戦争と経済崩壊の瀬戸際
Paul Craig Roberts
2014年12月12日
時々読者が、何か良いニュースを伝えてくれまいかと書いてこられることがある。答えはこうだ。“みんなの”政府や大手マスコミがしているように、私がウソをつかないかぎりはあり得ない。もしニセの“良いニュース”をご希望であれば、『マトリックス』の世界に引きこもっていただく必要がある。ストレスや懸念が少なくなるのと引き換えに、読者は、知らないうちに、経済破綻と核戦争ハルマゲドンに引きずり込まれるだろう。
“みんなの”政府が一体何をするつもりなのか、警告を得て、できればそれに備え、出来事の方向を多少とも変える機会を得たいとお望みであれば、このサイトをお読みの上で、支援をお願いしたい。ここは皆様のサイトだ。私はこうしたことはとっくに承知している。私は皆様の為に書いているのだ。
軍産複合体やイスラエルと親しい同盟関係にある主戦論者連中の小集団ネオコンがグラナダやニカラグアのコントラ事件を引き起こした。レーガン大統領は連中を首にし、彼らは告訴されたが、後にレーガン大統領の後継者ジョージ・H・W・ブッシュに赦免された。
シンクタンクに収まり、イスラエルに守られ、軍/安全保障複合体の資金を得て、ネオコンはクリントン政権中によみがえり、ヨーゴスラビア解体、対セルビア戦争、NATOのロシア国境への拡張を画策した。
ネオコンは、ジョージ・W・ブッシュ政権を支配していた。彼らが、ペンタゴン、国家安全保障会議、副大統領事務所、その他多くを支配している。ネオコンが、9/11と、その隠蔽工作を行い、アフガニスタンとイラクを侵略し、パキスタンと、イエメンの不安定化を始め、米国アフリカ軍を設置し、グルジアによる南オセチア侵略をさせ、反ABM条約を反故にし、違憲な、令状無しでのアメリカ国民への違法なスパイ活動をし、憲法上の保護の喪失、拷問や、法律、議会や司法に、責任を負わない行政府を実現した。要するに、ネオコンが独裁制と第三次大戦の基盤を築いたのだ。
オバマ政権は、ブッシュ政権の犯罪に対して誰の責任も問わず、行政府が法を超越している大統領を生み出した。それどころか、オバマ政権は、政府の犯罪について真実を語った内部告発者達を告訴しているのだ。
ネオコンは、オバマ政権でも、依然として、強い影響力を持っている。例をあげれば、オバマは、ネオコンのスーザン・ライスを大統領補佐官(安全保障担当)に任命した。オバマは、サマンサ・パワーをアメリカ国連大使に任命した。オバマはネオコンのビクトリア・ヌーランドを国務次官補に任命した。ヌーランドの事務所が、CIAと、ワシントンが資金提供するNGOと協力して、アメリカによるウクライナでのクーデターを画策したのだ。
ネオコン主義は、現存する唯一の政治イデオロギーだ。このイデオロギーは“世界に冠たるアメリカ”というものだ。ネオコン連中は、歴史が、アメリカ合州国を、世界に覇権を行使すべき国として選び、そこでアメリカが“例外的”で“必要欠くべからざる”国にしたと思いこんでいる。オバマ自身もそう宣言している。歴史支配階級となるべく、労働者を選んだというカール・マルクスの結論が、初期共産主義者達に確信と動機を与えたのと同様に、このイデオロギーが、ネオコンに、とてつもない確信と動機を与えている。
この確信と動機が、ネオコンを見境なくしているのだ。
自分たちの狙いを推進すべく、ネオコンは、アメリカ国民やワシントンの傀儡諸国に布教している。売女マスコミは、ネオコンのウソを、疑うことを知らない大衆に伝えている。ロシアはウクライナ諸州に侵略し、併合した。プーチンは、ソ連帝国を再建するつもりだ。ロシアは、民主主義のない暴力団国家だ。ロシアは、バルト諸国、ポーランド、そして全ヨーロッパにとっての脅威だから、ロシア国境でのアメリカ/NATO軍事力増強が必要だ。ロシアの同盟国、中国は、中国を包囲するアメリカの新海軍・空軍基地を建設して軍事的に封じ込め、中国の海上交通路を支配する必要があるのだ。
ネオコンとオバマ大統領は、ワシントンの権益から独立した経済・外交政策を持った主権国家としてのロシアと中国を、アメリカは決して受け入れないことを実に明確にした。ロシアと中国は、イギリス、ヨーロッパ、日本、カナダや、オーストラリア等と同様、属国としてのみ容認するのだ。
明らかに、ネオコンの処方箋は、最終戦争の処方箋だ。
ワシントンで権力の座に納まっているごく一握りの悪辣な男女によって、人類全員が絶滅の危機にひんしている。
反ロシア・プロパガンダは本格的に動いている。プーチンは“新ヒトラー”だ。ダニエル・ズーボフが三つのアメリカ・シンクタンクが主催した合同会議で報告している。会議は、ワシントンの外交政策の失敗を、ロシアのせいにしている。この記事をお読み願いたい。http://sputniknews.com/columnists/20141205/1015538604.html 言論を支配する為、ネオコンがどのように活動しているかを見ていただきたい。長い間ロシアの一部で、ロシアの正当な勢力圏に位置するウクライナに、ロシアは正当な利害関係があるという明白な真実を語ったがゆえに、ヘンリー・キッシンジャーでさえも攻撃されている。
クリントン政権以来、ワシントンはロシアの利益に反する動きをしている。近刊書The Globalization of War: America’s Long War against Humanity(戦争のグローバル化:人類に対するアメリカの長い戦争)で、ミシェル・チョスドフスキー教授は、ワシントンが、核戦争で、世界をどれほど終焉に近づけているかについて、現実的評価を行っている。以下は、前書きからの引用だ。
“‘戦争のグローバル化’は覇権を目指した計画だ。大規模な軍事作戦や、秘密の諜報作戦が、中東、東ヨーロッパ、サハラ以南のアフリカ、中央アジアや、極東で、同時に実施されている。アメリカの軍事計画は、戦域での主要作戦と、主権国家の不安定化を狙った秘密活動との両方の組み合わせだ。
“グローバル戦争計画で、アフガニスタン、パキスタン、パレスチナ、ウクライナ、シリアや、イラクで遂行されている欧米軍事同盟(アメリカ-NATO-イスラエル)の行動は、軍ヒエラルキーの最高レベルで調整されている。アメリカが推進しているものは断片的な軍事・諜報作戦ではない。2014年7-8月のイスラエル軍によるガザ攻撃は、アメリカ合衆国とNATOと綿密な協議をした上で実行されたものだ。逆に、ウクライナでの行動とその時期は、ガザ猛攻撃と同期していた。
“主権国家に経済制裁を課するのみならず、敵の国家経済を弱体化させることを狙った金融・通貨市場の意図的不安定化行為の実行も含む経済戦争の手順で、軍事活動は、入念に調整されているのだ。
“アメリカ合州国と同盟諸国は、人類の未来を脅かす軍事的冒険を開始した。本書刊行作業をしている今も、アメリカ軍とNATO軍が東ヨーロッパに配備されている。サハラ以南のアフリカでは人道的な口実によるアメリカ軍事介入が推進されている。アメリカと同盟国は、オバマ大統領の‘アジア基軸’という旗印の下で、中国を脅している。
“ロシアの戸口で行われつつある軍事演習は、エスカレーションしかねない。
“イスラム国を攻めるという口実で、2014年9月に開始された、イラクとシリアに向けたアメリカ空爆は、北アフリカ、東地中海から、中央そして南アジアにまで広がる軍事エスカレーション・シナリオの一環だ。欧米軍事同盟は高度な準備ができた状態にある。
“ロシアもそうだ。”
私が何度も触れている通り、アメリカ人は無頓着な人々だ。彼らは単に気がついていないのだ。国民が気がついたとしたら、全国民が危険を理解したとしたら、何かできるのだろうか、それとも、無頓着なアメリカ人は、ワシントンが作り出した警察国家の支配下に置かれてしまっているのだろうか?
アメリカ国民にはほとんど期待できないと私は思う。アメリカ国民は本物の指導者と、エセ指導者とを区別できず、支配している民間エリート連中は、本物の指導者の出現を決して許さない。しかも、ネオコンに反対する組織的運動は皆無だ。
希望は、政治体制ではないところにある。希望は、政策立案者達が、1パーセントの為に築いた、砂上の楼閣と操作された市場の崩壊だ。デイビッド・ストックマンは、そういう結果は極めて可能性が高いと見ている。ストックマンが、そこに向かう過程にあると見ている崩壊は、私が警告したのとまさに同じ崩壊だ。しかも、崩壊を引き起こしかねないブラック・スワンの数は、ストックマンが正しく特定しているものよりも遥かに多い。金融機関の中には、定収入(債券)とデリバティブ市場における流動性の欠如を懸念している人々もいる。ブラック・ロックの共同議長バーバラ・ノヴァックは、デリバティブ緊急救済の仕組みを求めて強烈なロビー活動をしている。
デイビッド・ストックマンの記事は重要だ。しっかり理解頂けるまで熟読願いたい。誰よりも良く知っていただけるはずだ。http://www.lewrockwell.com/2014/12/david-stockman/duck-and-cover%E2%80%A8/
多くの方がこう問われるだろう。もし1パーセントの富が経済崩壊の影響を受けやすいのであれば、その富を守り、アメリカ国民を飲み込む困難を、ロシア人や中国人のせいにする為に戦争が開始されはしないだろうか? 私、そしてデイビッド・ストックマンや、疑うべくもなく他の人々が予想しているような崩壊は、政府に大変な社会的、政治的、経済的不安定をもたらす為、大戦争をお膳立てすることが不可能になってしまうというのがお答えだ。
政治的に無能なアメリカ国民も欧米世界の諸属国も、ワシントンに何の制約も課せないが、経済崩壊が、革命と既存体制の終焉をもたらすのだ。
激烈な崩壊は、人々が生き延びるのをひどく困難にするだろうが、核戦争になった場合より、生き残れる可能性は遥かに大きい。
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四半期毎のご寄附のお願い
多くの皆様が御承知の通り、数年前に私が引退しようとした際に、読者の皆様は、それを受けいれてくださらなかった。私は、協賛各紙に同時に掲載され
るコラムを降りて、皆様にお別れをつげた。皆様が、何千通もの電子メールで、小生の経験と知識を頼りにしておられ、それが現代の出来事を客観的に理解する
のに役立っていると言ってこられたのだ。皆様の御意見には説得力があった。私は引退を止め、このウェブサイトを開設したが、皆様から強固なご指示頂いてい
る。
これは皆様のウェブサイトだ。皆様に支持を頂ける限りは継続する。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
ご寄付はここで。https://www.paulcraigroberts.org/pages/donate/
記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2014/12/12/brink-war-economic-collapse-paul-craig-roberts/
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冒頭で彼が触れている『マトリックス』に関する彼の過去記事翻訳には例えば下記がある。
- 『マトリックス』からアメリカ人を解き放つ 2012年6月6日
- アメリカ人をシステムから切り離すことは可能だろうか?2011年5月18日
国の名と、国民の名を、取り替えればそのまま。とんでも選挙のこの国のことになりそう。属国、益々徹底的に属国化することになるのだから、ロバーツ氏のおっしゃる通り、宗主国の崩壊を期待するしかなさそうだ。
どうやらあの「希望は戦争」トンデモ発言に似てきたようだ。「希望は崩壊」。
毎回選挙になると鬱状態になる。社会活動は我慢して通常に行っているつもり。
それに加え、個人的に考えることもあって、気分はもう最低。
気分修復は相当時間がかかるだろう。さりとて翻訳をしないと益々鬱屈する。
仕方がないので、酒を飲んで、メタボを悪化させている。
昨年メタボで保健所から呼び出され必死に痩せたのに、今年再度呼び出された。昨年痩せた分、必要量の、4分の1に過ぎなかったのだという。
メタボ・カモ知れないと思っていたのに、メタボ・ソノモノに変えないといけないか。
選挙、亀井静氏ファンなのだが、残念ながら選挙区は無関係。新刊もまだ購入していない。亀井氏で検索したら、彼らしい正論があった。
本当にパーだと小生も思う。皆様のことではない。わずか数人のおさななじみのことを思いだしただけ。自分たちを殺そうとしているのに。
「自民党は農村党だったが、今は違う。農村は票が少ないし。TPPをやったら、東城の町もアウトだ。アメリカのおっしゃる通りに全部やるという話。農業、林業、いろんな商売やられている方も規格から何まで米国の言う通りにしなければならず、病気をしても病院にかかれなくなる」と諭した。
その上で、亀井氏はJAグループの政治姿勢に言及。「庄原、三次、尾道の農協は私を推薦してくれた。広島県はそれ以外全部、全国も全部自民党を推薦している。農協をなくし、株式会社にすると言っているのに、推薦して応援することを決めた。パーだと思う。(自分たちを)殺そうとしているのに」
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コメント
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お疲れ様です。
いつも良い記事のわかりやすい翻訳を有難うございます。
多くの英語記事を読み、その中で良いものを選び翻訳する、という作業は、
我々の側にとって、物凄い戦力のため、楽しんでエントリを作っておられるのだと思っていました。
RPGでの名の知れた勇者的な感じだなーと思っていました。
ブログ主さんが、エントリ一つUPするごとに、敵にダメージを与える要因を作り出していっています。
こちらのエントリが、多くの者達を動かしています。
毎回の様に、多くの者達を、向こう側からこちら側に転向させています。
世界から見たら少しづつでしょうが、日本語圏で見れば、ブログ主さんの毎回の戦闘(つまり記事翻訳)は、無敗で勝ち続けています。
また、こちらのエントリからロシア等への良い影響も少なくないでしょう。
ブログと言うネットを通し、しかしリアルでの成果を出す、日本の、数少ない本当の勇者の一人です。
この事実をどうか認識し、日本国内の事象などさほど気にせず(N.W.Oが終われば今の日本も終わってくれるでしょうから)、更に勝って行くために楽しんで頑張ってください。
私ら読者も、こちらの影響を受け、更に頑張って闘っていくことができます。
楽しんで闘って勝っていきましょう。
寒くなりました。風邪が流行っています。お体にお気をつけください!
投稿: unimro | 2014年12月14日 (日) 09時08分