“カラー革命”: 香港の傘は “メイド・イン・アメリカ”
F. William Engdahl
2014年10月24日
New Eastern Outlook
ワシントン・ネオコンと、アメリカ国務省とオバマ政権内部のその仲間達は、ロシアのウラジーミル・プーチンに対してと同様、明らかに中国に対しても激怒している。近年、ロシアも中国も、両国の国益を一層強く主張する様になり、二つのユーラシア大国が、あらゆる戦略レベルでの密接な協力をするようになったので、ワシントンは、ロシアと、ロシアとEUのつながりに対して、ウクライナの混乱をしかけたのと同様に、北京に対しても、大騒ぎを引き起こすことに決めたのだ。北京とモスクワをより密接に結びつけた相次ぐ最近の協定、4000億ドルのガス・パイプライン、BRICSのインフラ開発銀行、アメリカドルを回避するルーブルと人民元による貿易、といったものが、ワシントンの反撃を引き起こした。それは、マスコミでは、香港‘アンブレラ革命’と呼ばれている。
産業グローバル化とアメリカ産業の低賃金諸国、特に中国への外注化時代の現今、アメリカが、より正確には、ワシントンDCとバージニア州ラングレーが、中国の香港向けに、製造し輸出しているある物には注目の価値がある。香港特別行政区は、カラー革命の標的となり、抗議行動参加者が、警察の催涙ガス防御用に使っているアンブレラにちなみ、マスコミでは、アンブレラ革命と名付けられている。
香港で継続中のアンブレラ革命用の“アンブレラ”はワシントン製だ。その証拠は連中がウクライナで利用したのと全く同じモデルに習った、中環占拠が始まってからわずか数時間後の、見苦しいほど拙速なホワイト・ハウスのあからさまな支持だけに見られるわけではない。アメリカ国務省と、国務省が資金提供しているNGO連中が、こうした抗議行動を長年ひそかに準備してきたのだ。ワシントンによる香港“民主主義”プロジェクトという氷山の一角を見てみよう。
毎度お馴染みの薄汚い主役連中…
もはやほとんど見飽きた一本調子で、ワシントンは、もう一つの悪名高いカラー革命を解き放った。うわべは、2017年香港選挙で発表された北京による支配に抗議するものだという香港 “中環占拠”抗議行動は、まるごと、アメリカ政府が操るNGOと、アメリカに訓練された工作員連中が動かしている。中環占拠香港抗議運動は、名目上、香港版ハリー・ポッターの様な、イギリスが不承不承、99年間の植民地占領を終え、この都市国家を中華人民共和国に返還した年に生まれた青年、17歳の学生、黄之鋒が率いている。黄の中環占拠抗議行動には、ミネソタ大卒業のヘッジ・ファンド・マネージャー、銭志健(エドワード・チン)や、エール大卒業の社会学者、陳健民、1989年のCIAによる天安門広場不安定化工作を経験したベテランのバプテスト派の牧師、朱耀明や、香港大学法学副教授、ベニー・タイ・ユーティン、つまり戴耀廷がついている。
こうした香港人達の背後で、アメリカ国務省と、そのお気に入りのNGO、アメリカ議会が資金供出する全米民主主義基金(NED)が、その下部組織、民主党国際研究所 (NDI)を通して、中環占拠工作を動かしている。民主主義を求める平和な非暴力抗議行動の美しい正面の背後を覗けば、実に非民主的な、隠されたワシントンの狙いが見えてくる。
中環占拠を率いるべく選ばれたバプテスト派牧師の朱耀明から始めよう。尊敬されている朱耀明牧師は、香港NGO、「香港人権監察(HKHRM)」の創設者で、執行委員会メンバーだ。「香港人権監察(HKHRM)」は、全米民主主義基金(NED)という名のネオコン・カラー革命NGO経由で、主にアメリカ国務省から資金援助を受けていることを、ウェブサイトで、あからさまに認めている。
彼等は自分達の狙いをこう述べている。“「香港人権監察(HKHRM)」は、香港の人権問題について、マスコミ、国連、現地および海外政府や立法機関に、口頭と書面で報告する。” 2013年の年次報告で、NEDは、朱耀明牧師の「香港人権監察」に、145,000ドル支給していると報じている。それだけあれば、この為に、船一隻分のアンブレラが買える。朱のHKHRMは、NEDから資金提供されているもう一つの組織、アジア改革民主主義同盟(ARDA)とも協力している。
今年2014年1月、中環占拠運動のトップ連中が(非民主的に)まさにこの朱牧師を、中環占拠の指導者として指名することに決めた際、朱は“私には、様々な活動家集団と多くのコネがあり、大規模な社会運動の経験もあります”からと言った。運動家集団として、NEDの名を挙げることもできたろうし、より具体的に、CIAの1989年の天安門広場も‘大規模な社会運動’ですと言えただろう。バプテスト派説教師は、彼にその役割を“務めて”欲しがっていた、市民的非服従運動の二人の主要組織者、戴耀廷と陳健民によって、中環占拠の事実上の指導者に任命されたことを認めている。
戴耀廷もアメリカ国務省と昵懇だ。香港大学法学副教授で、香港中環占拠運動の共同創始者の戴は、「港人講普選(香港民主主義センター?)」等のプロジェクトについて、NEDの下部組織、民主党国際研究所から交付金を受けている香港大学比較法・公法センターで働いている。「港人講普選」は年次報告書こう書いている。“港人講普選ウェブサイトは、香港における憲法と政治上の改革の為に、合法的で建設的なボトム・アップの手法を推進すべく、民主党国際研究所からの財政支援を得て立ち上げられた”そのウェブサイトで、NDIは、本質的に、2014年2月に、ウクライナで、ビクトリア・ヌーランドが精選したアメリカに忠実なクーデター政権が出来たのと同様に、香港でも、アメリカ精選した政権を樹立できるよう門戸を開放する様にという、長年の香港での法律プロジェクト、占拠運動の法的背景の要求を説明している。NDIはこう誇っている。
香港大学比較法・公法センター(CCPL)は、NDIの支援を得て、市民に香港選挙制度の未来について議論する場を提供するユニークで中立的なウェブ・サイト港人講普選(www.designdemocracy.hk)を立ち上げるにあたりコンサルテーションを行い、市民の声を拡声できるよう努力しています。
ワシントンによる不安定化工作カラー革命の香港の神童、17歳の学生、黄之鋒は、ワシントンのネオコン全米民主主義基金の左派部門、民主党国際研究所とNDIのNDIテク・プロジェクトの支援を得て、15歳の時に、Scholarismという名のフェイスブック・サイトを立ち上げた。もう一人の中環占拠の重要人物、余若薇は最近ジョー・バイデン副大統領と会見した。なるほど。
陳日君枢機卿と、その大罪…
大手マスコミには余り登場しないものの、中環占拠の主要組織者の一人と目されているのが、香港カトリック教会の名誉枢機卿、Joseph Zen、陳日君だ。香港モーニング・ポストによれば、陳枢機卿は、アメリカが資金提供する北京当局に対する抗議行動で重要な役割を果たしている。陳枢機卿は、たまたま中国政策に関する首席バチカン顧問でもある。史上初のイエズス会修道士の教皇であるフランシスコ・ローマ教皇は、アメリカの財政支援による再試行で、イエズス会創設者(そして偶然、教皇と同名の)フランシスコ・ザビエルの任務として、香港をアキレス腱として利用し、中華人民共和国を転覆させ、乗っ取るつもりなのだろうか?
ネオナチ内戦による何千人もの東ウクライナの犠牲者の血に染まっているジョー・バイデン副大統領、陳枢機卿、朱耀明牧師、黄之鋒、戴耀廷や、ネオコンNEDと、そのNDIや他の国務省工作員や、ここで名前を挙げるには余りに多数のNGO連中が、本格的なカラー革命、アンブレラ革命に点火したのだ。2017年香港選挙の2年前という行動の時期が、ワシントンや欧米の他の場所にいる一部の連中の気が立っていることを示唆している。
プーチンのロシアと共に成長しつつある中国のユーラシア経済領域や、上海協力機構やBRICS等の組織を通して活動することによって、ワシントンの新世界(無)秩序に対する、平和で極めて有効な対抗軸を作り出しつつある両国の主導的な役割こそが、連中による騒動の本当の標的だ。連中は実に愚昧なのだが、いかんせん、連中は根本的に知性を嫌悪する馬鹿連中なのだ。
F. William Engdahl(ウィリアム・イングドール)は、戦略的危機コンサルタント、講師で、プリンストン大学の政治学学位を持っており、石油と地政学の世界的ベストセラー本の著者。本記事は、オンライン雑誌“New Eastern Outlook”独占。
記事原文のurl:http://journal-neo.org/2014/10/24/hong-kong-s-umbrellas-are-made-in-usa/
----------
ブラジルでの宗主国巻き返しは失敗したようだが、福島では傀儡支配継続。
この文章筆者の別記事に対するTwitterコメントか何かで、根も葉もない「陰謀論」という趣旨のものを見たことがある。そのコメントこそ「陰謀論」だろう。
個人的に、長いことキリスト教の布教の歴史に興味をもっている。幼稚園はキリスト教教会だったが、筒井康隆の名作『バブリング創世記』の文句以外、何も記憶にない。つまり「ドンドンはドンドコの父なり。」中公新書『細川ガラシャ』をつい最近購入したばかりのところで、こうしてイエズス会の話題を読むと、不思議な気分になる。
香港問題、ウクライナ問題といった国際的事件から、国内の理不尽な不都合情報秘密化法案、集団的先制侵略権、原発再稼働、TPP等々、ありとありゆることで洗脳をひたすら推進する諜報機関?についての貴重なインタビューがある。
2014/10/22 「みんなのNHK」から「安倍政権のNHK」へメディアへの政治権力の介入〜元NHKプロデューサー・永田浩三氏に岩上安身が聞く
« プーチンを中傷するワシントン | トップページ | シリアに関する、愚劣なサウジ-米秘密協定 »
「アメリカ」カテゴリの記事
- アメリカにとって良いことはイーロン・マスクにとっても良いことで、その逆も同じ(2025.01.23)
「新自由主義」カテゴリの記事
- アメリカによるヨーロッパ植民地化の影響(2024.11.13)
- 資本主義は巨大詐欺だ(2023.07.21)
- ニュージーランドは些事に至るまで国民を管理する欧米諸国政府用の実地試験?(2023.01.26)
- 議論で破れたがゆえに一層喧しいブッシュ時代の戦争犯罪人連中(2021.08.26)
- iPhoneのために死ぬ(2021.06.07)
「ロシア」カテゴリの記事
- 依然、経済的ストックホルム症候群に陥っているウクライナ(2025.01.21)
- 大統領の鳴り物入り宣伝など忘れろ アメリカ帝国主義によるホワイトハウス占拠だ(2025.01.19)
- シリア分割と新サイクス・ピコ協定:地政学的混乱と地域再編(2025.01.12)
「中国」カテゴリの記事
- 就任さえしていないのに既に全面戦争を誓うトランプ(2025.01.15)
- マイクロチップ、海、戦争(2025.01.13)
- エリート主義的暴政が暴露され、崩壊しつつある「欧米民主主義」(2024.12.13)
「カラー革命・アラブの春」カテゴリの記事
- 誰にも止められないワシントンの超兵器(2024.12.28)
- なぜソロスはタジキスタンを去ったのか?(2022.12.06)
- 背信のエルドアンは大トゥーラーンのためロシアを破壊しているのか?(2022.02.07)
- カザフスタンの不穏状態と中国(2022.01.29)
- カザフスタン後、カラー革命時代は終わった(2022.01.19)
「NGO」カテゴリの記事
- ウクライナ情況報告:種トウモロコシを食べる - 介入の脅威と対応(2024.05.11)
- わずかな戦利のため増大する損失について語るウクライナ兵士たち(2023.08.05)
- アメリカは、いかにEUを分裂させているか(2022.09.18)
- 「民主主義」を守らず、帝国を強化する「民主主義サミット」(2021.12.09)
- 香港抗議運動に押し寄せるウクライナ・ネオ・ナチ(2019.12.10)
「William Engdahl」カテゴリの記事
- モスクワでなく、ベルリンとブリュッセル発のヨーロッパのエネルギー・アルマゲドン(2022.09.06)
- 一体誰の穀物がウクライナから輸出されているのか?(2022.08.22)
- NATO制裁と、来るべきグローバル・ディーゼル燃料(軽油)大惨事(2022.04.16)
- ウクライナと、より深遠な世界的自殺計画(2022.03.13)
- ジョージ・ソロスは、なぜ習近平が去るのを望んでいるのか?(2022.02.15)
コメント
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: “カラー革命”: 香港の傘は “メイド・イン・アメリカ”:
» 今回は成功しないかもしれません.それでも私たちは最初の一歩を踏み出さないといけないんです [ペガサス・ブログ版]
香港の学生闘争,テレビ東京のWBSが先週,10月15日に特集で伝えました.とても素晴らしい内容なので書き起こしをしました.いつもはコメンテーターのTPP万歳,消費増税当然論でうんざりさせられますが,こんないい内容も.それとも,「日経系が持ち上げるくらいだから,やはり『カラー革命』の一種だ」とでも?? -----書き起こし------ 大浜キャスター:ごらんのように大規模デモの収束に向けて,当局がデモ隊の強制排除に乗り出すなど,香港政府は学生たちに対し強硬姿勢を強めています.行政長官の選挙から民主... [続きを読む]
この国ではカラー革命など必要なく、率先してメディア、官僚、政治家、大企業が毎日カラー革命を宣伝してくださっている。しかし、福島県知事選の開票作業を始める1時間ほど前から、各局とも独自の出口調査の結果からと、ムサシ選挙を使っていたとしても、当選確実を発表できるのは、メディアも、かなりずうずうしくなってきたのでは?こういうことがなぜ可能なのか?を、ヌケガミあきらめた氏に評論してもらいたいものだ。
投稿: ゴシャッキ男 | 2014年10月27日 (月) 23時41分