ホロコースト記念式典から締め出されたプーチン
Ulson Gunnar
2015年1月21日
New Eastern Outlook
見出しを一瞥しただけでは、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が、不適切にもポーランドのホロコースト記念式典に参加しないことに決めたと信じこんでしまうだろう。
目を見張るような虚報の例として、ロイターは、プーチンは、ポーランドでのホロコースト記念式典に欠席という記事で、“月曜、情報筋が、ロイターに、ウクライナでの紛争によって引き起こされた不信感が催しに暗影を投じている為、プーチンが、アウシュビッツ強制収容所跡地での集会で世界中の指導者達に加わる可能性は低い。”と報じている。
現実は、ロシア指導者は、記念式典主催国ポーランドから招待されていなかったのだ。
地政学的猛攻と、それに伴う虚報は、ロシアは、今や第二次世界大戦中のナチス・ドイツに匹敵する覇権的な脅威だという認識を強化すべく構成されている。現実は、このわざとらしい言辞とは全く矛盾している。
1941年6月22日、バルバロッサ作戦が開始された。長らく予想されていたナチスによるロシア征服の取り組みの一環として三個の強力なドイツ軍集団が電光石火の速度で、ソ連に進撃した。侵略は、準備ができていないロシア軍をあっと言う間に圧倒し、ドイツ軍は、モスクワを含む複数のロシア主要都市の門口に至れるはずだった。
進撃途上、ナチス軍は、東ヨーロッパのユダヤ人、スラブ人やロシア人を大量逮捕し、大量処刑した。ロシア国民と、その同盟者達は、何百万人もの命を犠牲にして、まず侵略の速度を落とし、そして止め、更に自らベルリンの門に至る前に追い返すべく激しく戦った。
何百万人も、投獄され、大量殺戮されたヨーロッパのユダヤ人が、最終的に解放されたのは、1944年、アメリカ軍兵士がノルマンジー海岸に上陸するより何年も前に、ヨーロッパでのおける大半の対ドイツ戦争で戦った、ロシア人の英雄的な犠牲のおかげだ。
だから、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ナチスという惨害に対する前衛を形成して、ヨーロッパにおけるファシズムの脅威を終わらせた国家と国民の代表なのだ。アメリカ軍兵達は、戦争が終わってから、ヒトラーの死の収容所を目にして衝撃を受けたのだが、ロシア国民は、長年、ドイツの組織的な地域虐殺の悪夢を直接体験して暮らしていたのだ。ホロコースト記念式典からのプーチン排除は、単なる政治以上のものであり、古い敵が、またしても、悪の隠れ家で騒ぎを起こしている危険信号だ。
第二次世界大戦が終わると、アメリカと、新たに構築されたNATO同盟諸国は、降伏したナチス連中を、人類に対する連続犯罪のかどで、ソ連による正当な“裁判”をうけさせず、素早く活用した。アメリカは、連中を、宇宙開発の様な高貴な大義に取り込んだのみならず、諜報機関を含む闇のネットワーク、プロパガンダと、国内テロ・ネットワーク(後に悪名高いグラディオ作戦として知られるようになった)にさえも組み込んだ。
第二次世界大戦終了後、ウクライナ等のソ連領内の元ナチスや連中のイデオロギー上のお仲間は、ソ連支配に対抗すべく、NATOによって絶えず支援されてきた。こうしたネットワークは生き残り続け、現代でさえ、2013年末から、2014年始めまでの間に、選挙で選ばれたウクライナ政権を暴力的に打倒したキエフの現行政権という形で現れている。
連中文字通り、アドルフ・ヒトラーの破滅的なまでに悲劇的な世界支配という企ての為に働き、企てに伴う集団虐殺を幇助したこのナチス協力者の後継者が、NATOの全面支援を受けて、より小規模ながらも、同様に悲劇的な規模で、東部ウクライナで、同じ悪事を遂行している。ヨーゼフ・ゲッベルスの様なナチス宣伝家によって編み出された不愉快なほど誠実さに欠ける言辞を反映した実体という形で、欧米世界は、歴史上と、現代の現実、いずれも避けて、逆に、ナチスの旗を掲げる文字通りのファシスト連中ではなく、ロシアこそ、現代ヨーロッパにおける、ファシストの脅威復活だと主張しているのだ。
ホロコースト記念式典からのプーチン大統領排除は、こうした言辞を作り上げ、強化する活動の一環だ。ナチスの惨害に、苦しみ、最終的には勝利した犠牲者、生存者や英雄に対すして、国際的な歴史の歪曲、悪党の後継者連中を支援し、そうした悪党との対決で命を失った何百万人ものロシア人を代表する人々や、そういう悪党連中と再び対決する覚悟ができている国民を非難する以上の侮辱はありえない。
ヨーロッパはまたしても、自ら招いた悲劇の崖っぷちへと危うげに向かいつつある。新旧ファシズムを指揮するヨーロッパ指導者達や特権集団が、自国民を団結させ、組織化するための他のあらゆる策略が失敗した以上、おなじみの策略を利用しようとする中、新旧ファシズムは、あらゆる方向に向かって、つのり、広がりつつある。ロシアは、国境沿いで増大しつつある脅威に、またしてもたった一人で直面しているように見え、またしてもロシア人は、耐えた先祖達の英雄的行為にふさわしく、黙々と犠牲を払う準備をしている。
こういうことになるしかなかったのだろうか? もし人々が、第二次大戦中にあれほど悲劇的な打撃を与えられた国の中で、ポーランドとファシズム勢力の吐き気を催すような偽善と裏切りが再び煮えたぎっていることを見てとり、指摘したらどうなるだろう? もし国民が、対ロシア感情とは無関係に、自分達が進まされている道は、自己破滅に至るだけであることを自覚したら一体どうなるだろう? ヨーロッパ諸国民は、現在自分達に対して提示されている過激な道の間には、中道が存在していることを理解できるだろうか? 今後数週間、数カ月のうちに、答えはでるだろう。片方の目では歴史を、もう片方の目では現代の出来事をじっと見つめ続けている人々は、たとえその教訓を全員が忘れてしまったように見えても、第二次世界大戦の教訓が教えてくれたことを想起し、最善を期待すべきだが、最悪に備えるべきだろう。
Ulson Gunnarは、ニューヨークを本拠とする地政学的専門家、作家で、特にオンライン雑誌“New Eastern Outlook”に寄稿している。
記事原文のurl:http://journal-neo.org/2015/01/19/et-tu-poland-putin-excluded-from-holocaust-commemorations/
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小生も、プーチン大統領が不適切にもポーランドのホロコースト記念式典に参加しないことに決めたと信じこんでいた口。
「誰にも公式招待状はだしていない」という報道もある。真実は『藪の中』?
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コメント
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こんにちは。
ドイツのテレビ局がちょうどこの出来事について放送していたので、ブログに書きました。
プーチンはなぜアウシュビッツ追悼式典に参加しなかったのか、その真相をドイツのテレビ局が明かす
http://tekcat.blog21.fc2.com/blog-date-20150128.html
投稿: ロキ(人類猫化計画) | 2015年1月30日 (金) 17時16分
ロシアのテレビニュースで、ホロコースト記念館の代表者が「式典は国家行事ではないので、我々が国家元首を招待することはない」とし、来たいのであれば来ればという感じでした。
また、最近の話題ではポーランドの外相が自国のラジオ番組に出て、「オスベンチム(アウシュビッツ)を解放したのは間違いなくウクライナだ」という発言があります。尤も、直近のラジオ番組では「オスベンチムの門を開けたのはウクライナ人だと言ったまでだ」とお決まりの発言訂正をしていましたが。
1年前の危機からウクライナ関連(ロシア関連)の報道の特長は、何かの事件行事の際、最初に強烈なプロパガンダをぶちかますということが繰り返されています。明らかな嘘でも堂々と言えばそれがある一定層には通用するのでしょうね。この手の繰り返しがロシアを悪の帝国としての地位を固定化させ、戦争し易い雰囲気作りに寄与させると考えられてのことだと思います。
投稿: 石井 | 2015年1月24日 (土) 10時56分