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2015年6月 4日 (木)

軍国主義というバイアグラに頼る老いさらばえたアメリカ

Finian CUNNINGHAM
2015年5月31日 | 00:00
Strategic Culture Foundation

アメリカ合州国の振る舞いは、典型的な余命いくばくもない暴君の態度だ。あるいは目の前で崩壊しつつある帝国の。終焉という事実から目をそらし、文化的、道徳的、経済的、政治的等、あらゆる分野での無力さを埋め合わせることを目指して、恐るべき軍事力を未だに振り回している。かつて雄々しかった巨人は、もはや元の姿の脱け殻に過ぎない。

変わりつつある世界の現実に対して上品に、去りゆく代わりに、ワシントンは、避けられないことを先のばしにする為、バイアグラの様に、軍国主義に頼っているのだ。

第二次世界大戦の後、アメリカの世界指導力は議論の余地がなかった。“パックス・アメリカーナ” - アメリカによる金融・政治的支配の下の世界秩序が - 君臨しているように見えた。しかし、こうした古きよき時代においてさえ、最も洞察力のあるアメリカの立案者達にとって、問題があることは明白だった。

1948年に書かれ、1974年に機密解除になった秘密メモ、PSS/23で、出現しつつある世界秩序、特に、アメリカのアジアとの関係で、著名なアメリカ国務省立案者、ジョージ・ケナンはこう述べていた。

“アジアでの‘指導力’を行使を語る際、我々は極めて慎重にしなければならない。これらアジアの国民の多くを興奮させかねない問題に、我々が解決策を持っているような振りをすることは、我々自身も、そして他の人々をも騙すことになる。しかも、我々は世界の富みの約50パーセントを占めているのみならず、我々は世界人口のわずか6.3パーセントでしかない。この不均衡は、我々と、アジアの人々の間で、とりわけ大きい… こうした状況を前にして… 極東に対しては - 人権、生活水準の向上や、民主化の様な非現実的な目標といった曖昧な言い方をするのはやめるべきだ。むき出しの力の概念で対応しなければならなくなる日は、さほど遠い先のことではない。我々が理想主義的なスローガンに束縛される程度が少なければ少ないほど良い。”

対ソ連“封じ込め”冷戦政策も立案したケナンが、生来の指導力や、理想主義、等々の“アメリカ例外主義”という思い上がった考え方に苦労していたかにご留意願いたい。

だが、ケナンの言葉の真実を理解すれば、アメリカの経済支配は、均衡を失しており、維持不可能であることを認識することになる。資源と、世界的な人々の要求とのそのような生来の不均衡は、不均衡を維持する為には、益々、狂暴な力にたよらざるを得ないことを、彼は爽快なほど率直に認めたのだ。

ケナンの主張を繰り返そう。“むき出しの力の概念で対応しなければならなくなる日は、さほど遠い先のことではない。我々が理想主義的なスローガンに束縛される程度が少なければ少ないほど良いのだ。”

確かに、その日がやってきた様に見える。ほぼ全ての大陸で、もちろん不当なのだが、自らがそう認識している、支配する権利を主張する為に、アメリカは外交という装いをかなぐり捨て、むき出しの、一方的な軍事力を使う様になっている。

ワシントンが、ベネズエラ、イラン、ロシアを経済封鎖し、特にロシアを、未曾有のNATO軍事演習で恫喝しているのは、典型的な例だ。先週の、アメリカの捜査当局の命を受けての、スイスでの賄賂とされるものを巡る、FIFAサッカー協会幹部問罪は、ワシントンがいかに自らが、外国の領土外管轄権と無関係に、自らの意思を押しつける特権があると思い込んでいるかを示すもう一つの例だ。

アメリカの中国との関係は、アメリカが自称する世界覇権国家のごとく振る舞う“明白な天命”の最新の宣言なのだ。

アシュトン・カーター国防長官は、週末、中国や、そのアジアの隣人諸国との間の領土紛争という微妙な問題に踏み込んだ。アシュトン長官は、鋲を打った靴を履いた連中の様な態度だった。彼は、中国に、即座に南シナ海におけるあらゆる埋め立てプロジェクトを即座に停止するよう“要求した”のだ。

わずか数週間前、ジョン・ケリー国務長官も北京訪問中に、同様な高飛車な要求をした。先に、アメリカのハリー・ハリス海軍大将は、中国が南シナ海、世界のなかでも戦略的に重要な通商路に“砂の長城”を築いているとこきおろした。

ワシントンは、かつての“中立的な仲介者”というイメージを、益々あからさまに投げ捨て、挑発的な党派的姿勢をとって、軍国主義と拡張主義が フィリピン、インドネシアや日本といった、地域におけるアメリカ同盟諸国を脅かしているとして中国を非難している。新たにまとめ上げた“防衛協定”で、アメリカは、もしその“極めて重要な権益が脅かされれば”パートナーを“保護する為に”戦争する自動的な“権利”が与えられる。

“パートナー保護”という口実の下での、アメリカ海軍、戦闘機や、ミサイル・システムの配備増大が、領土紛争の軍事問題化に油を注いでいる。

中国側としては、中国の地域における軍事的プレゼンスは、重要な通商路を守ることにある。北京は、海事開発計画、主に厳密に自らの国境内だと主張する浅瀬や暗礁の埋め立てを停止することをきっぱりと拒否した。

ワシントンの最近の最後通牒に対し、崔天凱駐アメリカ中国大使は、ワシントンが地域における緊張を“エスカレート”し、“より不安定化”する手口に対する中国の警戒を表明した。

崔大使は、ウオール・ストリート・ジャーナルに、アメリカの要求は“極めて驚くべきもの”だと述べた。大使は更に“アメリカは、状況に対して、過剰反応して、状況をエスカレートしている”と述べた。

中国の当惑は容易に理解可能だ。ワシントンは、地域における“軍国主義”だと言って北京を非難しているが、アメリカは“挑発し、状態をエスカレートしようとする試み”と見えるもので、最近中国領土を、戦艦や偵察機で侵害していると崔大使は述べた。

中国外交官はこうも述べた。“アメリカは中国に対し、根拠のない非難をし、地域の領土紛争で一方の肩をもつ様々な声明も行っている。これは、地域の状況を、実際より不安定にするだろう。そこで我々はアメリカ合州国のそうした過剰反応を懸念している。”

ここで、ロシアとの類似は顕著だ。アメリカと、そのNATO同盟諸国は、ロシアの領土周辺 - バルト海から黒海に至るまで、そしてその中間地点で - で、かつてないほどの規模と頻度で無数の“作戦演習”を行いながら、ワシントンは、この挑発的な現実をさかさまにして、モスクワを軍国主義と膨張政策で非難している。

ロシア外務大臣セルゲイ・ラブロフが言った様に、ワシントンの問題の中心となっているのは、アメリカが、変わりつつある多極世界を受け入れることができないということだ。世界最大の経済としての中国の勃興や、アフリカ、アジアや中南米において拡大しつつある中国の経済的存在感は、ロシア、インドや他の新興諸国の重要性が増大することと連動している。特に中国が建設しようとしている世界貿易の新シルク・ロードは、世界権力の中心としてのアメリカの役割が減少しつつある兆しだ。

自らの終焉にうまく対応することができずに、実際上、もはや持ち合わせていない、力強さのイメージをもたらすために、ワシントンは、軍国主義というバイアグラを用いようとしているのだ。

貿易と投資という、合法的な関係と情勢の下で、多極世界が形成されつつある。老いさらばえたアメリカと、その腰ぎんちゃく、ヨーロッパ同盟諸国だけが、こうした変化を、不合理と見なしている。これは、主観的な政治化だ。新たな世界の現実を受けいれるのではなく、ワシントンは、ライバルと見なす相手 - 特に、中国とロシアとの紛争を画策することで、不可避の事態を先のばしにしようとしているのだ。

あるいは、アメリカの政策立案者ジョージ・ケナンが、1948年当時に認めていた通り、民主主義と人権という虚構の概念が不要になったワシントンは、今や、必要上、むき出しの力という概念、つまり軍国主義で生きるしかない。

とはいえ、極めて現実的な危機は、もうろくした旧権力アメリカ資本主義が、自らの終焉を無謀にも否定することで、世界大戦を爆発させかねないことだ。

誰かが、バイアグラを取り上げ、コーヒーカップに鎮静剤を忍びこませる必要がある。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/05/31/decrepit-us-resorts-viagra-militarism.html
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昔、知人から、バイアグラの効能、いやというほど聞かされた。その知人とは年賀状以外連絡皆無。元気でいるだろうか?

軍国主義というバイアグラに頼る老いさらばえたアメリカに、こきつかわれる日本軍。

ウクライナはロシアと戦わされ、日本は中国と戦わされるだろう。儲かるのは宗主国・属国軍需産業。金があれば、属国軍需産業の株を買いたいもの。

ウクライナ訪問の狙い、民主主義と人権という虚構の概念が不要になり、今や必要上、むき出しの力という概念、つまり軍国主義で生きるしかない宗主国の、東西二大属国における軍事連合樹立の為だろう。
ナチス・ドイツをも上回るファシスト国家に成長した宗主国の指示で、昔のヒトラー・ドイツ末裔?が作ったウクライナと、大日本帝国指導者末裔が率いる日本という二大傀儡の枢軸確立。歴史は繰り返す。

華々しい東西二大傀儡土俵入り。

ちなみに、横綱大鵬、父親はウクライナ人。
ジョージア(グルジア)出身力士としては、臥牙丸と栃の心がいる。
ロシア出身力士としては、阿夢露がいる。
中国出身力士としては、蒼国来がいるが、今場所はさえなかった。

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コメント

      アメリカは,変わりつつある多極世界を受け入れることができるか

  2015年04月17日,オバマ大統領は「米国は世界第2の経済大国である中国にグロ-バルな貿易のル-ルを自立して決定する権利を認めていない。世界貿易のル-ルはひとり米国のみが決めるべきであって,中国のような国が手を出すことではない」と発言して,米国中心主義-一極・例外主義を強調した。  
 この一極主義に対して田中宇氏は彼のブログで,「(オバマ政権が)アメリカを一極主義に追いやることによってそれが失敗して結果として多極主義を受け入れるのを狙っている」といった主旨のことを主張されていた。
  政治の専門家でない小生にはよく分からないことが多すぎるが,『軍国主義というバイアグラに頼る老いさらばえたアメリカ』を読んで,CUNNINGHAM氏に大いに賛成する。

追記1: 6月4日付けの人民網日本語版は,中国海問題に関するフィリピンのアキノ大統領の発言について、「中国側はフィリピン首脳のデタラメで不当な発言に大変驚愕し、強い不満を抱いている」と論じ,例えば1970年代,「中国の南沙諸島の一部の島や礁を武力で不法に占領したのはフィリピンだ。1999年以来『座礁』の形で中国の仁愛礁(アユンギン礁)を盗み取ったのはフィリピンだ・・・」と指摘している。
 紛争の歴史は長く,双方の言い分があるから双方の意見を比較検討する必要がある。但し現在を見る限り,フィリピンの不法占拠は語られてはいない。というよりはマスゴミは比の不法占拠を取りあげるつもりはない。

追記2: 対ソ連冷戦を仕組んだジョ-ジ・ケナンの方針転換の要点・核心(1957年の暮れのBBC放送)は,加藤周一によれば,「軍事を中心としたものの見方は日本の関係する範囲で非現実的であるばかりでなく,東西対立の世界的規模においても非現実的である。現実的な思想は,交渉の思想である」であった。
 現代の若い人にとって,ケナンの発言が当時の欧州に大きな影響を与えたことはあまり知られてはいないように思われる(『風向きの変化と日本の現実主義』,加藤周一,中央公論1958年3月号初出)。CUNNINGHAM氏の文章と加藤の文章とをあわせて読まれることを勧める。

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安倍シンゾウ君は、 憲法無視しても 自衛隊員と国民を危険にさらしたいのですね。 [続きを読む]

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