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2014年12月15日 (月)

シェールが先導役

低下する石油価格は市場を破壊するのだろうか?

Mike Whitney
週末版 2014年12月12-14日
"Counterpunch"

水曜日、原油価格は更に下がり、アメリカ財務省証券利回りを押し下げ、株価を大きく引き下げた。30年もののアメリカ財務省証券利回りは、大恐慌時代の2.83パーセントに下落した、アメリカの主要な三つの経済指標は全て赤になった。ダウ・ジョーンズ工業株30種平均(DJIA)は、立ち会い終了前、268ポイントも下落した。水曜日の大幅下落の直接原因は、弱化する世界的需要に合わせて、2015年にどれだけの石油を生産する必要があるかについての予想をOPECが引き下げたというニュースだ。USA Todayによればこうだ。

“OPECは、2015年の生産高予想を一日2890万バレルとした。これまで予想されていたものより約300,000少ない、12年ぶりの低さだ…。これはOPECが、3000万バレルという日産割当量を変えなかった、カルテルが先月生産したものより、一日約115万バレル少ない…

原油価格の急激な低下で、もし価格が余りに低下し続ければ、小規模な探査・生産会社は廃業しかねないという懸念を生んでいる。それは更にそうした企業に融資している連中、ジャンクボンド購入者や小規模銀行での動揺を引き起こしかねない。”(USA Today)

安い石油価格は、必ずしも消費を押し上げたり、成長を強化したりするわけではない。全く逆だ。需要の少なさは、デフレ圧力が高まっており、不況がますます強固なものになっているという印だ。また、6月にピークになって以来、アメリカ基準原油の42パーセントの価格低下は、借入金の多いエネルギー企業を、瀬戸際に追いやりつつある。もしこれらの企業が(低価格の為に)負債の借り換えができなければ、多くは債務不履行となり、広範な市場に悪影響を与えよう。アナリストのウォルフ・リヒターによる概要はこうだ。

“石油価格が急落し …アメリカのエネルギー部門のジャンクボンドは、今年頂点に達した目を見張るようなブームの後、厳しく批判されている。10月中に、エネルギー企業は、ジャンクボンドを、500億ドル売ったが、発行された全てのジャンクボンドの14%だ! ところが、古い負債の利子払いや、費用のかかる水圧破砕や、沖合での掘削事業用資金にあてる目的で、新資金を集めようとしているジャンク債便りのエネルギー企業は突然抵抗にぶつかっている。

ジャンクボンドの醜い姉妹で、かつてブームになったレバレッジド・ローンは、連邦準備制度理事会のヒステリーをおこしている。連邦準備制度理事会のイエレン議長さえも、彼らは銀行も巻き込んでおり、金融制度にとってのリスクなので、彼らに目をつけている。規制当局は彼らを調査しており、金利を上げる等の金融的な手段でなく、銀行への締めつけ等の“マクロプルーデンス”政策で縮小させようとしている。そして連邦準備制度理事会が懸念していることは、既にエネルギー部門で起きている。レバレッジド・ローンは、酷評されつつある。しかも、それは始まったばかりだ…

“もし石油価格が安定できれば、その伝染的影響は限定的だ”とRBSセキュリティーズのマクロ・クレジット・ストラテジスト、エドワード・マリナンは、ブルームバーグに語った。“しかし、もし価格が今後も低下するようであれば、問題が波及して、より多くの高利回りの分野で痛みを感じることになるだろうから、より広範な市場で反応が出るに違いない。”…即座に石油価格を建て直す奇跡が起きない限り、デフォールトがおき、それは石油分野を超えて反響するだろう.” (石油とガスの暴落はジャンクボンド、レバレッジド・ローンに広がる。次は、デフォールト、ウォルフ・リクター、Wolf Street)

連邦準備制度理事会の低金利と量的緩和が、企業負債の利回りを押し下げ、投資家は、連邦準備制度理事会も“支持している”と考えて、ジャンクボンドをむさぼるように購入した。このおかげで、目先の利益だけを考えるエネルギー会社が、たとえ彼らのビジネスモデルが、かなりいかがわしくても、歴史的な低金利で何トンものお金を借りるのを容易にしていた。石油が壊滅的になった今、投資家は臆病になり、金利が上がり、企業が借金の借り換えをするのは、より困難になっている。これはつまり、こうした企業の多くが破産することになり 、それが金融的に巧みに加工された商品という形で、彼らの負債を購入した投資家や年金基金の損失を生み出す。疑問は、こうした金融的に巧みに加工された汚物が、2008年に起こしたように、システム中でドミノ倒しを開始するほど大量に、銀行の貸借対照表上に山積みになっているかどうかだ。

この疑問には、水曜日にOPECの陰鬱な予想の後、部分的に答えが出て、株は混乱し、無リスクのアメリカ財務省証券利子が急落した。投資家達は将来最悪の事態がおきると考えて逃げ出し、手持ち株を狂ったような勢いで処分した。アメリカ財務省証券は、嵐が通り過ぎるまで隠れる安全な場所を探している神経質な投資家にとって避難所になっている。

エコノミストのジャック・ラスムスは、Counterpunchに秀逸な記事を書いており、記事は一体なぜ投資家達が神経過敏になっているのかを説明している。以下は、“グローバル石油デフレの経済的結果”と題する彼の記事の一部引用だ。

“石油デフレは、様々な金融業以外の企業での広範な破産・デフォールトを起こす可能性があり、これが更にこうした企業と関係している銀行における金融不安イベントを引き起こす可能性がある。石油に関連した金融資産の崩壊は、他種の金融資産に対する更なる‘連鎖効果’をもたらし、金融不安を他の金融市場へと広げている” (グローバル石油デフレの経済的結果、ジャック・ラスムス、CounterPunch)

石油価格が下落すると、概して他の商品価格も一緒に引き下げる。これは更に、原料の販売に大きく依存している新興国市場を傷つけることになる。既にこうした脆弱な経済は、インフレ昂進と、資本逃避によるストレスの兆しを示している。ところが、日本の様な国では、円安のおかげで、輸入石油がより高くなっているので、影響は前向きだと考えるむきもあろう。だが、そうではない。下落する石油価格は、デフレ圧力を高め、傾向を逆転させ、成長を刺激する為、更に極端な施策の実施を日本銀行に強いることになる。不況から脱出する為の取り組みとして、日本の中央銀行は一体どのような新たな不安定化政策をとるのだろう? そして、既に過去五年間で三回の不況を味わったヨーロッパにも同じ疑問を問うことができよう。ラスムスは、石油デフレと、世界的金融の不安定さについてもこう語っている。

“石油は、グローバル市場で買われたり、売られたり、取引される実物商品にすぎないわけではない。アメリカと世界が石油先物商品取引を自由化し始めて以来…石油も、重要な金融資産となった。

石油価格低下が他の実物商品の価格低下へと波及するのと同様…価格デフレも他の金融資産に‘波及し’て、‘連鎖的’効果で、そうした資産の下落をも引き起こす。

この連鎖反応風の効果は、2006-08年の住宅ローン崩壊で起きたことと異なるわけではない。当時、世界的な住宅部門(物理的資産)の深刻な攣縮が、実体経済の他部門に‘波及し’たのみならず、担保付き債権にも波及し…これら債権をベースにしたデリバティブも崩壊した。効果は他の形の金融資産にも‘波及し’て、金融資産デフレの連鎖反応を引き起こした。

もし石油価格が継続して、一バレル60ドル以下になれば、同じ‘金融資産の連鎖効果’をおこしかねない。これはほぼ50パーセントという石油価格デフレとなり、多分、アメリカのシェール生産の多くに資金を補給したアメリカの企業ジャンク債券市場崩壊と関連する、より一般的なグローバルな金融不安を引き起こす可能性がある” (CounterPunch)

これこそ、まさに今後数カ月で展開するだろうと我々が考えているシナリオだ。ラスムスが語っているのは、“伝染”、つまり、市場のあまりにひどい状態と、あまりの多額の融資がゆえの、一つの資産範疇から他の資産金融への致死的な波及だ。借金の金利がこれ以上返済できなくなれば、デフォールトは、体制から流動性を吸い上げ、更に、突然の(激しい苦痛を与える) 価格の付け替えを引き起こす。ラスムスは、シェール・ガスと石油生産の急激な縮小は、ジャンクボンドの崩壊を引き起こしかねず、それは更なる銀行閉鎖への道を開くことになると考えている。彼はこう言っている。

“これから起きるシェール業界の淘汰は、穏やかには進むまい。この部門での広範な企業倒産になるだろう。また、大半の掘削が、リスクの高い、高利回りの企業ジャンクボンドで資金を調達しているので、シェールの淘汰は、アメリカ企業のジャンク債券市場の金融崩壊をもたらす可能性があり、これは現在きわめて債務過剰になっているので、地域銀行の破産を招きかねない。” (CP)

金融市場は巨大なバブルで、破裂を待っているのに過ぎない。もしシェールが破裂をおこさなければ、何かほかのものが起こすだろう。それは時間の問題に過ぎない。

ラスムスも、現在の石油供給過剰は、政治的動機によるものだと考えている。ワシントンの黒幕が、サウジアラビアに、価格を押し下げ、石油に依存しているモスクワを粉砕する為、市場を石油であふれさせるよう説得したのだ。中央アジアで、軍事基地を増やし、NATOがロシア西部国境に配備できるようにするというアメリカの計画に従う弱体な分割されたロシアを、アメリカは望んでいる。再度、ラスムスを引用しよう。

“サウジアラビアと、友人のアメリカ・ネオコン連中達は、石油価格を押し下げる新政策で、イランとロシア両国を標的にしている。石油デフレの衝撃は、既にロシアとイラン経済深刻な影響を与えている。言い換えれば、このグローバル石油価格デフレ推進政策は、グローバルな政治目標という理由から、ロシアとイランの経済のより深刻な崩壊を引き起こしたがっており、大きな政治的利益が得られるアメリカが支持しているのだ。石油がグローバルな政治兵器として使用されたのは、これが始めてでもなければ、最後でもないだろう。” (CP)

ワシントンの戦略は極めて冒険的だ。計画が逆噴射し、株が自由落下状態になり、何兆ドルもが瞬く間に消滅する可能性もある。そうなれば連邦準備制度理事会のあらゆる取り組みは水泡と帰すだろう。

因果応報だ。

Mike Whitneyは、ワシントン州在住。彼は Hopeless: Barack Obama and the Politics of Illusion(『絶望: バラク・オバマと、幻想の政治』)(AK Press刊)にも寄稿している。同書は、Kindle版も入手可能。fergiewhitney@msn.comで、彼に連絡可能。

記事原文のurl:http://www.counterpunch.org/2014/12/12/will-falling-oil-prices-crash-the-markets/

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受験科目で日本史を選んだので、世界史には実にうとい。トルコ・パイプラインの話題を読んで、あわてて手元のオスマン・トルコに関する本を読んだ。手元にあっても関心がないと読まない。帝国地図を見て、ギリシャも、ブルガリアも、セルビアも、シリアも、帝国の一部だったのを今頃になって知った。

選挙前、本当の選択肢は何か、与党が大勝すれば、いかに悲惨な結果が待ち受けるかについて、大本営広報部の本格的報道は当然皆無だった。大本営広報部、終わった瞬間、怒濤の洗脳結果報道。

実に汚らしいたとえで恐縮だが、ふと思いついた。宴会を開こうという話しになった際に、「どういう目的で、どういう人を招き、どういう食事を、どのように作って、どのような宴会にするのか」というところの場面報道・分析は、全て抜き。宴会場トイレ・ブース実況放送を見せられているような気分。

ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』に書かれたキリスト教からきた西欧勤労哲学と、『山本七平の日本資本主義の精神』に書かれた鈴木正三以来の日本勤労哲学の違いを詳細に語る小室直樹『日本資本主義崩壊の論理』(1992/4月刊)の末尾を、一部貼り付けさせて頂こう。全く違う話題を論じていても、崩壊するところだけはともあれ一緒。

 日本の軍隊と西洋の軍隊が決定的にちがう点。日本ではいっしょに働く人びとが共同体になってしまい、陸軍が共同体になってしまう。となると、絶対的神、救済のために戦うという契機がないから、戦争をすること自体が自己目的になってしまう。
 戦前の日本がまさにそうだ。支那事変も大東亜戦争も、なんのために戦うのか、戦争の目的がなかった。
 世俗内的禁欲、つまり労働それ自体が自己目的となる日本企業。そして、企業の要請が、日本全体の要請よりも、社会全体の要請よりも、圧倒的に優先するという事実。
 この二つのことは本来は関係ないのだけれど、いっしょになるとエライことになる。
 しかも、資本主義の中にそれをチェックする機能があるべきなのに、全然ない。全く見当たらない。かかる理由から、資本主義者なんて、日本にはいない。
 したがって暴走する陸軍を止める手だてがなかったように、暴走する企業を止める手だても全くない。
 その結果、大日本帝国が大東亜戦争に突入し、崩壊したように、日本資本主義も無制限デスマッチの企業戦争に突入し、必ずや崩壊することになるのである。

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世界史にうといのに海外記事を毎日翻訳するなんてすごいですね
大東亜戦争は数年以内に終わるでしょう。それまでブログ頑張ってください。

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