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2015年7月10日 (金)

ギリシャとEUの状況

Paul Craig Roberts
2015年7月7日

私には、ギリシャに出口は無いように思える。

ギリシャ政府の姿勢が圧倒的に支持されたギリシャ国民投票が、ギリシャ国民は、ギリシャが強いられてきた長年の緊縮政策が、債務問題をひどく悪化させたという政府の姿勢を支持していることをトロイカ(欧州委員会、欧州中央銀行、IMF、もちろん黒幕はワシントンだが)に語った。ギリシャ政府は、緊縮策を、雇用、GDPと、税収入の増加によって、債務の負荷を軽減するような改革に変えようとつとめてきた。

ギリシャ国民投票の結果に対するEU政治家大半の最初の反応は、ギリシャがヨーロッパを離脱することに対する空威張りだった。ワシントンは、こういうことが起きるとは予期しておらず、ギリシャが受け入れることができて、ギリシャを、EU内に止まらせるような条件を、ギリシャ人に提示するよう、傀儡諸国に命じたのだ。

ワシントンには、一ドルに、100セント支払って貰える取り引きで、ひと儲けする狙いで、割引された国債を購入したアメリカ金融機関の利益よりも重要な関心事がある。ワシントンには、ギリシャの債務を、ギリシャから国有財産を略奪するのに利用しようとしている、ヨーロッパの1パーセントの権益より重要な関心事がある。より上位にあるワシントンの関心は、EUの統合と、それゆえ、ロシアとの紛争を起こすためのワシントン仕組み、NATOの維持だ。

もし頑固なドイツが、ギリシャを、EUから去らせ、ギリシャがロシアと金融支援を頼るようになれば、イタリアやスペインの首脳部も、恐らく最終的には、フランスも同じことを考えるだろう。南ヨーロッパが、ロシアのユーラシア貿易圏のメンバーとなれば、NATOは解体し、アメリカ覇権も、NATOとともに解体することになる。

これは、とうていワシントンは容認できない。

もし、報道が正しければ、ビクトリア・ヌーランドは既にギリシャ首相を訪問し、彼に、EUを離脱することも、ロシアにすり寄ることもゆるさず、さもなくば、大変な結果になる(打倒あるいは暗殺を意味する丁寧な表現)と説明した。実際、ギリシャ首相は、恐らくわざわざ訪問を受けずとも、それは分かっているだろう。

“ギリシャ債務危機”は今や抑えられたというのが私の結論だ。IMFは既に、ギリシャに緊縮政策を押しつけたのは、そもそも間違えだったというIMF報告書を発表して、ギリシャ政府の姿勢を受け入れた。この報告書と、ワシントンの圧力のせいで、欧州委員会と欧州中央銀行は、ギリシャが受け入れられる様な計画を作り上げるよう、ギリシャ政府と協力するだろう。

これで、つまりイタリア、スペインと、ポルトガルも、より寛大な扱いが期待できるのだ。

こうした国々に、国有財産を、私企業の手に引き渡すよう強いる為、緊縮政策を利用するつもりだった略奪者連中が敗者になった。連中が完全に阻止されたと言っているわけではなく、略奪の度合いが低減したに過ぎない。

私が以前書いた通り、ギリシャ“債務危機”は最初から画策されていたものなのだ。欧州中央銀行は、毎月600億ユーロの札を印刷しており、連邦準備金制度理事会が“大き過ぎて潰せない銀行”が抱えていた問題化した不動産担保“証券”を購入したのと同様に、手持ちのギリシャ債務を購入することで、“危機”の間、いつでも、ECBは、あらゆる貸し方銀行の支払い能力を保証することができていたはずなのだ。この簡単な対策は実施されなかった。

画策は、莫大なユーロ投機や、国債や、それとつながるあらゆるものに対するデリバティブの賭けが可能になるので、欧米金融機関にとって利益だった。日曜日のノー投票の様に、次々続く“危機”は、石油や他の商品に対する攻撃の隠れ蓑になった。最新の“危機”のせいにすることで、市場操作を隠しおおせるのだ。

ジョン・パーキンスは、著書『エコノミック・ヒットマン 途上国を食い物にするアメリカ』で、欧米の金融機関が、より弱体な国々に、意図的に貸し出し超過し、そこで、債務の圧力で、各国の富を、往々にして主権も、欧米に渡す様に強いる手口を説明していた。IMFとその緊縮プログラムは略奪の上で、この役割を長らく演じてきたのだ。

ギリシャの帳簿上で、ユーロ債務を低減するのと引き換えに、ギリシャは、水道会社、港や、島々を私企業に手渡すことを余儀なくされた。1パーセントは、前の政権(例えば、潜水艦を購入する資金を借りる為の返済で)を買い取ったのと同様には、現在のギリシャ政府を買い取れず、国民投票が略奪者連中をいらだたせた。

私の著書『The Failure of Laissez Faire Capitalism』、ギリシャ“債務危機”には、二つの別の狙いがあることを説明した。一つは、国家債務を、その国が支払えるレベルに減額するという再編の慣行を止め、その国の国民が、貸し出し超過した債権者達の失敗の責任を負わされるという新たな原則を確立することだ。もはや債権者側の貸借対照表上では、評価減はおこなわれず、逆に、年金、社会福祉や雇用の減少になるのだ。これも略奪の手口だ。

もう一つの狙いは、前欧州中央銀行総裁ジャン=クロード・トリシェが、はっきり述べた通り、財政政策を巡る権限(課税と支出の意思決定)を、国家政府から、ブリュッセルのEUに移譲することで、EU加盟諸国の主権を弱体化させることだ。

ワシントンは、ヨーロッパにおける、政治権力のこの中央集権化を好み、ワシントンには、1パーセントの方が、国民より重要だ。だがなによりも、ワシントンは、自らの権力を優先し、NATOの解体を引き起こしかねない、ギリシャ離脱を防ぐように動いたのだ。

ロシアと中国は、ギリシャのEUからの離脱を支援して、NATO解体を始める好機を逸してしまった。どれほど経費がかかったにせよ、ワシントンが両国に強いる軍事力増強と比べれば、はした金だったろう。ロシアと中国は、ウクライナが、NATO加盟国になるのを、ロシアが到底受け入れられないのと同様、ワシントンも、ギリシャがロシアと協力することを受け入れまいと判断したのかも知れない。

もしギリシャの状況と、これに続く、イタリアとスペインの状況が、ここで、この記事が示唆する方向で解決されることになると、ワシントンがロシアに圧力をかける為の仕組み、NATOは無傷のままとなり、ワシントンが作り出した紛争は継続することを意味する。これは悪いニュースであり、略奪者連中に対するギリシャの勝利のマイナス面だ。

Paul Craig  Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the WestHOW AMERICA WAS LOSTThe Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。

ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/

記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2015/07/07/greece-eu-situation-paul-craig-roberts/
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上海株が大幅下落すると、ニューヨーク証券市場ではシステムがダウン。

興亡の世界史10『オスマン帝国500年の平和』林佳代子著、ようやく半分ほど読んだ。
西アジア史II イラン・トルコ』も積ん読のまま。考えてみると、この本でも「第五章 オスマン帝国の時代」を執筆している方だった。

ギリシャも、バルカン諸国も、エジプトも、シリアも、イラクも、クリミアも、オスマン帝国の一部だった。

ギリシャ独立については、344-346ページで触れられている。一部引用させて頂こう。

19世紀の初頭に勃発したセルビアでの運動に比べ、その20年後に起こったギリシャでの運動をとりまく情況は大きく変化していた。この問題の帰趨を、最終的には、ロシア、イギリス、フランスという、ヨーロッパの大国の利害が決定したからである。

中略

しかし、ここで、従来なかった展開が生じた。ギリシャの自立にロシアが力を貸しロシアの勢力が伸びることを危惧したイギリスとフランスがこれに介入し、1892年、イギリス、フランス、ロシアが当事者抜きでギリシャの自治国化をロンドンで「決定」したことである。

中公新書『物語 近現代ギリシャの歴史 独立戦争からユーロ危機まで』村田奈々子著によれば、ギリシャは存在しなかったし、ギリシャ人もいなかった。
「ギリシャという一定の地理的領域を持つ政治的統一体は、歴史的に存在したことがないのである。」「ギリシャ人は、自らをヘレネス(ギリシャ人)とは呼ぶことはなかった。ロミイ(ローマ人)と意識し、そう自称していた。」

TPPで「牛肉が安くなる」と嬉しそうに解説する電気洗脳箱。
今の様な小規模農業等の完全壊滅や医療制度崩壊には決して触れない。
「水稲農家は打撃をうける」余っている米をなぜ輸入するかと問う農家も映ったが。

一方、テレビ朝日はTPPの医薬品価格高騰、ジェネリック薬品メーカーや、医療への波及を指摘している。ひどい事態になるのを見越して、指摘しておきましたよ、という口実対策だろうか?

宗主国の侵略戦争に引きずりこまれる為の違憲が明白な戦争法案を、絶対に戦争に巻き込まれることはないと、呼吸するように平然とウソをつき、子供だましにもならないたとえ話で逃げきって推進しようとしている連中が、
経済・文化面で、完全な属国化を推進するとんでもない、違憲条約を同時推進している。
戦争法案を素晴らしいと、いう与党が、TPPは、日本のためになるということから判断すれば、戦争法案と同様、とんでもない結果をもたらす、宗主国からの押しつけであるのは明白だろう。連中が言うほど素晴らしければ、なぜ秘密にする必要があるだろう?

孫崎享氏のまぐまぐ記事

国民が圧倒的反対している集団的自衛権の関連法案を何故急いで採択しなければならないか、政府は説明できない。

しかし、この法案は米国に言われて実施するものと思えば、理解は容易である。

として

7月17日週刊朝日は「安保法制は米「外圧文書」のコピペだ!」のタイトルの下、

次のように記述している。

「戦後最長となる95日間の国会会期延長を決めた安倍首相。安保関連法案は7月中にも衆議院で強行採決される見通しだ。自分達もうまく説明できない法案の成立を、なぜそこまで急ぐ必要があるのか。背後に巨大な「外圧」が存在するとしたら。

 安倍政権が成立する直前の2012年8月、今国会で審議されている法案の内容をまるで“予言”したかのような文書が米国によってつくられていた。

 「第3次アーミテージ・ナイ・レポート」

(再掲)2013/02/03 【IWJブログ】CSIS「第3次アーミテージレポート」全文翻訳掲載

日本に出口はない様に思える。

素人の理解が、みるみる内に現実になるのは悪いニュースであり、常識を持っていることのマイナス面だ。

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コメント

この錯綜のメディアの嵐に、ひかりをともしていただくこと、ありがたいです。

         古代アテナイの民主主義と現代ギリシャの民主主義
          -なぜギリシャはワシントンの餌食になったか-

 なぜギリシャはワシントンの餌食になったか。その理由は,ギリシャがEUに属し,NATOに属しているにも拘わらず,ユ-ゴスラビア連邦への空爆,武力介入に一貫して反対して参加しなかった,からであると推認する。

  たまたま小生は,作家故小田実氏の『古代ギリシャのロンギノス』(学芸・文化欄,朝日新聞,Jul.22.,1999)を読んで,ギリシャがユ-ゴ連邦への空爆,武力介入に一貫して反対した国であることを知った。しかしそれだけではない。

  ・・・ギリシャは決してミロシェビッチ政府のコソボ政策を支持しない。しかし,空爆,武力介入は無用の犠牲者を多量に出し,政権に正当性をあたえ,「民族浄化」を強化させ,アルバニア人はさらに多く「難民」となって国外に出る。そして,より根本的には,民族の利害が複雑にからむバルカン半島での外国による武力介入は紛争をさらに激化,永続させる。このギリシャの認識,主張には,ギリシャ自体のひどい過去の体験が裏打ちするものとしてある。また,そこには「正義は力なり,力は正義なり」を強引に実行するNATO中心の「大国」に対する怒りがある。・・・・

 小田氏はまた,ロンギノスというギリシャ人の文学者が生きた世界は,戦争が果てしなく続き,人々は自由を失い,ただ,あてもない経済の繁栄があった「パクス・ロマナ」の世界であった,と紹介する。
  そういうパクス・ロマナに対峙するロンギノスの「崇高さ」について論じる余裕はないが,小田氏が指摘するように『「新ガイドライン」制定後の現代日本が安保条約によってさらに強力にアメリカ合衆国と結びつき,NATOと結びついた,すなわち日本が「正義は力なり,力は正義なり」の「西の民主主義」と結びついてしまったこと』を痛感せざるを得ない。
 
  ギリシャに発する民主主義についてボンヤリと理解していたボンクラ頭が,古代ギリシャ・アテナイの民主主義が現代の「西の民主主義」であり,現代のギリシャには古代ギリシャの民主主義とは「正反対」の民主主義が健在であることを知った。まことに日本にはアメリカ合衆国による民主主義破壊という『喜び』があり,”OXI”の現代ギリシャには『NATO中心の「大国」に対する怒り』がある。

  作家小田実氏を高く評価した評論家加藤周一は「私は明鏡止水ということを好まない」,「子どもがナパ-ム弾で焼かれたら,人は怒らねばならない」と書いた。小生は今,小田・加藤に賛成する。

よく出てくる電気洗脳箱という表現で思いましたが、TV=televisionではなく、TB=telebrainwashing ですね。いつも翻訳の労に感謝しております。

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