貧者への思いやりゆえに破滅したドミニク・ストロス=カーン
Paul Craig Roberts
2014年11月25日
“我々が暮らしている経済社会の際立った欠点は、完全雇用を実現し損ねていることと、富みと収入の、恣意的で不公平な配分だ…この発言全体には、必ずしも全員が同意はしないだろう。しかし我々が時間と共に学んだのは、失業と不平等が、不安定性の種を蒔くことにより、市場経済が達成したものを危うくしかねない”ドミニク・ストロス=カーン
読者の皆様は、しばらく前、IMF専務理事ドミニク・ストロス=カーンが少数民族のホテル・メイドを強姦したとされる話題は見え透いたぬれぎぬだと私が片づけたのを、おそらく覚えておられよう。(翻訳記事)アメリカの左翼、あるいはそのわずかな残滓連中、特にフェミニスト達は、いかさま強姦容疑にぞっこんほれ込んだのだ。いかさま容疑は、裕福な白人男性が女性や少数派を思い通りにしているという連中のイデオロギーにぴったりだったのだ。
ニューヨーク警察と検察官が、彼の罪に関する様々な声明を取り消し、すべての起訴を取り下げざるを得なくなった際、一部の左翼は、不起訴は、裕福な白人男性は、女性を強姦しても何の罰も受けずにすむという証明に過ぎないと主張した。このホテル・メイドが、ストロス=カーンの評判を損ない、彼から金をまき上げる策謀に関与していた、確かな説得力ある証拠にもかかわらず、彼等はこの立場を変えなかった。ニューヨーク警察が、ストロス=カーン逮捕を発表する前に、ワシントン傀儡のフランス大統領顧問が、策謀の成功を知っていたことが判明した。
自分達の反射的なイデオロギー反応に目が眩み、ストロス=カーン支持に廻るべきアメリカ左翼は、“連続強姦犯”非難を享受するばかりだった。
ストロス=カーンは二つの理由で排除された。一つは、近づいていたフランス大統領選挙で、アメリカ傀儡のフランス大統領に、彼がうち勝ち、当選する可能性が高かったこと。もう一つは、ヨーロッパとニューヨークの悪徳銀行家連中が、公的債務問題は、大銀行に不利なので、ギリシャ等の国民に押しつけようと決めていた緊縮財政を阻止するため、IMFトップとしての自分の立場を、彼が利用したことだ。
言い換えれば、ストロス=カーンは、無謀で強欲な銀行幹部の失敗を、一般の貧しい国民に、年金削減や馘首や社会福祉削減で負担させることへの反対を表明していたのだ。
ストロス=カーンが、アメリカ左翼の加担によって、これ程容易にはめられたことは、反エリート指導部が、欧米で反旗を翻すのは不可能なのを実証している。反体制指導部が頭をもたげる度に、その首は切られてしまう。
つまり欧米民主主義は偽物で、国民にとって、選挙で、いかなる平和な変化も実現する可能性も存在しない。クリス・ヘッジズが最近書いた通り、職業革命家が不在である欧米は、圧政となる運命にある。
マイク・ホィットニーが、最近の記事で、当時私が指摘していた通り、ストロス=カーンは、支配層エリートに調和しなかったがゆえに首を切られたことを実証している。
ホィットニーの記事はここで読める。
http://www.counterpunch.org/2014/11/25/trotsky-at-the-imf/
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多くの皆様が御承知の通り、数年前に私が引退しようとした際に、読者の皆様は、それを受けいれてくださらなかった。私は、協賛各紙に同時に掲載され
るコラムを降りて、皆様にお別れをつげた。皆様が、何千通もの電子メールで、小生の経験と知識を頼りにしておられ、それが現代の出来事を客観的に理解する
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る。
これは皆様のウェブサイトだ。皆様に支持を頂ける限りは継続する。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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ロバーツ氏が文中で触れている彼の記事は、これだろう。
ファシスト・アメリカの未来は死だ 2012年8月20日
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青酸カリ殺人や幼児虐待、そしてアイス・スケート、吉田調書報道。
『原発と大津波 警告を葬った人々』には、その吉田氏、福島第一原発で起こりうる津波の高さに、現状の設備は耐えられないという情報を知りながら、対策をとろうとしなかった幹部の一人だったことが明記されている。
自分で、安全対策の実施を止めていた彼、どういう気持ちで事故に対処したのだろう?
「選挙報道の公平中立などを求める要望書」を、大本営広報部に送って恫喝する売国政党。
与党と与党別動隊に不利な記事を書いたら、放送したら、どういうことになるかわかっているだろうなと、お上のバッジを着けた公式暴力団。
ここまで徹底的な大本営広報部と化していても、まだ不安なのだろうか。
小選挙区や、票の重みの不平等や、大本営広報の虚報詐欺で票を騙しとっている実態が、そうした恫喝を生むのだろうか?
田中正造や幸徳秋水の演説が中止させられたのを思いだす。
大逆事件、更に時代が下って、小林多喜二、鶴彬。そこまであともう一歩。宗主国侵略戦争に参戦する物言えない日本をトリモロス。
北朝鮮や中国や韓国政治を馬鹿にできる人々がいること自体不思議。
各党公約の比較表を、大本営広報でちらりと見た。
消費税5%が社会党、消費税反対が共産党。
集団的自衛権に反対しているのは、社会党、共産党のみ。
絶滅危惧種政党以外、まともな主張をしているもの皆無に思えるのだが、この二党で過半数をとる可能性は1000%ない。そもそも不仲だ。
反体制指導部が頭をもたげる度に、その首は切られてしまう。
という記述、普天間基地の県外、国外移設を言った鳩山政権を思いだす。
まさにロバーツ氏がおっしゃる通り、
欧米日の民主主義は偽物で、国民にとって、選挙で、いかなる平和な変化も実現する可能性も存在しない。クリス・ヘッジズが最近書いた通り、職業革命家が不在である欧米日は、圧政となる運命にある。
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共産党は自民党の補完勢力か -2012年衆院選から-
「共産党は自民党の補完勢力である」という意味がよく分からない。自社2強時代に,社会党票に共産党票が加われば,自民党票を上回る選挙区があったと思う。しかし或る人の話に拠れば,共産党と社会党は犬猿の仲であり,その合票はあり得なかったという。
その旧社会党が消滅し,社民党に名前を変えた今日なお,「共産党は自民党の補完勢力である」という説は正しいのか,よく分からないので暇に任せて調べてみた。果たしてその答えは,「否」であった。
まず北海道から青森と南に下って東京まで小選挙区の,各党の得票数を調べてみた。そこで利用したのが読売新聞社のHPにある「Do 選挙」の[衆院選2012]である。小生には見やすく比較が簡単にできた。この社説を2度くらい読んであまりの論理の強引さに呆れて3度と読んだことはないが,便利で利用できるものは利用したい。
さて本題に入る。「補完勢力」という時の意味を『共産票が野党次点候補者に流れれば,自民党候補者が敗れたのに(○で表示)』という意味に解釈する。その意味で,北海道では1区(横道孝弘氏),2区で民主票と共産票を合わせると,自民党候補が敗れる。ところが新党大地(未来推薦)の票が共産票より多いので,自民党候補を勝たせているのは,共産票ではないと言うこともできる。
青森0,岩手0,宮城0,秋田0,山形2区(○)。山形3区は共産票と自民票を合わせると民主候補が敗れる(▲)。福島5区(○),山梨3区・茨城6区・千葉1区(▲),埼玉4区・6区(○),5区(▲),14区(共+維▲),栃木0,千葉1区(▲),群馬0,東京1区(海江田)・2区(中山義活)・3区(松原仁)・18区(菅直人)・19区(末松義規)(○),15区・21区(▲)である。*敬称略
3.11によるフクシマ核分裂発電所(原発)爆発事故が起きたとき,欧米の大使館員や欧米人が待避した東京以北の都道県を調べてみると,民主党の次点候補に大物が多く,確かに共産票が全て流れれば,大物は当選したと言える。横道・海江田・松原・菅氏のように当選者との差がほとんどない場合は「風」によるから,共産票は関係ない。そこで「共産党が自民党の補完勢力」というときの意味は,「民主党大物」が当選できなかったのは『共産票の「一部」が民主大物に流れなかったからだ』ということである。
しかし,東京選挙区では未来(大地)票が共産票より多い地区が複数あることを鑑みれば,自民党の補完勢力は未来(大地)でもあった,と言えなくもない。
共産党が候補者を立てなかった場合,共産票が全て民主党や他の党に流れることは想定できないが,もし流れたとしても,東京以北では111選挙区のうち僅かに12区であり,上記大物が公約破りに加担さえしなければ,民主党の他の候補4人が比例で当選したはずである。また,▲の数8を考えた場合,もし共産党が自民党の補完政党であるとすれば,自民党候補はさらに多く当選していたはずである。裏を返せば,共産党が自民党の補完政党でなかったから,▲区の自民党候補は次点であったのである。
かくして「共産党が自民党の補完勢力」という仮説・主張は「民主党大物を当選させるために共産票が民主票に上乗せされるべきだ」という意味になり,この仮説は棄却される。諸賢の批判をお願いしたい。
投稿: 箒川 兵庫助 (1-ロ-3) | 2014年11月30日 (日) 13時37分
ストロス=カーン氏の排除劇に政治的抹殺の意図があったのはこのニュースに接した当時から感じていたものですので、ロバーツ氏の見解に全く同意します。
欧米の支配者層に属する者は自分達の失敗を他者、すなわち下層の貧しい民衆に押し付ける事を当然と考えており、それが道理に合わないと異議申し立てする支配者階層の者(つまりお仲間)は裏切り者として排除してきました。
ストロス=カーン氏の排除劇は同階層に属する者への見せしめでした。欧米のメインストリームに属さない周辺国、例えばポーランドやウクライナなどの地域では欧米の支配レジームに異を唱える指導者が悪魔化され、新たな指導者(あやつり人形)が担ぎ上げられます。辺縁部のイスラム国家、アジア、アフリカに至っては国全体が悪魔化され、善良な民衆が圧政に立ち上がるという構図を作って悪魔化した国家を転覆させようとします。
支配レジームを擁護する者達は自らの正当性を論理的に訴えることが出来ない(そもそも破綻している)ので、人々の情感に扇情的に訴えるしかないのです。
アメリカの国債詐欺を逆手に取り、IMFへの巨額資金を米国債でまかなおうと画策した中川昭一氏は会見で失態を演じたことを扇情的に攻撃され、政治的に抹殺されました。このような事例は探せば幾らでも出てくるでしょう。
ところで今朝の産經新聞に小選挙区制は「大間違い」か、という記事がありました。小選挙区制導入に対して大きな役割を果たしたことを自身の大きな過ちであったと河野洋平氏が告白したものでした。この記事の論旨は全く承服出来ないものでした。中でも、中選挙区制時代と比べると選挙戦はクリーンとなり公約も現実離れしたモノが減った、とのくだりには噴飯させられました。
投稿: 海坊主 | 2014年11月29日 (土) 12時57分