ウソ発生機
Paul Craig Roberts
2014年10月11日
欧米は、既得権益を持った連中の秘密の思惑専用に機能する、巨大なウソ発生機だという結論に私は達している。例えば、環大西洋貿易投資協定と、環太平洋戦略的経済連携協定について考えてみよう。
これらのいわゆる“連携協定”は、実際には、アメリカ企業が、自分達が事業活動をする主権国家の法律の影響を受けずに済むようにする為の道具だ。アメリカの大企業に対して、自国法を施行しようとする主権国家は、アメリカ大企業に“貿易を制限”したかどで訴えられかねないのだ。たとえば、もしモンサントが、GMO種子をフランスで売りたい、あるいはアメリカ大企業が、遺伝子組み換え食品をフランスで売り買いと願った際に、GMOに対し、フランスがフランス法を施行すれば、環大西洋貿易投資協定により、“貿易を制限”したかどで、フランス裁判所権限外の法廷で、フランスを訴えることが可能になる。言い換えれば、フランスに禁止されている製品が入るのを防ぐことが、貿易制限になるのだ。
環大西洋貿易投資協定と、環太平洋戦略的経済連携協定を、完全な秘密にし、民主的な過程をへずに交渉するようアメリカが主張しているのは、それが理由だ。アメリカ議会さえも、交渉について知ることは認められていない。
明らかに、こうした“連携協定”条件に同意しているヨーロッパ人もアジア人も、アメリカ企業に、金で買われ雇われている代理人だ。もし連携協定が成立すれば、ヨーロッパとアジアにおける法律は、アメリカ法のみとなる。自国の法律に対するアメリカ企業の覇権に合意する、ヨーロッパとアジア政府高官連中は、実にたっぷり謝礼を貰い、1パーセントの世界に入れることとなる。
BBC報道(10月10日)と、RT(10月11日)報道の比較は興味深い。環大西洋貿易投資協定の狙いは、“二国間貿易に対する障壁”を取り除き、更なる貿易や、投資、経済成長と雇用を促進することだとBBCは報じている。GMO製品に対する障壁を含む障壁を取り除くことは、BBCは報道しない。
欧州委員会が腐敗していることは誰もが知っている。もしそのメンバーが、アメリカ企業のおかげで豊かになりたいと願っていても、驚く人などいるまい? 環大西洋貿易投資協定が、各国の主権に悪影響をもたらすという懸念は見当違いだと、欧州委員会が宣言したのも決して不思議ではない。 http://www.bbc.com/news/business-29572475
アメリカ国内でも活動している為、真実報道を制限されているRTは、それでも“TTIP反対: アメリカEU貿易協定を、‘大企業による権力奪取’だと酷評する大衆抗議行動”という見出しをつけるぐらいのことは出来ている
ヨーロッパ中で、腐敗した政府が、ワシントンの為に、自分達の暮らしや事業を奪取する秘密協定に反対する大規模抗議集会で、人々は街頭に繰り出した。“ヨーロッパ人とアメリカ人に‘この十年間で最大の大企業による権力奪取’に反対し、行動するよう呼びかける大規模キャンペーンの為に、ソーシャル・ネットワークが活用された”とRTは報じた。
RTは、秘密協定は“大企業に、史上、未曾有の更なる権利を与えるものだ”というベルリン・デモ指導者の発言を載せた。我々皆知っての通り、大企業は既に余りに多くの権利を持っている。
“抗議行動は、ヨーロッパの22ヶ国で計画された。行進、抗議集会や、他の公共イベントが、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ギリシャ、オランダ、ポーランド、チェコ共和国や、スカンジナビア諸国の1,000箇所以上で行われた。”
この最新のアメリカ大企業による権力奪取に関して、フォックス“ニューズ”、CNN、ニューヨーク・タイムズ、ロンドン・タイムズ、ABCは報道をしただろうか? もちろん、しない。これに反対する大規模デモについて報道があっただろうか? もちろん、ない。大衆が聞かされるのは、強力な利益団体が大衆に聞かせてよいと思うことだけだ。
国際抗議行動の主な狙いは“民主主義を取り戻し”、世界的に悪の見本と見なされている組織、アメリカ大企業を除く、全員の暮らしを破壊する秘密協定を終わらせることだと、RTは報じている。
http://rt.com/news/195144-europe-protests-stop-ttip/
こうしたまやかしの“貿易協定”は“関税を取り除く自由貿易”として擁護されているが、こうした協定が取り除くのは、各国の主権なのだ。アメリカは既に大企業によって支配されている。もしこうしたエセ“貿易協定”が成立すれば、ヨーロッパもアジアも、アメリカ大企業に支配されることになる。
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多くの皆様が御承知の通り、数年前に私が引退しようとした際に、読者の皆様は、それを受けいれてくださらなかった。私は、協賛各紙に同時に掲載され
るコラムを降りて、皆様にお別れをつげた。皆様が、何千通もの電子メールで、小生の経験と知識を頼りにしておられ、それが現代の出来事を客観的に理解する
のに役立っていると言ってこられたのだ。皆様の御意見には説得力があった。私は引退を止め、このウェブサイトを開設したが、皆様から強固なご指示頂いてい
る。
これは皆様のウェブサイトだ。皆様に支持を頂ける限りは継続する。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当の財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスと、クリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:http://www.paulcraigroberts.org/2014/10/11/lie-machine-paul-craig-roberts/
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マララさん国連演説に感動している余裕はない。
この最新のアメリカ大企業による権力奪取に関して、NHK、TBS、読売、産経、日経新聞は報道をしただろうか? もちろん、しない。これに反対する大規模デモについて報道があっただろうか? もちろん、ない。大衆が聞かされるのは、強力な利益団体が、大衆に聞かせてよいと思うことだけだ。
ウソ発生機。国民を奴隷にする国家戦略特区を、大本営広報部は本気で報じない。
山田正彦氏の様な素晴らしい政治家が落選し、売国奴集団が権力の座につく売国傀儡国家。
TPPについての真実を報道しつづけてくれている組織、当然ごくわずか。
下記は必見の報道。大本営広報部のインチキ報道を一年見続けるより、この番組一本を視聴する方が遥かに意義があるだろう。
つい最近なくなられた宇沢弘文東京大学名誉教授からも、はがきが寄せられていた。
「TPP交渉差止・違憲訴訟の会の呼び掛け人に加えていただけたら」とある。
宇沢弘文氏は、山田正彦氏に初めて会われた際、「国家主権が無くなる」「不平等条約そのものだ」と言われた。
IWJの岩上安身氏も呼び掛け人。
で素晴らしい報告をされた、岩月浩二弁護士も共同呼び掛け人。
岩上氏、東京都知事選の争点には「戦略特区」があった、と指摘されている。舛添・細川候補は、戦略特区推進派だった。戦略特区に反対していたのは、宇都宮候補だった。
原発反対のシングル・イッシュー運動では、原発反対をつらぬけない。TPPが成立すれば、自動的に、原発に反対できなくなる。というわけで、小生、しつこく反TPP記事を翻訳している。
IWJは、会費で運営されている。新聞や大本営広報番組経費を節約しても、この会費は節約できない。
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