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2015年4月 2日 (木)

イエメン戦争の背後にある地政学 (II)

Mahdi Darius NAZEMROAYA
2015年3月31日 | 00:00
Strategic Culture Foundation

第 I部

“アラブ世界の最貧国で、中東では最新の破綻国家候補イエメンに戦線ができつつある。益々ありそうに見えるが、もし戦闘状態が間もなく勃発すれば、サウジアラビアとイラン間の地域覇権競争により、それは悪化するばかりだろう。既にシリアとイラクにもたらした、この破壊的なライバル関係の伝統にもかかわらず,両大国とも、自分達が支配できると考える集団を武装させるのに熱心なことは証明済みだ”とForeign Policy誌は3月6日に主張している。

フーシのイランとの同盟: 実利主義か、それとも宗派主義か?

フーシはいかなる意味でもイランの手先ではない。フーシ運動は抑圧の結果として出現した独立政治党派だ。フーシをイランの手先と呼ぶのは実証的でなく、イエメンの歴史と政治を無視するものだ。“もしも宗派間の境界線沿いで戦争が起きたとしたら、イエメンに残された歴史的な分断のせいではない。それは、戦争外国の資金提供者が、それまでは重要ではなかった分裂を刺激しているゆえだ”とForeign Policy誌さえもが認めている。

フーシ指導部は、テヘランから命令を受けているという主張を明らかに否定した。とはいえ、サウジや、ハリジ(湾岸)幹部やマスコミが、イラン当局者の発言を利用し操作して、フーシを、イランの工作員や属国のごとく描く為、フーシをイランのバシジになぞらえるのを止めるにはいたっていない。

フーシが、イランの手先ではないのと同様、テヘランと、イエメン国内のシーア派同盟も存在しない。この単純な宗派説に注力して語るのは、イエメンにおける紛争の政治的な本質や動機を隠し、弾圧に対するフーシの戦いを侮辱的に曖昧化するものだ。1970年代まで、サウド王室は実際、圧倒的にシーア派イスラム教徒が多いイエメン王政主義派の主要支持者だった。

しかも、イエメンのシーア派イスラム教徒は、イラン、アゼルバイジャン共和国、レバノン、イラク、アフガニスタン、パキスタンや、ペルシャ湾地域の大多数のシーア派イスラム教徒の様なジャファーリ派(12イマーム派)ではない。サアダ、ハッジャ、アムラン、アルマフィト、サアナ、イッブや、アル-ジャウフ県等の僻地の、ほぼ間違いなく、7イマーム諸派と呼べるイスマーイール派シーア派は別として、イエメンの大半のシーア派イスラム教徒はザイド派だ。イエメンのイスマーイール派は、大半が、多数派のニザール派イスマーイール派から分離したム、スターリ派イスマーイール派のダウーディ(ダビデ)派やスライマニ(ソロモン)派信者だ。

アメリカとサウジのフーシ運動に対する敵意こそが、うかつにも、フーシを、拮抗勢力を求めて、実利的にイランに向かわせたのだ。ウオール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、“イエメンの首都を支配しているフーシ過激派は、追放されたイエメン大統領に対する欧米やサウジの支援を相殺する為、イラン、ロシアや中国とのつながりを築こうとしている。二人のフーシ幹部によれば、“フーシ’暫定政府は、燃料供給を求めてイランに、エネルギー・プロジェクトへの投資を求めてロシアに代表団を派遣した。他の代表団が、近いうちに、中国訪問の予定であると彼らは語った”とウオール・ストリート・ジャーナルも3月6日に報じた。

フーシ運動が接触をはかった結果、3月2日、テヘラン・サアナ間便が毎日就航するとイランとイエメンが発表した。フーシ運動支援として、これは重要な命綱だ。

宗派理由説と宗派カード

イエメンの不安定は、イランやフーシが引き起こされているものではなく、 サウジアラビアの2009年の侵略から、アメリカの無人機攻撃にいたる、イエメンにおけるアメリカとサウジの介入、そして、イエメンの独裁的で不人気な支配に対するサウジアラビアの何十年もの支援によるものだ。

イエメンは、もともと分裂していた国ではないのだ。サウジアラビアとアメリカがアルカイダを育成したことを除けば、シーア派-スンナ派の本当の分断や緊張は存在しない。イエメンが独立するのを阻止すべく、サウジとアメリカは、イエメンにおいて、シーア派-スンナ派対立を生み出そうと願って、宗派主義を支援してきた。

偽りの説明と違って、中東におけるイランの同盟関係は、実際、宗派的なものではない。テヘランのパレスチナのあらゆる同盟相手は、政府は別にして、主として、イラクとシリアのスンナ派イスラム教徒で、イランは、非アラブ人やキリスト教徒を含む、様々な人種、宗教集団を支持している。これには、ほとんどがスンナ派イスラム教徒のシリアやイラクのクルド人や、シリアSyriac Union Party (SUP)のアッシリア・ストロ派も含まれる。レバノンでは、ヒズボラの他に、イランは、スンナ派イスラム教徒、ドゥルーズ派や、レバノンにおける最大キリスト教政党、ミシェル・アウンの自由愛国運動を含むキリスト教政党とも同盟している。

政策として、宗派主義に専念している連中がいるとすれば、それはアメリカと、アラブの産油首長国同盟国だ。アメリカもサウジアラビアも、以前は、フーシに関与し、彼らをイエメンのムスリム同胞団に対して利用した。しかも冷戦中、ワシントンもサウド王室も、イエメン・シーア派を、北イエメンの共和主義者や、南のイエメン人民民主主義共和国に対して利用しようとした。フーシ運動が、決してワシントンやリヤドの従者になるくもりがないことを明らかにした時点で、アメリカとサウジアラビアは、フーシに敵対的になった。

イエメン侵略の準備

3月20日、アスル・サラト(午後の祈り)のさなか、自爆犯がアル-バドル・モスクと、アル-ハシューシ・モスクを攻撃した。三百人以上が死亡した。アブドゥル・マリク・アル-フーシは、アメリカとイスラエル、イエメンのISIL/ISIS/ダエシもアルカイダもテロ攻撃支援のかどで非難した。サウジアラビアも非難されさた。

モロッコ、ヨルダンと、アラブ産油首長国諸国は沈黙しているが、イラン外務省報道官マルジエ・アフハムは、イエメンでのテロ攻撃を非難した。何らかの形で、シリア、イラク、ロシアや中国も、悉くイエメンでのテロ攻撃を非難している。テヘランがイエメンを支援していることを示す為、人道支援物資を積んだ二機のイラン貨物機がイエメンに送られ、イラン赤新月協会は、治療の為、50人のイエメン人テロ攻撃犠牲者をイラン国内の病院に空輸した。

イエメンにおける、サウド王室の失敗

フーシ運動は、サウジアラビアのイエメン政策と、独裁支配支援の結果だ。この点で、フーシは、サウジの残虐さと、サウド王室のイエメン独裁体制への支援に対する反動なのだ。この運動は、フセイン・バドレディン・アル-フーシが2004年、イエメン政府に反対して率いた叛乱の一環として始まった。

イエメン政権とサウジ政権は、運動を悪魔化する手段として、フーシは、アラビアで、ザイド派イマーム体制を確立しようとしていると偽って主張した。ところがこれは、彼らが益々強くなるのを止められなかった。イエメン軍は、2009年に、言いなりになろうとしなかったので2009年8月11日「焦土作戦」と言うサウジ介入が開始される結果となった。

サウジアラビアは、2009年と2010年、イエメン国内に、彼らと戦うべく軍を送った際、フーシを敗北させそこねた。サウジは、イエメンとフーシ運動に屈伏を強いるのに失敗している。フーシとイエメン暫定政府に、サウジの言う通りにし、リヤドに交渉に来るよう要求した際、交渉や、サウジが支持するあらゆる連立政権案は、実際は、イエメンで、フーシや他の政治勢力を脇に追いやるものなので、フーシとイエメンの革命委員会にきっぱり拒否された。これが、民衆勢力同盟、ハーディー自身の国民全体会議と、イエメン・バース党の全てが、反サウジアラビアというフーシの姿勢を支持した理由だ。

イエメン分割?

イエメンでは、無数の反乱や、アメリカとサウジアラビアによる軍事介入や、イエメン南部の県における分離主義者運動の激化がある。イエメン軍は分裂し、部族間緊張が存在している。イエメンがアラブ破綻国家になるという話題が益々語られる様になっている。

2013年、ニューヨーク・タイムズは、リビア、シリア、イラク、イエメンの分割を提案した。イエメンの場合、提案は、再度二つに分けるというのものだった。ニューヨーク・タイムズは、南部諸県で、ありうる住民投票の後におこりうると述べている。ニューヨーク・タイムズは、“全部、あるいは南イエメン部分は、サウジアラビアの一部になることも可能だとも提案している。サウジアラビアの通商のほとんど全てが海経由であり、アラビア海に直接出入りできるようになれば、ペルシャ湾への依存も、ホルムズ海峡を遮断するイランの能力に対する恐怖も無くなるのだ”

サウジアラビアと、ハーディは、現在、国民の約十分の一から支持されているイエメン南部の分離主義者に言い寄っている。アメリカとサウジアラビアにとっての次の選択肢は、フーシ勝利を緩和する戦略的転換の手段としてのイエメン分割かも知れない。これにより、サウジアラビアとGCCは、インド洋への南部の中継基地が確保でき、アメリカはアデン湾に足掛かりを維持できることになろう。

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/03/31/the-geopolitics-behind-the-war-in-yemen-ii.html

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様々な宗派に触れられているが、イスラム教の知識皆無の素人が訳していることを念頭にお読み頂きたい。

大本営広報電気洗脳箱、物価値上がりを嬉しそうに報じている。エープリル・フールかと思った。インフレが目標のアホノミクスに合わせた「よいしょ」。

せめて竹鶴あたりを、番組開始前に、10本くらい買い置きすればよかったか。

国会中継、与党・エセ野党茶番は見ない。絶滅危惧種党質疑は時折見る。衆院予算委。
小池氏、インフレ・増税においつかない高齢者の苦難をあえて引き起こすと批判。問題氏もちろん答えない。

福島氏が侵略戦争参加を推進する悪政を批判すると、問題氏、色をなして怒った。
ずっと見てはいなかったのでよくわからないが「発言に不適切なものがあった」という。何だろう。

前回引用した『興亡の世界史06 イスラーム帝国のジハード』24ページにはこうある。

古代イエメンでは、季節風を利用したインド洋交易が栄え、香料などアジアからの産品を陸揚げし、キャラバン貿易によって地中海地域へと産品を運んだ。-中略- そのため、ローマ人たちはイエメンを「幸福のアラビア(アラビア・フェリクス)」と呼んで、羨んだ。

戦略的要衝として得難い場所にあるため、まともな集団が独立を実現しようと頑張っても、悲惨な情況におかれている国。

輝かしい過去の歴史を読んで、マルコ・ポーロの東方見聞録に出てくるジパングを連想。

ジパングは、カタイ(中国北部)(書籍によっては、マンジ(中国南部)と書かれているものもある)の東の海上1500マイルに浮かぶ独立した島国で、莫大な金を産出し、宮殿や民家は黄金でできているなど、財宝に溢れている。 また、ジパングの人々は偶像崇拝者であり、外見がよく、礼儀正しいが、人食いの習慣がある。

戦略的要衝として得難い場所にあり、しかも、独立する意思皆無の傀儡集団が頑張っているため、益々悲惨な情況においやられる国。

同じようなもの。

2015/3/31は、Sea changeの分かれ目だったのだろう。

AIIB、中国に、いいように利用されるだけ。入らないのは賢明という愚論をいう連中。

TPP、アメリカに、いいように利用されるだけ。入らないのは賢明、とは決して言わない。

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コメント

     いくら逃げても政治は土足で踏み込んでくる-カンポンでも物品税導入開始  

 春が急に終わったかのように,海辺の町に暑さが戻ってきた。汗疹が小生を襲う。さらにスモッグが酷い。咳き込む日が毎日続く。こちらの方々は煙霧(焼き畑による煙)に慣れているらしく,朝晩曇っているのに,さらに煙を焚く。
 それでもようやく焼く枯れ草や枯れ葉がなくなったようだ。しかしスモッグは晴れない。晴れないうちに4月1日を迎え,物品税6%導入が施行された。日本の消費税8%税率上げの消費ガタ落ち込みと直接比較はできないが,ゼロから一気に6%になるのだから,消費はかなり落ち込むに違いない。
 それでも年末には景気が回復するという提灯もち記事が出た。どこかの国の宣伝に似ているとしても,消費税におさらばして喜んでいたら,今度は物品税が待ち受けていた。こちらの労働者「組合」が3月31日に物品税反対を表明した。遅きに失したと言うべき。しかし,各界,国民の要望によって物品税が見送られた物品が1000点以上あるらしい。
  例えば,小生に一番響くであろう家賃。反対署名活動により管理費は据え置きとなった。薬品も6%据え置きだそうだ。そこで薬局のスタッフに聞いたら,目薬などは「薬」でないので,6%の税率が適用されるそうだ(日本の目薬も「薬」でないのだろうか)。これで税収が上がるのか,疑問。

  昨晩,よく利用する一食150円の夕飯が7円ほど値上がりした。6%ではなく5%弱であったので,多少喜んだが,この食堂は売上伝票をくれないので,本当に物品税を政府に納めるのかどうか,疑問に思った。日本の「益税」となる公算,大である。

  さて話が戻るが物品税が掛かられない品物が1000点以上もあることを考えたとき,日本の「軽減税率」話はどうなったのであろうかと,思い出した。おそらくこれも選挙対策で自公両党でやはり話し合いが着かないだろうから,公約違反になるだろうと,推測している。
『切れ目のない嘘を吐く』と言われている安倍首相をはじめ,嘘,政治資金規正法違反は日本の常態だから,別に取り立てて問題としないが,こちらでは農産物は完全に物品税が掛からない。つまり,加工しない物品には税が掛からないという。日本とは大いに異なる。やはり日本を捨てて良かったのかもしれない。但しアルコ-ル類は加工品であるから,椰子酒でもバナナ酒でも6%掛かるらしい。

  ところで,牛乳には6%が掛かっている(牛乳は加工品なのかしら)。買いだめをして置いたが,牛乳だけは買い忘れた。痴呆症が災いしているとしか思えない。スポ-ツで汗を流した後,みんなで物品税について対抗措置を話し合っていたら,知り合いの方が山奥に住む日本人から「オオトカゲを4匹捕らえたので,食べに来ないか」と誘われたそうである。地産地消。
  ところがまた,その方は「私の故郷日本では温泉入浴料は100円で,温泉脇には,ときたま野菜などが置いてあって無料でいただける」と仰る。入浴料は別にしても,足りない食料は譲り合ったり,無料で配ったり,外国も日本国も変わりない面がある(但し村人からのお裾分けとは言え,ツバを混ぜて寝かせた地酒アルコ-ルだけは,いくら物品税を心配しなくてもいいと言われても,遠慮したい)。

  大使館からの帰り道,内陸に少し入った田舎(カンポン)に住む方と一緒になったことがある。その人の話によれば,野菜や卵は安い上に,知り合い(内人)になると,半額になることもよくあるそうだ。小数第2位以下の計算が苦手という説もあるが,村(ムラ)人は,空間を同じくする人々から成り,内人と外人を鋭く区別する。一物三価(内人はタダ同然,隣村の村人は交渉次第,外人には高く売りつける)。しかし消費税や物品税とは,軽減税率があろうがなかろうが,外人(そとびと)が勝手に造った「酷税」に他ならない。地方創生のためにならないので,完全廃止すべし。

追記: 外人が造ったのは,酷税ばかりではない。アメリカ帝国が造った沖縄の基地もある。

追記2: 公明党さんよ,一日も早く軽減税率適用品目を発表してください。統一地方選が始まったようですが,黙りを決め込んで統一痴呆選にするつもりですか。

追記3: 内人・外人については,日本からもって帰ってきた『日本文化における時間と空間』(加藤周一,岩波書店,2010版)を参考にした。

追記4: 古くから100万都市と言われた,永遠の都バグダッドではアルコールが飲めた。この国のカンポンと同じだが,イエメンの首都サナアはどうなのだろうか。さあ,な?
 しかしそれにつけても,退職してからゆっくり訪れてみたいと考えていたイラク,イラン,チュニジア,シリアなどの遺跡・博物館が破壊された。サウジ+イスラエル+米英仏が諸悪の根源だが,戦いは止めて欲しいモノだ。

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