アメリカのカラー革命支援の歴史を書き換えるケリー国務長官
Wayne MADSEN | 06.03.2015 | 00:00
Strategic Culture Foundation
アメリカのジョン・ケリー国務長官は、過去15年間のアメリカ外交政策に対して盲点がなければ、ジュネーブで、とんでもない大ぼらは言えなかったろう。ケリー国務長官は、ウクライナにおけるアメリカの行動を定義して、“我々[アメリカ合州国]は、複数のカラー革命”に関与していないと述べたのだ。ケリー国務長官の様な立場の人物はもっとよく考えるべきだろう。結局、彼はアメリカ合州国の外交政策最高幹部であるのみならず、2009年から2013年まで、上院外交委員会の委員長をつとめて、セルビア大統領スロボダン・ミロシェビッチを打倒した、2000年10月5日革命から始まるアメリカの“テーマ”あるいは“カラー”革命のそもそもの発端から上院外交委員会のメンバーだったのだ。
ロシア安全保障理事会理事長、ニコライ・パトルーシェフが、アメリカ合州国は、ロシアの反政府集団に資金提供しており、ウクライナを巡る経済制裁を利用して、市民社会の不満を醸成し、ロシアでカラー革命をおこそうとしていると指摘したのは正しい。世界中のカラー革命をアメリカが支援している憂慮すべき実績が、全てを物語っている。
ケリーが、様々な政権の打倒を目指すアメリカの工作を否定していて、なにより腹が立つのは、1987年から、1989年、ニカラグアのサンディニスタ政権を打倒するための秘密の中央情報局(CIA)戦争に関する一連の上院外交委員会聴聞会の委員長をしていたのが彼に他ならないことだ。25年間で、ケリーは、CIAクーデターや不安定化工作に対する過激な反対者から、こうした活動に対する完璧な隠蔽専門家へと変身したのだ。
街頭抗議行動から転じた革命で、2000年に、ミロシェビッチを打倒した後、寸分のすきもない、ジーン・シャープ/CIAマニュアルが作られ、あらゆるNGO抗議行動集団の元祖、オトポールOTPOR!の支援をうけて、約20のテーマ革命が矢継ぎ早に続いた。これにはチュニジア、エジプト、リビア、シリアやイエメンでの“アラブの春”テーマ革命が続いた。ソロスと彼のNGOの指紋は、ホンジュラスから、モルジブまでのより小規模の革命の企みでも発見されている。OTPOR工作員は、アメリカ国際開発庁(USAID)や、全米民主主義基金 (NED)のご厚意により、反乱の醸成を支援する為に、こうした国のいくつかに派遣までされていた。
ケリー国務長官は、ワシントンは“複数のカラー革命”に関与していないと言う。彼ら一体なぜ“複数のカラー革命”という表現を使うのだろう?下記のリストで分かるように、複数のカラー革命を、アメリカが何度となく支援してきたからだ。
アメリカ合州国は、グルジアのバラ革命、ウクライナのオレンジ革命、レバノンのスギ革命、パレスチナのオリーブの木革命(これで、ハマースが権力を掌握し、効果的に、パレスチナ独立運動を分裂させた)、キルギスタンのチューリップ革命、イラクのパープル革命(シーア派支配のイランに友好的な政府が権力を掌握し、統一したイラク国家の終焉を告げることになった)、クウェートのブルー革命、ビルマのサフラン革命(軍隊によって壊滅された)、チベットのクリムゾン革命(中国治安部隊に鎮圧された)、そして、失敗に終わったイランのグリーン革命を支援した。モルドバ (ブドウ革命)、モンゴル (部分的に成功したキイロ革命)、ウズベキスタン(綿革命)、バシコルトスタン・ロシア自治共和国(オレンジ革命)、エクアドル (警察革命)、ボリビア (4つの分離主義の天然ガス生産諸州でのガス革命)や、ベラルーシ(デニム革命)等の未遂のテーマ革命もあった。
オレンジ民主運動の指導者、ライラ・オディンガが連立政権で首相になるまでに、数千人が殺害された、ケニヤのオレンジ民主運動反乱も見落とすわけにはゆかない。これらのカラー革命に続いたのが、アメリカとソロスが支援するチュニジアのジャスミン革命、エジプトのロータス(蓮)革命、シリアのツィッター革命や、イエメンでの反乱だ。中東から、革命策略家連中は、モルジブ(キイロ革命)、インドネシア (失敗した“サンダル革命”)や“ベネズエラのナベ・フライパン革命というクーデターの企みにうってでた。ソロスの "キイロ革命" モルジブ政権は、副大統領と警察による反クーデターで打倒された。
民主的に選出されたホンジュラス大統領のマヌエル・セラヤに対して、CIAが画策した2009年のクーデターの後、軍が支援したクーデター政権は、裕福なエリートから支持され、エリート連中は、クーデター政権を支持して街路を行進し、軍が据えつけたロベルト・ミチェレッティ大統領を支持して、「白」を利用した。当時のケリー上院議員は一体なんと言っていただろう。オバマ政権によって遂行されたこのテーマ・クーデターについて、セラヤは民主的に選出されたホンジュラス大統領なので、ケリーは、権力の座に復帰するというセラヤの目標を支持していたのだ。現在、ケリーは、彼も民主的に選出され、違憲な形だ追い出されたにもかかわらず、ウクライナ大統領ヴィクトル・ヤヌコーヴィチがキエフで権力の座に復帰することを支持していない。連邦議会法律図書館が、セラヤ排除は違憲だと結論を出した際、所見を変更するよう要求したのはケリー上院議員だった。確かに、ケリー国務長官は、イェールと、ボストン・カレッジに通学していた間に“偽善者”という言葉の意味を学んだに違いない。
アメリカのテーマ革命支援の歴史は、アラブの春の後も続いている。ヤヌーコビッチ大統領に対する第二次ウクライナ・テーマ革命、いわゆる “ユーロマイダン革命”後、ロシア(“青バケツ革命”) やマケドニアでも、テーマを謳った反乱の企みがあった。
ケリー国務長官はどうやっても、アメリカが資金援助している反乱のテーマ・カラーという特徴を否定しようなどないだろう。2004年に、絶対にソロスとCIAが資金提供した革命である、キエフで初めて見られたオレンジ革命では、大統領選挙勝者ヤヌーコヴィッチが大統領になるのを止めて、親アメリカ派のヴィクトル・ユシチェンコと、腐敗したユリア・ティモシェンコを権力の座につけ、旗とオレンジのバナーを、キエフの中央広場にずらりと並べていた。アメリカのヨーロッパ専門家でパン配給の達人、ビクトリア・ヌーランドが明らかにした様に、最近のウクライナ“ユーロマイダン”革命では、アメリカ納税者に、50億ドルを負担させ、工場から出荷したての赤と黒のウクライナ武装反抗勢力軍(UPA)の旗を、マイダン広場と改名されたキエフの中央広場や、キエフ中にあふれさせたのだ。
NEDやUSAIDが資金提供するリビアとシリアのテーマ革命では、工場から出荷されたばかりの旧政権の旗、リビアのイドリース国王政権と、植民地後、フランス後の“シリア共和国”の旗が、それぞれ、文字通り、一夜にして、ベンガジやトリポリや、アレッポ、ホムスや、ダマスカスの街路に現れた。かつてのリビア王国国王旗が、今や、トリポリと、トブルクの対抗する政権に分裂して機能不全の "リビア共和国"国旗なのだ。シリアの場合、アサド前の旗が、今やサラフィストと連携する自由シリア軍によって使用され、アメリカ合州国、NATOと欧州連合によって、シリア国旗として認められている。
中国とて、アメリカ・カラー革命から免れてはいない。そうした工作に対する中国による防衛は、最初の実験は、チベットで、つい最近では、香港だ。ソロスの娘、アンドレア・ソロス・コロンベルは、トレース財団創設者で理事長であり、夫とともに、ツァドラ財団の共同創設者だ。両方の組織は、亡命チベット政府を直接支援しており、両者の指紋は、2008年チベットでの残虐な反乱にもあった。ソロスのOSIビルマ・プロジェクト/東南アジアも、ビルマでの2007年仏教僧反乱、いわゆるサフラン革命に指紋を残しており、同じテーマが2008年のチベット反乱でも使われた。2011年、アメリカを基地とする中国語ウェブサイトBoxun.comから、ジャスミン革命の呼びかけだなされた。
カラー革命の概念は、アルベルタ州カルガリーで、保守派のイスラム教徒ナヒード・ネンシ、が市長の座につくという、いわゆる“パープル革命”にも現れている。クーデターではないが、ネンシの市長就任は、外国人嫌いの人種差別政党でありながら、偉大な“多文化”の成功としてもてはやされている。ネンシは、キーストーンXLパイプラインの支持と、先住民部族領とオタワの関係を支配するファースト・ネーションズ協定への軽蔑の念をあからさまにしている。ネンシと、保守派連中は、ファースト・ネーションズとの協定を廃止し、彼らの炭化水素資源を手にいれようとしているが、これはある種、部族主権に対するクーデターの様なものだ。
2009年以来、ケリーの国務省幹部全員が、オバマ政権のR2P (保護する社会的責任)という旗印の下、カラー革命を支援してきた。ヌーランドや、部下で人権責任者のトーマス・メリアや、ジェフリー・フェルトマン(長国務省で、アラブの春の主要責任者をつとめた後、国連事務総長潘基文の下、政治担当国連事務次)を含む介入主義者の多くは、信用を落としたジョージ・W・ブッシュ政権の留任者か、有名ネオコン連中だ。連中に、更に“ネオリベラル”なR2P設計者連中、特に注目すべき顔ぶれとして、国家安全保障顧問スーザン・ライスや、国連大使サマンサ・パワー等が加わっている。
ジョン・ケリー国務長官は、複数のカラー革命に対するアメリカの支援はなかったと主張している。ケリー国務長官には、ベオグラードでの10月5日革命以来、少なくともそれだけの数の、アメリカ合州国が生み出したか、計画したカラー革命があったことを思い出させる為に、クレオラ社クレヨンの64色セットを送りつけるべきだろう。
記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2015/03/06/kerry-re-writes-history-of-us-support-for-color-revolutions.html
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例外的な、選ばれた国は、思うがまま、自由に歴史を書き換える権利を持っている。
属国が書き換えようとすると、間髪をいれずに文句を言う。文句だけですまないだろう。
ミシェル・チョスドフスキー教授の記事を以前訳してある。
他のカラー革命や、クーデターと比較して、ホンジュラスでの暴挙、セラヤ追放のクーデター、日本の大本営広報部は全くと言って良いほど報じなかった。仕方がないので、自分でいくつかの記事を訳した。下記はその一例。
上の記事にある様に、米軍基地問題がからんでいたので、日本でも、より穏健な姿で追い出されるようになるのではと想像した。杞憂ではない結果になった。
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