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2015年7月 5日 (日)

他のNATO加盟諸国を待ち受けるギリシャ危機

Finian CUNNINGHAM | 02.07.2015 | 00:29
Strategic Culture Foundation

ウクライナ紛争と、欧米とロシア間で進行中の挑戦的な対立の注目すべき結果の一つは、いくつかのヨーロッパ諸国で、軍事支出が劇的に急増したことだ。

しかし、ヨーロッパ中の経済の未曾有の軍事化は、こうした国々にとって、莫大な負債というギリシャ風の悲惨な未来の予兆だ。バルト諸国、ポーランド、スカンジナビア諸国を含む国々は、今後何年間もの軍事浪費により、将来後遺症を患う危険性が極めて高い。

この結果こそが、一体なぜワシントンと、その最も親密なNATO同盟諸国が、ロシアとの無謀な地政学的対立に見えるものに乗り出した理由の説明なのだ。主にワシントンにより、ロシアの脅威とされるものによって、かき立てられる緊張は、更に、ペンタゴンとその軍産複合体にとって、もうかる兵器販売へとつながる。

最近、NATO事務総長、イェンス・ストルテンベルグは、アメリカが率いる軍事同盟は“ロシアとの軍拡競争に引きずりこまれることはない”と断言した。だがまさに、それこそが少なくとも東ヨーロッパとスカンジナビア加盟諸国や、NATOパートナーにとって進行中の事態に思える。

ワシントンが最も強烈に明確に語っている、紛争の狙いは、NATOとロシア間の全面的な戦争を引き起こす様なものではない。元駐ロシア・アメリカ大使、マイケル・マクフォールは、先週末“ロシアを侵略するのは阿呆だけだ”と述べた。この告白は、実際、ワシントンの計算の本音かもしれない。ロシアに対して続いている、アメリカが率いる攻撃的な軍事姿勢にもかかわらず、本当の狙いは、実際は、モスクワとの戦争というもくろみではなく、むしろ、上記NATO加盟諸国の軍事支出を増加させる為、ロシアの脅威とされるもので、恐怖と不安の環境を醸成することだ。

ヨーロッパ全体の軍事支出に関する最新の報告書で、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)はこう書いている。“ウクライナの政治的・軍事的危機で、ヨーロッパ諸国の多くが、脅威の認識と軍事戦略の大規模な再評価をするに至った。脅威が高まっているという認識が、ヨーロッパにおける、軍事支出増大の要求と、特に、国内総生産(GDP)の少なくとも、2パーセントを軍に使うというNATO加盟諸国の新たな確約”をもたらした。

前年と比較して、2015年の軍事予算を増やした国々には、チェコ共和国(+3.7%)、エストニア(+7.3%)、ラトビア(+15%)、リトアニア(+50%)、ノルウェー(+5.6%)、ポーランド(+20%)、ルーマニア(+4.9%)、スロバキア共和国(+7%)と、NATO非加盟国スウェーデン(+5.3%)がある。

重要なことに、大半の西ヨーロッパNATO加盟諸国は、軍事支出を、削減あるいは凍結した。そうした国々には、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、ポルトガル、デンマークとスペインがある。

軍事支出を増やした国々では、2022年まで、今後数年間、約350億ドルで、ポーランドが最大の財政支出だ。比較すると、リトアニア、ラトビアとエストニアのバルト諸国は、ドルの絶対額にすれば、軍事支出はずっと少ない。だが、ここで重要なのは、ずっと小さな経済に対する、相対的な規模だ。

SIPRIはこう書いている。“中期、長期的に、一部の加盟諸国で必要とされている、80パーセント、あるいはそれ以上の軍事支出増加が、2パーセントの目標に届くというのは、平時、NATO加盟諸国においては未曾有のことだ。1950-53年の朝鮮戦争終結以来、ほとんど全てのNATO加盟諸国のGDPに対する軍事予算比率の傾向は、ソ連との緊張が高まっていた時期でさえ、減少、あるいは横ばい状態だった。”

世界最大の兵器輸出国としてのアメリカ合州国は、ミサイル・システム、戦車、戦艦や戦闘機の販売で、ヨーロッパの拡大する予算と市場から、決定的に恩恵を得る立場にある。ワシントンが支配する国際通貨基金(IMF)に対するオマケは、もし軍事的に金遣いの荒い国々の債務問題が起きれば、連中の将来の経済的強要で、欧米金融資本の利益のための、緊縮政策主導の経済没収も可能になるだろうことだ。この過程は、既にギリシャに降り懸かったものとよく似ている。

ギリシャ債務危機にかかわる欧米マスコミ報道洪水の中、一つの重要な側面が、奇妙にも隠されたままだ。つまり、3200億ドルというギリシャ債務負担は、何十年もの法外な軍国主義によるところが大きいという事実だ。少なくとも、ギリシャ債務累積の半分、1500億ドル以上が、軍事支出によるものだと推計する向きもある。

2010年、現在の債務危機が起きる前、他の多くのヨーロッパ諸国は約2パーセントを配分していたが、ギリシャは、GDPの約7パーセントを軍に費やしていた。経済崩壊から五年後の今でさえ、ギリシャは依然、欧州連合で最大の軍事支出 - GDPの2.2パーセント。NATO軍事同盟の28ヶ国中で、ギリシャは、経済生産の約3.8パーセントを軍に割り当てているアメリカ合州国の様な極端な浪費国に次いで、第二位だ。

アレクシス・ツィプラスのギリシャ政権と、EU、欧州中央銀行とIMFの機関債権者達は、ギリシャの国家財政を健全な状態に戻す為の明々白々な選択肢を、故意に無視した - つまり、ギリシャ軍の大規模縮小だ。

もしギリシャが、イタリア、ベルギー、スペインや、ドイツの様に、GDPの約1パーセントにまで、軍事支出を半減することができれば、財政で、IMFの差し当たっての要求に合致する20億ドルを生み出すことが可能であり、EU/ECB/IMFトロイカに要求されている極めて厳しい緊縮政策を避ける助けになる。

しかし、債権者達のトロイカが、この選択肢を拒否するには当然の理由がある。長年にわたるギリシャの軍事浪費は、ドイツ、フランスと、アメリカの兵器産業にとってのドル箱だった。SIPRIの数値によれば、1500億ドルのギリシャ軍事支出のうち、2010年までの間、購買の25パーセント は、ドイツから、13パーセントは、フランスから、そして、42パーセントは、アメリカからのものだ。

ギリシャ最大の機関債権者が、総計1000億ドルに達する、ドイツ政府とフランス政府なのは偶然ではない。ギリシャに貸した資本の多くは、レオパルト戦車やミラージュ戦闘機やアメリカのF-16等、ドイツやフランスなどの兵器システムに費やされた。

2012年4月という昔に、ガーディアンのインタビュー記事で、ギリシャ国会議員デミトリス・パパディモウリスは、“[2010年に]経済危機が始まった後、ドイツとフランスは、我々に、医療部門等で大幅削減を強いながら、儲かる兵器売買をまとめようとしていた”ベルリンとパリを“偽善”と非難した。

こうして、ベルリンとパリは、そうと知りながら、自国軍需産業に対する主要な市場をもたらすべく使われていた、ギリシャ債務を膨張させたのだ。この金融の回転ドアは、収賄によっても回転している。2013年10月、以前のPASOK政府時代の元防衛大臣アキス・ツォハヅォポウロスは、7500万ドルと、何十人もの他のアテネ高官が関わった賄賂事件における役割で、20年の懲役にされた。ドイツ企業フェロスタールも、不正な武器商売での金儲け、何よりも約30億ドルの四隻の214級潜水艦のギリシャへの販売を確実に手に入れたという役割に対し、1億5000万ドルを支払わされた。

このギリシャ・シナリオでの好都合なお化けは、1975年にキプロスを侵略し、ギリシャにとって永続的な安全保障上の脅威として描き出されていたトルコだ。ワシントンとベルリンとパリは、アテネの腐敗した政治家連中と共に、融資と軍事物資購入の回転ドアを回す為、トルコの脅威を誇張した。このシナリオの悲しい結末が、IMFとEU大国、主にベルリンとパリが率いるギリシャの経済的略奪となって跳ね返っている、現在のギリシャ債務危機なのだ。

この現代ギリシャの悲劇の、更なるもう一つの皮肉は、ギリシャの大規模軍事化を引き起こした、ワシントンや、そのヨーロッパ同盟諸国が強調したトルコの脅威とされるものは、建前上、NATO加盟国のお仲間、トルコのおかげだったことだ。この不安定な年月の間、集団的自衛権を規定する(NATO)北大西洋条約5条に、一体何がおきたのだろう?

いにしえの冷戦の既成概念で、ロシアを、東ヨーロッパやスカンジナビアに対する安全保障上の脅威として提示するのは、ワシントンや、そのNATO同盟諸国にとって、どれほど簡単だろう?

東ヨーロッパ諸国やスカンジナビアによる軍事支出の増大からして、この策略は成功しているように見える。アメリカ軍産複合体と、ドイツやフランスやイギリスの複合体も“ロシアの妖怪”で、正気をなくすほど、まんまと怖がらさせられる、弱体なNATO加盟諸国から、今後何年にもわたり、何十億ドルも、がっぽり稼ぐ立場にある。

だが、ギリシャにおける軍国主義の歴史を考えれば、ギリシャ風債務危機が、バルト諸国、ポーランドや、スカンジナビア諸国を待ち受けている。

アメリカが率いるNATO防衛? むしろ、アメリカが率いるNATO防衛取り立てだ。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/07/02/greek-crisis-awaits-other-nato-partners.html
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ごもっともな指摘。
筆者、残念ながら、名作浪曲『石松三十石船道中』はご存じでないようだ。

「ギリシャが軍備の為悲惨となり、ヨーロッパ弱小諸国も同じ運命にあわされかねない」のは本当だろう。

「そうだってねえ。宗主国にゃいい子分がいるかい」
「いるかいどころの話じゃないよ。百人以上子分がいる。その中でも代貸元をつとめて他人に親分兄貴と言われるような人が28人。これをとなえて清水の二十八人衆。この二十八人衆のなかに次郎長ぐらい偉いのが、まだ五、六人いるからねえ」

嬉しくなった石松「で、五、六人とは一体誰でぇ」。

「先進属国傀儡で強いと言えば、一に大政、二に小政、三には大瀬半五郎、四に増川の仙右衛門・・・」。
なかなか石松の名が出てこない。

石松「お前ェ、あんまり詳しくねえな。宗主国の子分で肝心なのを一人忘れてやしませんかってんだ。この船が伏見に着くまででいいから、胸に手ェあてて良~く考えてくれ。もっと強いのがいるでしょが。特別強いのがいるんだよ。お前さんね、何事も心配しねぇで気を落ち着けて考えてくれ。もう一人いるんだよぉ」

「別に心配なんかしてやいねぇやい。どう考えたって誰に言わせたって宗主国一家で一番忠実と言やぁ、大政に小政、大瀬半五郎、遠州島国のに・・・」

国家丸ごと暗証番号なしATMをつとめ、ギリシャと比較にならない膨大な金額の献金を続け、比較にならない兵器購入をさせられ、比較にならない思いやり予算を支払い、広大な基地を受け入れ、さらに拡張し、世界のどこへでも、宗主国の侵略戦争についてゆく人々をお忘れだ。

下記翻訳記事にあるゲーリングの考え方、いつでも、どこでも、機能するのだろう。

ハワード・ジン「歴史の効用とテロリズムに対する戦争」を語る

ゲーリングは言っています。「もちろん国民は戦争を望んではいない。なぜ畑にいる貧しいまぬけが、自分の命を戦争にさらそうなどと望むだろう?だが、結局、政策を決定するのは国家指導者だ。国民はいつでも指導者達の命令に従わせることができる。連中に、我々は攻撃されているのだと言って、平和主義者は愛国心に欠けると非難するだけで良いのだ。これはどこの国でも同様に機能する。」

ドイツ語原文は下記の通り、らしい。ジンの引用、全文ではないようだ。裁判で述べた言葉ではなく、医師?に語った言葉。

„Nun, natürlich, das Volk will keinen Krieg. Warum sollte auch
irgendein armer Landarbeiter im Krieg sein Leben aufs Spiel setzen
wollen, wenn das Beste ist, was er dabei herausholen kann, daß er mit
heilen Knochen zurückkommt? Natürlich, das einfache Volk will keinen
Krieg; weder in Rußland, noch in England, noch in Amerika, und ebenso wenig in Deutschland. Das ist klar.

Aber schließlich sind es die Führer eines Landes, die die Politik
bestimmen, und es ist immer leicht, das Volk zum Mitmachen zu bringen,
ob es sich nun um eine Demokratie, eine faschistische Diktatur, um ein
Parlament oder eine kommunistische Diktatur handelt. (…)

Das Volk kann mit oder ohne Stimmrecht immer dazu gebracht werden,
den Befehlen der Führer zu folgen. Das ist ganz einfach. Man braucht
nichts zu tun, als dem Volk zu sagen, es würde angegriffen, und den
Pazifisten ihren Mangel an Patriotismus vorzuwerfen und zu behaupten,
sie brächten das Land in Gefahr. Diese Methode funktioniert in jedem
Land.“

(Hermann Göring, 18. April 1946, Nürnberg, abends in seiner Zelle, „achselzuckend“)

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コメント

  開発費用が莫大なオスプレイにせよ,ロシアに渡されず示談となった,フランスの陸揚艦ミストラルにせよ,軍事産業に従事する研究者や労働者の賃金をどう確保するか。それが問題だ。
  おそらく軍事的緊張を造りだし,兵器を売り込む。買う方も賄賂を貰い,暴力団宜しくピンハネする。暴対法はむしろ防衛庁や外務省幹部に適用されるべきものと,考える。もちろん政治家や独立行政法人理事達にも。忘れてはいけません。
 しかしこのままでいいのか,だめなのか。

終戦時、小学校高学年で、戦争を経験しているにもかかわらず、テレビ等マスゴミの影響なのか、中国脅威論を信じ、それにまつわる本を、渡されたが、読む気には、全くならず。どうして、こういう説を、信じる人は、戦争なり、民営化を行う事業なり、こういったことに、関わる企業の利益を考えることをしないのか、不思議でならん。例えば、防弾仕様の自動車が販売されているメーカーであれば、銃などの武器を作っていなければ、耐久テストできないし、装甲板の厚さなども決められなし、もし、その車で、死亡事故を起こせば製造責任を問われる、とは、考えないのには、驚き。こういったことを信じている年寄りが多いから、作家、中西礼の昔放送された、「兄さん、頼むから死んでくれ」 じゃないけど、社会保障費の配分で「じいいさん、頼むから死んでくれ」 と言われるのも納得できる。そういえば、週刊現代5月30日号のジャーナリストの目第252回、堤未果氏の担当の回で、タイトル「本当に患者のためか?疑問符がつく国民健康保険法の改正」で 「患者申出療養制度」の問題点について書かれていた。その内容は:患者は安全審査の結果が出る前段階の説明を受け、治験ではなく審査会でスピード承認された新薬を自己負担で使うことになる。では、有害事象が生じた場合の責任は?「治験」であれば、製薬メーカー側が入る保険や政府保障が担保されている。「評価療養」では保険に加入している医療機関は、半数。しかし「患者申出療養制度」に関しては、肝心の損害賠償について明確に決まっていない。と記されていた。これからは若者はTPPと戦争で、その他の階層は、TPPと貧困で、富裕層の年寄りは、TPPで供給される食糧と、子宮頸がんワクチン同様、薬害で命を落とす時代になるのかな。頼むから、「じいいさん、頼むから死んでくれ」と言われる声が大きくなる前に、気づいてくれよ。

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