり、オバマが兵士を送り込む本当の目的は、アメリカ軍を爆撃するリスクをもたらして、ロシアの攻撃作戦を制限することだ。実質的に、アメリカ特殊部隊は、現地のアメリカの政権転覆用要員を保護するための人間の楯として利用されているのだ。

これら要員には、シリアにおける政権転覆という目的のため、アメリカと同盟諸国が何十億ドルも投資した様々な聖戦士傭兵旅団を含まれる。“穏健派反政府勢力”という誤った名称は、傭兵には「イスラム国」を含むアルカイダとつながるテロ集団が含まれているという豊富な証拠と矛盾する。CIAによる対戦車TOWミサイルやトヨタ・ジープの供給は外国による秘密支援の片鱗に過ぎない。

先月、ロシアの壊滅的空爆作戦で、モスクワによれば、1,600以上の標的が破壊され、ワシントン、ロンドン、パリ、アンカラ、リヤドとドーハで、卒中を引き起こしたのは確実だ。彼らの“損失”に対する緊急阻止策の導入が必要なのだ。ところが、外国スポンサーは、それを言えば、連中のシリア戦争への犯罪的関与に関する馬脚が現れてしまうので、それをあからさまに言うわけには行かない。

この見方が、慌ただしく招集されたウィーンでの“和平会議”の説明として可能性が高い。アメリカのジョン・ケリー国務長官の“流血を止めたい”という明らかな懸念も主要動機としては信じがたく思える。5年近い流血の後、今さら懸念というのはなぜだろう?

これはBBCが報じているような“和平の探求”を目指すものではない。この動きは、シリア国内にいる連中の政権転覆用の要員に、ロシアの火力から猶予を与えるためのワシントンと同盟諸国の策謀という方がずっと説得力がある。今週末、ウィーンで合意された要点の一つは“全国的休戦”の実施だ。

一体何が実際に起きているのかを示すもう一つは、今週、聖戦士傭兵集団のシリア外への大規模緊急空輸報道だ。シリア軍諜報機関幹部によれば、トルコ、カタールと、アラブ首長国連合の航空機に乗って、500人未満の傭兵がイエメンに入国した。戦士はイエメン南部の都市アデンに送られ、そこから彼らはアメリカが組織したサウジアラビア連合によってイエメン国内の戦闘地帯に派兵された。アメリカ-サウジアラビア連合は、フーシ派反政府勢力によって、今年初め打倒された亡命中のアブド・ラッボ・マンスール・ハーディー大統領政権を再度就任させるべく、イエメンで戦争をおこなっている。

アデンは、サウジアラビアとアラブ首長国連邦軍の軍事支配下にあり、サウジアラビアの首都リヤドに本拠をおくアメリカとイギリスの軍事計画者が調整している連合によって、イエメンの空域は閉鎖されている。飛行機一杯の聖戦士が、ワシントンの把握なしに、南イエメンに飛行機で入国しうることなどありえない。

だから、我々がここで目にしているのは、シリアにおける彼らの秘密な軍事的損失を食い止めるためのワシントンと同盟諸国による組織的な取り組みだ。アメリカ特殊部隊派兵、シリアへの地上軍派兵という、一見、オバマによる劇的な180度政策転換は、シリア安定化にロシアが成功するのを阻止するための広範な取り組みの一環に過ぎない。こうしたアメリカ部隊は、ニューヨーク・タイムズが我々を信じさせようとしているように“[オバマ]が避けようとしていた、アメリカの戦争への関与深化”ではない。彼らはロシア空爆に対する人間の盾として行動すべく派兵されている。

いわゆる和平プロセスの下で想定される休戦は、アメリカが率いる救出作戦のもう一つの要素だ。本当の狙いは、欧米やトルコやアラブが支援する聖戦士に再編成する余裕を与えることであり、もし必要があれば、イエメンや、きっとどこであれ、必要とされる場所で、彼らの帝国主義機能を回復させるため、シリア戦域から飛行機で連れ出すことだ。

Finian Cunningham(1963年生まれ)は、国際問題について多く書いており、彼の記事は複数言語で刊行されている。アイルランドのベルファスト生まれの農芸化学修士で、ジャーナリズムに進むまで、イギリス、ケンブリッジの英国王立化学協会の科学編集者として勤務した。20年以上、ミラーや、アイリッシュ・タイムズや、インデペンデント等の大手マスコミ企業で、彼は編集者、著者として働いた。現在は、東アフリカを本拠とするフリーランス・ジャーナリストで、RT、Sputnik、Strategic Culture Foundationや、Press TVにコラム記事を書いている。

本コラムの主張、見解や意見は、もっぱら筆者のものであり、必ずしもRTのそれを代表するものではない。

記事原文のurl:https://www.rt.com/op-edge/320356-syria-us-troops-shields/
----------

箒川 兵庫助様から(2-ゐ)で、まさにこの件についてコメントを頂いた。シンクロニシティ。

トルコ国政選挙の意外な結果、RTのニュースでも、ミシガン大学のロナルド・サニー教授が、「私はいささか驚いている。」と発言している。

‘Erdogan gaining more power in Turkey dangerous internationally’

ロシアの民間航空機がエジプトで墜落。空中分解という、不思議な事故。

トルコ、やりなおし選挙、与党圧勝。大本営広報部解説記事を読んでも、そうなった理由がさっぱりわからない。国民が安定を求めたというのだが。きつねにつままれた感じ。前回選挙で惨敗したため、連立政権もつくれなかった与党が、数カ月後に圧勝というのは驚き。

日本訪問時には、テロ戦争支援のみならず、傀儡属国同士の助け合い、絶大な支援協力を約束しただろう。あるいは、ムサシなるもののトルコ導入が、目玉だったのでは、とあらぬ妄想。この国の驚くべき選挙結果を思い出す。

台風が近づくなか、あえて横浜を出航したオスマン帝国戦艦エルトゥールルが、1890年9月16日、和歌山県、紀伊大島樫野崎で沈没。500人のオスマン水兵が亡くなったが、69人が日本の現地の村人による尽力で助かった。今年事故125周年。

ユーラシア両端に、立派な傀儡政権。両者とも、旧帝国の夢を追うふりをしながら、売国に勤しんでいるところも似ているのでは?

シリアの事態、ますます紛糾するだろう。

« アメリカは、シリアに侵略の損害賠償をするべきではないだろうか? | トップページ | ヨーロッパはなぜロシアのシリア政策を支持する必要があるのか »

イラク」カテゴリの記事

アメリカ軍・軍事産業」カテゴリの記事

NATO」カテゴリの記事

ロシア」カテゴリの記事

サウジアラビア・湾岸諸国」カテゴリの記事

ISISなるもの」カテゴリの記事

トルコ」カテゴリの記事

Finian Cunningham」カテゴリの記事

シリア」カテゴリの記事

コメント

本日の記事からウクライナの状況を連想しました。
確か今年8月22日土曜日、だったと思うのですが、軍服姿のウクライナ大統領が軍事教練での演説で、「停戦は我々に軍再編の猶予を与えてくれた。さあこれからクリミア、ドンバスの祖国奪還を目指すぞ。」憚ることなく、去年9月のミンスク1、今年2月のミンスク2の停戦合意は、単に自軍の劣勢を立て直す方便であることを宣言していました。日曜日のロシアの晩のニュースは、キエフ軍の前線の各師団の配備状況を事細かに説明し、今にも大戦争が始まるのかという感じでした。宇大統領は、戦争やる気満々だったのですが、翌週月曜日のベルリンでのメルケル、オランドとの三者会談で、相当釘を刺されたみたいで(この内容は明らかになっていません)これ以降ドンバスでのキエフ軍の攻撃は下火になり現在に至っています。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

« アメリカは、シリアに侵略の損害賠償をするべきではないだろうか? | トップページ | ヨーロッパはなぜロシアのシリア政策を支持する必要があるのか »

お勧め

  • IWJ
    岩上安身責任編集 – IWJ Independent Web Journal

カテゴリー

ブックマーク

最近のトラックバック

無料ブログはココログ