またもや欧米を救えるギリシャ
Paul Craig ROBERTS
2015年7月1日
約2,500年前のマラトンや、テルモピュライや、プラタイアやミュカレの戦い同様、欧米の自由は、またしても、ギリシャにかかっている。現在、ワシントンと、帝国のヨーロッパ傀儡諸国が、ペルシャ帝国役を演じており、ギリシャは、遅ればせながら、ワシントン帝国に服従するのを拒否する政権、シリザを発足させた。
この紛争で、わずからながら残された、欧米の自由の運命が危機に瀕しており、実際、地球上の生命の運命もそうであることを理解している人は、ほとんどいない。ドイツ政府が理解していないのは確実だ。ドイツ副首相ジグマール・ガブリエルは、ギリシャ政府は、ヨーロッパの秩序に対する脅威だと宣言した。彼が“ヨーロッパの秩序”で意味したのは、より強い国が、より弱い国を略奪する権利だ。
“ギリシャ危機”は債務が問題なのではない。債務は、帝国が欧米世界全てで主権を制圧するために利用しているプロパガンダなのだ。
ギリシャ政府は“民主的な”欧州連合を構成する国々の集合に、ワシントンの要求で、欧州委員会、EU中央銀行と、IMFによってギリシャに押しつけられている厳しい条件を、ギリシャ国民が支持なり不支持なり判断できるよう、一週間の債務返済延長を要求した。
ヨーロッパと、IMFと、ワシントンの答えは“NO”だった。
債権者達が、債権者達の失敗を、年金削減、医療削減、教育削減、雇用削減と、社会福祉削減によって、ギリシャ国民に償わせると固く決心している際には、民主主義は適用しないと、ギリシャ政府は言われたのだ。外国の債権者達の失敗の責任は、ギリシャ国民にあり、ギリシャ国民は、債権者達の失敗、特に、ゴールドマン・サックスのおかげで可能になった失敗に対して、賠償しなければならないというのが、帝国の姿勢だ。
完全に証明されている通り、帝国の主張はウソだ。ギリシャに押しつけられた緊縮政策は、経済を27%縮小させ、GDPに対する債務比率が増大し、ギリシャの財政状態は悪化した。緊縮政策が実現したことと言えば、ギリシャ国民を更に酷い状態に追いやり、債務返済を不可能にしただけだ。
帝国は民主主義を信じていないので、次の日曜の民主的なギリシャ国民投票を否定した。帝国は、あらゆる帝国と同様、服従を信じている。ギリシャは服従していない。それゆえ、ギリシャは懲らしめなければならない。ペルシャのダレイオス大王や、クセルクセス1世も、ワシントンやEUと同じ考えだった。ギリシャ政権は、それ以前のギリシャ政権がしていた通り、返済を受け入れ、ギリシャを略奪にまかせることが期待されているのだ。
略奪は欧米金融体制が金を儲ける為に残された唯一の方法だ。短期的利益を追い求めて、欧米大企業は、金融部門に奨励され、強要されて、産業や、製造業や、情報テクノロジーや、ソフトウェア・エンジニアリングの様な専門職を海外移転してしまった。欧米に残されたものと言えば、レバレッジ依存が高いデリバティブ賭博と略奪だけだ。アップルはアメリカ企業だが、アップル・コンピューターの一台たりとも、アメリカで作られてはいない。
ドイツ、フランスとオランダ政府は、ワシントンや欧米金融体制と共に、略奪を選ぶことに決定したのだ。ある国を略奪する為には、国民の声を黙らせなければならない。これこそ、ギリシャ政府が、ギリシャの未来を決める能力を、ギリシャ国民にゆだねることに、一体なぜ、ドイツとEUが反対するかという理由だ。
言い換えれば、現代の欧米においては、国民の主権と政府の責任は、1パーセントの金銭的利害とは合致しないのだ。
結論を言えば、もしギリシャで、民主主義が破壊されれば、ヨーロッパ中で、破壊されるだろう。
欧米における民主主義の運命のみならず、地球上の生命の運命も、ギリシャ国民は握っているのだ。EUとNATOは、ロシアとの紛争を生み出す為のワシントンの仕組みだ。以前のアメリカ政府が結んだ協定に違反して、ワシントンは、NATOをロシア国境に送り込み、現在は、ロシアに対して、攻撃的な発言をしながら、ロシア国境に、更なる部隊、兵器、ミサイルを配備している。
ロシアには、こうした無自覚の軍隊配備を標的にする以外の選択肢はない。軍隊配備が増強され、欧米の無責任で全く不正確な対ロシア・ロシア政府プロパガンダがエスカレートすれば、戦争が自然に始まりかねない。
明らかに、ワシントンと、その属国諸国は、ロシアに、帝国の意思に従うよう強いるのに、外交を避け、代わりに、悪魔化と、意図的強制を用いている。
ロシアに最後通牒を送らないようにという、欧米に対するロシア政府の多数の警告にもかかわらず、この無謀な政策が続いている。帝国の特徴は、尊大と傲岸さゆえ、帝国は警告など聞かないのだ。
最近、イギリスはロシアに対して軍隊を送ることができず、ロシアによって数分間で破壊されかねないという事実にもかかわらず、イギリスはロンドンのワシントン傀儡首相が、ロシアを威嚇するのを我々は目にした。この種の狂気こそが戦争をもたらすのだ。狂ったイギリス首相は、ロシアに挑戦できると思い込んでいる。
ワシントンは、ハルマゲドンをたくらんでいる。だがギリシャは、我々を救える。ギリシャ国民がなすべきことは、彼等の政府を支持し、彼らの政府に、しばらく、ギリシャ国民の利益を代理するよう主張し、堕落したEUに中指を突き立てて、債務不履行し、ロシアの助力を求めることだ。
これでEUとNATOの解体が始まり、世界をハルマゲドンから救うことになる。
イタリアとスペインも、これらの国々も容赦ない略奪の標的にされているので、ギリシャに続いて、EUとNATOから離脱する可能性が極めて高い。ロシアとの紛争を生み出すワシントン仕組みであるEUとNATOは解体するだろう。世界は救われ、その救済に対し、一体何が危機に瀕しているかを理解するギリシャ人の能力に大きく感謝することになるだろう。マラトンや、テルモピュライや、プラタイアや、ミュカレの戦いで、彼等がなし遂げたことと同様に。
第三次世界大戦から我々を救う様な他のシナリオを想像するのは困難だ。単に自由のみならず、地球上の生命が彼等にかかっているという責任をギリシャ人が理解してくれるよう祈ろう。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/07/01/greece-can-save-west-paul-craig-roberts/
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女子サッカーのオウン・ゴール。イギリス選手が気の毒な気がする。アメリカ・日本決勝戦。
大昔、チェコ侵略後のアイス・ホッケー世界選手権、チェコ・ソ連戦でチェコが勝利し、街頭デモになったのを思い出す。
チェコスロバキア・ソ連関係と、日本・アメリカ関係、一見鏡像の様にも見えるが、全く違う。チェコスロバキアの人々、属国であることを自覚していたのが、根本的違いの一つ。
ギリシャ、国民投票用紙、オヒ(否)が、ネー(諾)より前に書いてあるという。
トロリーバスと水中翼船、ソ連製だったような記憶がある。両国、言葉は全く違うが、文字は相当似ている。
電気洗脳箱で、シンタグマ広場が映ると、何度か訪ねたあの町を思い出す。すぐ近くのホテルに宿泊した。当時はオリンピック・ホテルといっただろうか。休日、木靴を履いた衛兵交代も見学した。丁寧に町を案内してくれた知人、ずっと前に亡くなった。オヒ(否)、ネー(諾)や基本的な挨拶も彼が教えてくれたものだ。
この国も、ギリシャにならって、集団自衛権なる宗主国侵略戦争パシリ参戦法や、憲法破壊について、オヒ(否)、ネー(諾)を問う国民投票をすべきだろう。経済規模ではなく、独立の度合いが違うのだろうか。アテネ空港、記憶では、軍民一体だったが。
国民投票で、夫や息子や愛人や孫や子が、宗主国侵略戦争のために、縁もゆかりもないところで無辜の人々を殺したり、死んだり、国内では新幹線テロ頻発したりする可能性を進んで納得して、永久植民地になりたいというのであれば、滅亡にまかせるしかないだろう。
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