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2014年12月16日 (火)

サウス・ストリーム・2.0: 続くエネルギー戦争(I)

Pyotr ISKENDEROV
Strategic Culture Foundation
2014年12月13日 | 00:00

今後数年間、ヨーロッパのみならず、ユーラシア大陸全体で、エネルギー状況がどのように展開するかという点で、サウス・ストリーム計画をやめるというロシアの決断は決定的要因となるだろう。

本質的に、我々はアメリカ合州国と欧州連合の親米派指導者連中が始めたエネルギー戦争に取り組んでいるのだ。12月始めに欧米新聞のページを埋めた、冷戦時代を彷彿とさせる陳腐なスパイ表現だらけの記事は、そうした文脈で読み取るべきだろう。

調子を設定したのは、ロンドンを本拠とする新聞フィナンシャル・タイムズで、欧州連合の心臓部における“モスクワの手”を暴露したのだ。同紙によれば、2012-2013年、中央と東ヨーロッパ(CEE)諸国中で吹き荒れたヨーロッパ諸国におけるシェール・ガス鉱床開発反対大規模デモは、ロシア、あるいはより正確に言えば、ガスプロムが費用負担していたのだ。ニューヨーク・タイムズも、同様の主張をした。記事の筆者達は、同時に、CEE諸国の諜報機関は、そうした主張を裏付けるいかなる証拠も得られていないことを認めながらも、ロシアが支払ったとする具体的金額まで書いていた。

欧米の新聞は、特にアメリカ企業シェブロンに、ブルガリア、ルーマニアとリトアニアでの活動縮小を強いたデモ行動に焦点を当てている。実際、こうしたデモは大規模で、ブルガリアとルーマニア政府に、アメリカ石油会社とのシェール・ガス鉱床開発に関する協定を終了することを余儀なくさせた。リトアニアでは、状況はいささか違う形で展開した。リトアニアでは、シェブロンの専門家は、リトアニアの課税要求に従うことも、同社が、環境上危険な作業活動を行うことを計画していた地域発展の為に資金提供することも拒否したのだ。

それより先、アメリカ企業ExxonMobilも、その効率の悪さゆえに、シェール・ガス・プロジェクトを縮小した。これらプロジェクトの金融破綻に加え、作業がもたらす環境上の脅威が、実際には、こうした国々で、アメリカにとって、惨めな結果をもたらしたのだ。ところが欧米は、ブルガリアでの、シェール・ガス計画反対抗議行動は、ロシア工作員の仕業だと宣言して、市場の大きな部分におけるアメリカ企業の損失という出来事に対し、違う説明を押し出すことに決めたのだ。2013年に、同じ親ロシア派分子が、ブルガリア首相ボイコ・ボリソフ政権の辞職を画策し、その目的で、彼らは極右ATAKA党に資金援助したというのだ。当時の反政府抗議行動の具体的な理由は公共料金高騰であったのに、これもロシアから金が出たことになっている。欧米の新聞によれば、ブルガリアが受け取った支払総額は、2000万ドルを上回る。

ルーマニアでも、“モスクワの手”はなくてはならない。ルーマニアにおけるシェール・ガス計画反対の“不思議なことに資金豊富で良く組織された抗議行動キャンペーン”にはガスプロムが関与していた、とニューヨーク・タイムズは報じている。ところが、またしても、ルーマニアの諜報機関は、水圧破砕反対抗議行動へのロシアの関与を示す文書はひとつもないと認めている。ルーマニア議会の産業委員会も、いかなる証拠も持ち合わせていないのに、ヨーロッパのシェール革命反対運動に資金提供する為、ガスプロムが1億ドル使ったとされていると主張している。こうした数値が一体どこから来たのかを正確に明らかにできるものは誰もいない。

ロシアの百万ドルを受け取ったとされる連中が、非難をきっぱり否定しているのは驚くべきことではない。ブルガリアのATAKA党幹部は、同党は法律の枠組み内で、国家補助による全面的支援を受けていると強調している。水圧破砕反対抗議行動指導者に関しては、彼らは、今起きていることは、どれだけ犠牲を払っても、アメリカのエネルギー企業権益を推進しようという取り組みだと見なしている。

ブルガリア、ルーマニアとリトアニアでの抗議行動は、2012-2013年に勃発したのに、ヨーロッパのエネルギー安全保障問題と、石油価格が下落する中、アメリカのシェール・ガス・プロジェクトが経済的に益々存続しにくくなりつつあることに関する益々緊迫した議論のさなか“モスクワの手”について、ようやく今になって言われていることが、多くを語っている。

いわゆるシェール革命に反対する人々の立場は、アメリカ自体の国内でも勢いを得ている。フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥンクによると、11月始めのアメリカ選挙戦で“最も注目すべき結果の一つ”は、アメリカ企業がヨーロッパでも行っている、化学薬品を使用する水圧破砕によるシェール・ガス採掘に関する、テキサス州の都市デントンで行われた住民投票の結果だ。大多数の投票者、59パーセントが、環境に非常に大きな危害を引き起こす、この方法の禁止に投票した。デントンは、アメリカ最大の石油企業ExxonMobilの事務所から自動車で、わずか45分の所にある。また1981年にシェール革命が始まった、アメリカ最大のシェール・ガス鉱床バーネット・シェールがある場所だ。地域には稼働中のガス田が280ある[3]。

つまり、極めて強力な水圧破砕反対の前例が確立されたことになる。フィナンシャル・タイムズと、ニューヨーク・タイムズの論理に従えば、テキサス州で、シェール・ガス採掘に反対する人々も、ロシアから資金援助を受けていたことは確実だ。

一方、モスクワで署名された、2029年まで、ロシア石油をスロバキアに供給する政府間協定で、CEE政府とロシアとの協力で新たな章が開かれた。世界石油市場の一見不利な状況にもかかわらず、モスクワとブラチスラバは、ヨーロッパのエネルギー安全保障を確保する方向に向けて重要な一歩を共に踏み出したのだ。

文書は、ロシア・エネルギー相アレクサンドル・ノヴァクと、スロバキア経済相パブロ・パヴリスによって署名された。“我々には、常にその義務を果たしてきたロシア側パートナーを信じない理由はなく”“信頼できる、我々が良く知り尽くしている長期間の供給業者だ”と、スロバキアの経済相は、ロシアとの契約署名時に発言した。経済相は、スロバキアにとり、エンジニアリングと生産という視点を含め、ロシア石油供給は“極めて重要だ”と確信している。“わが国精油所の装置は、化学上、生産上、ロシア石油の組成に合わせてあり。もし我々が、突然石油をどこかに輸出すると決めた場合は、わが国の精油所の稼働手順を変更する必要があるだろう。”

ロシアとスロバキアのエネルギー部門での協力は、実際に強い基盤があり、両者は1991年に、同様な契約をしたことがある。これもやはり長期間のものだが、契約の全期間にわたり、ロシアも、スロバキアも、お互いを信じない理由は一切あげなかった。新契約の条項は、二国間協力の範囲を拡大している。条項は、スロバキアそのもの向け石油量と、スロバキアを通って他のEU加盟国に送られる石油量の両方で、ロシア石油供給量の際立った増加を規定している。年間供給量は、両方の供給範疇で、600万トンに設定された。2013年末の時点で、580万トンのロシア石油が、ドルージバ・パイプライン経由でスロバキアに供給されていた。両者は、もし技術的インフラが得られ、企業間で同意した場合には、通過する石油の量が年間600万トンを超えることに合意した。

エネルギー部門における、そのような長期契約締結は、必然的に二つの疑問を生じさせる。第一は、資源基盤であり、第二は、石油価格変動についてだ。スロバキアや他のEU諸国における、長期供給源ということでは、こうした国々は、ロシアの石油埋蔵量によって守られることになる。石油価格の変動に関しては、経験上、それが周期的なものであることがわかっている。例えば現在のドル為替レートで価格を再度計算すると、ごく最近だけでなく、1980年代始めや、1860年代でさえ、一バレル、100-110ドルだったことがわかる。こうして市場は、過去150年間、価格下落から無事に回復してきたのだ。

ヨーロッパに対するロシア石油供給長期契約の健全さは、独立アナリストも支持している。イギリス企業BPの専門家は、ロシアの石油生産は、2035年までに、年間5億4800万トンに増大するだろうと計算している(現在は、5億2000万トン程)。ロシアでのガス生産も、年間8070億立方メートルへと増加する(現在、およそ6720億立方メートル)。

彼らの強い願望を阻止しようとする欧州委員会の試みにもかかわらず、ヨーロッパガス市場の業者達は、ロシアとのエネルギー協力を拡大する方法を検討している。スロバキアのガス送付システム運営者Eustreamは、スロバキアから、ブルガリア-トルコ国境までのパイプライン建設を計画しており、ロシア・ガスを、トルコ経由でヨーロッパに送る新計画への参加を急いでいる。これは、サウス・ストリーム・ パイプライン建設計画が見直されたことに対する最初の結果だ...

(続く...)
[1] フィナンシャル・タイムズ、2014年12月1日
[2] ニューヨーク・タイムズ、2014年12月1日
[3] フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイフントゥング、2014年11月6日

Foto: dailysabah.com

記事原文のurl:http://www.strategic-culture.org/news/2014/12/13/south-stream-2-energy-wars-continue-i.html
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これ死かない!
低投票率が反映し、売国者連中・大本営広報部が狙った通りとんでもない選挙結果。
嬉しい結果もある。亀井静氏当選。第三極と、大本営があおった隠れ与党の敗退。「やつら」消滅。次世代を破滅に陥れる連中も激減。

孫崎享氏、「今や日本政治の腐敗は新聞報道にあり」で、沖縄で自民党が全滅したのは、沖縄に、まともなマスコミがあるおかげだと指摘しておられる。大賛成。

おって触れたいが、今回の選挙で特筆すべきは沖縄である。自民党が全敗した、その大きな理由に沖縄には「琉球新報」と「沖縄タイムス」という権力をチェックするという新聞本来の使命を健全に果している新聞の存在がある。

亡くなられた品川正治氏も『激突の時代 「人間の眼」vs.「国家の眼」』で書いておられる。

もちろん沖縄の問題では、事実関係を報じるものとしては、大手全国紙でもしばしば一面をにぎわせています。非常に大きな紙面形成になってもいます。けれども、沖縄の二紙と本土のマスコミとでは、どこが違うかというと、「怒りを起こさせない」という本土と、「そうではない。本当の事実を知らせないといかん」という沖縄─この違いが大きいでしょう。

普天間飛行場の米軍機騒音訴訟判決当日、たまたま那覇にいあわせた。当日も、我が物顔で編隊をなして、戦闘機が上空を飛んでいるのにあきれた。沖縄の新聞は、当然ながら、一面に判決結果を大きく載せた。自宅に戻り、新聞を見て、余りに小さい扱い怒りを起こさせない記事に愕然としたことを思い出す。本土には、小選挙区制を決して批判しない立派な大本営広報部がある。

北野幸伯著『日本人の知らない「クレムリン・メソッド」-世界を動かす11の原理』読了。
大本営広報部プロパガンダ洗脳に対する解毒剤は、違うプロパガンダを読むことだとおっしる。

北野氏、マレーシア旅客機撃墜は、親ロシア派の誤射が原因という説。
それ以外の点に異論はない。

どの国の国営メディアも、当然その政権の意見を強く反映する。
この国にいると宗主国と傀儡国双方大本営広報部のほぼ一言一句同じプロパガンダしか読めない。そこで、それと違う国のメディアや、そうした意見に近いアメリカ人の意見をひどい翻訳でご紹介している。昨日も、ツイッターで「よみにくい」という評価があった。事実ゆえ異議皆無。ご指摘は100%正しい。ご自分で翻訳して下されば1000%正しい。

再読した小室直樹『消費税の呪い』「日本のデモクラシーが危ない」が副題。

裏表紙の「著者のことば」を引用させて頂こう。

消費税は全身汚物にまみれている

 税制改革には、必ず反対が起きる。これは政治学の大定理であり、反例はありえない。この猛反対を、なんとか懾伏(説き伏せる)させないことには、あるいは順従させないことには、税制改革案は実現されえない。
 デモクラシー諸国においていちばん効果的な方法は、全国民の前で何もかも公開して、根気よく反対を説得することである。
 国民の大多数が、それは合理的だと納得したことは、説得的である。税制改革で損をする者も、マア仕方がないと諦めざるをえなくなるだろう。
 なのに、そうしなかった。国民の目のとどかないところで、諸反対を各個撃破と出た。
 腐蝕の淵源は、ここに発した。
 消費税は、その生い立ちからして必然的に呪われた存在であった。
 消費税は、全身汚物にまみれ、一つ一つの毛穴から腐血を吹き出しつつ、この世に生まれてきたのであった。

固有名詞を付け加えれば、そのまま通じると思う。そもそも今回選挙、与党があげた争点、破綻しているアホノミクスだけだろう。呼吸するようにウソをつく皆様、どういう行動にでるか想像するまでもない。

      現政権は全身汚物にまみれている

 TPP、戦略特区推進、憲法解釈変更、憲法改訂、原子炉再稼働、消費税改訂には、必ず反対が起きる。これは政治学の大定理であり、反例はありえない。この猛反対を、なんとか懾伏(説き伏せる)させないことには、あるいは順従させないことには、改革は実現されえない。
 デモクラシー諸国においていちばん効果的な方法は、全国民の前で何もかも公開して、根気よく反対を説得することである。
 国民の大多数が、それは合理的だと納得したことは、説得的である。税制改革で損をする者も、マア仕方がないと諦めざるをえなくなるだろう。
 なのに、そうしなかった。国民の目のとどかないところで、諸反対を各個撃破と出た。
 腐蝕の淵源は、ここに発した。
 TPP、戦略特区推進、憲法解釈変更、憲法改訂、原子炉再稼働、消費税改訂は、その生い立ちからして必然的に呪われた存在であった。
 TPP、戦略特区推進、憲法解釈変更、憲法改訂、原子炉再稼働、消費税改訂は、全身汚物にまみれ、一つ一つの毛穴から腐血を吹き出しつつ、この世に生まれてきたのであった。

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コメント

お疲れ様です。

>昨日も、ツイッターで「よみにくい」という評価があった。
↑、
どこがその箇所なのかわからないので、
一般的なことを少々。
翻訳記事はその内容を読者に理解させる使命が有ります。

例えば私が翻訳サイトを使いながら、短い文を相手に分らせるために稚拙な英文、露文、西文を書くとしましょう。相手にとって非常にわかりにくい文になります。でも、それでも機械翻訳だけではだめなので、自分でいろいろ工夫しなから「意味をどうにかわかってもらえる」くらいにまでするのです。

和文翻訳もまた然り。
外国語にはそれぞれ独特の癖があります。
その癖を理解できないと、意味不明文になるのはまだましで、逆意にもなってしまいます。
また日本語でも多いでしょう?「どこに掛っているの?」という箇所。日本語より合理的な言語がおおいから分り易い場合も多いが、そうでない時もある。
微妙な言い回しなど、どう和文にしていいものか、しかもそれがどっちに掛っているのか微妙な時なぞ!!
それを前後の文脈からどうにか判別できている文は、その苦労が報われています。
その職人芸をわからんで「よみにくい」とは無粋どころか「幼稚」。
仕方が無いのではないでしょうか?今の我国日本の日本人たちは精神性が幼児から成長できていません。しかも性格はこれでもかというほどにねじ繰り曲がり黒ずんで。
世の中には「あなたはこの手合いを相手にしてはいけません、道端の犬の糞にいちいち論評を加え怒りを覚えるのですか?」というモノが掃いて捨てるほど山盛りです。

ちなみに私が話した他国のことについて「そんなことあるわけないじゃん!!」と言う者は多くいます(それほど以外な事を言ったつもりではないのですがw)。
その場合「へぇ、おれより**国や**人について知っているんだ!すごいね、んじゃ**語で会話しようか?」とか「何年住んでたの?どこに住んでたの?」とか、いろいろおちょくります。
リアルではなく、ネットだと更に効果的で、馬鹿はおちょくると二度と来なくなります。

現状の日本が不安なのは理解できます。が、今ここで溜めすぎても勿体無いです。
必要なときに溜めて一気に出す。必要ないときには、隣で殺人とか火事とか起こっていても、まったりしている、くらいでいいのではないでしょうか?(いや、勿論それで助けが必要だと判断したら即動きますがw)

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