イエメンにとってのアメリカ地獄
Margaret Kimberley
2015年4月2日
"BAR"
アメリカが生み出した大量殺りくと破壊の嵐が、イラク、リビア、シリア、ソマリアとイエメンの社会を破壊したのに、大半のアメリカ人は自ら清廉潔白だと思い込んでいる。“国民、商業マスコミと、政治体制制度の全てが、自国政府には、他の国々の内政に介入する権利があり、自国政府の主張は常に正しく、道徳的だと信じ込んでいる。”彼らは、まるで帝国の死の装置中のゾンビ化した歯車の歯の様に振る舞っている。
アメリカ合州国は、イエメンのアル・アナド飛行場を、2009年以来、約1,000人を殺害した無人機攻撃の基地として利用してきた。こうした犯罪は、テロと戦うという口実の下で行われたのだが、今や同じ場所が、アメリカ政府とその同盟国、サウジアラビアの因果応報的正義の場所となっている。アメリカ合州国特殊部隊は、フーシとしても知られているアンサール・アッラー反政府派に制圧される前に、アル・アナド飛行場から脱出した。
サウジアラビアが、フーシの拠点を爆撃し、エジプトの支援を得て、地上侵略をすると脅しているのは本当だ。この両国はいずれもアメリカ属国で、ワシントンからの承諾を得ずに、こうした行動を考えるはずがない。
イエメンと、その国際的な同盟の変化が、内戦をもたらした話は、いささか複雑だ。フーシは、アメリカと、サウジアラビアが支援していた今は亡命中のハーディ大統領を打倒した。彼の前任者、アリ・アブドゥッラー・サレハも、一時はサウジアラビアのお気にいりだったが、彼は現在、フーシの前進を率いている。詳細はややこしいが、一つ簡単なことがある。アメリカ帝国主義と、この地域に解き放たれたテロ戦争にこそ、究極的に責任があり、それが国々を次から次と破壊し続けるのだ。
覇権を得て、維持するという熱意で、アメリカ合州国は暴力を用い、同じ様なことをする他の連中を支持している。結果は、イラク、リビア、シリア、ソマリアやイエメンの遺体だが、こうした犯罪をもたらした判断は、アメリカ政策特有のものだ。
バラク・オバマや、彼の大統領執務室の前任者達が、中東の混乱をもたらしたという言い方は、まさに控えめな表現そのものだ。アメリカの狙いは、決して善意のものではなく、アメリカの政策は、ある酷い判断から、次のまずい判断へとよろめくが、人的被害だけが唯一の共通点だ。
ワシントンは、リビアでは、聖戦戦士を利用して、カダフィ政府を打倒したが、結局はその同じ集団が、アメリカ大使を殺害しただけのことだ。現在、アメリカは、わずか数年前に、そこで支持していた連中と戦っている。アメリカは、シリアでは、アルカイダやISISと共に戦っているが、イラクでは、この同じ二つの集団に対して戦っている。ワシントンは最終的に、エジプトでのムバラク打倒を受け入れることを選んだが、今は他の指導者による独裁政権復活を支持している。アメリカ合州国は、スーダン大統領を戦犯と呼んでいるが、現在、イエメンでは同じ側で戦っている。帝国主義が狙いの場合、出来事は決して、予測通りに展開することはない。
アメリカ外交政策の本質を把握しない限りは、この混沌の意味はわからない。同盟相手、一見、奇妙な共寝相手を変えるのは、長年にわたる明白なる使命(マニフェスト・ディスティニー)ドクトリンの一環だ。明白なる使命は、アメリカ合州国には、どこにでも、望むところに、その勢力圏を広げる権利があると主張するものだ。この言葉は元々19世紀の北アメリカ征服時に使われたものだが、その背後にある考え方は、いまだにこの国の意識の一部なのだ。
大半のアメリカ人は、イエメンやサウジアラビアについては、ごく僅か、あるいは全く何も知らないのに、自国政府について語る際、自分達の事を、喜んで一人称複数で呼ぶ。彼らは“シリア/イラク/イエメン/リビアに対して、我々は何をすべきか?”と問うのだ。
大統領は入れ代わっても、国民、商業マスコミ、政治体制の全てが、自国政府には、他の国々の内政に介入する権利があり、自国政府の主張は常に正しく、道徳的だと信じ込んでいる。多数のアメリカ人が、バラク・オバマ大統領は、シリア大統領を打倒したり、ウクライナ大統領を支持したりという仕事をすべきかどうかと問う可能性はほとんど無い。
馬鹿げた判断の例は果てしない。レーガン大統領は、イランと取り引きをまとめたが、すぐにイラクによるイラン攻撃を引き起こした。後にアメリカは、二つの戦争でイラクを攻撃した。イラクの破壊は、残虐な宗派戦争や、イエメンのフーシ派勃興ををもたらした。
イエメンは、いまや帝国主義が、たけり狂う震央だ。サウジアラビアは、アメリカ合州国が現在、核交渉で合意したがっている自国ライバル、イランによって、シーア派のフーシが支援されるのを恐れている。サウジアラビアは、そこで、いかなる協定もふいにしようと、イスラエル側についたのだ。あらゆる泥棒連中は、依然、誰も称賛されていない。
ワシントンが選択するあらゆる政策決定が意図しない結果と、更なる暴力ををもたらすことになる。あらゆるエスカレーションが、より大きな危険をもたらし、何百万人もの人々に破壊をもたらす上で、アメリカにかなうライバルはない。暴力と混沌は、何らかの目的の為の手段でなく、それ自体が目的だ。それこそが、まさにアメリカのやり方なのだ。
マーガレット・キンバリーのFreedom Riderコラムは毎週BARに掲載され、様々な場所に再掲載されている。彼女はブログを書き、頻繁に更新している、http://freedomrider.blogspot.com. キンバリー氏は、ニューヨーク在住で、Margaret.Kimberley(@)BlackAgendaReport.com宛て電子メールで連絡が可能だ。
記事原文のurl:http://www.blackagendareport.com/node/4403
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大本営広報部朝刊で山崎拓氏発言を拝読。イラク派兵問題についての意見。自民党に、まっとうな人がいたのに驚いた。
この記事にある通りの宗主国に、日本を丸ごと差し上げ、侵略戦争に、兵站支援から兵隊まで提供するという、全く異常な政策を推進するオカルト集団に、地方選挙で鉄槌が下るか、追い風が吹くか。
率直にいって、鉄槌が下る可能性皆無だろう。それで、選挙の度に鬱になる。
アメリカが生み出した大量殺りくと破壊の嵐が、イラク、リビア、シリア、ソマリアとイエメンの社会を破壊したのに、大半の日本人は自ら清廉潔白だと思い込んでいる。
知りあいの与党議員から手紙が来た。選挙のお知らせ。地方の議員とはいえ、TPP推進を支持する連中には決して投票しない。
買い物に出る際に、知人の選挙事務所前を避けて通る憂鬱な日々が続く。結果が出れば、一層、鬱になるだろう。
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