非人道族の発生
Paul Craig Roberts
2015年9月2日
アメリカの全体主義的暴力への転落が加速しつつある。ブッシュ政権同様、オバマ政権も、アメリカ憲法を散々踏みにじった司法省高官に論功行賞する傾向がある。昨年、アメリカ最初の黒人大統領が、デヴィッド・バロンを、ボストン連邦第1巡回区控訴裁判所判事に任命した。
バロンは、アメリカ国民を無人機から発射されるミサイルで殺害するのを、オバマに法的に許可した司法省メモの責任者だ。殺害は、罪の告訴、裁判も、有罪判決もなしに行われた。被害妄想のオバマ政権によって、説教で聖戦を奨励していると見なされた宗教家が標的だった。聖戦を奨励するには、ワシントンが、7ヶ国でイスラム教徒を大量虐殺し、何百万人もの強制移住させるだけで十分であることを、オバマや司法省には、どうやら思いが及ばなかったようだ。説教は冗長で、中東における覇権を追求する中での、ワシントンによる長年の大量虐殺後の道徳的な怒り以外はほとんど何もないものだった。
バロンの承認には、共和党議員の一部、民主党議員の一部や、米国自由人権協会ACLUからの反対があったが、アメリカ上院は、2014年5月、53-45の票でバロンを認めた。“自由と民主主義のアメリカ”で、 裁判なしの殺害を合法化した悪魔によって裁かれかねないことを想像願いたい。
論功行賞を待つ間、バロンは、ハーバード・ロースクールに籍をおいたが、これをみるだけで、ロースクールの実態が分かる。彼の妻はマサチューセッツ州知事に出馬した。エリート連中は、法律を権力で置き換えるのに多忙だ。
今やアメリカでは、憲法にもかかわらず、アメリカ国民は、裁判なしに、処刑されうるという先例をアメリカ法に確立した人物が、確実に、最高裁判所にむけ育成される過程で、連邦控訴裁判所判事の座にある。
ロースクール教授陣は反対しただろうか? 裁判なしの処刑という新たな法的原則を熱心に支持しているジョージタウン大学法学教授デイビッド・コールは反対しなかった。コール教授は、彼は“思慮深く、思いやりがあり、心が広く、聡明だ”と述べ、バロン支持を宣言し、司法省の連邦判事被任命者リストに、まんまと載った。
ある国が、一度悪の状態に陥ってしまうと、再浮上する可能性はなくなる。オバマがバロンを任命した前例は、ジョージ・W・ブッシュによる、ジェイ・スコット・バイビーの連邦第9巡回区控訴裁判所裁判官への任命だ。バイビーは、アメリカの連邦法や国際法が、拷問を禁じているにもかかわらず、拷問を正当化する“法的”メモを一緒に書いたジョン・ユーの司法省の同僚だ。拷問を行っている連中自身を含め、全員が拷問が違法であることを知っているが、この二人の悪漢は、拷問を実践する連中に法的許可書を与えたのだ。チリのピノチェトでさえ、ここまではやらなかった。
バイビーとユーは、拷問を“強化尋問テクニック”と呼んで、拷問を消し去った。ウィキペディアが報じている通り、これらのテクニックは、アムネスティー・インターナショナル、ヒューマン・ライツ・ウォッチ、拷問犠牲者を治療した医療専門家、諜報機関幹部、アメリカ同盟国や司法省さえもが拷問と見なしている。https://en.wikipedia.org/wiki/Jay_Bybee
バイビーと、ユーが、拷問に許可証を与えたことに反対した人々には、コリン・パウエル元国務長官、アメリカ海軍総合弁護士アルベルト・モラや、ブッシュ政権の為に、9/11委員会隠蔽工作を画策した、フィリップ・ゼリコウまでいる。
5年間もたもたした後、司法省の司法業務査察室は、国際法と連邦法に違反する法的助言を行って、バイビーと、ジョン・ユー長官補代理は“職務上の違法行為”をおかしたと結論を出した。司法省の司法業務査察室は、バイビーとユーは、更なる懲戒処分や、資格剥奪の可能性に値するかどうか、各州の弁護士協会に問い合わされるべきだと勧告した。
しかしバイビーもユーも、二人は“お粗末な判断”をしたが、誤った法的助言はしていないと結論した、政権に従順な司法省幹部デイビッド・マーゴリスに救われた。
そこで現在、資格を剥奪される代わりに、バイビーは最高裁判所に次ぐ連邦裁判所の判事だ。ジョン・ユーはカリフォルニア大学バークレー校法科大学院ボート・ホールで、憲法を教えている。
ハーバードと、バークレー校の法学教授が、拷問や裁判なしの殺人の法的正当化を作り出し、アメリカ大統領がこうした凶悪犯罪に関与しているアメリカで、一体何が起きているかご想像願いたい。道徳や、人間的な思いやりの欠如や、法律や建国の文書に対する軽視という点で、アメリカは、明らかに例外だ。
アメリカの公共機関中を、全体主義が堂々と闊歩できる容易さに、ヒトラーもスターリンも、驚嘆するだろう。今や、陸軍士官学校の法学教授が、アメリカ軍に戦争と警察国家を批判するアメリカ人を殺害することの正当化を教えているのだ。http://www.theguardian.com/us-news/2015/aug/29/west-point-professor-target-legal-critics-war-on-terror ここにもある。http://www.informationclearinghouse.info/article42758.htm この教授の記事はここにある。http://warisacrime.org/sites/afterdowningstreet.org/files/westpointfascism.pdf
道徳的なアメリカ人を、国家安全保障に対する脅威と見なす様、未来の軍幹部に教えるウィリアム・C・ブラッドフォード教授は、ベトナム戦争のテト攻勢で破れたのは、攻勢をアメリカの敗北だと報じた、ウォルター・クロンカイトのせいだとしている。“打ち破られた”敵には、アメリカ軍に対し、大規模攻撃を行う能力があったことを証明したという意味で、テトはアメリカの敗北だった。攻勢は、戦争が決して終わってなどいないことを、アメリカ人にはっきり示したという意味で成功したのだ。ブラッドフォードの主張の意味するところは、クロンカイトは、アメリカの成功に対する疑念を増した彼の報道番組ゆえに、殺害されるべきだということだ。
真実をかたっているので、撲滅しないと、アメリカが駄目になってしまう、40人のリストを持っていると、この教授は主張している。これは、ワシントンの狙いが、真実とは共存できないという全面告白に等しい。
憲法上保護されている表現の自由の権利を軽視したかどで審査されたり、首にされたりした教授に関する報道は聞いたことがない。だがイスラエルの戦争犯罪を批判したり、差別語として禁止されている言葉や用語を使用したり、“優先少数派”特権の理解が不十分であったりで、教授達のレポートが破棄されるのを私は見てきた。これはつまり、悪が社会道徳を圧倒して、道徳が自分勝手な政治意図へと化していることを示している。
現代アメリカにようこそ。ここは、事実が敵のプロパガンダと再定義されている国だ、法律的に保護されている内部告発者が、絶滅されるべき“第五列”やら外国の代理人と再定義されている国だ、批判やあらゆる犯罪をアメリカが免れ、ワシントンが支配することを狙っている連中のせいにする国だ。
バロン、バイビー、ユーもブラッドフォードも、横柄、傲慢さと被害妄想という不快極まりないアメリカの環境から生まれた非人道族という新人種の一員なのだ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/09/02/rise-inhumanes-paul-craig-roberts/
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新宿歩行者天国でも、戦争法案反対集会。
大本営広報紙の下方にある週刊誌宣伝記事見出し、購入意欲が湧かない。どうでも良いことしか話題にしてはいけないのだろう。
サラリーマン時代、帰路どれかを購入し車中で読んでいたのを不思議に思う。大量木材、インキの浪費への加担。
日本では、司法も、立法も、行政も、全て宗主国の引写し。戦争法案もジャパン・ハンドラー様のご指示通り。
バイビーとユーは、拷問を“強化尋問テクニック”と呼んで、拷問を消し去った。
自民党と公明党(と自称野党)、安保法案と呼んで、憲法9条を消し去ろうとしている。
数日前、こういう見出しを見たが驚かない。図書館民営化当然の末路。
衝撃事実発覚 あの樋渡前武雄市長がツタヤ関連企業に天下り!
関連会社から“疑惑”の選書 武雄市TSUTAYA図書館、委託巡り住民訴訟に発展
雇用の規制緩和を推進して、大手人材会社のトップになった御仁が、何かで講演するという大本営広報広告を見た。皆様、何が嬉しくて、彼のご講話を聞くのだろう。
いずれの諸氏も、横柄、傲慢さと被害妄想という不快極まりない日本の環境から生まれた非人道族という新人種の一員なのだ。
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