我々が行うテロが、我々が受けるテロだ
Chris Hedges
2015年2月0日"Truthdig"
金曜、ヨルダン、アンマンでのISIS反対集会で、殺害されたヨルダン人パイロット、ムアス・カサスベの写真のポスターを掲げる抗議行動参加者。AP Photo/Nasser Nasser
我々は空からミサイルを発射し、家の中で身を寄せ合う家族を焼き殺す。彼らは檻の中で立ちすくむパイロットを焼き殺す。我々は、アメリカの秘密軍事施設で、人質を拷問し、喉にボロを詰めて殺害する。彼らは、汚いあばら家で、人質を拷問し、斬首する。我々はシーア派暗殺部隊を組織し、スンナ派を殺害する。彼らはスンナ派暗殺部隊を組織して、シーア派を殺害する。我々は、アメリカの戦争犯罪を美化する為に『アメリカン・スナイパー』等の大規模予算映画を制作する。彼らは、自らの倒錯したジハードを美化する為、鼓舞のビデオを制作する。
我々が非難している蛮行は、我々が行っている蛮行だ。我々とイラクとシリアのイスラム国 (ISIS)とを区別する違いは技術的なもので、道徳的なものではない。我々は、戦っている相手と同等なのだ。
“暴力からは、暴力しか生まれない”とプリモ・レーヴィは書いている。“振り子の動作で、時間とともに、下火になるのではなく、一層激高するのだ。”
シリアのラッカ付近で乗っていたF-16が墜落した後、ヨルダン人パイロット、モアズ・カサスベ中尉が、ISIS戦士によって焼き殺されたのは、ローマの円形競技場向けに考案された出し物同様に陰惨だ。そして、そういう狙いだったのだ。死は戦争の主要な見世物。もしISISに、アメリカの都市を爆撃する為の戦闘機や、ミサイルや、無人機や重火器があれば、捕獲したパイロットに火をつける必要はなかったろう。ISISも、アメリカがしている様に、数千メートルの上空から人々を燃やすことができただろう。だがISISは戦争の能力が限定されているので、アメリカが中東の人々にやっていることのミニチュア版を世界に放送するしかない。ISISのやり口は、より露骨だ。結果は同じだ。
テロは演出される。“衝撃と畏怖”を覚えおいでだろうか? テロは人々に見られ、効果的だと感じられなければならない。テロには陰惨な画像が必要だ。テロは身のすくむような恐怖を吹き込まなければならない。テロは家族の苦悩を要求する。バラバラに切断された遺体が必要だ。自分ではどうすることもできない人質や囚人の苦悩に満ちた訴えが必要だ。テロは、倒錯した戦争対話として、行ったり来たりするメッセージなのだ。テロは、怒り、恐怖、羞恥心、苦痛、嫌悪、哀れみ、フラストレーションや無力感の嵐を生み出す。テロは民間人も戦闘員も破壊する。テロは、高貴な理想の名目で、暴力を最高の徳へと高め、正当化する。テロは死のカーニバルを解き放ち、社会を血まみれの熱狂に陥らせる。
1990年代のボスニア戦争中、親族は、敵方の亡骸業者が確保している息子や夫達の亡骸を引き取る為に膨大な金額を支払った。生きている場合には、息子や夫達を無事解放させようと、更に多額を支払う。そのような業者は、戦争自体と同じくらいに古くからある。人間は、アメリカの秘密軍事施設の中であれ、イスラム過激派の手中であれ、戦争の巻き添え被害となる。
全ての人質や囚人が同じ様に全国的な非難をうむわけではない。全員が同じ身の代金を要求されるわけではない。そして、全員が解放されるわけではない。コロンビア革命軍(FARC)は、誘拐と身の代金交渉を、効率的な事業へと変え、何百人もの人質を取り、階層別の人質を確保する。コロンビア大統領に立候補した際にとらわれ、6年間拘留された後に、コロンビア軍によって解放された政治家イングリッド・ベタンクールを含む有名人の人質では、身の代金金額は、基本的に高すぎて払いようがない。FARCには、警官や兵士等の中程度金額の人質や、 農民の様な低い金額の人質もいた。有名人の人質は、監禁されている間、紛争の双方にとって、価値がより高い。1978年に、赤い旅団に誘拐され、処刑された元イタリア首相アルド・モーロのようなこうした有名人人質は、戦争というドラマを盛り上げるもう一つの例だ。檻に閉じ込められたサダム・フセインもこの目的に役立った。有名人の人質は、釈放の為に要求される金額が途方もないので、事前に死刑宣告されることが多い。捕虜となり、斬首されたアメリカ人ジャーナリストのジェームズ・フォーリーはこれにあたるのではないかと思う。要求された身の代金は、余りにも途方もないもので、1億ユーロと、アメリカ合州国に囚われているイスラム教過激派の解放だ、つまり彼を捕らえている連中は、おそらく、身の代金が支払われることを期待していない。
ヨルダン政府は、小規模にせよ、敵意に満ちたイスラム過激派運動を封じようと苦闘している。アメリカ合州国で、アメリカによる対ISIS空爆に関し、不安感があるのと同様、ヨルダン国民にも不安感がある。ところが、ヨルダン人パイロットの死は、ワシントンとアンマン ISISとの戦いは、民主的で、賢明な国々(ヨルダンは民主主義ではないが)と、野蛮な聖戦戦士との間の戦いだという主張を強化した。そして、水曜日、ヨルダンのアルカイダ・メンバー二人の絞首刑は、ヨルダンによるシリア内で事実上、ISIS首都への戦闘機攻撃と共に、こうした差異なるものを強調し、紛争を激化させる様に、計算されていた。
絞首刑にされた二人のうちの一人、サジダ・アル-リシャウィは、60人が死亡したアンマンのホテル攻撃における役割から、2005年以来、死刑囚監房に収監されていた。彼女は、2006年に、イラクで殺害されたヨルダン生まれのアルカイダ指導者アブ・ムサブ・アル-ザルカウィの仲間だ。ヨルダンとISISによる報復的処刑は、空爆同様、テロ対テロゲームを演じる上で、大いに役立つ。熱に浮かされた戦争宣伝文句を維持するのに不可欠な善と悪の戦いという二元思考を醸成する。自分達の敵は人間的であって欲しくないのだ。自国民に殺りくにうんざりされては困るのだ。常にテロと恐怖を作り続けなければならないのだ。
フランスや他の大半のヨーロッパ諸国は、アメリカ合州国と違い、誘拐犯と交渉し、人質の身の代金を払っている。おかげで、これがれっきとした事業になってしまった。誘拐によって、ISISが得る何千万ドルもの金は、重要な収入源で、おそらく運営予算の半分にのぼるだろう。ニューヨーク・タイムズは調査し、2014年7月に“アルカイダと、その直接関連する下部組織団体は、2008年以来、誘拐で少なくとも1億2500万ドルを稼いでおり、その内、昨年だけでも6600万ドルだ”と書いている。だが、交渉と身の代金支払いは、まずい結果を招いている。フランスや他のヨーロッパ国民は、身の代金を要求される可能性がより高く、彼らが人質にされる可能性も高くなるのだ。だが、フランスは、身の代金支払いを拒否するアメリカ人が耐えねばならない場面にはあわずに済んでいる。そして、そのおかげで、フランスは比較的冷静でいられるのだ。
テロは、争っている双方の戦争商売人連中の利益に役立つ。1979年から1981年、444日間のイラン人質事件の際におきたことが、まさにそうだった。そして、これが、一体なぜ、ヨルダンが、国民が二人処刑されるのを目にしながらも、ISISに対し、軍事的に関与しない日本とは違い、聖人ぶった激怒で反応し、報復を行ったかという理由だ。フォーリー殺害が、ISIS爆撃作戦を行おうというワシントンの戦争ロビーによる主張を強化したのも同じだ。テロ、アメリカが行うテロと、アメリカに対して行われるテロは、戦争への渇望を煽るのだ。テロは十字軍戦争の新兵徴募手段だ。もしISISが残酷でなかったなら、残酷に見えるようにしなければならない。テロは、我々が反対している狂信者、そして私たちの中の狂信者にとっての幸運で、全員のプロパガンダ需要が十分に満たされるのだ。余りにも多くの無辜の人々が苦しむ悲劇なのだ。
ヨルダン、イラクとサウジアラビアを含む、欧米と同盟する中東諸国政府は、ISISが、シリアとイラクの一部を切り取って、テキサス州程の面積の自称カリフ領を作り出すのを恐れおののきながら見つめていた。ISISは、石油輸出と、人質事業で財政的に自立できるようになっている。支配下の地域は、聖戦戦士にとってのメッカとなった。ヨーロッパからの2,000人を含め、推計12,000人の外国人戦士を惹きつけている。
ごろつきカリフ領の存続期間が長引けば長引くほど、地域の欧米同盟諸国にとって、一層重大な脅威となる。ISISはサウジアラビアやヨルダン等の国々は侵略しないが、それが存在し続けることで、崩壊しつつある経済の下でうめいている多くの、こうした国々の不平分子や過激派が、国内激変をかき立てるの可能にするのだ。アメリカ合州国とこの地域のアメリカ同盟諸国は、地図からISISを抹殺しようと固く決意している。これは余りに過激な不安定化だ。この様なドラマは、ISISの狙いと、ISISを破壊しようとしている国々の狙いに役立つので、カリフ領が存在する限り演じ続けられるのだ。
テロは戦争の原動力だ。そしてテロは紛争の双方が過剰に生み出しているものだ。
クリス・ヘッジズは、かつて、ほぼ二十年間、中米、中東、アフリカや、バルカンで海外特派員をつとめた。彼は、50ヶ国以上の国々から報道し、15年間、海外特派員として゛、クリスチャン・サイエンス・モニター、ナショナル・パブリック・ラジオ、ダラス・モーニング・ニューズや、ニューヨーク・タイムズで働いた。
記事原文のurl: http://www.truthdig.com/report/item/the_terror_we_give_is_the_terror_we_get_20150208
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題名、The Terror we give is the terrow we getは、因果応報、自業自得という意味のことわざ、what we give is what we getのモジリだろう。
クーデターただ中の危険節・期限節。侵略戦争への支援強化、更には参加、言論封殺、辺野古基地建設強行、庶民生活を破壊するだけなら馬鹿でも出来る。
期待していた記事を見た。実現すれば、外国記事を勝手に翻訳しているこのブログも
作者などの告訴がなくても起訴できる
のだろうか。目の痛みがつらくて耐えがたいこの頃、そうなる日が待ち遠しい。翻訳しているネット記事原文を印刷し、じっくり読んですごそう。
TPP交渉 著作権侵害は「非親告罪」で調整 重要なので、冒頭を引用させていただこう。
2月11日 12時17分
TPP=環太平洋パートナーシップ協定の交渉で、各国は映画や音楽などについて著作権侵害があった場合に原則、作者などの告訴がなくても起訴できるようにする「非親告罪」とする方向で調整を進めていることが分かりました。
適用範囲について各国が判断できる余地を残す案が示されたことで、これまで慎重な姿勢だった日本も受け入れる方針です。
大本営広報部は北朝鮮と競合できるほどの提灯持ち体制でも、声をあげる方々はおられる。
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メタボカモ様 毎回の記事の深い内容に心を動かされております.感謝申し上げます.熱病には回復か死の終わりがあるように,ウクライナの内戦もやがては終わるでしょう.そのときはザカルパーチア(ロシアから見ての「カルパチアの向こう側の地」の意)にご招待いたします.ウクライナは日本人に三箇月ビザを提供しております.ビザの失効する数日前にハンガリアに出国し,ブダペシュト観光を楽しんだ後ウクライナに再入国する,これを繰り返すと十年など瞬く間.美しき日本はプロパガンダの生み出しせしめた妄想です.
投稿: 東欧旅行者 | 2015年2月12日 (木) 17時29分