国際原子力機関の支援を得て、原発事故被害者を強制帰還計画で危険にさらす日本政府
Kendra Ulrich
2015年7月22日 13:44
GreenPeace
2011年3月に始まった、福島第一原子力発電所における、この時代最悪の原発事故は、依然として、何十年も解決されないだろう継続中の危機なのだ。放出された膨大な放射性物質の大半は、この時期の卓越風によって太平洋に運ばれた。ところが、3月15日と16日の夜には、風向きが変わり、膨大な量の放射性物質を内陸にもたらした。福島県、特に破壊した原発敷地の北西方向が、酷く汚染された。
日本政府は、2017年3月までに避難命令を解除する狙いで、除染の取り組みを進めている。ところが、グリーンピースの調査で、衝撃的なことが判明した。安倍政権による計画の主要対象の一つ、飯舘では、放射線量レベルは、チェルノブイリ周辺の30km立ち入り禁止区域内部のものに匹敵する。更に驚くべきことは、既に“除染された”はずの住宅周辺でさえ、そうだったのだ。
日本政府が、何万人もの、原発事故被害者や除染作業員に対して、そのようなことをする動機は一体なんだろう?
この疑問に答えるには、まずは、飯舘についての基礎知識を理解することが重要だ。飯舘村と呼ばれている場所には、実際には、面積200 km2の、森林に覆われた丘陵や、山や、湖、田畑や、住宅が散在している。飯館村は破壊した福島第一原子力発電所の北西28 - 47 km、地上に最も大量の放射性降下物が落ちた経路上に位置している。
安倍政権は、ウェブ上で、政府は飯舘を“除染している”と述べており、環境省ウェブでは、森林の100%が既に除染されているとまで言っているが、いくつかページを調べてみると、飯舘の面積約1/4についてのみ語っていることがわかる。
言い換えれば、飯舘村200 km2のうち、56km2だけが、除染対象なのだ。そのわずかな部分のうち、最も焦点を当てられているのは、田畑、公道両側、10-20 m幅の森林と、人々の住宅周辺直近の狭い部分だ。
対象とされている森林の限定された範囲ですら作業は終わっておらず、少なくとも一年、あるいはそれ以上は続くのだ。
現場を見た際に、深い印象を与えるのは、道路沿いのこの幅10-20mの森の林床で土をかき集め、草の葉を手で刈っている労働者の大群だけでなく、鬱蒼とした、青々とした森林が見渡す限りかなたまで広がる、広大な山また山の巨大さだ。
作業員達が気の毒に思えてくる。彼らの集中的な取り組み、入念な作業、献身的な姿勢にも感嘆する。彼等は防護服をきて、ブーツ、手袋、マスクとゴーグルをつけ、うだるような暑さの中で働いている。彼らの目さえ見えない。しかも彼等は、ほとんど何の影響も無いことの為に、厳しい肉体労働をしているのだ。こうした労働者の大半は、南相馬などの、原発事故のおかげで、農業、林業、漁業やサービス業の仕事を失った他の被災地の住民だ。だから、多くの人々は自分達の元の住まい近く、放射能で酷く汚染された地域で働いているのだ。
実に超現実的だ。そして、痛ましいことだ。
2011年3月27日、グリーンピースの飯舘での放射能調査で、極めて高いレベルの汚染が見つかり、我々は組織として、6000人以上の住民の緊急避難を、日本政府に至急提言することとなった。その時点まで、飯舘村住民は、避難は不要だと言われていた。避難は4月22日まで始まらなかった。しかも、事故が始まってから8週間後の6月始め、1200人以上の人々が飯舘にとどまっていた。その結果、飯舘村の人々は、福島県民全員の中で、最も放射能を被曝した。
飯舘は、それ以来、福島の話題で象徴的地域となった。大規模な原発災害は、原発敷地周辺の、狭い“緊急時計画”区域には限定されないことをを、日本人や国際社会に、常に思い出させてくれている。影響は広範囲にわたり、地域社会を丸ごと破壊し、人々の日常生活を壊し、取り返しがつかないのだ。
福島第一原子力発電所で、三基の原子炉炉心がメルトダウンし、原子炉建屋が爆発してから四年以上たっても、日本国民の大半は、いかなる原発再稼動にも反対のままだ。電力業界や安倍政権による地方自治体への膨大な圧力にもかかわらず、主として、多数の国民による反対のおかげで、日本では、ほぼ二年間、原発は全く稼動していない。
しかしながら電力業界は極めて強力で、安倍政権は彼等とすっかり結託している。
国民の反対を弱める為の取り組みとして、安倍は、原発事故を '正常化' させるため、原発推進政策を推し進めている。もし国民を、この時代で最悪の原発事故から5年もしない時期に、住民は更なる健康リスクなしに、帰宅して、事故前の通りの生活に戻れると説得できれば、原子炉再稼動に反対している大多数の日本国民に対する強力な論拠になる。
原子力産業に対する事故の影響を最小化する取り組みを支援しているのが、その設立趣意書上、原子力発電推進が業務である国際原子力機関(IAEA)だ。2011年の早い時期から、国際原子力機関は、住民に対する放射線リスク軽視しようとつとめていた。実際、国際原子力機関は、現在の安倍による、事実上の強制帰還政策の基盤を築き、正当化をしたと言える二種類の書類を作成した。
この神話創生には、福島県民、特に飯舘村住民を、原子力産業の犠牲にする必要があるというのが現実だ。これは、ひたすら不法であるのみならず、彼らの人権侵害でもある。
彼等は既に、地域の他の住民達よりも、遥かに多くの放射能を浴びている。意図的に、飯舘村住民、特に女性と子供達を、線量率が、年間20ミリシーベルトにも及ぶ様な地域に帰るよう強いるのは、彼等に、重大な、受け入れがたい、しかも不要なリスクを負わせることになる。
結局、これは、原発事故後に続く混乱ではない。これは、これらの地域の無駄で、効果のない除染と、人間の健康へのリスクという点で、どれだけの犠牲を払おうとも、酷く汚染された元の住まいに住民達の帰還を強制するために考え抜かれた計画だ。
正常に戻ったという神話を生み出すことへの注力による安倍政権の強制帰還政策のとんでもない不公正に加え、高価で効果のない除染に膨大な金額を投入して、政府は避難させなかった汚染地域を完全に無視している。現在、汚染された地域で暮らしているこうした住民達の放射線リスクを減らすという緊急な必要性に対処することよりも、飯舘の様な場所に幻想を作り出し、日本国民を、そして世界を、あざむくことに、政府は関心を持っているのだ。
福島県や、特に飯舘の人々が受けた被害は、元に戻せず、取り返しがつかないということは明らかだ。福島第一原発事故によって、彼らの地域社会と暮らしは破壊され、予見できる将来に帰還できる見込みは無い。
我々グリーンピースは、最低限、以下を要求する。1) 飯舘の避難命令を解除しないこと 2) リスクに関する全面的かつ正確な情報を得た後で、帰還することに決めた人々に対する課税控除と政府支援 そして、3) 彼らの生活、財産、地域社会、精神的苦痛や、もたらされた健康上のリスクといった損失を、彼等が選んだ生き方を追求するべく前進する為に自立できる様、完全に補償すること。
福島第一原発災害の被害者達を、その多くを5年近くも、狭い仮設住宅に押し込んで、不安定な状態に放置しているのは、非人道的だ。政府が、彼等に対して持っている経済的影響力によって、こうした住民達に、それ程酷く汚染された地域への帰還を強いることは、ひどい不正だ。福島の被害者達にしかけられているプロパガンダ戦争で、国際原子力機関が日本政府を支援することは、それなりにあっただろう信頼を損なうのみならず、日本国民に対する犯罪の共犯者となることを意味しよう。
ケンドラ・ウルリッヒは、グリーンピース日本のシニア・グローバル・エネルギー・キャンペイナー。
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Greenpeace日本語版には、まだこの記事、日本語版が載っていないので、誠に勝手ながら掲載させていただく。Greenpeaceからの削除依頼を頂き次第、消去する。
現時点の最新記事は下記。
2015/07/21 プレスリリース:グリーンピース放射線調査、福島県飯舘村で除染後も高い放射線量を測定 村の75%は高濃度に汚染された森林、政府に2017年3月の避難指示解除の見直しを求め
安倍首相「最終合意まで全力」=TPP交渉
2015年8月1日(土)16時17分配信 時事通信
安倍晋三首相は1日午後、環太平洋連携協定(TPP)交渉の閣僚会合で大筋合意に至らなかったことについて、「あと1回会議を開けばまとまるところまできたと報告を受けている。最終的に協議が合意するまで全力を尽くしたい」と述べ、最終合意に向け努力する考えを示した。東京都内で記者団の質問に答えた。
という記事から、TPP、とんでもない代物であると思わない方がおられれば残念。大本営報道洗脳工作の犠牲者。
大本営広報部、大政翼賛会、新聞もテレビも、本当のことは決して報じない。もしも、報じれば、IWJの岩上安身氏のように、即座に、その番組から下ろされる。
虚報洗脳がお仕事。
辺野古基地、戦争法案、アホノミクス、原発再稼動・輸出という具合に、日本国民を不幸にする一連の宗主国命令だけを積極的に推進する人物・勢力が「TPP」に限って、日本国民を幸福にする策を推進するわけがない。
「坊主にくけりゃ袈裟まで憎い」というわけでは全くない。
TPPにまつわる様々な情報を、客観的にご検討いただきたい。
原発関連記事の翻訳は、毎回多数の方にお読みいただいている。
TPP関連記事では、そうではない。
問題の深刻さと、抗議行動の大きさ、必ずしも正比例しない。
TPPに関する本当の情報を大本営広報部が報道管制し、ヨイショ報道しかしない為だろう。
ところで、政党の大きさと悪辣さ、三大政党については、ほぼ正比例。
ドイツが原発撤退を決めると、スゥエーデン企業が、損害賠償を訴えた。
TPPのISDC条項、政府や国民が、国民の被害を理由に、投資家や企業を訴えることは認められていない。
投資家、企業が、彼らの想定した収益が、国家の法律改正などによって、実現できなくなると思えば、投資家・企業、わけのわからないインチキ法廷に訴えでることができる。上訴なし。
品不足のバターが手にはいりやすくなるやら、牛肉や豚肉が安くなるやらという目先で釣っておいて、とんでもない目にあわせる仕組み。
「朝三暮四」
まともな記事は、大本営広報部でない組織から得るしかない。
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