欧米国民の再農奴化
Paul Craig Roberts
2015年11月9日
欧米諸国民の再農奴化が、いくつかのレベルで起きている。私が十年以上書き続けてきた一つは、雇用の海外移転に起因するものだ。例えば、アメリカ人は、自分たちに販売される商品やサービスの製造に参加することが、すっかり減ってしまった。
別のレベルで、マイケル・ハドソンがそれについて第一人者(Killing The Host)である欧米経済の金融化を我々は体験しつつある。金融化というのは経済において、国民のあらゆる経済存在感を排除し、的剰余を、金融部門への利子支払いに振り向けるプロセスだ。
この二つの変化が人々から経済的に良くなる見込みを奪ってしまった。三つ目の変化が、人々から政治的権利を剥奪する。環太平洋戦略的経済連携協定と、環大西洋貿易投資パートナーシップが、政治的主権を抹殺し、国家統治をグローバル企業に引き渡すのだ。
これらいわゆる“貿易パートナーシップ”は貿易とは何の関係もない。秘密裏に交渉されているこれらの協定は、事業を行う各国の法律から、大企業が逃れられるようにするためのものだ。企業利益に対する既存、あるいは将来の法律や規制によるあらゆる介入を、大企業が“主権”政府を訴え、罰金を科すことが可能な、貿易に対する制約だと宣言することで、これが実現される。例えば、フランスや他の国々のGMO製品禁止は、環大西洋貿易投資パートナーシップによって無効にされるだろう。民主主義は、大企業支配によって、あっさり置き換えられてしまう。
これについて、私は詳細に書くつもりだった。しかしクリス・ヘッジズ等の人々が、代議制政府を抹殺する権力奪取を説明する上で、よい仕事をしておられる。
大企業は権力を安く買い叩いている。連中は、2億ドル足らずの金で、アメリカ下院丸ごと買収したのだ。これは、大企業代理人、アメリカ通商代表が、議会の意見反映も監督も無しに秘密裏に交渉することを可能にする“ファスト・トラック”を議会に賛成させるため、大企業が支払ったものだ。
言い換えれば、アメリカ大企業代理人が“パートナーシップ”を構成する国々の大企業代理人連中とやりとりし、このほんの一握りのたんまり賄賂を貰った連中が、法律を大企業の権益で置き換える協定を策定するのだ。パートナーシップを交渉する連中の誰一人として国民や公共の利益を代表していない。パートナーシップ参加国政権は協定に賛成か反対か投票をしなければならないが、連中は協定に賛成投票するよう、たんまり金をもらっている。
こうしたパートナーシップが発効してしまえば、政府そのものが民営化される。議会、大統領、首相、裁判官には何の意味もなくなってしまう。大企業裁決機関が法律と判決を決定する。
こうした“パートナーシップ”が意図しない結果をもたらす可能性は高い。例えば、ロシアと中国は、この協定に参加しておらず、イラン、ブラジル、インドや南アフリカもそうだ。インド政府は、別途アメリカのアグリビジネスに買収され、自給自足の食糧生産体制を破壊しつつあるように見えるが。欧米やアジアの欧米傀儡諸国において、自由と民主主義が消滅する中、これらの国々は、国家主権と国民による支配の貯蔵庫になるだろう。
欧米中での暴力革命と、1パーセントの人々の絶滅が、もうひとつのあり得る結果だ。例えば、フランス国民が、食べ物に対する支配権を、モンサントとアメリカのアグリビジネスに奪われてしまったことに気づいてしまえば、フランスの食生活を有毒食品へのとらわれの身に零落させたフランス政府閣僚は、街頭で殺害される可能性さえある。
自分の人生のあらゆる側面を、全く思い通りにできなくなっていて、自分たちの唯一の選択肢は、革命か死しかないということに人々が気がつけば、こうした類の出来事が欧米至る所で起きる可能性がある。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/
記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/11/09/the-re-enserfment-of-western-peoples-paul-craig-roberts/
----------
全く同意。TPP、大雑把に世界史でならった「囲い込み」の現代版のように思っていた。それで、より的確な「農奴制再来」という表現に納得。
TPP関連記事を、多数翻訳している。下記がリスト。
そもそも、宗主国の狙いは、堂々と公表されている。
(TPPでの)アメリカの狙いは、関税よりずっと重大な邪魔者であり続けている非関税施策を日本に解除させることにある 米国議会図書館議会調査局文書
TPP原文が公開されることがわかっていて、本格的な追求を受けるのがいやで、国会を開かないのだろうと、今にして思う。
国内では野球賭博、海外ではロシアの組織ぐるみドーピング疑惑。スポーツが全くわからず、ほとんど興味がないので、そういう話題より、戦争法案や、TPPや、アホノミクスや、辺野古基地の話題を知りたいと個人的には思う。
相撲や、ボクシングのようなものであれば、ルールをほとんど何も知らないが、勝ち負けだけはわかるのだが。
電気洗脳箱で見る、閉会中審の論議、TPPに関する議論が驚くほど少なく、肩すかし。野党時代、TPPの危うさを指摘した人物が、与党幹部となって、TPPの素晴らしさを延々うたいあげる変節の酷さに、すっかり気分は萎えた。
日本会議の洗脳広報誌と、小生が勝手に認識している雑誌の広告に目が点。
並んでいる見出し、こういう意味に読み替えた。
現物、決して買わず、読まないので、何が書いてあるのか実は全く知らない。
- 「一億総農奴」わが真意
- データで見た「三本の矢」のハズレ率
- 規制緩和、もういい加減にやめろ (と彼に言いたい。)
- 属国代表は何度も怒鳴りつけられた (余りな歪曲)
- 「農協改革」では乗り越えられない
「よいしょ」満載の爺(じじい)口論、見ていられない。消して、風呂に入ろう。
« もしシナイでの墜落がテロであれば、欧米にとってタイミングは完璧 | トップページ | TPP、WTO、NAFTA: 大企業による、アメリカ史上、最も恥知らずな権力奪取 »
「アメリカ」カテゴリの記事
- アメリカにとって良いことはイーロン・マスクにとっても良いことで、その逆も同じ(2025.01.23)
「NATO」カテゴリの記事
- ブカレストで最大規模の抗議行動:背後に一体何があるのか?(2025.01.18)
- 依然、経済的ストックホルム症候群に陥っているウクライナ(2025.01.21)
- シリア分割と新サイクス・ピコ協定:地政学的混乱と地域再編(2025.01.12)
「TPP・TTIP・TiSA・FTA・ACTA」カテゴリの記事
- アジア回帰:何がイギリスをつき動かしているのか?(2021.03.11)
- 最近の「クァッド」フォーラムとミュンヘン安全保障会議(2021.03.05)
- 「欧米」メディアが語るのを好まない新たな巨大貿易協定(2020.11.22)
- アメリカ、中国を狙って、ウイグル・テロ組織をリストから削除(2020.11.16)
- 中央アジアのラテン文字化はアメリカ地政学の手段(2019.12.24)
「ポール・クレイグ・ロバーツ」カテゴリの記事
- 腐敗したアメリカ支配層に宣戦布告したかどでトランプは暗殺されるのだろうか?(2023.06.26)
- ポール・クレイグ・ロバーツは大量虐殺が好きなのか?(2022.05.01)
- ロシアの安全保障提案をワシントンが拒絶したのはまずい判断(2022.01.31)
- 欧米で、ジャーナリズムは宣伝省にとって替わられた(2021.11.23)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 欧米国民の再農奴化:
» ミャンマー総選挙、視点を変えると? [時事解説「ディストピア」]
思えば物心が着いたころからテレビでは、アウンサン・スーチー女史は
平和と民主主義のために軍事政権に抗っている偉い人なのだという報道がされていた。
まぁ、その報道は半分は事実なのだろうが、
次の記事を読んでからはスーチー氏に対するイメージが少しずつ変わって...... [続きを読む]
« もしシナイでの墜落がテロであれば、欧米にとってタイミングは完璧 | トップページ | TPP、WTO、NAFTA: 大企業による、アメリカ史上、最も恥知らずな権力奪取 »
インド与党地方議会の敗北
最近のニュ-ズによれば,インドでは与党の地方議会が敗戦を重ねているという。期待されたモジ政権だったが,民衆に嫌われたらしい。その理由は経済政策にあるらしいが,P.C.ロバ-ツ氏が指摘するように,「インド政府が、別途アメリカのアグリビジネスに買収され、自給自足の食糧生産体制を破壊しつつある」からなのであろう。
ヤクルト販売は独自の販売網を作り,「パ-トナ-シップ」なしにブラジルでもインドでも独自に利益をあげている。しかし11億人とも言われるインドの人々の胃袋を満たす農業がモンサントやカ-ギルといった巨大資本の餌食になってきたことは,周知の事実であろう。
小麦ばかりでなく綿花の栽培も,日本では禁止されているような農薬を使って土地を痩せさせ,生産量を減少させているやに聞いている。アメリカとは本当に恐ろしい国である。モジ政権もアメリカ巨大資本と手を切れなかったということか。
追記: こちらの海辺の町ではヤクルトは好評である。購買層は中国系の方である。もちろんこちらのロ-カルの会社も同じ成分の飲料を提供している。しかし売れ行きは芳しくない。飲んでみるとやはりその味はヤクルトにはかなわない。
今年のプロ野球はどこが優勝したのか知らないし,チーム・ヤクルトの熱烈なファンでもないし,会社とも関係ないが,環境に悪影響を与えず製品化され,品質が良いものは,広く受け入れられのであろう。
追記2: こちらの海辺では豆腐が売られている。中国系の方が多いから当然あって然るべき食品だが,材料の大豆が遺伝子組み換えなのか,どうか不明である。
ハワイで生産されたGMOパパイアが輸入されていることは以前紹介したことがあるが,この国もいよいよ「パ-トナ-シップ」の一員となりそうである。別な海辺の町を見つける必要が出て来たのかもしれない。ミャンマ-あたりが適地か。たとえアメリカ資本やCIAの魔の手が伸びていたとしても,GMO食品を禁止する中国と経済的な結び付きが強いから,容易には遺伝子組み換え食品や種子を利用・輸入しないだろう。ただ祈るのみ。
投稿: 箒川 兵庫助(2-の) | 2015年11月11日 (水) 23時05分
ミャンマーの総選挙はおそらく、不正選挙を実行するつもりではないのか?
ミャンマーの総選挙の監視団体が笹川財団→パソナにいきつく。
投稿: すずか | 2015年11月11日 (水) 17時39分