権力狂エルドアン、トルコ最高指導者となる企みで、戦争開始
Mike Whitney
2015年7月31日
"Counterpunch"
トルコ大統領レジェップ・タイイップ・エルドアンは、先月の選挙で、トルコ最高指導者になる企てに失敗した。そこで、彼は、トルコを戦争に引きずりこんで、自分の人気をあげ、11月の選挙で楽勝する可能性を高めようとしている。
一日前に推計100人のクルド人を殺害した後、木曜早く、トルコの爆撃機が、北イラクにあるクルド拠点に猛攻撃を加え続けた。十分な議席を獲得し損ねた後、エルドアンは、議会憲法を改訂する為、クルド民兵との和平協定を破り、最近の攻撃を行った。野心的なエルドアンには、大統領に無限の行政権を与え、エルドアンを事実上のトルコ皇帝にするよう憲法を劇的に変える為に、330人の議員が必要だ。彼の計画は、未曾有の13パーセントもの得票を勝ち取った、親クルド派の国民民主主義党(HDP)に妨害された。HDPは、トルコ帝国の皇帝になるというエルドアンの夢の実現を断固阻止するつもりだ。現在のシリアとイラクのクルド人に対する戦争は、今年の秋にも行われる可能性がある選挙で、エルドアンを“首位に立たせる”為に民族主義感情をかき立てることを狙ったものだ。
ハフィントン・ポストには更にこういう記事がある。
“先月、彼の党が与党の多数派を失って間もなく、エルドアン大統領は、トルコの安全保障に脅威である、危険なテロリストが、隣国シリアにいることに気がついた … シリアとイラクで、ISISテロリストと戦ったり、アメリカ合州国の軍事作戦に協力したりするつもりというより、エルドアンの本当の狙いは、自分の支配力を強固にして、以下の、虫のいい目的を実現することだ。
1) トルコ大統領は、万一、彼の与党が、8月末までに連合政権を編成しそこなえば、11月に新たな議会選挙を行わなければならなくなることに気がついた。そこで、ISISとクルド戦士に大胆な行動をすることで、トルコの有権者が、議会で多数派を取り戻すのに必要な、あといくつかの議席を彼の政党に与えてくれるのではあるまいかとエルドアンは期待している。
…トルコ大統領の利己的な対テロ・エセ戦争は、トルコや近隣諸国いたるところでの紛争のエスカレーションという悲劇的な結果を招きかねない。もしアンカラが本当に聖戦戦士に反撃するつもりがあれば、ISISや他のテロ集団に武器をあたえたり、煽ったりするのではなく、ずっと昔にそうしていたはずだ” (ISISと戦うふりをして、トルコの私欲を追求するエルドアン、ハフィントン・ポスト、Harut Sassounian)
更に、コロンビア大学人権研究所のディビッド・L・フィリップスによる記事がある。
“エルドアンは、新たな選挙の為に、工作しているのだ。彼は、13.1%の票を獲得し、初めて国会の議席を得るであろう親クルド派政党国民民主主義党(HDP)の評判を落とそうとしているのだ。エルドアンは、AKPが、憲法を改訂し、行政上、皇帝の様な大統領を確立するのに十分な支持を得られなくさせた、HDPの躍進に激怒している。報復として、エルドアンは、HDP議員の議員不逮捕特権を撤廃すると脅している。PKKを支援しているかどで、HDPを閉鎖するとまでほのめかした。” (トルコの暗い未来、ディビッド・L・フィリップス、「ハフィントン・ポスト」)
彼自身の政治権力を強化するというだけの狙いで、エルドアンはクルド人との戦争を開始したと、我々は言っているのだろうか?
そう、それこそまさに我々が言っていることだ。これは権力欲の強い誇大妄想狂の話であって、クルド民兵に対する戦いの話ではなく、確実に、ISISに対する戦いの話では無いのだ。イギリスの、「インデペンデント」のこの文言が指摘している通り、実際、エルドアンは、ISISの最大の友人だった。
“2011年以来、シリアでのジハード運動の拡大にとって、880キロものシリア-トルコ国境を、あちこちに移動する能力が、極めて重要なことは疑いようがない。シリアに押し寄せた何千人もの外国人志願兵のほとんど全員が、トルコから来ている。トルコ語や、アラビア語を話せない連中でさえ、国内を横断するのにほとんど困難はない。多くの点で、トルコは、ISISや、アル=ヌスラ戦線に対し、安全な避難所を提供して、パキスタンが、支援として、アフガニスタンのタリバンに、安全な避難所を提供しているのと同様な役割を演じている。”“アル=ヌスラ戦線が率いたシリア人反政府派の攻勢は、トルコ国内の作戦本部が陰で糸を引いたとされており、トルコ、サウジアラビアとカタールの間の緊密な理解の結果だった。” (スルチの自爆攻撃: 自爆攻撃は、トルコが、シリアの紛争に巻き込まれつつあることを示している、インデペンデント、Patrick Cockburn)
「フロント・ページ」にはこういう記事がある。
“トルコと、AKP政府は、いかなるテロ組織とも、直接、あるいは間接のつながりを持ったことがない”という、アフメト・ダウトオール首相の主張は、昨年11月の、トルコを、 ISILや、アル-ヌスラ戦線に密輸された兵器の主要経路だと特定した国連安全保障理事会の分析支援監視チーム報告と真っ向から対立する。
6月始めの国務省のブリーフィングでも、トルコは過激派組織、主にISILに加わる為にシリアに集まった、22,000人以上の戦士の主要経路だと述べられていた。他にも無数の情報源がある” (奈落の底へ落ち込むトルコ、ロバート・エリス、フロント・ページ)
権力を強化し、トルコの最高指導者になるという企みの為、エルドアンは全力を尽くしており、それこそが、彼が一体なぜ、親クルド議員(HDP)から、訴追免除資格を剥奪して、トルコの厳しい対テロ法の下で、犯罪人として起訴しようとしている理由だ。(二週間前のスルチでの自爆攻撃以来、政府の大規模捜査網で、これまでのところ、1,300人以上の大半クルド民族主義支持者と、左翼が逮捕された。こうした人々の誰一人、いまだに罪に問われてはいない。政府は、対ISIS戦争を行っているふりをするのをすっかりやめた。一斉検挙は、明らかに政治的動機によるものだ。)
トルコ日刊紙、ヒュッリイェトに掲載された記事で、統計学者のEmer Deliveliは、“エルドアンは、政治権力の為に戦争を挑発しているのだろうか?”と問うている。 彼はこう言っている。
““政治的安定性指標が史上最低”を示した後、“私の分析では、実際、AKP(エルドアンの党)の支持率は、政治的暴力事件が増大した後、増えている。”… “レジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が、政治権力の為に戦争挑発していることを証明することはできない… しかしながら、いずれの陰謀論も、実際は、同じ主題の変種だ。エルドアンは、全権を握る大統領になる為に必要なことはなんでもやっている。そして、このように証拠がつみあがれば、“もし~だったらどうか”と考えずにはいられなくなる(エルドアンは、政治権力の為に、戦争を挑発しているのだろうか? 「ヒュッリイェト」)
エルドアンは、国内の支持率をあげるために戦争を始めた、最初の指導者というわけではなく、最後の指導者でもないだろう。ただし、それは、同様に危うい戦略で、特に、彼の一貫性のない利己的政策は、既に彼の支持基盤だった幅広い階層の有権者から敬遠されている。外交政策誌のこの文言をお読み願いたい。
“過激イスラム主義者の脅威を理解し、それに基づいて行動しているエルドアンの弱みは、治安第一の右翼の中に新たな支持者を勝ち取っていないことだ。彼の独裁的な、イスラム主義なスタイルは、左派の支持を失っている。クルド票については、そう、彼は忘れることが可能だ。歴史は、一見無敵の指導者達でも、静かに、あるいは、さほど静かにではなく、去ることを強いられる可能性があることを示している。強大なオスマン帝国さえも、結局、永遠には続かなかった。新オスマン帝国がそうならない理由はない。” (振れる皇帝の危険なギャンブル、「外交政策」、Leela Jacinto)
エルドアンが短期的に直面している最大の脅威は、トルコ国民が彼がたくらんでいることを見抜いて、11月選挙でしかるべく投票することだ。だが、それには、国民の支持を得るために、攻撃を止めなければならなくなる、クルド民兵側の自制が必要だろう。
クルド人が、エルドアンの様に権力に酔いしれた右翼狂信者を打倒できる唯一の方法は、平和に機会を与えることだ。つまり、得票計算がおわるまでは。
Mike Whitneyは、ワシントン州在住。彼は Hopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion(『絶望: バラク・オバマと、幻想の政治』)(AK Press刊)にも寄稿している。同書は、Kindle版も入手可能。fergiewhitney@msn.comで連絡ができる。
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大本営広報部の「時事公論」予想通りのとんでも番組。
なんとでも解説できるだろう。具体的なメリットには一切ふれない。日本企業のメリットが、日本の庶民のメリットになるだろうか。
強制的に視聴料を取られて、洗脳されるのではかなわない。
この話題に関連すると思い、貧しい中『新・100年予測 ヨーロッパ炎上』を無理をして購入し、ただただ我慢して読んでいる。図書館に購入を希望しても、ブログには間に合わない。
宗主国支配層が何を考えているのかを語っているのを読み取る為と思って、既刊の文庫本を二冊、我慢して読んだ。ウクライナ・クーデターの背景、文庫本を読むと、宗主国がしかけたであろうことは想像できる。
その続きで、これから何をたくらんでいるのかを知りたくて我慢して読んでいる。
宗教の歴史や、ドイツとロシアの過ちやらを延々書いてある。父親・家族の亡命の歴史。43ページにはこうある。
父親が住みたかったのは、自らは強くて、しかも隣国が強くないという国だった。
そして、47ページ。
アルベール・カミュは「犠牲者にも加害者にもなりたくない」と言っていた。父に言わせれば、カミュのこの考えは妄想でしかないということになる。彼の経験からすれば、人間は犠牲者になりたくなければ、加害者になるしかなく、この二つ以外の何かになることはできない。
宗教であれ政治であれ、小室直樹氏の本を読むような感動、驚き皆無。不快になるばかり。ミニ・ブレジンスキー氏ということだろうか。
収入と無関係に、読みたくない本を、買わなければならないことがある。買うのは何とか我慢できるとしても、読むのはつらい。
傀儡政権や宗主国幹部の本を、貧しい財布で購入し、読む必要がなぜあるだろう。順番を待っているわけには行かないので、やむを得ない。
こうした本を読む前に、『アメリカン・ドリームという悪夢―建国神話の偽善と二つの原罪』を読むべきだろう。
読む価値、言及の価値がないと思う発言・書籍、まず借りたり、購入したり、言及する気力はない。今回は例外の一つ。何度も例外はありそうだ。
「第14章 ヨーロッパの縁のトルコ」という部分を読みたくて購入したのが本音。
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コメント
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藤永茂さんのブログ「私の闇の奥」でも、こちらのブログに言及し、高く評価されていました。
わたしは、現在のシリアを中心とする中東情勢に関心をもっていますが、
最近のトルコの動きは不可解。こちらのブログの情報はとても有益です。
ありがとうございます。
TPP関連の記事もありがたいです。
George FriedmanのStratforも無料で見れる範囲で見ています。
Paul Craig Robertsの翻訳記事もうれしいです。
応援してます。
投稿: Sasaki | 2015年8月 4日 (火) 10時14分