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2015年7月19日 (日)

ロシアにとってのギリシャの教訓

Paul Craig Roberts
2015年7月17日

“ギリシャ債務は、今やヨーロッパがこれまで進んで行おうと検討してきたものを遥かに超える負債軽減措置によってのみ、持続可能になる。”国際通貨基金

ロシアや、中国や、イランに対するギリシャの教訓は、欧米との、あらゆる金融関係を避けろということだ。欧米は決して信頼がおけないからだ。ワシントンは、他のあらゆる国々に対して、経済的・政治的覇権の確保を断固決意しており、欧米金融制度を、資産凍結、没収や、経済制裁に利用している。独自の外交政策を持っている国々や、欧米に資産を保有している国々は、ワシントンが彼らの財産権や所有権を尊重するなどとは期待できない。ワシントンは、各国の資産を凍結したり、盗み取ったりするが、フランスの場合には、ワシントンの政策に従うよう強いる為、何十億ドルの罰金を科した。例えば、単にイランが、核拡散防止条約のもとでの権利を主張してきたがゆえにイランは長年、イランGDPの約四分の一にあたる、1000億ドルの資産を利用することができなかった。

ロシア人ジャーナリスト達は、オバマがイランとの話をまとめるのに熱心だったことは、ウクライナを巡っても話がまとまる希望もあるということかと、私に質問してくる。答えはノーだ。しかも、これからご説明するが、イランとの核協議合意は、ワシントンに関する限り、たいした意味はない。

三日前(7月14日) 軍高官ポール・セルバ大将が、ここ数日間で三度目になるが、アメリカ上院で、ロシアは、“この国(アメリカ)の存続に対する脅威”だと語った。わずか数日前、上院は、ジョセフ・ダンフォード海兵隊総司令官と、空軍長官から同じセリフを聞かされていた。その数日前、アメリカ統合参謀本部議長が、ロシアの“ハイブリッドの脅威”を警告した。

ワシントンは、ウクライナを、対ロシアで利用するべく、膨大な投資をしている。ウクライナにおけるあらゆる紛争は、キエフのワシントン傀儡政権が引き起こしている。マレーシア航空機撃墜を含め、あらゆることがロシアのせいにされる。ワシントンは、ぬれぎぬを着せて、EUに、決してEUの利益にはならない対ロシア経済制裁を強要した。ワシントンは、ヨーロッパ全ての国々を、ヨーロッパとロシアとの政治的・経済的関係を損なわせることと、ロシアとの対立状態にさせる強要に成功したので、ワシントンが、ウクライナ問題の解決に同意することは決してあるまい。たとえワシントンがそうしたくとも、ワシントンは、その姿勢丸ごとが、ひたすらプロパガンダだけに依拠しているので、合意に到る為には、ワシントンは自らを否定しなければならなくなってしまうだろう。

あらゆることを差し置いて、ロシア大統領と外務大臣は、アメリカや、ワシントン傀儡のEU諸国のことを、“我々のパートナー”と言い続けている。恐らく、プーチンとラブロフは皮肉を言っているのだ。現在、最も確実なのは、ワシントンとその属国諸国はロシアのパートナーではないということだ。

アメリカの対外・軍事政策の基盤たるウォルフォウィッツ・ドクトリンは、アメリカは単独覇権国で、一方的な行動に対するいかなる制限にも我慢せず、ロシアや、他のいかなる国の勃興も認められないと宣言している。

この教義がワシントンを支配し続ける限りは、ロシアも、中国も、イランも、核協議合意をしても、安全ではない。イランが独自の外交政策をする限り、ワシントンとの、いかなる重大な政策の対立も、経済制裁の新たな正当化を生み出しかねないので、核協議がイランを守るわけではないのだ。

イランとの核協議合意で、欧米の口座に凍結されていたイランの1000億ドルが解除される。私は昨日、外交問題評議会のあるメンバーが、イランは凍結解除された1000億ドルを、アメリカとヨーロッパの企業に投資すべきだと言うのを聞いた。もしイランがそうすれば、イラン政府は自ら将来脅迫される立場におくことになる。欧米のどこかに投資をすれば、イランの資産が、いつでも凍結されたり没収されたりしかねないことを意味する。

もしオバマが、ビクトリア・ヌーランドや、スーザン・ライスや、サマンサ・パワーを首にして、こうしたネオコン連中を、正気の外交官に置き換えれば、見込みは向上するだろう。そうなれば、ロシア、中国や、イランにも、隷属以外の条件で、アメリカと話し合いをつけられるより良い可能性がもたらされる。

ロシアと中国は、うまく機能していない共産主義経済体制から出現したのだから、欧米を手本と見なすのは当然だ。中国は、すっかり欧米資本主義に夢中になっているように見える。ロシアは恐らく、それほどではないが、この両国の経済学者連中は、欧米のネオリベラル経済学者と同じで、つまり彼等は気がつかないまま、欧米の金融帝国主義の召し使いになっている。自分達は経済学に忠実であると誤解しながら、彼等はワシントンの覇権に忠実なのだ。

クリントン政権から始まった規制緩和で、欧米資本主義は、社会的に機能不全に陥った。アメリカでも、西欧到るところでも、資本主義は、もはや人々の為には機能していない。資本主義は、資本所有者と、経営者連中以外の誰の為にもならない。

アメリカの所得不平等が、今や、1920年代の“泥棒男爵”時代と同等、あるいはそれ以下である理由はこれだ。資本主義を、機能する経済体制にしていた1930年代の規制は、撤廃されてしまった。現在、欧米世界において、資本主義は略奪の仕組みだ。資本主義は、労働を略奪するのみならず、資本主義は、EUによって、ギリシャ国有財産を、外国の買い手に売却を強いられているギリシャ等、あらゆる国々を略奪する。

プーチンとラブロフは、再度“アメリカのパートナー諸国”に言及する前に、ギリシャに対し、EUに善意が欠けていたことをよく考えるべきだろう。EU加盟国そのものが略奪され、同国人達によって、酷い目にあわされるのであれば、ロシアや、中国やイランが、一体どうしてよりましな扱いを期待できるだろう? もし欧米がギリシャに好意を持っていないのであれば、ロシアに対する欧米の善意など一体どこにあるだろう?

ギリシャ国民が、ヨーロッパのパートナー諸国の善意を信じ、1パーセントの不正直さを見くびっていた為に、国民投票で得た支持にもかかわらず、ギリシャ政府は、EUへの屈伏を強いられた。ギリシャ政府は、同胞EU加盟各国政府の容赦ない態度を予期していなかった。ギリシャ政府は実際、ギリシャの債務状態と経済に関するギリシャ専門家の分析は、交渉で大きな重みを持つだろうと考えていた。この期待から、ギリシャ政府には代替策がなかったのだ。ギリシャ政府は、ユーロを離脱する方法や、ユーロから独立した通貨制度や、金融制度を導入する方法を考えていなかった。離脱する為の準備がなかったので、ギリシャ政府には、EUの要求以外の選択肢がなかったのだ。

ギリシャの財政主権終焉が、イタリア、スペインや、ポルトガル、そして最終的には、フランスとドイツを待ち受けている。元欧州中央銀行総裁のジャン=クロード・トリシェが言った通り、公的債務危機は、ヨーロッパも“独立国家という厳格な概念”を越えるべき頃合いであることを示唆している。ヨーロッパ集権化の次のステップは、政治的集権化だ。ギリシャ債務危機は、EU加盟国となることは、その国か主権を失うことを意味するという原則を確立する為に利用されているのだ。

欧米の経済マスコミで広まっている、ギリシャ国民に解決策が与えられたという考えは、ばかげている。何一つ解決していない。ギリシャ政府が屈伏させられた条件は、債務を一層支払い困難にする。近いうちに、問題は再燃するだろう。1936年に、ジョン・メイナード・ケインズが明らかにした通り、そして経済学者なら全員知っている通り、年金や、雇用、賃金や社会福祉を削減して、消費者所得を押し下げれば、消費需要も、投資需要も低減し、GDPも減少し、大規模財政赤字をもたらす結果となり、借り入れで補わねばならなくなる。公共財産を外国人に売れば、収入の流れは、ギリシャ経済の外部、外国へと変わってしまう。

21世紀に、規制されないむき出しの資本主義では、欧米のどこにおいても経済成長を実現できないことが証明された。結果的に、世帯平均所得は低下しつつある。政府は、この低下を、インフレを過小評価し、職が見つけられずに、職探しをあきらめた、無職の求職意欲喪失労働者を勘定に入れないことで隠蔽しているのだ。求職意欲喪失労働者を勘定に入れないことで、アメリカは、5.2パーセント失業率という報告ができている。求職意欲喪失労働者を数に加えると、失業率は、23.1パーセントになる。23パーセントもの失業率は、景気回復とは何の関係もない。

欧米で使われている言葉自体さえ欺まん的だ。ギリシャ“緊急救済”は、ギリシャを救済するわけではない。緊急救済は、ギリシャ債務保有者を救済する。こうした保有者の多くは、元々のギリシャ債権者ではない。“緊急救済”がしているのは、ギリシャ債務に賭けた、ニューヨークのヘッジ・ファンドに返済させることだ。緊急救済の資金は、ギリシャには入らず、債務が支払われることを予想して投機した連中の手に入る。ニュース報道によれば、ECBによる量的緩和が、融資をして経営難に陥っている銀行からギリシャ債務を購入するのに利用されており、債務問題は、もはや債権者問題ではなくなった。

中国は、アメリカに投資することのリスクに気付いていない様に見える。中国のニュー・リッチ連中は、ワシントンが日本と戦争していた時代、収容所に追いやられた日系アメリカ人の経験を忘れて、カリフォルニア州で、住宅地を買い占めている。中国企業は、アメリカ企業や、アメリカの鉱床を購入している。こうした買収によって、中国は、外交政策の違いを巡る脅迫の影響を受けやすくなってしまう。

欧米で喧伝されている“グローバリズム”は、ワシントンの単独覇権主義と矛盾する。欧米体制内に資産を保有するどの国も、ワシントンと食い違う政策を実施することができなくなる。フランスの銀行は、代替策が、アメリカ合州国における事業の閉鎖なので、融資手続きに対するワシントンの命令に従わなかったかどで 90億ドルの罰金を支払った。フランス政府は、フランスの銀行がワシントンによって略奪されるのを、守ることができなかった。

これは、グローバリズムと、単独覇権主義のアメリカとの明確な矛盾が看過されたままでいる現代の無頓着さの証明だ。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTThe Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/07/17/greeces-lesson-russia-paul-craig-roberts/

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日本にとっての、ギリシャの教訓。

大本営広報の報道管制共謀の中、TPPがひたひたと進行しつつある。説明不足、憲法違反の酷さ、戦争法案どころではない。

少なくとも、宗主国の議員ですら、許可を得て、TPP草稿文書を見ても、その内容を人に語れば処罰される。属国の議員は、内容を見ることさえできない。それで、可決される。理不尽も甚だしい。

素晴らしい内容の法律であれば、隠す必要は皆無。途方もない反民主的なデタラメ略奪条約だから隠すのだ。

たまにもれでる米の輸入量交渉についても、一方的な敗北でしかあるまい。

世界最大・最悪のテロ略奪宗主国と、世界最大の属国が交渉して、勝てるわけがない。服従する官僚・政治家・学者・労組幹部・洗脳機関員しか生き残れない仕組みが70年の占領で完成している。

ギリシャ国民と同じような、いやそれ以上の?真っ暗な将来が日本の庶民を待ち受けている。「知らぬが仏」ならぬ「知らぬはお陀仏」。

施 光恒著『英語化は愚民化』(集英社新書)を読んでいる。
文部破壊省の教育政策、とりわけ英語政策のでたらめさ、驚くべきもの。

そこで、多くのまともな英語学者・教師の方々が多数の反論を書いておられる。
最近では永井忠孝著『英語の害毒』(新潮新書)を読んだばかり。

『英語の害毒』藤永茂氏の『アメリカ・インデアン悲史』を思い出しながら拝読した。
『英語の害毒』では、インデアンではなく、エスキモーの人々が、エスキモー語を捨てて、英語を受け入れた後の悲惨な様子が書かれている。
インデアンや、エスキモーは人ごとであれば、それまでのこと、かも知れない。
決してそういう甘い話ではすまない。
今、同じことが、日本でおこされようとしている。

ということで、とうとう政治学者が『英語化は愚民化』という本を書かれたのだろう。
『英語の害毒』でも、TPPに触れられていた。

『新世紀のビッグブラザーへ』に『英語化は愚民化』の詳しい書評がある。
英語化は愚民化 日本の国力が地に落ちる

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            「発展途上国」の定義と国籍喪失化について       
 
  2年前であったか,インドネシアを訪れ,たまたま私立小学校を見学させていた。そこでは1册の英語の教科書を2人が使って勉強していた。そうして大きくなった大学生と英会話で世界の情勢,日本の事などを話し合ったことがある。ある知識人は,500年に亘るオランダ支配を問題にしていた。
  他方,マレ-シア国では,2002年に英語を必修科目から外した。折しも日本では『ゆとり教育』がはじまり,学力低下が世界的に拡がっていた時期である。しかし2014年の11月,日本で小保方問題で揺れる頃,マレ-シア教育省は理数科目及び英語を再び必修とした。

  一方,マハティ-ル元首相は,2020年までの「先進国入り」を目指したが,途中で辞職し,現在のナジブ首相に代わった。しかしマハティ-ル博士は現在,マレ-シア国が先進国の仲間入りが難しいと予測し,TPP条約に参加しないことを主張されている。なぜならマ博士が言うように,イスラム教,ブミプトラ制度を擁するマレ-シアがTPP合意と共存できないからである。
  ところで,インドネシア語もマレ-語もその祖先はアラビア語であり,両国の言語に殆ど差が無いらしい。例えば『独立』は「ムルデカ」である。他方,マレ-人の6割が高等教育を受けていない上に,大学生の約8割が女子学生だと,マ博士は嘆く。

  以上がインドネシア,マレ-シアに関する小生の貧弱な知識だが,三橋貴明氏の『高等教育を母国語で実施できない国のことを「発展途上国」と呼ぶのです』を読んで違和感を覚えた。もちろん三橋氏の趣旨には賛成である。しかし,高等教育を母国語でできない国は永遠に「先進国」入りができない,「発展途上国」から抜け出せない,ということになるという説には賛成できない。
  
  外国語教育を考える場合,スイスの4カ国語,ベルギ-のフランドル語,ケベックのフランス語,そしてインドの250にも及ぶと言われる地方語を考える必要がある。また文化を考えるとき,火薬や紙を発明し高度な文明を持つ中国文化と近代科学を発明した西洋文化とを考え合わせる必要があろう。おそらく前者の中国は古来,外国語を土着化する必要もなく,自国の言葉,母国語で高等教育が可能であったろう。しかし近代科学を生み出せなかった。それはなぜか。

  他方,日本は4世紀に漢字を輸入し,明治革命で西洋文明を取り入れた。和魂洋才。そこで西洋と香港,神戸を比較して,「日本は雑種文化でやっていくほかにテはないだろう」と主張したのが加藤周一である。雑種文化論についてはここでは触れないが,もはや日本が「発展途上国」であるという人は殆どいないだろう。しかし,中国はどうだろうか。マレ-シアはどうか。
  マハティ-ル博士は,自国の理数教育並びに英語教育の大切さを主張して,聖書コ-ランと同様,重要視することを訴えた。その訴えが実現した(今年の大学生で英語を全く解さない学生も入学してきたと,知り合いの物知りが嘆いていた)が,マレ-シア国は英語を止めて自国語で2020年,あるいは2040年までに「先進国」入りが可能なのであろうか。例えば,世界銀行の筆頭副理事は,マレ-シアが40年までに先進国入り可能だとマレ-シアの大臣達を持ち上げているが。

  思うに,近代文明,近代科学の成立は,C.ベルナ-ルの『実験医学序説』から始まったのではないだろうか(加藤周一,実験医学序説の事,言葉と人間,朝日新聞)。この本はボンクラ頭には難しいのだが,演繹的思考と帰納的思考の交わるところ,西洋においてのみ近代科学が成立したと,小生は考える。なぜなら,文法規則を少なくすれば,別の条件が増えるから言語学習が困難になる。別の条件を少なくしようとすれば,文法規則は複雑になりこれまた科学を記述するのに不便であるからである(科学は演繹思考を抜きにして語ることはできない)。
  アルコ-ルと錬金術を発明したアラビア語も,中国語もおそらく科学を記述するのに不便であったがゆえに,近代科学は発達しなかったと推測する。日本語の場合は,漢字と漢語が西洋語を日本語に取り入れることを可能にした。その結果,紆余曲折はあれ,高度経済成長を可能にしたと言える。すなわち,三橋氏の主張する『翻訳と土着化』によって日本経済は発展したとも言える。

  しかしながらインドの場合は,『翻訳と土着化』という仮説を当てはめることができるのか,どうか。BRICsに加盟したインドは,まだ先進国とは言えない。しかし高等教育を終えた中産階級が増大し,その多くは英語を流暢に話す。おそらくインドが先進国入りするまでにあと30年を要するだろう。しかし,公用語である英語を捨てて自国語ヒンディ-語で成長することはできない。それは西洋や日本とは言語・文化条件が異なることを意味し,英語を自家薬籠として経済発展するしか道はないことをも意味する。

  インドの例は,南アにも当てはまるだろう。しかしマレ-シアには当てはまらないだろう。ところが周知のように,マレ-シアはインドと同じく旧英国領であった。バスの運転手でさえちょっとした英語を話す。しかし込み入った議論を英語ですることはできない。また例えば,大学で工業化学を習った学生が卒業後数年して,英語を忘れることも珍しくない。さらに外国人が同席する場合は英語を使うが,仲間内では中国語やマレ-語で会話するのが一般的である。

  マレ-シアは「発展途上国」ではないが,定義にもよるが「先進国」でもないと考える。その関係は30年たっても,変わらないだろう。なぜなら,マレ-言語体系が西洋語の翻訳・土着化に向いていないからである。言い換えれば,マレ-語が科学あるいは現代技術を記述するのに不十分であり,インド型にならない限り,天然ガスや石油,低賃金を武器にしたマレ-経済では発展しない。ゆえにマ博士は,英語教育の重要性をムスリム湾岸諸国会議でも訴えたのである(TPPやTTIPのISD条項は,イスラム教と殆ど対立するから,常にムスリム国と対立するはずであり,ブルネイはそのことに気が付いていない)。

  一方,日本は三橋氏の定義通り,翻訳に成功して経済大国になり先進国入りを果たした。しかし今,その日本語を捨てれば,英語で良い成績を上げ,官庁に入るには裕福な家庭でないとなかなかできない。よって貧富の差はますます拡大するだろう。なぜなら,日本には英米語会話の伝統がないからである(女優菊川怜氏は高校時代,受験課目ごとに家庭教師がいたが,多くの家庭はそれほど裕福ではあるまい)。

  日本国憲法は70歳を迎え伝統の一部になりつつあるが,解釈改憲で骨抜きにされてしまったから伝統でなくなった感がある。他方,鬼畜米英で一端英米語教育を廃した日本で,英米語会話が日本語と共存して伝統になるためには憲法の歴史より長い年月が必要であろう。また日本語の骨格をつくる土着の,4世紀以来の古典や近代文学を深く学ばないで高等教育を受けてもそれは,日本人でも国際人でもなくて,「国籍不明人」となってしまう。英語化は愚民化であると同時に,「国籍喪失化」でもある。ゆえに殊に日本の場合,教育段階での英米語強制に反対する。


追記:「国籍不明人」の語は,藤原正彦お茶の水女子大教授の造語である。藤原氏はフランドルの友人家族の言語教育対立を紹介している。

追記2:日本の在外公館は,スパイ活動,情報収集,日本人保護などの活動を行っている。しかし月一度の行事として日本文化の紹介を行っている。例えば2年前であったろうか,テロリストに襲われ日本人が亡くなったアルジェリアで,日本の大使館は一団を招いて伝統芸能である「文楽」を紹介していた。


日本は、アメリカを支配する金融資本家たちの策謀、世界戦略の下請けになってはならないでしょう。
安倍政権のあり方に不安を覚えます・・・。ヤレヤレ ┐(´(エ)`)┌クマッタネ

                   若い人へ

 遠い海辺の町にも電波は届く。そこで見たのが,安保法制関連法(1+10)に反対するデモの映像。確かに米英語のプラカ-ドが目立つ。日本人ならなぜ日本語で書かないのか。
 かつてEUの外相会議でフランス外相が英語で挨拶を始めたのに怒って同席していたミッテルラン大統領は席を蹴った。加藤周一も外人にいきなり英語で語りかける日本人を嫌っていた。

 ところで,都知事選において細川氏や小泉氏が登場したとき,小生は吉永小百合氏を宇都宮陣営に取り込むことを思いついた。そして『青い山脈』を唱うことを提案した。なぜ提案したか。それは若者は投票所にあまり行かない,若者の低投票率を聞いていたからである。ならば団塊の世代を含めたお年寄りには戦後の『赤いりんご』や吉永氏に関係の深い『青い山脈』が受けるのではないだろうかと,考えて提案したのである。
  しかし小生の批判するところではないが,宇都宮氏はご自身の政策を訴えることに力点を置き,選挙戦を終えられた。吉永氏は細川陣営を応援した。結果は舛添氏の勝利となったが,もし宇都宮陣営が街頭演説の締めくくりに,歌声喫茶で一番人気の『青い山脈』を唱ったら,結果はどうなっただろうか。それは小生にも分からない。しかし,訴える相手は,投票率が高い高齢者であり,創価学会婦人部を意味していた。

  今,プラカ-ドに米英語が多かったことを認めざるを得ない。しかしその訴える相手は,1次方程式さえ解けない安倍首相や高学歴の官僚たちではなかったろう。低投票率の若者ではなかったのか。もちろんそのことは,若者が英米文化にどっぷり浸かっていることを否定しない(スマホ文化?)。
  国民投票権が18歳に引き下げられた。学力低下の「ゆとり教育」の弊害が残っている現状で,小生は引き下げに反対するが,この程度の横文字≒米英語は「英語を習っても何にもならない」という大人や,英語習いたての若者には受け入れやすかったのではないのか。つまり,デモンストレ-ションまたはアピ-ルの標的が「若者」であったとするなら,その効果は計り知れないものがあったと言うべきであろう。しかしそれだけではない。
 
  TV映像撮影者の意図がどこにあったか知らない。しかし,日本語文字のプラカ-ドもたくさんあったに違いない。しかるになぜ,横文字のそれを大きく映し出したのか。SNS上でも統一スロ-ガンをつくれと提案するブログが散見された。
  日露戦争で勝って喜んだ東京市民。真珠湾攻撃成功を祝った東京市民。彼らがもっていたのは,提灯や太鼓であった。今また,アメリカの属国となった日本で,英米文がプラカ-ドに載ったことは,日本史上,画期的なことではないだろうか。

  もちろん画期的なことは,必ずしも有り難いことではないが,70年前に No More Hiroshima があり,近くは Je suis Charlie. があった。後者は歴としたフランス語である。そこで I’m not Abe.が出て来る。しかし Je ne suis pas Abe.は出てこない。その意味でフランス文より英米文が日本国に浸透していると言える。しかしこれ以上の,Be動詞ではない一般動詞が,Go home!は除いて,日本国にたびたび登場するようになったら,それは事件である。

  加藤は生前,明治の井上馨卿の「英語を習う者は英風を慕い,仏語を習う者は仏流を好む」という言葉をしばしば引用して,米国一辺倒,仏国一辺倒を批判していた。そこから対米従属,米国のポチ,ヌイ(ロナルド.P.ド-ア氏の造語),イヌまで遠くない。
  しかし問題は,日本語を捨てて英語を公用語にしたら,何が起こるかということである。そういうことを井上卿は,言語の専門家達に尋ねた。「英語公用語化によって貧富の格差がますます広がるだろう」というのが,彼らの答えであった(加藤周一,再び英語教育について,夕陽妄語,朝日新聞)。
  経済のグローバル化,新自由主義,TPPによって1%の富裕層,99%の貧困層が生まれ,生まれようとしている現在,日本国初等教育における英語教育導入は,さらに貧困化を押し進めるだろうと,推測する。

追記1: 東京オリンピックで進取の気性に溢れる奥様達は複数の外国語を俄に習いだしたという。その後どうなったのか。おそらく1年もしないうちに忘れたのではないだろうか。他方で,中国人の爆買いが日本経済を救っている。しかるに中国語はどの程度,習得されているのであろうか。
  おそらくラオックスなどの免税店,ホテルの従業員は習得に熱心であろう。しかし集団安保法制の狙いが中国だとなった途端,中国からの旅行者は激減するかもしれない(その結果,中国語話者は失業?)。

追記2: ヒロシマの「二度と過ちは繰り返しません」の主語は何であるか。特に,英米語の主語が知りたい。一般に主語が明白な場合,日本語は主語を省略することが多い。この場合,英文でも日本文でも主語は明記させる必要があるだろう。
  投票率が低い,政治的無関心層が多い日本国にあって,英語教育の前に,政治的共通知識の教育が必要だと思う。

追記3: 古代ロ-マの政治家大カト-を Cato the Elder というのを最近知った。アレキサンダ- ザ グレイト。ピピン ザ ショ-という名前もある。そこで推測するのだが,「ポチ」というのはフランス語の petit (プチ)に由来するのではないだろうか。つまり,アメリカの小アメリカ,51番目の州,日本。 

TPPにより、日本は完全にアメリカの51番目の州になり、日本語は消滅すると言われるのは、ほんとうなのですね。「英語化は愚民化」などお勧めの本をぜひ読みたいす。ご指摘の点で思い出すことがあります。先日参加したSEALDsの集会での彼らのプラカードのことです。若い人たちも手作りのプラカードのほとんどが英語です。参加者全員が日本人なのに・・・。「War is over.」「War is not answer.」など・・・。(peaceのスペルが間違っているのもあり。)英語文化(アメリカ文化)に強く影響されているのだなあという感想を持ちました。

昨日の集会(大阪)で「安倍政権はアメリカの傀儡。安保破棄」という手作りプラカード発見。思わず駆け寄り握手していただきました。私自身のは「安倍はアメリカのポチ」でした。

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