ソニー・ハリウッド・ハッキングを巡りループ状態になったアメリカの思想統制
Finian CUNNINGHAM | 28.12.2014 | 00:00
アメリカ・ソニーのコンピューター・ハッキングを巡るヒステリックな過剰反応は、それ自体、風刺映画に値する。芸術が人生を模倣する一例、あるいはその逆かもしれない。
“悪の枢軸”北朝鮮は、ハリウッド・サイバー攻撃で、バラク・オバマ大統領、連邦捜査局FBIや、商業マスコミから、厳しく非難されている。オバマはそれを“国家安全保障上の脅威”と呼び、ジョン・マケイン上院議員の様に短気な政治家は、北朝鮮は“戦争行為”を行ったと宣言した。
北朝鮮指導者金正恩をからかう新しい映画の全国上映を映画館が中止する結果となった問題を把握するために、ホワイト・ハウス危機管理室で、急きょ会議が開催されたとされている。(騒動の中、忘れ去られているのは、CIAがいかに現存の国家元首暗殺を計画するかという不快な筋だ。)
評論家やジョージ・クルーニーの様な著名俳優連中が、ハッキング騒動は“言論の自由に対する攻撃”だとレッテルを貼る辛辣な声明を発表している。
もし外国が、バラク・オバマ暗殺を“風刺的に”描く映画を制作したら、神聖化されたアメリカの言論の自由は、いったどこまで耐えることが可能か想像可能だ。
アメリカ国土安全保障省の広報担当官はこう述べた。“ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントに対するサイバー攻撃は、単に一社とその社員に対する攻撃ではなく、わが国の表現の自由と、暮らし方に対する攻撃でもある。”
金曜日、オバマ大統領は、ハリウッド大企業ソニーの破壊工作と、それに続く、北朝鮮指導者金正恩を当てこする映画の上映妨害は、共産主義国家の悪意ある行為だと断定的に述べた。その証拠とされるものが一体何か具体的に述べずに、オバマ大統領は、FBIは証拠を持っていると語った。
大統領は年末記者会見でこう述べた。“どこかの独裁者が、ここアメリカ合州国で検閲を押しつけることを許すような社会にしてはならない… 我々はそういう国民ではない。アメリカはそういう国ではない。”
オバマは、アメリカは報復すると意地悪そうに言った。“我々は反撃する、我々は釣り合った反撃をする、我々が選ぶ場所と、時間に。”と誓ったのだ
問題は、この犯罪を北朝鮮のせいにする証拠が全く皆無なことだ。北朝鮮政府は、映画『ジ・インタビュー』を非難しており、平壌は、自称ハッカー集団、ガーディアン・オブ・ピースが主張していたソニーの破壊工作を歓迎した可能性もある。ところが北朝鮮は、サイバー攻撃へのいかなる関与もきっぱり否定した。
北朝鮮は、アメリカ当局と共に、事件の合同捜査を行うことさえ提案したが、ワシントンは予想通り、拒否した。それどころか、ホワイト・ハウスの国家安全保障会議の広報担当官は、北朝鮮のしわざだという“強い自信がある”と繰り返し述べた。
これはアメリカ当局者が、イラク大量破壊兵器や、シリア化学兵器や、最近では“ロシアの東ウクライナ侵略”に関して述べた“強い自信”と恐らくそっくりそのままだ。
アメリカを本拠とする何人かのコンピューター専門家達も、北朝鮮が関与しているという大勢の考え方には懐疑を表明している。ハッカーの振る舞い方が、非難と矛盾すると指摘するむきもある。彼らは、一番論争の的になっている映画のクリップ、暗殺場面が、削除される前、一時的にオンラインに投稿されていたと指摘している。これは立腹した北朝鮮人がやったという主張と矛盾する。彼らが一体なぜ自分達の“親愛なる指導者様”を、例えごく一時的であれ、非礼な形で公開するだろう?
また、あるコメンテーターが言っていた様に、ガーディアン・オブ・ピース集団は、11月24日に、ハッキング侵入が表面化して以来インターネット経由でなされる移り気な、ころころ変わる要求で“ソニーを悩ませていた”という。そうした変わりやすい振る舞いは、個人ハッカーに典型的なもので、厳しく管理された国家機関、とりわけハッカーが厳格な指示に従うであろう権威主義的な北朝鮮政権に所属する機関の行動ではない。
もう一つの矛盾する要素は、アメリカ主流マスコミですら認めているが、北朝鮮には高度なインターネット接続がないことだ。ソニーのコンピューター・ハッキングでは、公開されていない映画脚本、企業の業務ログや、何千人もの社員の私的なやりとりや、ハリウッド有名スターや芸能人や他の業界有名人の個人データを含む膨大な量のデータがからんでいる。この種の侵入には、北朝鮮には無いと広く認められている高速サイバー-インフラや接続が必要だ。
北朝鮮は、以前にも、昨年、韓国の銀行や政府機関にハッキングしたと非難されている。その出来事に対する北朝鮮のつながりは決して証明されなかったが、それが今や、今回のソニー攻撃証拠の先例として引き合いに出されている。証明されていない主張の上に、証明されない主張を重ねても、事実になるわけでも、法的立証責任に敵うわけでもない。
コンピューター・セキュリティー問題専門で、www.buzzardsbranch.orgに書いているアメリカを本拠とする政治評論家ランディー・マーティンは、ソニー攻撃に使用されたとされるマルウェアは、あらゆる種類のハッカーが世界中で入手可能だと語っている。“犯罪組織や、イスラエル諜報機関のモサド等の国家機関を含め、サイバー世界には、このソニー・ハッキングを実行し、自分のデジタル指紋を隠して、北朝鮮に罪をなすりつけられるハッカーは山のようにいる。”
FBIが言う北朝鮮の関与に対する“強い自信”は説得力がないとマーティンは語った。“サイバー世界で使われている能力や技術を、FBIは全く持ち合わせていません。サイバー犯罪捜査における、FBIの素晴らしさは、空想の産物です。”
ソニー・コンピューターをクラッキングするのに使用されたとされる“Destover" マルウェアは、他の国々や企業に侵入するのにも利用されてきたと考えられている。数年前、サウジアラビアの国営企業アラムコが、別バージンのDestoverでハッキングされたが、北朝鮮は、その攻撃に関与していなかった。
ところが、証拠が欠如していても、ワシントンや商業マスコミは、扇情的な対北朝鮮主張の推進を辞めようとはしなかった。ニューヨーク・タイムズは週末にこう報じた。“オバマ政権は、“釣り合った反撃”に向けた第一歩として、サイバー攻撃を開始する北朝鮮の能力を阻止するのに、最近中国の協力を求めた。オバマ大統領は、北朝鮮にソニー・ピクチャー攻撃の責任を取らせると誓った。 政権幹部によれば、これは将来のハッキングに対する広範な警告を発するキャンペーンの一環だ”。
新聞が、北朝鮮が攻撃を実行したのは事実だと書いている様子にご留意願いたい。ジャーナリスト達は“とされる”という単語を、辞書から検閲で排除したもののようだ。
タイムズは、いささかの限定も留保も無しに、こう続けた。“[オバマ] 政権の取り組みの一環として、国家が支援する、アメリカ本土への最初の大規模な破壊的コンピューター・ネットワーク攻撃への反撃を計画する上で、国家安全保障局を指揮している同じ四つ星の将軍が率いるアメリカ・サイバー軍に、北朝鮮に対して実施可能な、様々な攻撃オプションを考え出すよう大統領は命じた”。
アメリカの報復行動のありうる標的の一つは、北朝鮮の核計画の中心地、寧辺だとニューヨーク・タイムズは書いている。
この北朝鮮非難の奔流は、無謀な挑発だ。アメリカを本拠とするオンライン・ジャーナル、マザーボードのインタビュー、サイバー・セキュリティーの専門家ピーター・W・シンガーが“愚かさを超えた領域”に入りつつあると語った。証拠皆無のコンピュータ・ハッキングーを理由に、我々は戦争をしようとしているのです、と彼は言い足した。
すると、ここで一体何がおきているのだろう?
北朝鮮犯人説より遥かに説得力がある他の説がいくつかある。
一つは、ソニーは、パニックになった社員から、不満を募らせたハリウッドの花形女性歌手にわたる一連の原告による厄介な訴訟の可能性に浮き足立っているというものだ。同社は既に、ハッカーによってオンラインに個人情報が公開され、苦痛を受けている8人の元社員から訴えられている。
ソニーは、あからさまには“サイバー・テロ”に対し、北朝鮮を非難してはいないが、北朝鮮を非難するマスコミの暴走には進んで同調しているように見える。この筋書きは、この大企業が、いいかげんなセキュリティー・システムを巡って訴えられる代わりに、身代わりの北朝鮮の背後に隠れられるので、このエンタテインメント企業に好都合だ。このハリウッド企業は、50以上の他の大きなコンピューター侵入を受けいたと報じられており、十分な対策手段を講じないかどで、近年長いこと批判されていた。
もう一つの問題は、アメリカ人が、知らないうちに自国の国家プロパガンダ犠牲者になっていることだ。北朝鮮は、何十年間も“ならずもの国家”として笑い物にされ、その指導者金正恩は、ジェームズ・ボンド映画にうってつけの典型的悪党として、戯画化されている。こうして、たたき込まれた、“世界ののけもの”という、アメリカによる北朝鮮の人間性抹殺があればこそ、今我々が目にしている、ソニー・ハッキングと、『ジ・インタビュー』を上映する映画館に対するテロの脅威を巡るヒステリックな恐怖のあおりたてを開始するのも極めてたやすかろう。映画は、12月25日、アメリカの映画館で封切り予定だったが、中止になっていた。
北朝鮮に向けられている、洗脳やら権威主義的国家統制という非難は、アメリカ・マスコミや、ワシントンや、それと密接につながったハリウッド情報産業により、膨大なでっちあげ一般的認識をふきこまれているアメリカ国民にも、ぴったりあてはまるだろう。
アメリカの対イラク、アフガニスタンや他の国々での戦争は、こうした戦争が、犯罪的な帝国主義者の冒険主義に過ぎないのに、大量破壊兵器や、テロと人権という、詐欺的な主張を基本にして、アメリカ国民に売り込まれるのが常だ。アメリカの、いわゆる対テロ戦争の恒久的状態が、アメリカ国民を、絶えざる強迫観念と、いかに奇抜であろうとも外国の敵という恐怖の中で生きるようにさせている。
シリアや、ウクライナ危機を巡るロシアに対して、アメリカ・マスコミ攻撃が続くのを我々は目にしている。一片の証拠もなしに、ロシアは、拡張主義、侵略や、国際秩序を脅かしているかどで非難されている。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は“新たなヒトラー”に擬せられている。悲劇的なことに、途方もなく多くのアメリカ人が、“自由な独立したメディア”とされるものから、来る日も来る日も吐き出される、プロパガンダのたわごとを信じている。
ソニーに対し、ハッカーが行ったゆすり、あるいは面白半分の犯罪が、ひたすら当てこすりと根拠のない主張を基に、北朝鮮による国家安全保障上の主要な脅威へと変身させられた。これは思想統制と、現状認識でっち上げの最も厚かましい発現ではあるまいか?
オバマは思いあがった見下した言い方をした。“どこかの独裁者が検閲を課することはできず”“ここアメリカ合州国で”思想統制することは出来ない。“我々はそういう国民ではない。アメリカはそういう国ではない”。
オバマや彼のワシントンのお仲間やアメリカ主流マスコミは、連中の独善的な自由と“例外主義”の感覚をすっかり信じこんでいる。ソニー・ハッキングと北朝鮮の悪魔化を巡るヒステリーで実に簡単に見て取れる通り、思想統制こそが、アメリカの実体だ。
記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2014/12/28/us-thoughtcontrol-goes-into-loop-over-sony-hollywood-hack.html
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このドタバタ騒ぎで思い出したことがある。『風流夢譚』、あるいは嶋中事件。
不思議なことに、いや、当然なことに?大本営広報部は全く触れない。若い世代、ご存じ無い方々が多いだろう。
物心ついていたので、嶋中事件のほうは記憶している。肝心な小説の方は絶版で読めないものと思っていた。今はデジタル版が読めるようになっている。
宗主国の知的劣化、報道管制、プロパガンダはひどいものだが、属国の実情、それより遥かに先をゆくのかもしれない。
カレや彼の東京のお仲間や日本の主流マスコミは、宗主国の独善的な自由と“例外主義”の感覚をすっかり信じこんでいる。ソニー・ハッキングと北朝鮮の悪魔化を巡るヒステリーで実に簡単に見て取れる通り、思想統制こそが、日本の実体だ。
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