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2015年4月17日 (金)

環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関する本当の神話

Dr. Dean Baker
2015年4月4日
Center for Economic and Policy Research

環太平洋戦略的連携協定(TPP)擁護者連中は、今月、議会でのファスト・トラック投票を準備しながら、連中の主張を押しつけようとして、ありとあらゆるできる限りのことをやっている。今日、ウオール街の投資銀行家で、元クリントン政権の財務副長官ロジャー・アルトマンが、外交問題評議会会長のリチャード・ハースと共著で、NYTコラムで考察している。

二人は、3つの神話を挙げることから始めているが、そのいずれも、たまたま現実の正確な描写だ。最初の“神話”は、貿易協定がアメリカ製造業労働者を傷つけ、そこで労働市場全般も傷つけたというものだ。アルトマンとハースは、中国との貿易で製造業雇用が、21パーセント低下したというMITの経済学者デービッド・オーターの研究を引用しているが、そこで、問題は貿易であり、貿易協定ではないと主張する。連中はこうのたまう。

“アメリカ合州国には、中国との二国間貿易協定はない。”

もちろん、もし中国がTPPに加盟しても、アメリカ合州国には依然、中国との二国間貿易協定はないだろう。(その通りで、TPPは多国間貿易協定で、二国間貿易協定ではない。) これは、自分の主張を押しつける為、こういうことを言わざるをえない、TPP擁護者連中の愚かさの水準を示している。実際問題、貿易協定、WTOは、中国の対アメリカ合州国輸出増大の上で極めて重要だ。中国は、2001年末にWTOに参加し、三年後、アメリカの中国との貿易赤字は、830億ドルから、1620億ドルへと、ほぼ倍増したのだ。

二つ目の“神話”は

“TPPは労働や環境基準を引き下げ、医薬品を引き上げるだろう…。環境についていえば、TPPには既存の紛争解決の仕組みに影響するようなものは皆無だ。最後に、医薬品会社に対する新たな保護が、より高い医薬品価格をもたらすというのは確実と言うには程遠い。”

“TPPには、既存の紛争解決の仕組みに影響するようなものは皆無だ”というのは断じて真実ではない。もちろん我々は最終文書を持ってはいないが、NAFTAの様な過去の協定に基づけば、外国投資家は、様々な労働や環境問題で、TPPによって設定された投資家-国家紛争調停裁決機関で異議を唱えることが可能になる。例えば、もしニューヨーク州が、水圧破砕を規制したいと思った場合、外国のガスや石油会社は、投資家-国家裁決機関で、禁止に異議を唱えることが可能になる。もしアルトマンとハースが、これが本当ではないという情報を持っているのであれば、彼等はコラムで、それを明かしていない。

医薬品価格に対するTPPの影響については、漏洩した知的財産権の章には、価格を上昇させると思われる、いくつかの特許や、関連する独占保護の延長が書いてある。もちろん、誰かを至近距離で撃った場合、相手が死ぬかどうかと同様、確実ではないように、その効果で、医薬品価格が上がるのが“確実”というわけではない。

そこで、三つ目の神話になる。

“三つ目の神話は、輸出を刺激する為、通貨価値を引き下げて、不当に競争する国々を防ぐことができないので、TPPには欠陥があるというものだ。”

アルトマンとハースは、実際これが真実であることについて異議を唱えてはおらず、彼等は、この批判は近視眼的だというのだ。彼らの主張は、我々は余りに愚かで、拡張的通貨政策(典型的には通貨価値の低下をもたらす)と、国際通貨市場で通貨を大量売りし、外国通貨を購入することで通貨価値を引き下げる意図的取り組みの違いが理解できないというのだ。これは私にも、他の経済学者(例えば、ピーターソン国際経済研究所元所長フレッド・バーグステン)にとっても区別が難しいとは思えない。アルトマンとハースが、これが余りに複雑だと考えているのは残念だ。多分二人は他の職業に転職すべきだろう。

これはIMFで取り上げられるべきだという二人の対応は、一般大衆に対する連中の軽蔑のもう一つの現れだ。アメリカ合州国が、ほぼ70年間というIMF存在期間中、通貨問題を提起したことは皆無だ。

そして、協定に対する、二人の称賛にでくわす。

“アメリカの知的財産権をしっかり保護すれば、ハイテク製造業から、アジアで海賊版がはびこっているハリウッドに到るまでの、産業にとって助けになるだろう。”

“自由貿易は、より大きな全体的な繁栄をもたらす。”

ファイザーや、ディズニーや、マイクロソフトが、連中の特許や著作権に対し、アジアや中南米諸国から、もっと金を稼ぐことで、我々の大半が一体どうやって恩恵を受けられようか? こうした企業の株を多数保有している連中なら明らかに恩恵は得られるが、そうでない我々に、明白な実例など皆無だ。ディズニーやマイクロソフトに対して、より多く支払うことで、他のアメリカ輸出を締め出すことになろう。NYTは、アルトマンとハースに、連中の主張を説明させる為に、別コラムを書かせるべきなのかも知れない。

最後に、“自由貿易は、より大きな全体的な繁栄をもたらす”という決まり文句は、何の関係も無い。TPPは、特許と著作権保護を、より強固に、より長期間、強化するものだ。もしも、医者や他の高給専門職サービスの貿易障壁を引き下げることや、特許や著作権保護を引き下げることについて語れるのであれば、我々も、TPPによる自由貿易の利点を歌っていられたろう。だが、TPPの本質は大企業の利益であって、自由貿易ではない。

記事原文のurl:http://www.cepr.net/index.php/blogs/beat-the-press/the-true-myths-on-the-trans-pacific-partnership
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セマウル号事件一周年。
とんでもない船員連中、そして、とんでもない会社と思う。

残念ながら、事件の構図、放射能汚染不沈空母国に丸ごとあてはまるだろう。

とんでもなく危険な水域に集団自衛権で入り込み、船底にTPPという巨大穴をうがつ。全員丸ごと沈没。もちろん、船員というか、支配者全員、われ先に脱出する。
とんでもない支配層、とんでもない国。

そういうとんでも連中に、粛々と投票する洗脳されたB層の皆様。

ひたすら拝めば、必ず地獄に行ける。

国際平和共同対処事態なるトンデモ。ジョージ・オーウェルもおどろく現実。

霞が関文学表現、大本営広報部表現によれば、こうだ。

国際社会が国連憲章の目的に従い脅威を除去する共同活動に、日本が積極的、主体的に寄与する必要がある事態を「国際平和共同対処事態」と規定。

庶民の日本語に翻訳すれば、こうだ。

宗主国が支配層の目的に従い、邪魔者を除去する共同活動に、日本が受動的、従属的に寄与させられる事態を「宗主国侵略パシリ対処事態」と規定。

今回記事では、TPPの恐ろしさ、まだ良くおわかり頂けないかも知れない。是非、下記の記事をお読み願いたい。

通貨操作と証明についての、篠原孝衆議院議員による記事

TPP交渉の行方シリーズ23 アメリカの尊大な要求 -通貨操作と証明(サーティフィケーション)- 14.11.06

TPP交渉日程の話しか報じない大本営広報部と違って、TPPそのもののとんでもない実態がしっかり分析されている。

米国「パブリック・シチズン」がTPP投資関連リーク文書を分析─ISDSで増加する米国の負担

そして、訴訟にご参加を。

TPP交渉差止・違憲訴訟の会

ご参考として、例えば

TPP関連主要記事リスト

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